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ツール・ド・ラ・プロヴァンス2021 プレビュー

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Class:Proシリーズ

Country:フランス

Region:プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏

First edition:2016年

Editions:6回

Date:2/11(木)~2/14(日)

 

 

豪州、南米、スペイン、中東のあらゆる開幕レースが失われ、唯一残された南仏での開幕レースが1/31のグランプリ・シクリスト・ラ・マルセイエーズで開催された。

そこからエトワール・ド・ベセージュに続き、この木曜日からは例年通りの流れでツール・ド・ラ・プロヴァンスへ。

ただ、マルセイエーズやベセージュ同様、今年のプロヴァンスは他地域の開幕レースに参戦できなかったビッグネームたちが集結。

さらにはなんと、Jsportsでも日本語実況解説付でライブ放送が決定!

あらゆる意味で豪華な、注目すべき今年の「ラ・プロヴァンス」。

今回は、そんな南仏ステージレースのコースや注目選手などを徹底的にプレビューしていく。

※記事中の年齢表記はすべて2021/12/31時点のものとなります。

 

 

目次

 

 

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レースについて

ツール・ド・ラ・プロヴァンスはその名の通り南仏プロヴァンス地方を巡るステージレースである。

その歴史はかなり浅く、初開催が5年前の2016年。しかしクラスはすでにUCIプロシリーズということで、同じ南仏を舞台とするマルセイエーズやベセージュよりも1つランクが上。

昨年はこのプロヴァンス地方の名峰モン・ヴァントゥーを(山頂までではないとはいえ)使用し、そこでアルケア・サムシック移籍直後のナイロ・キンタナが勝利するなど、注目度の高いレースを展開した。

 

今年もモン・ヴァントゥは登場。すでにエガン・ベルナルやジュリアン・アラフィリップ、エンリク・マスなどの出場も予定されており、どんなレースが展開されるか、期待が高まる。

 

過去の総合優勝者を見ておこう。

 

2016年:トマ・ヴォクレール

2017年:ローハン・デニス

2018年:アレクサンドル・ジェニエス

2019年:ゴルカ・イサギレ

2020年:ナイロ・キンタナ

 

やはりProシリーズということで、ワールドツアー級の選手たちが名を連ねており、今年はより一層豪華な布陣の中で、同じくワールドツアーの選手たちのなかから総合優勝者が出てきそうだ。

 

なお、過去のスプリントでの勝者でいうと、ナセル・ブアニやクリストフ・ラポルト、ジョン・デゲンコルプなど。

今年もブアニやデゲンコルプにアルノー・デマール、ブライアン・コカール、アレクサンダー・クリストフ(あるいはマッテオ・トレンティン)などの出場が予定されており、そこに若手の期待株シモン・サイノックやステファノ・オルダーニなどがどう絡んでいけるか・・・に注目していきたい。

 

 

コースについて

第1ステージ オバーニュ~シス=フール=レ=プラージュ 179.3㎞(平坦)

断面図はこちら→Profiles | ProCyclingStats

スタート直後に1級山岳。その後、3級山岳を計3つ登る。

ただし最後の3級山岳の山頂からフィニッシュまでは30㎞近くあるため、最後は集団スプリントでの決着となるだろう。フィニッシュ地点のシス=フール=レ=プラージュが海沿いの街であることもまた、その平坦の可能性を高めている。

もちろん、この地域は「ミストラル」の申し子とも言うべき地域。横風には常に注意しておく必要がありそうだ。

優勝予想は・・・「最強」布陣を揃え誰よりも本気で今大会に臨んでいるアルノー・デマール(グルパマFDJ)で固く予想しておこう。

 

 

第2ステージ カシス~マノスク 170.6㎞(丘陵)

断面図はこちら→Profiles | ProCyclingStats

フレンチリビエラの実に南仏らしい美しい海岸の街から一気に内陸に北上。

最初の3分の2までは小刻みなアップダウン程度で決して厳しい道のりではないものの、終盤に2級山岳と3級山岳が登場。

しかもラストは登坂距離2.7km・平均勾配3.4%の緩やかな登りフィニッシュ。

ピュアスプリンターというよりはある程度登れるスプリンターかパンチャーたちによる優勝争いが繰り広げられることになりそうだ。昨年のウラソフのように、終盤でのレイトアタックで逃げ切り勝ちしてしまうアタッカーもいるかもしれない。

優勝予想は・・・エトワール・ド・ベセージュ第1ステージの登りスプリントでも勢いよく飛び出したものの仇敵クリストフ・ラポルトに敗れ、それでも調子がいいところは確かに見せたナセル・ブアニ(コフィディス)が今度こそ勝つ!と予想、というか期待。昨年も第1ステージで勝利しており、相性は悪くないはずだ。

 

 

第3ステージ イストル~シャレー・レイナード 153.9㎞(山岳)

