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ブエルタ・ア・エスパーニャ2021 全チームスタートリスト&プレビュー

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シーズン最後のグランツール、ブエルタ・ア・エスパーニャ。

ポガチャルは残念ながら出場しないことになったものの、昨年・一昨年の覇者プリモシュ・ログリッチに、イネオスからはベルナル、カラパス、アダム・イェーツのトリプルエースが揃って出場。

スプリンターもブエルタ初出場のアルノー・デマールにジャスパー・フィリプセン、マイケル・マシューズなど、注目選手が多数出場。

 

今回も全23チーム計184名の脚質付きスタートリストと簡単なプレビューを掲載していく。

 

※年齢はすべて2020/12/31時点のものとなります。

※各国ロードチャンピオンについては表中の国名を太字にしております。

 

目次

   

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1~.ユンボ・ヴィスマ(TJV)

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昨年・一昨年の覇者プリモシュ・ログリッチが3連覇を狙う。達成されれば、2015年のロベルト・エラス以来、史上3人目の快挙となる。3勝以上することも、トニー・ロミンゲル、エラス、アルベルト・コンタドール以来に続く史上4人目の快挙だ。

今年のツール・ド・フランスでは第3ステージで落車し、その影響で1週目のうちにリタイアするなど、散々な結果であった。しかし、その直後の東京オリンピック個人タイムトライアルで、見事な金メダル獲得。昨年もツールでの惜敗から直後のリエージュ〜バストーニュ〜リエージュ優勝、およびブエルタ・ア・エスパーニャでの2連覇目を果たすなど、挫折からの復活の早さが半端ない。

今年も同様の道を辿っているという意味でも、今大会の最有力総合優勝候補である。

チームメートはツール・ド・フランスのような一軍とはさすがにいかないものの、チーム内での最強アシスト筆頭の1人で今年のツールでもステージ優勝しているセップ・クス、2年前のツール総合3位のステフェン・クライスヴァイク、さらに今年から新加入でパリ〜ニース、イツリア・バスクカントリーではしっかりと活躍してくれていたサム・オーメンなど、層の厚さを感じさせる。もちろん、昨年の第17ステージで、最大の危機に陥ったログリッチを完璧なタイミングで「前待ち」アシストし、その総合優勝を守り切った立役者レナード・ホフステッドの姿も。

平坦アシストもトニー・マルティンこそいないものの、今年のヘント〜ウェヴェルヘムでワウト・ファンアールトの優勝を支える神がかった走りをしてみせたネイサン・ファンフーイドンク、そしてグランツール出場20回目となる大ベテラン、ロベルト・ヘーシンクなどがしっかりとアシストする。

磐石の構えで、ブエルタ3連覇を果たせるか。

 

 

11〜.AG2Rシトロエン・チーム(ACT)

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2年前のブエルタで、27歳のアマチュア上がり1年目という特異なプロフィールながら見事山岳賞を掴み取ったブシャール。正直、その「一発屋」で終わるかもと思っていたが、実力は本物だった。今年のジロ・デ・イタリアでも大活躍し、こちらでも山岳賞を獲得。グランツールで山岳賞を2回も取れればそれはもう間違いなく実力者。最近でいえばラファウ・マイカやオマール・フライレなど。今大会はエースナンバーを背負い、チームの顔として活躍を期待されている。

本来であれば、その期待を一身に背負いうるのは、今年からこのチームに合流したカルメジャーヌ。元トタル・ディレクトエネルジーで、2016年と2017年にブエルタ、ツールと連続でステージ優勝。トマ・ヴォクレールの後継者と期待されていた。

その後、奮わない結果が続き、今期もここまでほぼシングルリザルトのない状態が続くカルメジャーヌ。「復活」はありうるか?

