アルゼンチン西部、アンデス山脈沿いに位置するサン・フアン州を舞台に行われる1クラスのステージレース。2019年は前年までと比べて1ステージ増えて、計8ステージで行われる。
かつて、アルゼンチンを舞台にしたレースとしては「ツール・ド・サンルイス」が知られていたが、資金難を理由に2016年を最後に開催されなくなってしまった。
代わって、それまでアマチュアレースとして長年続いていたこのサンフアンが、2017年よりUCI公式レースとして昇格を果たすことになったのだ。
同じ1月に開催されるツアー・ダウンアンダーと並び、南半球で開催されるシーズン最初のステージレースとして、1クラスながらも多くの有力チーム・選手が出場している。過去にはヴィンツェンツォ・ニバリやナイロ・キンタナなどが総合優勝を果たしたことも。
スプリンター向けステージが多くありつつも、山岳ステージや個人TTなどステージ構成のバランスは非常に良く、パンチャー向けのダウンアンダーに対し、ピュアスプリンターやクライマーたちがシーズン序盤の調整レースとして利用することが多い。
そんなサンフアンの、2019年の目玉が、マーク・カヴェンディッシュ、そしてペテル・サガンという世界トップクラスのスプリンター2名が参加することが決まったことである。
カヴェンディッシュは2015年、サガンは2016年、いずれも「サンルイス」時代以来の南米レースへの出場である。
カヴェンディッシュは昨年、シーズン序盤の度重なる落車や、その後の病気によって、辛く苦しいシーズンを過ごすこととなった。
その状況からの完全回復をこの時点で見られるとはさすがに思えないが、引退の2文字も近づきつつある2019年シーズンにおける新たな成功のための手ごたえを、感じられるようなレースを展開してみせてほしいところ。
一方のサガンはすでにツアー・ダウンアンダーへの出場を決めている。
例年であれば、日程の重なる南米レースへの同時出場は不可能ではあるが、今年はサンフアンの日程が後ろ倒しされており、ダウンアンダー閉幕から1週間後の開幕となっている。
いずれにせよシーズン序盤からなかなかハードスケジュールとなるが、ダウンアンダーで十分に温められた足は、ライバルたちにとっては脅威となることだろう。
その他、南米出身の選手としては、毎年出場しているフェルナンド・ガビリアがUAEチーム・エミレーツ移籍後初のレースとなる見込みだ。
かつてのチームメートであり、彼の勝利を常に支え続けてきてくれた信頼するアシストでもあったマクシミアーノ・リケーゼが、今回はガビリアの敵として立ちふさがることになるだろう。地元選手でもあるリケーゼは毎年このレースでの勝利を飾っており、今年もしっかりと調子を合わせてきそうだ。
なお、クイックステップとしては、エリア・ヴィヴィアーニもよく出場しているレースではあったものの、昨年はガビリアとの棲み分けのためにダウンアンダーに出場した。
1勝もしており、2019年もサンフアンと日程が重なるカデルレースにおいても2位と好走を記録しているため、2019年もヴィヴィアーニはオーストラリアでのみ1月を過ごす可能性は高そうだ。
南米勢という意味では、アルバロホセ・ホッジの出場にも期待したい。
今年、あまりの活躍ぶりに早くも「ガビリア2世」の呼び声が高いホッジ。このサンフアンで、ガビリアvs「ガビリア2世」の対決が実現するというのも面白い。
もう1つ、注目のニュースがある。
今年の世界選手権ジュニアカテゴリを完全制覇した18歳の(サンフアン開幕直前に19歳になる)レムコ・イヴェネプールである。
U23カテゴリをすっ飛ばしていきなりのクイックステップ入りを果たした彼の、2019年デビューレースがこのサンフアンとなりそうだ、ということである。
上記の記事によれば、来年のイヴェネプールのシーズン前半のスケジュールは、
- 1月:ブエルタ・ア・サンフアン(2.1)
- 2月:ヴォルタ・アン・アルガルヴェ(2.HC)
- 3月:ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ(2.WT)
- 4月:ツアー・オブ・ターキー(2.WT)
を予定しているとのこと。
てっきり、初年度はクラシックを中心に走らせると思っていたが、レース数を絞りつつ、ひたすらステージレースを遍歴させるというチームの方針は、彼を一刻も早くステージレーサーとして大成させようとする意志を感じる。
もちろんサンフアンも含め、比較的小さなレースが中心とはなるようだが、それでも3月のカタルーニャなんかは、バルベルデやキンタナのような世界トップクラスの選手たちが例年出場しているビッグレース。
昨年もベルナルやホッジが頭角を現したレースでもあるが、イヴェネプールがこのレースでどれだけの存在感を示してくれるか。
あまり期待し過ぎるのも時期尚早だとは分かってはいつつも、今年のベルナルのような例もあり、どうしたってそわそわしてしまう。果たしてどんな走りを見せてくれるか。
そしてそんな彼の、2019年デビューレースであるこのサンフアンで、とくに山岳クイーンステージで、どれだけのポテンシャルを見せてくれるか。
期待しないように、でもちょっとは期待しつつ、その走りを見守っていきたい。
カヴェンディッシュ、サガン、ガビリア、イヴェネプール――注目選手たちの出場が次々と発表されていく来年の「ブエルタ・ア・サンフアン」。
まだまだ先のこととはいえ、今年の1月はダウンアンダーやカデルレースだけでなく、この南米の小さな、でも重要なレースにしっかりと注目していこう。
と、言うわけでDAZNさん、なんとか放送してくれませんかねぇ?