りんぐすらいど

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ロンド・ファン・フラーンデレン2021 注目「チーム」プレビュー

 

目前に迫った「クラシックの王様」ロンド・ファン・フラーンデレン。

その、注目「チーム」4チームを、直近のレースを振り返りつつ、プレビュウ。

 

果たして勝つのは今年も最強な「銀河系軍団」か。

それともこれを「個の力」で抑え込む最強フィジカルデュオか、それとも――。

 

目次

 

↓コースプレビューはこちらから↓

www.ringsride.work

 

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ドゥクーニンク・クイックステップ

随一のチーム力でマチュー&ワウトを押さえ込むことができるか?

  • オンループ・ヘットニュースブラッド優勝(ダヴィデ・バッレリーニ)
  • ブルッヘ〜デパンヌ優勝(サム・ベネット)
  • E3サクソバンク・クラシック優勝(カスパー・アスグリーン)
  • ヘント〜ウェヴェルヘム14位(イヴ・ランパールト)
  • ドワースドール・フラーンデレン4位(イヴ・ランパールト)

 

クラシック最強軍団。しかし常勝軍団ではない。ロンド・ファン・フラーンデレンでは2017年ジルベール、2018年テルプストラと制しているが、その後は優勝を奪われ続けているし2人ともすでに移籍している。

今年も直近のヘント〜ウェヴェルヘム、ドワースドールではイマイチな結果。

しかし、勝つべきところをきっちりと勝ってくる。今年も、ロンド前哨戦として最もコースレイアウト的に類似性のあるオンループとE3で勝っている。しかも、チーム力を活かした滅茶苦茶強い勝ち方で、ともにワンツーフィニッシュだ。

www.ringsride.work

 

個々の能力としてはもしかしたらマチュー・ファンデルプールやワウト・ファンアールトには敵わないかもしれない。

しかし、7名全員が(ときにデクレルクやデヴェナインスにも十分チャンスがありうるという意味で)勝ちうる力があり、そのときどきの状況に合わせて柔軟に「誰が行くか」を変えていける強さがこのチームの最大の特徴である。

それがゆえに多少なりとも層が薄くなりがちなレース(今回でいえばヘントとドワース)は沈んでしまうことはありうるが、ロンドはもちろんジュリアン・アラフィリップも加えた最強布陣。

いつもと違ってデクレルクだけでなくデヴェナインスもアシスト専属として入れてきたのは、ヘントとドワースの失敗を踏まえているのかもしれない。

 

勝ち方のパターンとしては、まずは最も警戒されるであろう世界王者アラフィリップが常に先頭に立ち、早めの動き出しを仕掛けていく。昨年も残り45㎞のコッペンベルグで仕掛け、オンループ・ヘットニュースブラッドでも残り40㎞からアタックした。

Embed from Getty Images

 

そこにゼネク・スティバルやイヴ・ランパールトなどの有力選手をもう1〜2名乗せていくことができればかなりの必勝体制を作ることができるだろう。

もう1人の遊撃隊がカスパー・アスグリーン。E3でも残り80㎞で出来上がった精鋭9名の中から、残り60㎞以上を残して独走を開始した。

Embed from Getty Images

 

無類の独走力をもつこのデンマーク人も当然厳しいマークにさらされているだろうが、マークすべき選手が2人も3人もいれば、ライバルチームの取れる手は限られている。そもそもE3での飛び出しも、直前にセネシャルとスティバルが一度攻撃を仕掛けライバルチームがこれをチェックしたあとに、第3の矢として飛び出したのである。これをやられたら他のチームは手の出しようがない。

 

そしてこのアラフィリップとアスグリーンという危険極まりない存在がいるからこそ、するっと抜け出したスティバルやランパールトが見逃され、そこからのロングエスケープが完成してしまう恐れがある。

一度抜け出されれば、あとは残ったチームメートによるローテーション妨害・・・クイックステップ劇場の、完成である。

 