期待度でいえば2019年ツール・ド・ラヴニール総合4位、ネオプロ2年目のシャンプッサンにも注目。昨年のブエルタはそこまででもないが、今年はここまでフォーン・アルデシュ・クラシック2位、トロフェオ・ライグエーリア4位、ツール・ド・ラン総合6位と悪くない。今大会、総合20位以内、あるいはステージ優勝を狙っていきたい。

デウルフも先日のツール・ド・ワロニーで総合優勝者クイン・シモンズに食らいつき総合でも2位。今大会では平坦よりの逃げ向きステージでチャンスを狙いたい。

ヴァントゥリーニもドーフィネで区間3位や6位などを取っているので今大会スプリント上位入賞に期待だが、勝利は少し難しいか。

 

 

21〜.アルペシン・フェニックス(AFC)

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今年のジロ、ツールで共に「グランツールの初日スプリントステージ」で勝利しているアルペシン・フェニックス。このブエルタでも同様の成績をフィリプセンは成し遂げられるか。

チームメートとしては、ジロでメルリールを支えたクリーガー、そして元ランプレやEFで走っていたベテランスプリンター、モドロがいる。モドロはブエルタ・ア・ブルゴスでも区間7位と頑張っていたので、ツールのようにメルリールやファンデルプールがリードアウトしてくれる最強トレインはないものの、十分に戦える戦力はあるだろう。

ツールでは2位が3回、3位も3回と、とにかく勝ちきれなかったフィリプセン。リベンジ、なるか?

 

そして注目したいのが今年がプロ1年目のヴァイン。なんと、ズイフトアカデミー出身で、その優勝特典としてアルペシンと契約した選手。それでいて、今年はツアー・オブ・ターキーのクイーンステージで区間2位に入り、そのまま最終総合成績でも総合2位。先日のブエルタ・ア・ブルゴスでも、最終日山頂フィニッシュで区間5位に入る、本物の登坂力を見せつけていた。

もう1人、今年22歳の若手バイヤーも同じくブルゴスの、もう1つの山岳ステージの方で区間5位・・・こちらは今回のブエルタでも第3ステージで登場するピコン・ブランコを使ったステージで、ミケル・ランダたちと同じ集団で登りつつ、コースアウトでそこから遅れただけなのでその実力は本物だ。

バイヤーは元々スプリンター的な脚質もあった気がする若手特有の謎脚質感があるため、今大会でどんな覚醒をしてくれるのか、楽しみだ。

 

 

31~.アスタナ・プレミアテック(APT)

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昨年はジロ2日目のリタイアやその後ブエルタでも序盤で大きくタイムを落としたものの、最終的にはプリモシュ・ログリッチやリチャル・カラパスなど上位勢と互角に渡り合っていたウラソフ。今年のジロも総合6位と調子がよく、今回のブエルタで目指すは総合表彰台だ。

メンバーも非常に豪華。そろそろグランツールでの勝利も可能性がありそうなアランブルに、これと名コンビを演じて見せたスペイン王者フライレ、そして昨年もブエルタで1勝しているヨンとゴルカのイサギレ兄弟。さらにロドリゲスも3年前のブエルタで激坂フィニッシュ勝利している。

もちろん、相変わらずのこの登坂系重視のロースターの中で、ほぼ唯一の平坦アシスト要員としてナタロフは酷使されることがほぼ決まったようなものだろう。頑張ってほしい。

 

 

41~.バーレーン・ヴィクトリアス(TBV)

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昨年ツール総合4位、今年のジロも総合優勝候補の1人に数えられていたランダだが・・・序盤で落車リタイア。そこからの復活を遂げた先日のクラシカ・サンセバスティアンでは勝負所で果敢な攻撃を繰り出し、さらに前哨戦ブエルタ・ア・ブルゴスでは見事総合優勝。しっかりと調子を上げてきており、今大会も期待十分だ。

