今年のツール・ド・フランスの特徴は大きく分けて2つある。1つは、2012年以来となる個人タイムトライアルの(しかも平坦基調の)総距離の長さ。
そしてもう1つが、この第2週に待ち受けている、「超・超・超高標高バトル」の存在である。何しろ、あのガリビエ峠が2日連続で登場。それ以外にも2,000mを超える山々が連続し、TTの距離の長さにもかかわらずとても「クライマー向き」のコースとなっているのだ。
そんな、ある意味で今大会最大の目玉とも言える第2週の全6ステージを詳細に解説していこう。
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目次
- 第10ステージ モルジヌ・レ・ポルト・デュ・ソレイユ~ムジェーヴ 148.1㎞(丘陵)
- 第11ステージ アルベールビル~コル・デュ・グラノン・セッレ・シュヴァリエ 151.7㎞(山岳)
- 第12ステージ ブリアンソン~ラルプ・デュエズ 165.1㎞(山岳)
- 第13ステージ ル・ブール=ドアザン~サンテティエンヌ 192.6㎞(平坦)
- 第14ステージ サンテティエンヌ~マンド 192.5㎞(丘陵)
- 第15ステージ ロデズ~カルカッソンヌ 202.5㎞(平坦)
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第10ステージ モルジヌ・レ・ポルト・デュ・ソレイユ~ムジェーヴ 148.1㎞(丘陵)
Jsports:7/12(火) 20:55~
レマン湖の南、アルプスの麓に位置する町モルジヌから南下してムジェーヴまで。いずれもスキーリゾートとして有名な地である。
丘陵ステージと言いつつ、その実態は山頂フィニッシュと言ってもよさそう。もちろん、勾配としては緩やかな方で、難易度はそこまで高くなく、翌日からの激しい山岳ステージのことを思えば、この日は総合争いに影響は及ばないだろうとは思う。ただ、休息日明けの不安定な体調の中で、ずるずると崩れ落ちる選手がいる可能性は、無きにしも非ず。油断はできない。
第11ステージ アルベールビル~コル・デュ・グラノン・セッレ・シュヴァリエ 151.7㎞(山岳)
Jsports:7/13(水) 18:50~
今大会最大の目玉とも言える、2週目からの「ガリビエ2日間」の1日目は、ツール・ド・フランスお馴染みの街アルベールビルから出発する。
その最初の山は50㎞地点に用意された2級ラセ・ド・モンヴェルニエ(モンヴェルニエの九十九折)。登坂距離3.4㎞・平均勾配8.2%というプロフィールは、このあとに来る巨人のことを思えば、まるで小さな丘のようなものである。ここは実際、その厳しさよりもむしろ、何ものにも代えがたい美しき空撮をこそ楽しむセクションである。
「観光」が終わると次に来るのは1級テレグラフ峠(登坂距離11.9㎞、平均勾配7.1%)。通常のステージならこれだけでも十分に「ラスボス」になりそうな山も、たいていの場合で「巨人」の前座として扱われることになる。
そう、その巨人、超級ガリビエ峠(登坂距離17.7㎞、平均勾配6.9%)の前では、あらゆる山は子供のようなものである。標高2,642m。比肩するもののいない、天空の道である。
そして、最後は超級コル・デュ・グラノン(登坂距離11.3㎞、平均勾配9.2%)へ。
標高2,413m。ガリビエがあまりにも規格外すぎるだけで、この標高でも十分に恐ろしすぎる数字である。しかも、11㎞という長さで平均勾配はまさかの9%超え。ラスト6㎞から3㎞にかけては常に10%を超えるような急勾配が連続して続く、超・超・超高難易度峠である。
そして、この峠は過去に1度だけツール・ド・フランスのフィニッシュで使われており、その年はあのグレッグ・レモンが初めてマイヨ・ジョーヌに袖を通すこととなった年であり、彼はまさにこの峠でその栄光のジャージを手に入れたのだとか?