これを防ぐには、ライバルチームたちはとにかく攻撃、攻撃、攻撃の手を休めるわけにはいかない。詳細は不明だが、ヘント〜ウェヴェルヘムでのドゥクーニンク大崩壊はまさに序盤でのカオス展開によってドゥクーニンクが後手を踏んだことが要因であった。

本気のドゥクーニンク相手にそれが簡単ではないことはもちろんすぎるが、最強のチーム力に対抗するにはまた別のチーム力が必要。2018年のオンループを制したアスタナも、2019年のロンドを制したEFも、そうやって彼らを倒してきた。

もしくは、想像を超えた圧倒的な個の力でこれを無理矢理叩き伏せるか・・・昨年のロンドのように。

 

 

アルペシン・フェニックス

最強の「個」を支える頼りになるアシストたち

  • オンループ・ヘットニュースブラッド14位(シルヴァン・ディリエ)
  • ブルッヘ〜デパンヌ2位(ジャスパー・フィリプセン)
  • E3サクソバンク・クラシック3位(マチュー・ファンデルプール)
  • ヘント〜ウェヴェルヘム10位(ジャンニ・フェルメールシュ)
  • ドワースドール・フラーンデレン3位(ティム・メルリエ)

 

昨年優勝者マチュー・ファンデルプール率いるチームだが、決してマチューだけの力に頼って勝ってるわけではない。

むしろアシストたちの検討が常に光っており、今回もベルギー王者ドリス・デボントやヘント〜ウェヴェルヘム10位のジャンニ・フェルメールシュ、ヨナス・リッカールト、そして2018年パリ〜ルーベ2位のシルヴァン・ディリエなどが終盤までファンデルプールを支えてくれることだろう。

 

しかし、やはり最後の最後で勝ちが狙えるのはファンデルプールただ1人であり、その意味でドゥクーニンクのような勝ち方は取れない。

後手に回って「劇場」が始まってからでは、なすすべは無くなってしまう。

だからこそ、早めに、遠い位置から、仕掛けるしかない。

 

とはいえ、単身で仕掛けてもマークは厳しいので、できればドゥクーニンクの動きには乗っていきたい。

昨年のロンドで、アラフィリップの動きに乗じてチャンスを掴んだように。

Embed from Getty Images

 

そのためにはそれに先立って仕掛けられるであろうドゥクーニンクのハイ・ペースや波状攻撃を捌くために、その勝負所ーー最低でも残り40㎞や30㎞ーーまで、十分に動ける状態でフェルメールシュやディリエに残っておいてもらいたいところ。

 

最強のフィジカルを持つからといって簡単に勝てるわけではない。ディフェンディングチャンピオンとしての驕りなど持てる余裕は一切ない。

 

この「王」を勝たせるために必要なのは、この黒き軍団のチーム力。

「銀河系軍団」を、今年もまた打ち倒すことができるか。

 

直近のドワースドール・フラーンデレンでの、ファンデルプールの少し奮わない姿がやや不安要素ではある。

 

 

チーム・ユンボ・ヴィスマ

もう1人ではない。可能性を感じさせる今年のワウト

  • オンループ・ヘットニュースブラッド41位(ティモ・ローセン)
  • ブルッヘ〜デパンヌ27位(ダヴィド・デッケル)
  • E3サクソバンク・クラシック11位(ワウト・ファンアールト)
  • ヘント〜ウェヴェルヘム優勝(ワウト・ファンアールト)
  • ドワースドール・フラーンデレン28位(パスカル・エーンクホーン)

 

総合争いにおいては2010年代のスカイ/イネオスに肉薄するチーム力をつけつつあるこのチームだが、意外とクラシックにおいてはうまくいかない、そんなチームでもある。

得意のストラーデビアンケなんかは個の力でなんとかするが、2019年のパリ〜ルーベや今年のE3なんかでは、ファンアールト自身の落車やメカトラなどトラブルにも見舞われ続けたこともあり、最後は単独で力なく崩れ落ちていく姿を見せていた。