そして、ランダ以外のメンバーもすごい。昨年ツール総合10位、今年のジロ総合2位と単純なアシスト以上のリザルトを残し続けているカルーゾ、本来はツールのエース予定だったがこちらもランダ同様序盤の落車リタイアを喫したヘイグ、先日のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネで区間2勝を成し遂げ衝撃を与えたパデュン、そしてジロ・デ・イタリアとツール・ド・スイスとで山岳ステージ勝利を成し遂げているマーダーに、ツール・ド・フランスで山岳賞2位のプールス。いずれもランダが不調でエースをスイッチしたとしても十分に成績を出せそうな面子である。

平坦アシストも東京オリンピックでグレッグ・ファンアーヴェルマートと共に献身的に集団を牽き続け、20分あった逃げとのタイム差を勝負所までに完全に0にする働きをしたトラトニク。

そんな超がつくほど豪華なメンバーの中に新城の名前が入っていることが非常に嬉しい。一軍といってもいいメンバーの中の、数少ない平坦~山岳序盤系アシストの位置に新城を選んでくれたというわけだ。まあ実際、これまで14回のグランツールに出場し、そのすべてで完走しているその安定性は、なかなかほかにない実績であることは間違いない。そしてジロ・デ・イタリアでも目覚ましい活躍をしていたわけで、それが認められた形だろう。

結果としてトラトニクと共に酷使されるだろうから、逃げはもちろんカメラに映る頻度もほぼないかもしれない。

逆にそうであればこそ、彼はチームに貢献をしているという証。もしこれでランダなどが総合上位に入り込んだとすれば、それは間違いなく新城の活躍の結果でもあるということ。

そのあたりを理解して応援していこう。

 



51~.ボーラ・ハンスグローエ(BOH)

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エースナンバーは昨年総合9位のグロスシャートナーが着用。もちろん、彼にも期待したいが、個人的により注目したいのは昨年からパリ~ニース連覇中のシャフマン。彼が本当にオールラウンダーとしての可能性を持っているかどうかの重要な正銘の瞬間。より総合エースを増やしつつあるボーラの中での立ち位置確保のためにも重要な一戦だ。今年のブエルタは比較的個人TTも長めなので、その意味でもチャンスである。

また、スプリンター側で注目はメーウス。元「最強格育成チーム」SEGレーシングアカデミー出身で今年プロ1年目。それでいてノケレ・コールス4位、ツール・ド・ハンガリー1勝、ブエルタ・ア・ブルゴスでも区間4位と5位と、好調。

そこにアークティックレース・オブ・ノルウェーで1勝している(ツアー・オブ・ジャパン東京ステージでも優勝したことのある)ラースが加わり、どっちがエースになるかは微妙なところだが、期待したい2人組だ。

サガンもアッカーマンもいなくなるこのチームにとって、次の時代を考える試金石となりうる3週間だ。 

 

 

61~.ブルゴスBH(BBH)

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その名の通り、今大会グランドスタート地ブルゴスを拠点とする地元チーム。元コフィディスやカチューシャ、イスラエル・スタートアップネーションなどで走っていてブエルタ優勝経験もあるナバーロに、2年前ブエルタで勝利しているマドラソなど、それなりの実力者たちを揃えてきている。

もちろん、勝つとすれば逃げで狙うしかない。積極的な連日の逃げを期待したい。なお、ルビオは今年のブークル・ドゥ・ラ・マイエンヌで逃げて最後はフィリップ・ワルスレーベンに敗れるものの2位。今大会の逃げ優勝候補の1人だ。

 

 

71~.カハルラル・セグロスRGA(CJR)

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元チームUKYOで日本でもお馴染みのアベラストゥリ。ヨーロッパ復帰後も年々実績を重ねてきており、今年はツアー・オブ・スロベニア区間1勝のほかブエルタ・ア・ブルゴスでも区間2位などかなりの実績を叩き出している。さすがに今回のブエルタで勝利というのは、逃げて小集団の中でとかでない限り難しいかもしれないが、登りスプリントなどで、もしかしたら・・・そんな期待もしたくなる。

あとは逃げ。ラストラは2年前ブエルタで区間2位。今年もヴォルタ・アン・アルガルヴェ総合4位、ブエルタ・ア・アンダルシア総合6位などかなり調子がいい。今度こそステージ優勝いけるか。

