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ツール・ド・フランス2022 コースプレビュー 第1週

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初日の個人TTは、「北欧のパリ」と称される、北欧風の色とりどりの美しい家々の間を駆け巡ることになるだろう。写真は2011年の世界選手権より。

 

いよいよ開幕が目前に迫った今年のツール・ド・フランス。元々2021年に予定されていたが延期されたデンマーク開幕がついに実現。昨年総合2位のヨナス・ヴィンゲゴーやヤコブ・フルサンを始め、新旧ともに多くの有力選手を輩出している北の国での、初めてのグランデパールが実現した。

2週目から標高2,000m超えの山々が連続して登場する山岳の厳しさと、昨年に匹敵する総距離の平坦個人タイムトライアルという、2つの相反する特徴を併せ持った非常に魅力的な今大会のコースレイアウト。

その総合優勝候補筆頭となるであろうプリモシュ・ログリッチとタデイ・ポガチャルの激突が今から楽しみな3週間である。

 

今回はその第1週。第1週から石畳あり、「キングメーカーの山」ラ・プランシュ・デ・ベルフィーユ有りと盛沢山かつ厳しい9日間が用意されており、ここで想像を超える展開が巻き起こる可能性も十分にありうる。

ドラマの舞台となる最初の1週間のコースを、徹底的に予習していこう。

 

目次

 

半年前に書いた注目コースプレビューも参考にどうぞ

www.ringsride.work

 

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第1ステージ コペンハーゲン~コペンハーゲン 13.2㎞(個人TT)

Jsports:7/1(金) 22:35~

ツール・ド・フランスとしては初めてとなるデンマークでのグランデパールは、その首都コペンハーゲンにて行われる。

大陸部分ではなく、バルト海に浮かぶシェラン島に築かれた首都にして最大の都市コペンハーゲンは、「北欧のパリ」とも呼ばれる美しい街であり、市中にあるローゼンボー城、コペンハーゲン国立美術館、カステレット要塞、そして国を代表する作家ハンス・クリスチャン・アンデルセンによって書かれた有名な「人魚姫」のブロンズ像などがちりばめられ、今回のコースもそういった観光名所の脇を次々と通り抜けていく。

 

市街地を巡るということでレイアウトはオールフラット。直角カーブは合計4つ、さらに鋭角なカーブも2つ用意されているが全体的な難易度は決して高くなく、純粋にTT能力の高い重量級の選手たちが活躍することになるだろう。

前哨戦クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでも勝利しているフィリッポ・ガンナや、彼に2秒差で追いすがったワウト・ファンアールト、そしてシュテファン・クンなどが優勝候補として名が挙がるだろうが、やはり地元の意地を見せたいカスパー・アスグリーンがキャリア初のマイヨ・ジョーヌを身に纏うことはできるか。

総合優勝争いも初日から勃発。下手すると1分以上のタイム差がついてしまいかねないこの日、TTが決して得意ではないクライマーたちはプリモシュ・ログリッチやタデイ・ポガチャルたちからどれだけタイムを失わずに済むかが重要である。

 

 

第2ステージ ロスキレ~ニュボー 202.5㎞(平坦)

Jsports:7/2(土) 20:00~

グランデパールの地コペンハーゲンから西へ約30㎞。世界遺産のロスキレ大聖堂(1170年建立)で有名なロスキレの地から、いよいよ今年最初のラインレースが開幕する。

コペンハーゲンのある島、シェラン島をひたすら西に進み、最後は全長18㎞にも及ぶ巨大な「ストアベルツファビドゥスン(Storebæltsforbindelsen)」英語名「グレート・ベルト・リンク」(あるいはフランス語でポン・デュ・グランベルト)と呼ばれる、大ベルト(ストレ)海峡を渡る橋を乗り越えていくこととなる。

 

すなわち、2015年ツール第2ステージのときに見たような、「海の上を渡るフィニッシュ」が展開される。もちろん当時のように橋の上にフィニッシュがあるわけではないが、この終盤の「超横風区間」は、この最初のラインレースを単純な大集団スプリントで終わらせない可能性も十分にある。

ただ、あのときのような大悪天候はできれば避けてもらいたい。せっかくのこの圧巻の大橋の威容を、晴れ渡る空の下で見たいものである。

 

 

第3ステージ バイレ~セナボー 182㎞(平坦)