 

そこからの脱却の可能性を感じさせたのがヘント〜ウェヴェルヘムだった。

元BMC〜CCCで、グレッグ・ファンアーヴェルマートの右腕として活躍し続けていた男、ネイサン・ファンフーイドンク。

残り176㎞地点で形成された21名の「勝ち逃げ集団」の中にワウト・ファンアールトと共に入り込んだ彼は、最後の瞬間まで彼に付き従い、その勝利の鍵となった。

 

もちろん、最後に出来上がった7名の先頭集団の中で、ファンアールトの実力は抜けてはいた。それでもマッテオ・トレンティンやマイケル・マシューズ、シュテファン・キュングなどの精鋭集団の中で、不意の飛び出しでも出てしまえばいつもの「ファンアールト任せ」の動きの中で勝機を失うーーというパターンになりかねない状況だった。

それを、最後のクルイスベルグでも遅れかけながらもしっかりと復帰したファンフーイドンクが、終盤に2度のアタックと先頭牽引とで牽制したお陰で、ファンアールトが勝てるパターンへと持ち込んでくれた。

常にアシスト不足に悩まされていたユンボ・ヴィスマのクラシック班の、一つの可能性を感じさせる瞬間だった。

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他にも、クラシックで常に平坦牽引を黙々とこなしてくれるパスカル・エーンクホーン、先日のUAEツアーでもネオプロとは思えない強さを見せているダヴィド・デッケル、それこそアスグリーンのような走りも期待できるポテンシャルをもつエドアルド・アッフィーニなど、メンバーは非常に豪華。

あとは、彼らアシストたちがどれだけ今回、最後までファンアールトを支えられるか。

 

 

AG2Rシトロエン・チーム

「ダブルエース」始動。最強3チームを倒すことはできるか。

  • オンループ・ヘットニュースブラッド19位(オリバー・ナーセン)
  • ブルッヘ〜デパンヌ20位(ハイス・ファンフッケ)
  • E3サクソバンク・クラシック4位(オリバー・ナーセン)
  • ヘント〜ウェヴェルヘム12位(グレッグ・ファンアーヴェルマート)
  • ドワースドール・フラーンデレン7位(グレッグ・ファンアーヴェルマート)

 

常に「1人」で戦い続けていたグレッグ・ファンアーヴェルマートとオリバー・ナーセンーー正確にはファンアーヴェルマートは昨年マッテオ・トレンティンとダブルエース体制ができるはずだったが、ハイシーズン時期にファンアーヴェルマートが負傷して出場できなかったーーだが、今年はこの両雄が揃い踏み、その可能性を感じさせたのがE3だった。

すなわち、最終盤に形成された7名の先頭集団、アスグリーン、セネシャル、スティバル、ファンデルプール、ファンアールト、(のちにドワースドール・フラーンデレンで優勝する)ファンバーレ、そしてこのナーセンとファンアーヴェルマート。

この局面において2人でいられるというのは、これまでの彼らを考えると、かなり大きい。

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もちろん、結果として彼らは敗北した。残り5㎞でアスグリーンがアタックしたとき、すぐに反応したのはファンデルプールで、後ろをちらりと見た彼らはたしかにAG2Rの2人の様子を伺ったはずだ。

のちに彼らは2度、3度と追走のアタックを繰り出すが、もう遅かった。その度にセネシャルやスティバルに捉えられ、これを引き千切るほどの足も残っていなかった。

 

 

だからこそ、彼らが今度こそ「勝つ」その瞬間を見たい。

当初は予定されていたはずの、ボブ・ユンゲルスを交えてのトリプルエース体制は残念ながらなくなってしまったが、この「ダブルエース」が栄光を掴み取る瞬間を、期待している。

 

↓ゲームで実際にAG2Rで勝ちを狙ってみました!↓

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