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ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ2022 コースプレビュー

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Class:ワールドツアー

Country:スペイン

Region:カタルーニャ州

First edition:1911年

Editions:101回

Date:3/21(月)~3/27(日)

 

欧州北部ベルギーの地にて大柄のクラシックライダーたちがいよいよホーリーウィークを間近に迎える中、欧州南部スペインの地では小柄なクライマーたちが5月以降の祭典に向けた足慣らしを重ねていく。

昨年Jsports初登場したばかりのボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャは、今年もイネオス・グレナディアーズを中心に豪華なメンバーが揃う。

今回は、そんなカタルーニャ1周レースの概要と全7ステージのコースについて詳細にプレビューしていこう。同じレイアウトで行われた過去のレースも振り返りつつ解説しているので、参考になれば幸い。

 

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目次

 

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レースについて

ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ、別名カタルーニャ1周レースは、1911年に初開催の非常に歴史のあるレース(ブエルタ・ア・エスパーニャの初開催は1935年、ジロは1909年、ツールは1903年初開催)。

スペイン北東部、フランスと国境を接するピレネー山脈麓のカタルーニャ州を舞台とするだけあって、山岳ステージの多さが特徴。過去の総合優勝者を見てみても、ピュアクライマーがその名を連ねていることが多い。

 

  • 2013年:ダニエル・マーティン
  • 2014年:ホアキン・ロドリゲス
  • 2015年:リッチー・ポート
  • 2016年:ナイロ・キンタナ
  • 2017年:アレハンドロ・バルベルデ
  • 2018年:アレハンドロ・バルベルデ
  • 2019年:ミゲルアンヘル・ロペス
  • 2020年:新型コロナウィルスの世界的流行により中止
  • 2021年:アダム・イェーツ

 

昨年はリッチー・ポートやゲラント・トーマスと共に最終総合表彰台を独占したイネオス・グレナディアーズ。今年もリチャル・カラパスやリッチー・ポート、カルロス・ロドリゲスなど、強豪選手を揃えてきており、最大の優勝候補チームとなりそうだ。

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今年はどんな熱い山岳バトルが展開されるのか。

続いて以下、全7ステージのコース詳細を解説していこう。

 

 

コースについて

第1ステージ サン・フェリウ・デ・ギホルス~サン・フェリウ・デ・ギホルス 171.2㎞(平坦)f:id:SuzuTamaki:20220320143309j:plain

中根英登も含む多くのロードレース選手が生活の拠点にしているというジローナ県に位置するサン・フェリウ・デ・ギホルスを発着する171.2㎞「平坦」ステージ。

断面図だけ見るとどこが平坦だという感じだが公式サイトでそう書いているので仕方がない。実際、断面図の高さの表現がやや過剰な面はあり、実際には一番高いところでも標高350m超なので確かにそこまでは厳しくはない。

それでも総獲得標高は1,968m。集団スプリントで決まるのか、昨年の第1ステージのように逃げ切りが決まってしまうかは微妙なところだ。

終盤ほぼ同じレイアウトで行われた3年前の第2ステージでも、優勝マイケル・マシューズ、2位アレハンドロ・バルベルデ、3位ダリル・インピー、4位マクシミリアン・シャフマンと、ピュアスプリンターには出番のなさそうなリザルトとなっている。

 

勝敗を分けるポイントになるであろう、フィニッシュ前26㎞地点にある3級山岳アルト・デ・ロマーニャは登坂距離5㎞・平均勾配5.3%。

スプリンターが千切られるほどの厳しい登りではないものの、そういう展開に持ち込みたいチームにとっては十分に努力する価値のある登りでもあり、やはり予想は難しい。

また、終盤にもカテゴリのついていない小さなアップダウンが連続しており、油断はできないレイアウトである。

 

 

第2ステージ ラスカーラ~ペルピニャン 202.4㎞(平坦)

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フランス国境からわずか50㎞という位置にある人口1万人の町ラスカーラから、フランス国内の町ペルピニャンまで。

3つの3級山岳を越えてフランスへと渡るものの、これらも標高300mにも満たない小さな峠ではあるため、この日も一応「平坦」カテゴリ。

 

終盤もゴツゴツしているように見えるが、この辺りも最高標高は40m程度ではあるだろうから、第1ステージよりもスプリンター向けとは言えそうだ。

 

 

第3ステージ ペルピニャン~ラ・モリーナ 161.1㎞(山岳)

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昨年は登場しなかったが、2014年から2019年にかけては毎年登場していたボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャお馴染みの山頂フィニッシュ「ラ・モリーナ」。

2014年はホアキン・ロドリゲス、2015年はティージェイ・ヴァンガーデレン、2016年はダニエル・マーティン、2017年と2018年はアレハンドロ・バルベルデ、2019年はミゲルアンヘル・ロペスが優勝しており、その年の総合優勝者と重なることも多い、重要な登りだ。

プロフィールとしては登坂距離12.2㎞・平均勾配4.5%とそこまで厳しくはない登りではあるが、その前段階にも2つの登りが用意されているため、本格的なステージレーサーとしての力量が試される。

 

2019年の展開を振り返ると、残り8.4㎞でミゲルアンヘル・ロペスがアタック。ここにエガン・ベルナル、アダム・イェーツ、ナイロ・キンタナが食らいつき、残り7.5㎞の段階でこの4名だけが前方に残る形となった。

残り7㎞でそこからさらにロペスが再アタック。そして、今度は誰もついていくことができなかった。最後はベルナルたちに16秒差をつけての独走勝利。

 

今年のキング・オブ・クライマーの座は誰の手に?