断面図はこちら→Profiles | ProCyclingStats 

昨年も登場した「モン・ヴァントゥー・ステージ」。もちろん、山頂までではなく、そこから6㎞ほど下った中腹地点の「シャレー・レイナード」までではあるが。

それでも、登坂距離9.7km、平均勾配9.1%はシーズン開幕のこの時期に登るにはあまりにも厳しすぎる登り。昨年ナイロ・キンタナが勝ったように、ここでは間違いなくその実力が問われることになるだろう。

優勝予想は・・・もちろんここの勝者がすなわち最終的な総合優勝者となるわけだが・・・エガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ)で行こうと思う。コテコテの予想のようだが、今回のイネオスのメンバーは割と本気でベルナルで勝たせようとする意思を感じる。ジロ・デ・イタリアに向けて、その走りのまずは第一発目の勢いを、見せてほしい。

 

 

第4ステージ アヴィニョン~サロン=ド=プロヴァンス 163.2㎞(平坦)

断面図はこちら→Profiles | ProCyclingStats

「教皇のバビロン捕囚」で有名な街アヴィニョンを発ち、「ノストラダムスの埋葬地」サロン=ド=プロヴァンスへ。

3級山岳が3つ用意されてはいるものの、基本的にはスプリンターたちの足を止めることはないだろう。最後は今大会2度目、もしかしたら3度目の集団スプリントに。

優勝予想は・・・ここで2勝はしないと、今年のツール・ド・フランスでの「最強の証明」は成し得ない。アルノー・デマール(グルパマFDJ)に勝利を託そう。

 

 

注目選手

エガン・ベルナル(イネオス・グレナディアーズ)

コロンビア、24歳

Embed from Getty Images

2019年ツール・ド・フランス覇者。

いかにもな選択だが、あえて彼を今大会の最注目選手として挙げるのは理由がある。

たしかに先日のエトワール・ド・ベセージュでは総合に対する興味は一切なく、トレーニングの一環として走っていたことは確かなようだ。第1ステージではアシストもつけず悠々と後方を走り、逆にチームメートのミハウ・クフィアトコフスキが第1ステージからやる気を見せており、最終的にも総合2位に入っていた。

しかし、だからといってベルナルがまったくやる気がなかったわけではない。第3ステージの総合を決定づけた17名の大逃げ集団の中にはクフィアトコフスキと共に乗り、彼のためのアシストに全力を尽くしていた。

note.com

 

ベセージュで勝つつもりはなかったのは確かだろうが、十分なウォーミングアップになったのではないか。苦しみ続けた背中の痛みについても、場合によってはそれが原因で回避する必要があったジロ・デ・イタリアへの出場の意思をほぼ固めるようなチームの宣言が先日あったばかりだ。

 

そして、何よりも根拠として挙げたいのは、今回のチーム体制。ゲラント・トーマスやミハウ・クフィアトコフスキと共に「誰がエースか分からない」体制で臨んでいたベセージュに対し、今回は「イバン・ソーサ」「カルロス・ロドリゲス」「ローレンス・デプルス」などまさにベルナルをアシストするための体制が用意されているように思う。もしかしたらジロ・デ・イタリアを想定したメンバーなのかもしれない。

とくに楽しみなのはデプルス。およそ1年の沈黙を経て、この「最強アシスト」が再びその実力を発揮してくれるのだろうか。

カルロス・ロドリゲスもネオプロ2年目の「まだ爪を隠している鷹」だと思っているし、イバン・ソーサもそろそろきっと・・・。脇を固める平坦系アシストもベン・スウィフト、エディ・ダンバー、ジャンニ・モスコンとオールラウンドに活躍する実にイネオスらしい有能アシストたちばかりで、いや、今回、本気でベルナル、プロヴァンス狙っている気がするよ?

 

 

アレクサンドル・ウラソフ(アスタナ・プレミアテック)

ロシア、25歳

Embed from Getty Images

そのベルナルのジロ・デ・イタリアにおけるライバルの一人がこのウラソフである。

昨年のツール・ド・ラ・プロヴァンス総合2位。思えば、彼の昨年の大躍進は、このプロヴァンス2位から始まったように思える。その後は9月のティレーノ~アドリアティコに至るまで、「5位以内」を常に取り続けていた異様な好成績であった。

そんな彼を支える注目株が、こちらもまた、昨年ひそかに実力の高さを見せ続けていたネオプロ2年目「ハロルド・テハダ」。今回のこのアスタナもジロを意識したメンバーであるとしたら、ウラソフのジロを彼が支えるかもしれないということで、かなり安心できる存在である。

もちろん、昨年総合3位のアレクセイ・ルツェンコや、2019年覇者ゴルカ・イサギレ、昨年のブエルタ・ア・エスパーニャでも1勝しているヨン・イサギレ、名山岳アシストオマール・フライレと、山岳アシスト力では今大会出場チームの中では随一と言ってよい。スプリント?何それ?