Jsports:7/3(日) 20:55~

デンマークの3日間の最終日は、いよいよユーラシア大陸に足を踏み入れることになる。ユトランド半島の東海岸をまっすぐ南下し、ドイツとの国境沿いに位置し、19世紀から20世紀にかけてその国籍が繰り返し変更され続けてきた歴史的な町セナボーへと至る。

第2ステージに続き、ほぼオールフラットと言ってよいレイアウト。そもそも、デンマークというのは最も標高の高い山がわずか171mという、真に真っ平らな国である。第2ステージがもしかしたら波乱の展開になる可能性はあり、そうなった場合にはこの日が最初の本格的な大集団スプリントの舞台となるか。デンマーク出身の元世界王者であり、パリ・シャンゼリゼで2位の経験があるマッス・ピーダスンの、ツール・ド・フランス初勝利の舞台としては実に理想的である。あるいは、デンマーク、いや世界最強のリードアウターであるミケル・モルコフが、世界最強スプリンター候補であるファビオ・ヤコブセンに勝利をもたらすか。

 

 

第4ステージ ダンケルク~カレー 171.5㎞(丘陵)

Jsports:7/5(火) 20:55~

デンマーク連戦を終え、1日の移動日を挟んだうえで、火曜日からはフランス本土に上陸。その最初の戦いの舞台は、フランス最北東部に位置する2つの歴史的な都市ダンケルクとカレーの間で繰り広げられる。

ダンケルクは2007年以来のスタート地点となるが、過去には何度もそれに選ばれてきた。一方でカレーがツール・ド・フランスに登場する回数は少ないらしく、過去に1994年と2001年の2回だけ。しかもどちらもスタート地点としてであり、フィニッシュとしては今回が初なのだという。

その最初のフィニッシュは集団スプリントで決まるか否か? 障害は2つある。1つは小刻みなアップダウンの連続。序盤の山岳賞ポイントを稼ぎたいアタッカーたちも数多く含まれそうで、パンチャーや登れるスプリンターでないと最後まで足を残しておくのは難しいかもしれない。

もう1つは横風。北のクラシックの舞台にもほど近いこの場所は、当然激しい海風の影響が予想される。

真に気を付けるべきは総合勢たちである。こんなところで無駄にタイムを失うわけにはいかない。何しろ翌日はさらに恐ろしい、「パリ~ルーベ」ステージなのだから・・・。

 

 

第5ステージ リール・メトロポール~アーレンベルグ・ポート・ドゥ・エノー 153.7㎞(丘陵)

Jsports:7/6(水) 20:05~

今大会の目玉ステージの1つ。2018年以来の、「パリ~ルーベ」ステージだ。

もちろん、2018年のように結構忠実なルーベのコースのトレース、というわけではない。本来のパリ~ルーベでは「地獄の入り口」となるアーレンベルグをフィニッシュ地点とする(但し森の中の石畳は使用しない)、2010年や2014年のツールでも使われたようなパターンである。

ただしそれらのときの石畳パヴェの数は7つ。対して今回は11個。1.3㎞から2.8㎞の長さの石畳が続き、全長は19.4㎞。よりハードになったとは言えるかもしれない。

2014年には大雨の中のドロドロのパヴェステージとなり、ラース・ボームが歓喜の勝利。そしてクリス・フルームが(石畳区間を前にして)落車リタイアした日であった。

今回の天候は。そしてどんなドラマが描かれるか。

注目は総合系がここでどれだけタイムを失いうるかということだが、最大の総合優勝候補であるタデイ・ポガチャルは今年のロンド・ファン・フラーンデレンである意味最強の走りを見せていただけに、ライバルたちにとってはこの点でも頭の痛い1日となりそうだ。

 

 

第6ステージ バンシュ~ロンウィー 219.9㎞(丘陵)

Jsports:7/7(木) 20:55~

ツール・ド・フランスでは2019年に1回だけ登場したワロン地方の街バンシュから、ベルギー・フランス国境地帯を舐めるようにして突き進む今大会最長距離を誇る移動ステージ。

ただ、ただの移動ステージではない。ワロン地方らしい小刻みなアップダウンが続き、そして終盤は4級・3級山岳を含んだ、スプリンターお断りの厳しい丘陵地帯。

最後は登坂距離800m・平均勾配12%という凶悪な激坂コート・ド・プルヴェントゥー(公式サイトではプルヴェントゥーの壁という表現もあり)を残り5㎞地点で通過し、そこから180度カーブ×2+90度カーブのテクニカルな下りを経て、残り2㎞からも最大勾配11%の登りフィニッシュとなる。

 

このフィニッシュは2017年ツール・ド・フランスの第3ステージでも使われ、そこではペテル・サガンがマイケル・マシューズを下して8度目のツールステージ勝利を記録している。しかも、ビンディングが外れた状態で!