 

 

第4ステージ ラ・セウ・ドゥルジェイ~ボイー・タウイ 166.7㎞(山岳)

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ピレネー山麓の人口1万3千人の町ラ・セウ・ドゥルジェイからピレネーのスキーリゾート、ボイー・タウイまで。

ボイー・タウイは2002年以来の実に20年ぶりの登場。その2002年に勝ったのはチーム・コーストのアイトール・ガルメンディア。同年のパリ~ニースでも総合5位、そしてこのカタルーニャでは総合2位となった当時34歳のスペイン人だ。

ボイー・タウイのプロフィールは登坂距離13㎞・平均勾配6%。だがその13㎞よりも長い区間を緩やかではあるが登り基調でこなすため、チーム力の問われる登坂バトルとなりそうだ。

 

 

第5ステージ ラ・ポブラ・デ・セグル~ビラノバ・イ・ラ・ジャルトル 206.3㎞(平坦)

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今大会最長ステージ。海沿いの街ビラノバ・イ・ラ・ジャルトルは6年前の第6ステージでもフィニッシュに使われており、そのときは当時ランプレ・メリダ所属のダヴィデ・チモライが優勝。2位以下もニキアス・アルント、トッシュ・ファンデルサンド、サイモン・ゲランスと連なる、ピュアスプリントステージと呼んでも良いようなリザルトであった。

今回もまた、平穏無事な集団スプリントで終わる可能性が一番高いとは思うが、ここまでの連日のレースで疲弊するプロトンが、序盤の3級山岳で逃げに乗ったメンバーを果たして追い詰め切れるか。

 

 

第6ステージ サロウ~カンブリス 167.6㎞(中級山岳)

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コスタ・ドラダに存在する、ほぼ隣接する2つの町サロウとカンブリスを発着する。海沿いのスタート地点とフィニッシュ地点は海抜0mに近いが、大きく内陸のプラデス山とモンサン山を経由する、総獲得標高3,000mの山岳ステージである。

以前にこのカンブリスにフィニッシュしたのは2006年の第2ステージだが、レイアウトは不明のこの日勝ったのはスプリンターのルイス・ペレス。トル・フースホフトが3位、エロス・カペッキが5位、エリック・ツァベルが6位なので純粋なスプリントステージになったであろうこの日のフィニッシュリザルトはあまり参考にならなさそう。

カタルーニャに出るほどのスプリンターならば生き残ってもおかしくはないが、一番可能性が高そうなのは逃げ切りである。

昨年も初日のアンドレアス・クロンのほか、第5ステージのレナード・ケムナ、第7ステージのトーマス・デヘントなど、結構逃げが決まっているカタルーニャ。とくにデヘントは過去5回の逃げ切りをこのカタルーニャで決めている(しかも直近3大会連続で決めている)ので、今年も期待したいところではある。

 

 

第7ステージ バルセロナ~バルセロナ 138.6㎞(中級山岳)

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カタルーニャ州の州都バルセロナで繰り広げられるボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ最終日恒例の「モンジュイックの丘周回コース」。

登坂距離2.4㎞・平均勾配4.7%の2級山岳モンジュイックの丘はその見た目以上の厳しさを持ち、しかもこれがラスト46㎞から6連続で登場する。このステージの過去の優勝者は以下の通り。

 

2013年:トーマス・デヘント

2014年:リーウ・ウェストラ

2015年:アレハンドロ・バルベルデ

2016年:アレクセイ・ツァテビッチ

2017年:アレハンドロ・バルベルデ

2018年:サイモン・イェーツ

2019年:ダヴィデ・フォルモロ

2021年:トーマス・デヘント

 

昨年はメイン集団がまったくやる気がなく32名もの大規模逃げ集団が形成され、逃げ切りが確定。その中でも残り47.2㎞地点からモンジュイックの丘周回が始まると同時にトーマス・デヘントがアタックして抜け出し、のちに集団からマテイ・モホリッチが追いついてきて、世界一危険なデュオが出来上がった。

(今回のミラノ~サンレモのように)テクニカルな下りでは常にモホリッチが抜け出すものの、一人では逃げ続けたくない彼がデヘントを待ったことで、最終盤までこの先頭2名体制は崩れることなく、追走もこれを捕まえ切れずに終わってしまった。

 

逃げ切るという意味ではモホリッチのこの選択は正しかったかもしれない。

しかし、デヘントを甘く見過ぎていたようだ。

 

残り5㎞。最後のモンジュイックの丘の登りで、クライマーらしい強力な登坂力でモホリッチを突き放したデヘントは、そのまま下りで追い付かれることなく、2年ぶり5度目・3大会連続となるカタルーニャでの逃げ切り勝利を決めた。モンジュイックの丘での勝利という意味では2度目の勝利となった。

 

そしてメイン集団でも、過去このステージを2度(そして大会の総合優勝自体も3度)経験をもつアレハンドロ・バルベルデが、このときイネオスが独占する総合1位~3位に続く4位ということで、反撃に出ざるを得なかった。

しかしチーム総出で加速していったモビスターも、ほとんどの逃げを飲み込んだうえでその集団先頭もバルベルデに獲らせることに成功したものの、イネオスの3名ともすべて集団内に生き残り、表彰台の一角すら奪うことができずに終わった。

 

今年引退を決めているバルベルデが、この相性抜群のレースで有終の美を飾ることはできるか。

 

 

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