 

 

81~.コフィディス・ソルシオンクレディ(COF)

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昨年は見事山岳賞を獲得したマルタン。ただし今年はそのとき彼を支えくれた右腕たるペリションは不在。エラダ兄弟がどれだけ頑張ってくれるか。

2年前のツール・ド・ユーロメトロポールで涙のプロ初勝利を遂げ、その勢いでワールドツアー昇格を掴み取ったアレハールトは今年もツール・ド・ワロニー区間4位などそこそこの成績を出している。とはいえ、勝つまでは厳しいか・・。

若手で注目すべきはロシャス。今年もバレンシア1周で総合8位、ツール・ド・ラン総合8位などそこそこの結果を出している。

ジロ・デ・イタリアでも驚きのヴィクトル・ラフェによる勝利のあったコフィディス。今回のブエルタでも金星を出せるか。

 

 

91~.ドゥクーニンク・クイックステップ(DQT)

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昨年のツール・ド・ポローニュで命の危機までありえる大怪我を負いつつも今年の春に復帰し、ツール・ド・ワロニーではついに2勝するというヤコブセン。思えば彼がチーム内ライバルのホッジと差を付け始め、その存在感を示していくことになるきっかけは2年前のこのブエルタだった(最終日マドリードを含む2勝)。

今回のメンバーはワロニーのときとほぼ同じ顔触れ。ランパールトはいないがチェルニーが牽きセネシャルとファンレルベルフが発射する体制。再びチームの力を借りて、さらなる復活劇を見せられるか。

総合では2年前のブエルタで総合11位、昨年のジロで総合14位を獲っているノックスがどこまで成績を伸ばせるかということ。そして今年ツール・ド・ラ・プロヴァンスでジュリアン・アラフィリップを最終局面までアシストし、トロフェオ・ライグエーリア3位、GPインダストリア&アルティジアナート優勝など躍進しているネオプロ1.5年目のファンセヴェナントにも注目。

そして個人的にはアルメイダと並びエヴェネプールの右腕になると期待していたアンドレア・バジョーリ――2年前のU23版イル・ロンバルディア覇者であり、昨年のツール・ド・ランでログリッチをスプリントで破り区間勝利、今年もドローメ・クラシック優勝している男――が総合においてそろそろ覚醒する姿も見てみたい。

もちろんこのあたりは(とくにファンセヴェナントとバジョーリは)総合よりもワンデー向きの可能性もあるため、ステージ優勝含め期待だ。

 

 

101~.EFエデュケーション・NIPPO(EFN)

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昨年驚きの走りを見せて総合3位となったヒュー・カーシー。しかし、まだまだその実力が真正なものであると判断するには材料が足りない。今年はジロ・デ・イタリアで総合8位。だがその他のレースの結果も見てみると、まだまだ安定した実力があるとは言い難い。

その意味で今回は重要だ。彼が突如強さを見せただけの男で終わってしまうのか、今後も継続してグランツール総合上位を狙い続けられる男であるのかの判断材料となるだろう。

そのカーシーを支える最も重要な存在が元NIPPO・デルコワンプロヴァンスのカー。シーズン冒頭はストラーデビアンケで11位などパンチャー的な素質を見出していたが、その後ジロ・デ・イタリアでは最も最終盤まで残る山岳アシストとして活躍。ツール・ドクシタニーでは山頂フィニッシュで区間5位、最終総合成績でも総合9位と、自らエースとして活躍する実績も残している。

同じイギリス人としてカーシーとのコンビネーションも期待できそうで、このペアが今大会どこまで躍進できるかが楽しみだ。

あとは過去このブエルタの集団スプリントで2勝しながら最近は平気で山を登ったりとにかく積極的に逃げて逃げ切ったりといろんな活躍の仕方を見せるコルトニールセン。サンタクロースのような髭が特徴的で見つけやすいので、今回も注目しておこう。