今回もパンチャータイプの選手たちが生き残って優勝争いを繰り広げるか、それともアタッカーやクライマータイプの選手たちが覇を競い合うか。

 

 

第7ステージ トンブレンヌ~ラ・スーパー・プランシュ・デ・ベル・フィーユ 176.3㎞(山岳)

Jsports:7/8(金) 20:55~

今やすっかりとお馴染みとなったラ・プランシュ・デ・ベルフィーユは、10年前のツール・ド・フランスで初登場となった。

まだブラッドリー・ウィギンスの「アシスト」であったときのクリス・フルームが、初めてツール・ド・フランスで勝利したときの登りであり、その意味で登場から常にこの山は重要な主役であり続けた。

前回の登場は2020年。「あの」忘れられない世紀の逆転劇が繰り広げられた山岳TTの舞台であった。

www.ringsride.work

 

ラインレースとしての登場は2019年に遡る。このときはディラン・トゥーンスが勝利し、ジュリオ・チッコーネがマイヨ・ジョーヌを手に入れた。その前は2017年で、ファビオ・アルが勝利し、2014年にはヴィンツェンツォ・ニバリが勝利した。そして2012年はクリス・フルーム。まさに、「キングメーカーの山」である。

なお、2019年はそれまでと違い、頂上の先にある「未舗装路の超激坂」を使用したが、今回もどうやらそこを同じように使用する様子。登坂距離7㎞・平均勾配8.7%・最大勾配24%

 

最初の試練が、プロトンを襲う。今年もまた、この山は王を生み出すのか。

 

 

第8ステージ ドル~ローザンヌ 186.3㎞(丘陵)

Jsports:7/9(土) 20:55~

長い1週目もいよいよ終盤戦。フランス東部、ブルゴーニュ=フランシュ=コンテ地域圏のドルを出発し、ジュラ山脈を越えてスイス西部、レマン湖の北のほとりのローザンヌへ。山岳ステージに挟まれたこの日は、スプリンターチームにとっても総合系チームにとっても休息日の意味合いが強い、逃げ切り向けのステージとなるだろう。

そんな中、動きに期待したいのが、今年のジロ・デ・イタリアでも徹底的にアグレッシブな走りを見せてスターとなった(そしてあやうくジロのスタッフにパイナップルピザを食べさせることになりそうだった)マチュー・ファンデルプール。昨年もこの第1週終盤でマイヨ・ジョーヌを着ながらワウト・ファンアールトと共に逃げに乗るという前代未聞の走りを見せた彼が、今年も魅せてくれるような気がする。

ラストも彼向きのパンチャーフィニッシュ。

ラスト2㎞から1㎞にかけて、平均勾配9.5%・最大勾配12%の激坂が待ち構える。

 

ローザンヌでの直近2回の優勝者はヘリー・クネットマン(1978年)、エリック・デッケル(2000年)と、オランダ人による勝利が続いている。ファンデルプールはオランダ人による3連勝を成し遂げることができるか?

 

 

第9ステージ エーグル~シャテル 192.9㎞(山岳)

Jsports:7/10(日) 20:55~

「第1週目の最終日」はこれまでも数多くのドラマを巻き起こしてきたグランツールにおける重要なステージ。しかし(このあとに来る過酷なコースのことを考えると)今回の「第9ステージ」は比較的平穏なようにも思える。

スタート地点のエーグルはUCIの本拠地が置かれた町。本来であれば2020年の「幻の」世界選手権の舞台となったはずの町だ。

フィニッシュはわずかにフランスの地に。「太陽の門」という名のスキーリゾートにフィニッシュするが、そこまで難易度は高くなさそうで、逃げ切りによる勝利が決まるかもしれない。

 

ツール・ド・フランス2022における総合争いはまだ本格的な始まりを迎えることはない。但し、それは第2週が始まってすぐに訪れる。

 

 

第2週のコースプレビューはこちらから

www.ringsride.work

 

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