いずれにせよ、凶悪なるガリビエを越え疲弊した総合勢に待ち受けるこの最終関門は、今大会最も総合争いに影響を及ぼしうる一日となるかもしれない。2週目の序盤でこの試練が訪れるあたりが、今年のレイアウトの恐ろしさを物語っている。
元々、超標高バトルということでエガン・ベルナルの活躍に期待していたが、それが叶わなくなった今・・・その思いを受け継ぐ男として、個人的にはダニエル・マルティネスに期待したいところだ。
第12ステージ ブリアンソン~ラルプ・デュエズ 165.1㎞(山岳)
Jsports:7/14(木) 19:40~
233年前のこの日、バスティーユ監獄襲撃事件が起こり、歴史を変えたフランス革命が始まりを告げた。フランス革命記念日、フランス語ではFête nationale française(フランス国民祭)と呼ばれるこの日は、例年ツール・ド・フランスのモニュメンタルなコースが用意されるが、今年について言えばそれは1986年のあの「ベルナール・イノーとグレッグ・レモンが肩を組んでフィニッシュし、一つの時代の終わりと新たな時代の始まりを告げた」あのステージを踏襲するステージが用意されたという。
そしてそれは、36年の歳月を経てもなお、新たなドラマを生み出しそうなほど厳しいステージである。そのプロフィールのほぼすべてが、今年のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネの第7ステージで「予習」された。
2日続けての登場となる超級ガリビエ峠(但し前日とは違う登りで、より難易度は低い)と、「鉄の十字架」のオブジェが飾られている超級クロワ・ド・フェール峠を攻略。
登坂距離29㎞・平均勾配5.2%というこの長くて厳しい2,000m級登坂において、ドーフィネではエンリク・マスがまさかの脱落。ツール本番では、調子を取り戻すことができているだろうか。
そしてドーフィネの時と違うのは、ラストである。これだけの厳しい山々を経たうえで、ツール・ド・フランス本戦ではラストにさらにもう一つのメインディッシュである伝説の山ラルプ・デュエズを用意した。
登坂距離13.8㎞・平均勾配8.1%。全部で21用意されたヘアピンカーブには歴代のステージ優勝者の名が刻まれており、実際にそこにはファウスト・コッピ、ベルナール・イノー、マルコ・パンターニといった錚々たる顔ぶれが並んでいる。
そして、2010年代においてこのラルプ・デュエズは「フランス人たちの栄光の舞台」であった。2011年にはピエール・ロラン、2013年にはクリストフ・リブロン、2015年にはティボー・ピノ・・・但し、2018年には、ゲラント・トーマスがそのジンクスを打ち破り、ついでに彼は、「ラルプ・デュエズを制するものはその年のツールは勝てない」というジンクスも見事打ち破ってみせた。
今年はフランス革命記念日に訪れたこのラルプ・デュエズフィニッシュ。となれば、やはりここは、再びフランス人が天下を獲ってもらいたい。ジュリアン・アラフィリップか、ダヴィド・ゴデュか、はたまたギヨーム・マルタンか・・・いや、やはりここは、ツール・ド・スイスでも見事な復活勝利を見せてくれたティボー・ピノに、再び感動のフィニッシュを演じさせてくれるのも、楽しみにしたいところである。
第13ステージ ル・ブール=ドアザン~サンテティエンヌ 192.6㎞(平坦)
Jsports:7/15(金) 20:55~
ラルプ・デュエズの麓、イゼール県のル・ブール=ドアザンから西に進路を取り、中央山塊へと向かう。最後はロワール県の県庁所在地サンテティエンヌへ。
コースのカテゴリは平坦。とはいえ、本当に集団スプリントが約束されているのか? 比較的凹凸ははっきりとしており、そして3年前、同じサンテティエンヌにフィニッシュするステージでは、ティボー・ピノとジュリアン・アラフィリップの猛追を振り切って逃げ王トーマス・デヘントが逃げ切りを決めていた。
もちろん、そのときの総獲得標高3,500m超と比べればずっとイージーではある。そして、今大会最大のマイヨ・ヴェール候補であるワウト・ファンアールトにとっては、むしろ最も得意とするタイプのステージと言えるだろう。
第14ステージ サンテティエンヌ~マンド 192.5㎞(丘陵)
Jsports:7/16(土) 20:55~
アルプスからピレネーへ。その途上に位置する中央山塊の中を突き進むこのステージは、しかし単なる移動ステージではない。
そのフィニッシュに位置する「マンド」は、2015年に「ピノとバルデが牽制している隙を突いて後方から突如として姿を現してそのまま逃げ切ったスティーブン・カミングス」や、2018年の「ジュリアン・アラフィリップを突き放して逃げ切ったオマール・フライレ」など、数々のドラマを生み出してきた。
その鍵となるのが、ラスト1.5㎞地点で頂上を迎える2級山岳コート・ド・ラ・クロワ・ヌーブ(登坂距離3㎞、平均勾配10.2%、別名「ジャラベール山」)。鋭い登りと、そのあとの1㎞の下りを経て、飛行場の中での独特な風景のフィニッシュへとつながる。
今回もきっと、逃げ切りで決まることだろう。
果たしてどんな劇的な勝利が待ち受けるのか、実に楽しみだ。
第15ステージ ロデズ~カルカッソンヌ 202.5㎞(平坦)
Jsports:7/17(日) 20:55~
劇的な超標高バトルの繰り広げられた第2週の最終幕は、平穏な集団スプリントステージ。中央山塊のアップダウンを越えて、最後はピレネーの麓、歴史的城塞都市カルカソンヌへ。
この街は当然、覚えている人も多いだろう、昨年のツール・ド・フランスでマーク・カヴェンディッシュが歴史的な——エディ・メルクスと並ぶ―—ツール34勝目を記録した街でもある。今年、彼は出場しないが、チームにとっての新たなエースたるファビオ・ヤコブセンがしっかりと勝利を重ねていけるか。当然、カヴェンディッシュを「おしのけて」出場するからには、この日4勝目を飾るだけの強さが期待されるところだ。
劇的な第2週もこれで終わり。
そして3週目は、2週目ほど派手ではないが——しかし、とてもオーソドックスで美しく厳しいピレネーの山岳ステージが待ち構えている。
まだまだ、総合争いの行方はわからない。
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