 

 

111~.エウスカルテル・エウスカディ(EUS)

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2013年に消滅した元ワールドツアーの「バスクチーム」が、ミケル・ランダの後援もあって2018年にコンチネンタルチームとして復活。そこから、同じバスクの名を冠するエウスカディ・バスクカントリー・ムリアスが財政難を理由に2019年に消滅したのと入れ替わるようにして、(ついでにメンバーも多くがこちらに流れてきて)UCIプロチームとしてついにブエルタに出場できるようになった。

元ムリアスのビスカラは2018年にブエルタ総合17位、イツリアも同じくムリアス時代の2019年にステージ優勝、ロバトは元々モビスターやロットNLユンボに所属していたパンチャーで、2017年にはブエルタで区間2位にまで入り込んでいる。コフィディスで長く走っていたマテ(マテ・マルドネス)はその名を何度も耳にすることになる逃げスペシャリストであった。

今年の実績も今名前を挙げた選手たちが中心に出しているが、その中でもこのチーム生え抜きのソトは、先日のアークティックレース・オブ・ノルウェーでも登りスプリントの初日に4位、それなりに長い登りとなった第3ステージに8位など、存在感を出している。さらにいえば5月のブエルタ・ア・ムルシアでは優勝までしている。そのときは逃げ切り。今回のブエルタも、わずかなチャンスをつかんで大金星を挙げられるか。

 


121~.グルパマFDJ(GFC)

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ツール・ド・フランスでは落車の影響や早々に重要なチームメートを失ったことなども影響してか、1週目であえなくリタイアすることとなったデマール。前年にジロで最強の走りを見せ、3年ぶりのツールだっただけに、その失望は計り知れないところであっただろう。

ゆえに、このままではシーズンを終えられない。ということで、彼にとって初めて、このブエルタ・ア・エスパーニャに挑む。実際、例年よりはピュアスプリンター向けステージの多い今年のブエルタ。一軍メンバーとまではいえないが、それでも最強発射台グアルニエーリはもちろん、ゲニッツやシンケルダムなど、一軍に匹敵する実力者たちが揃い万全の体制だ。 

それ以外での活躍は、正直ちょっと厳しいだろうとは思う。モラールが山岳系ステージで逃げ切りかなんとか総合TOP20位以内に入れるか、あるいはルーやルドヴィグソン、ルガックあたりが平坦系に近い逃げ向きのステージで逃げ切るか、といったところか。

 

 

131~.イネオス・グレナディアーズ(IGD)

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今年のジロ・デ・イタリア覇者ベルナルと、昨年ブエルタ総合2位で今年ツール総合3位、もちろん2年前ジロ覇者でもあるカラパス、そして今年ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ総合優勝のアダム・イェーツらがトリプルエース体制を築き上げる。中心はおそらくベルナルだが、これまでのイネオス同様、常にエースがスイッチして結果を出せる伏線は張っておくことができるだろう。

そしてやはりより注目していきたいのがピドコックの存在。昨年のU23版ジロ・デ・イタリアで総合優勝し、登坂力もすでに見せている男。もちろんシクロクロスやマウンテンバイクでもマチュー・ファンデルプールやワウト・ファンアールトらと互角以上に渡り合い、つい先日の東京オリンピックでは実質エリート初年度でいきなりの世界の頂点を手に入れた。

可能性は無限大。ツールでマチューもワウトも活躍している以上、このグランツール初挑戦となるブエルタで、彼が結果を出せない道理がない。

どんな想像を超えた走りをしてくれるのか、実に楽しみである。

 

 

141~.アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ(IWG)

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昨年シーズン後半になって突如ワールドツアー昇格が決まったこのチーム。プロチームの中では最上位クラスの成績を出していたとはいえ、さすがにそこからの急拵えには限界があった。5月になるまで1勝もできず苦しんで喘いでいた中で、ジロ・デ・イタリアで見事掴み取った感動的なタコ・ファンデルホールンの逃げ切り勝利。