がちがちに安定して総合優勝を狙えるチームと言ってよいだろう。

 

 

ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)

フランス、29歳

Embed from Getty Images

上2人比べるとそこまでガチガチの総合優勝候補とは言えない。まだ今大会の走りは未知数だし、チーム体制も「彼だけのチーム」というわけではなさそうだ。

というか、相変わらずドゥクーニンク・クイックステップらしいというか、本当に豪華な布陣である。「クレルモン・フェランのTGV」 こと、最高峰の逃げスペシャリスト「レミ・カヴァニャ」。昨年の北のクラシックランキング1位「イヴ・ランパールト」。昨年途中の新加入ながらラ・フレーシュ・ワロンヌでは期待しか感じさせない素晴らしい逃げっぷりを見せていた若手「マウリ・ファンセベナント」。

ほかにもゼネク・スティバル、カスパー・アスグリーンとタレントの宝庫たるこのドゥクーニンク・クイックステップ。ゆえに、アラフィリップを専属で守る存在というのははっきりしないので、アラフィリップが本気で総合を狙ってくるのか、足慣らしで走るだけなのかは、イマイチ予想がつかない。

ただ、最後に1人、「ダヴィデ・バッレリーニ」については、今大会の有力スプリンター候補の1人と見ていいだろう。昨年もツール・ド・ポローニュで、パスカル・アッカーマンを破って1勝している。

最強トレインはもちろん用意されてはいないが、そういう、チームの最主力エーススプリンターでない選手も突如勝ったりしてしまうのがこのチームの凄いところ。シーズン開幕直後のまだすべての本名選手が十全な状態でないときに、チームに最初の1勝をもたらしてくれるのは意外と彼なのかもしれない。

あと、やろうと思えばランパールト→アスグリーン→アラフィリップのトレインも十分すぎるほど最強なので、その意味でも。

 

 

アルノー・デマール(グルパマFDJ)

フランス、30歳

昨年年間14勝。ジロ・デ・イタリアでは4勝。昨年の「最強スプリンター」が、いよいよ2021シーズンにおいて始動する。

当然、彼のための最強布陣を揃えてきている。「ジャコポ・グアルニエーリ」「ラモン・シンケルダム」「イグナタス・コノヴァロヴァス」「マイルス・スコットソン」。いずれも昨年のジロで彼を支えた(そしてここ数年常に彼を支え続けてきている)世界最高峰のトレインであり、そのチームワーク、信頼感は随一である。

おそらくこのメンバーで、今年はツール・ド・フランスに乗り込む。

そこで彼が真の最強であることを示すべく、まずはこのプロヴァンスで1勝・・・いや、2勝は必須である。

 

 

その他注目選手

シモン・サイノック(コフィディス・ソルシオンクレディ)

ポーランド、24歳。

2年前のブエルタ・ア・エスパーニャのマドリードで3位に入り込んだ実力者。

今大会も優勝までは狙えなくとも、ステージ上位にその名を覗かせてほしいところ。

 

ジョヴァンニ・アレオッティ(ボーラ・ハンスグローエ)

イタリア、22歳。

2019年のツール・ド・ラヴニール総合2位。過去、「2位」にも強力な選手は多数・・・アンドリュー・タランスキー、アダム・イェーツ、ロバート・パワー、ジャック・ヘイグ、ビョルグ・ランブレヒト、そして昨年のブエルタ・ア・エスパーニャでも積極的な逃げを見せていたテイメン・アレンスマンなど。

彼もまた、そんな活躍の可能性を少しでもこの大会で見せることができるか。「先輩」マッテオ・ファッブロと共に活躍に期待。

 

ビニヤム・ギルマイ(デルコ)

エリトリア、21歳。

プロデビューを果たした昨年、開幕戦となったラ・トロピカーレ・アミッサ・ボンゴでいきなりのステージ2勝&ポイント賞。さらにはイタリアのProシリーズレース、トロフェオ・ライグエーリアでもジュリオ・チッコーネやディエゴ・ローザと鎬を削っての2位。確かな実力の高さを証明して見せていた男だった。

「デルコ」(元NIPPOデルコ・ワンプロヴァンス)とは破格の5年契約を結んでいる。いろいろと日本でも報道され騒動になっているこのチームではあるが、その逆風の中で結果を出していくことを期待している。

実際、デルコは先日のエトワール・ド・ベセージュでは結構頑張っていた。第2ステージではスプリンターのピエール・バルビエが惜しい区間2位。アレクサンドル・デュレットは山岳賞を獲得し、最終的にも元イスラエルのクレモン・カリゼが総合9位と粘りを見せた。

首脳陣はもしかしたら色々と問題があったかもしれないが、残された選手たちに罪はない。結果で示してみせよ!

 

 

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