同じような感動をこのブエルタでも成し遂げられるか。 元CCCチームのヒルト、元カチューシャでジロ&ブエルタ区間書類の経験があるタラマエ、FDJ所属経験もあるエイキングなんかが今年も実績を出している。

個人的にはずっと好きだったけど最近はさすがにもう厳しいのかと諦めていたメインチェスが今年のツールで常に積極的な走りを続けた結果総合14位とかなりの復活ぶりを見せていたため気になっている。今回のブエルタでその上向きの調子をさらに進め、総合TOP10などに返り咲くことができるか。

 

 

151~.イスラエル・スタートアップネーション(ISN)

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マーティンやウッズといったこのチームの総合エースが出場しないため、その方面での結果は期待すべくもない。 少し頑張れるとしたら、ブエルタ・ア・アンダルシア総合8位のジェームス・ピッコリくらいか。

スプリントでは、今年のジロで勝てはしなかったが結構よいリザルト(区間2位が2回、3位と4位が1回ずつ)を出していたチモライは可能性が十分にあると言えるだろう。とくに彼は比較的登りとか混乱めいたスプリントで上位に入る傾向があったため、基本的にはブエルタには向いていそう。第4ステージの緩やかな登りスプリントなどはチャンスだ。

あとは逃げに期待するしかない。デンマーク王者になったウルスシュミットやファンマルクなど。個人的には昨年地元コンチネンタルチームに所属しながらヘラルドサン・ツアーで総合2位になったバーウィックに常に注目し続けているのだが、プロ1年目となった今年は正直、期待に叶う成績は出せてはいない。ただ、ブエルタに出場させてもらっている以上は、チームも期待しているはずなので、そこに応える走りはしっかりと見せてほしいところ。

 

 

161~.ロット・スーダル(LTS)

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ツール・ド・フランス第3ステージで激しく落車し、即時救急車に運ばれてリタイアとなったカレブ・ユアン。結局このブエルタに間に合うことはなく、欠場となった。今年、全グランツール制覇を掲げ、ジロでは幸先の良いスタートを切っていただけに、残念な結果になってしまった。

結果、実績でいえばイマイチなメンバーが並ぶこととなった今回のロット・スーダルの面々。ただ、優秀な育成チームを持つこのチーム。若手中心のこのメンバーには大き可能性が秘められている。

その筆頭がファンフック。昨年のジロ第1週目で総合上位に名を連ね印象的な走りを見せていた彼だが、今年もUAEツアーのジャベルハフィートで区間5位に入り、パリ~ニースでも総合11位、ツール・ド・ランでは総合2位。今大会もジロ総合TOP20に入ることを目指しつつ、ステージ優勝もぜひ狙ってほしい。

昨年のツアー・ダウンアンダー、ウィランガ・ヒルでリッチー・ポートを倒した男、ホームズも引き続き期待したい。もちろん、カタルーニャとスイス、ワールドツアークラス2つを今年勝利しているクロンも。

個人的にはさらに若いフェルメールシュに注目している。昨年6月にロット・スーダルU23から昇格してきたネオプロ1.5年目の選手。昨年はベルギー国内選手権TTで5位、直後のブリュッセル・サイクリング・クラシックで4位、さらにはヘント~ウェヴェルヘムで13位と才能を見せつけた。

今年もシーズン冒頭のツール・ド・ラ・プロヴァンスの終盤でアタックするなど積極性を見せながらもなかなか結果が出ていなかったが、ツール・ド・スイス初日TTで8位。その後もツール・ド・ワロニー山岳賞やツール・ド・ラン初日7位などそこそこの実績を積み上げつつあり、今回も、逃げを中心にまずはその名を売ってほしいところ。

ロット・スーダルの若手有望株が次々と他チームに移籍する中、このフェルメールシュやファンジルスにはしっかりとこのチーム内で育っていってほしいところである。

 

 

171~.モビスター・チーム(MOV)

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マス、ロペス、バルベルデのトリプルエース体制。もちろん、常に不安の付きまとうこの体制ではあるものの、マスは何だかんだ今年のツール・ド・フランスで総合6位、特に第18ステージでは「3強」に食らいつく走りを見せていただけに、期待したいところ。3年前のこのブエルタで総合2位を獲り、アルベルト・コンタドールの後継者と呼ばれた男が、苦しい時期を乗り越えつつ、再び脚光を浴びることができるか。

もちろん、ロペスもツールでは序盤の落車に巻き込まれた関係もあっての不調であり、その前のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネではマスよりも上位の総合6位で終えている。モンヴァントゥー・チャレンジでも独走により勝利。マスはむしろ後続のオスカル・ロドリゲスに敗れて3位となっていたため、この時点ではたしかにロペスの方が調子は良かった。

バルベルデについては東京オリンピックを意識してかツールでは後半にかけて少しずつ調子を上げていった印象。今回のブエルタでのコンディションは未知数だが、むしろマスとロペスを全面的にアシストしてくれる立場であれば非常に心強い。

 

あとはとにかく、この強力な3名による連携がどれだけなされるのかが鍵。

なお、ジロ・デ・イタリアでは10年ぶりの区間2位を達成したイマノル・エルビティ。28回目のグランツール出場となる大ベテランの彼が、今大会でこそチャンスを掴むなんて展開も、期待したくはなるが・・・。

 

 

181~.チーム・バイクエクスチェンジ(BEX)

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アダム・イェーツもジャック・ヘイグも抜けて、来期はエステバン・チャベスも抜けるバイクエクスチェンジ。

サイモン・イェーツと並ぶ総合エースとして残留するのは、このルーカス・ハミルトンしかいない。ホーゾンやヘイグと共にオーストラリア育成プログラム出身でチーム一筋5年目。今年はいよいよパリ~ニース総合4位など、エースとしての実績が伴いつつある。昨年のジロもチーム毎撤退したが、十分に可能性のある走りを見せていた。

今大会、大化けするとしたらその最も可能性のある選手の1人だと思っている。

また、地味に頑張っているのがシュルツ。パンチャータイプの選手という印象だったが、今年のUAEツアー総合14位から始まり、コッピ・エ・バルタリ総合3位、ツアー・オブ・ジ・アルプス総合10位、サズカ・ツアー区間1勝&総合4位と、クラスは低めだがクライマーと言っても良い活躍を見せている。

今大会、ハミルトンの最大の山岳アシストはホーゾンというのが基本形だろうが、意外とこのシュルツが終盤まで残ってくれるかもしれない。ジロでもたしか、そんな姿がよく見られていた気もする。

あとはもちろん、マシューズ。2年ぶりに出場したツールでは平坦集団スプリントではイマイチな結果だっただけに、今回はより得意なはずのブエルタで結果を出していきたい。元U23イル・ロンバルディア覇者スタナードも、ブルゴス初日の登りフィニッシュで区間6位など調子の良さは見せているので、チャンスを掴んでほしい。

 

 

191~.チームDSM(DSM)

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ツール・ド・フランス総合2位経験者ロマン・バルデがこのチームにどうフィットしていくのか、総合は捨てたのか、など色々考えていたが、結果としては想像以上に活躍している印象。そして何より、前哨戦ブエルタ・ア・ブルゴスでの、ピコン・ブランコステージでの得意の下りを生かしての3年ぶり勝利。最終日では一気に失速して総合優勝自体は逃すものの、状態がよさそうであることは感じ取れた。

あとはツール・ド・ラン総合優勝者のストーラーや、ツール・ド・ロマンディ総合11位&新人賞のアレンスマン。アレンスマンはポガチャルが総合優勝した2018年のツール・ド・ラヴニールで総合2位だった男。逸材であることは間違いなく、このブエルタでの覚醒に期待する。

スプリンターではダイネーゼがネオプロ1年目の昨年いきなりヘラルドサン・ツアーで勝利を遂げるなど、カレブ・ユアンに続く才能の登場か?と期待していたが、その勢いは期待していたほどには続かず、先日のブルゴスでも区間2位など頑張ってはいるが、今年はまだ勝利なし。

期待したいが、勝利はさすがに難しいか。

 

 

201~.チーム・キュベカ・ネクストハッシュ(TQA)

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2015年ブエルタ・ア・エスパーニャ覇者ファビオ・アル。2017年ツールではマイヨ・ジョーヌを着た瞬間もあったが、その後は病気を含む様々なアクシデントに見舞われ、ついにその自転車キャリアを終えることを決意した。

その最後の戦いの舞台となるのがこのブエルタ・ア・エスパーニャ。直前のブエルタ・ア・ブルゴスでは調子がよく、総合2位にまで登り詰めていただけに、今回のこのブエルタで、有終の美を飾るステージ勝利などに期待したい。

あとは主に逃げで頑張っていくしかない。ヤンセファンレンズバーグは優秀なスプリンターであり、TOP10には何度か入ってもおかしくはないが、勝つまでいくのは難しいだろう。

ただ、ジロ・デ・イタリアでもまさかの3勝を記録したこのチーム。今回も北のクラシックでの実力者であるクレイスや4年前のブエルタで山岳ステージ逃げ切り勝利を果たしているアルメ、もしくはもちろん、元パリ~ニース覇者エナオなど・・・チャンスを掴みうるタレントは揃っているため、期待はしていきたい。

 

 

211~.トレック・セガフレード(TFS)

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ジュリオ・チッコーネは今年のジロでいよいよグランツール総合争いに本格参戦する一歩手前まで行っていた。クイーンステージとなる第16ステージ「コルティナ・ダンペッツォ」でも区間4位。総合でも6位にまで浮上した。

しかし、翌日第17ステージで落車。その日はフィニッシュまで辿り着くものの、翌日DNS。あの落車がなければ、総合TOP10で完走していたのは間違いないだろう。

今回のブエルタはそのリベンジを果たせるか。前哨戦となるステージレースには出場していないものの、クラシカ・サンセバスティアンで14位、シルキュイ・ド・ゲチョで6位などは悪くない結果ではある。果たして。

また、今年20歳の新星、クイン・シモンズも、直近のツール・ド・ワロニーで逃げ切りでタイムを稼ぎ、総合優勝を果たした。エヴェネプールに次ぐ才能と期待されながら、昨年末はSNS上の問題で少し謹慎処分を受けた期間などもあったが、ここでしっかりとその才能を見せつけた。

総合系の選手という印象はないものの、積極的な逃げに乗ってからの勝利を狙う走りを期待していきたい。

クライマーでは昨年のツアー・ダウンアンダーでも素晴らしい山岳アシスト力を見せていたフアン・ロペス。今年はそこまで実績がないものの、今後伸びる素質が十分にある男だ。今回はまずチッコーネのための山岳アシストとして、存在感を示してほしい。

 

 

221~.UAEチーム・エミレーツ(UAD)

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当初は予定されていたポガチャルの出場も、さすがにツールの疲れもあってか欠場に。結果、エースとしては昨年総合7位のデラクルスと、一昨年総合6位のマイカ。マイカはツールでも調子が良かったので楽しみだ。

スプリントではブエルタ・ア・ブルゴスで2勝しているモラノに注目。元々ガビリアの発射台の役割を担いながらも、正直今のガビリアよりも強いんじゃないかと思わせる場面も多かったため、いざエースとして走った途端勝利を重ねてきた姿には期待しかない。なお、ブルゴスの当該ステージではトレンティンも共にスプリントしそれぞれ3位、4位。トレンティンは2017年に区間4勝しているブエルタとは好相性のスプリンター。このコンビは、今大会のスプリンター陣の中では台風の目となる可能性がある。

絶対エース不在の中でも強さを見せつけることができるか。

 

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