りんぐすらいど

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リエージュ~バストーニュ~リエージュ2021 プレビュー

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Class:ワールドツアー

Country:ベルギー

Region:ワロン地域

First edition:1892年

Editions:107回

Date:4/25(日)

 

アルデンヌ・クラシック3連戦、そして3月頭から2ヶ月間にわたり続いてきた「春のクラシック」のフィナーレを飾るのは、「ラ・ドワイエンヌ(最古参)」の異名をもつ世界最古のクラシックレース。

起伏や登りを多く含むアルデンヌ・クラシックの中でも、とくにその登り・アップダウンの連続が厳しいレースとして知られ、レース全体の総獲得標高は4000mを超えることも。

ゆえに過去の優勝者も、他2つのアルデンヌ・クラシックと比較してもグランツールなどでも活躍するクライマーなどが名を連ねることも多く、それだけ厳しいレースであることがわかる。

世界5大クラシックレースの「モニュメント」の1つでもあり、その勝者にもたらされる栄誉はロンド・ファン・フラーンデレンやパリ〜ルーベにも匹敵する。

 

今年は昨年優勝者のプリモシュ・ログリッチ、2位のマルク・ヒルシと3位のタデイ・ポガチャルのUAEチーム・エミレーツコンビ、昨年5位の世界王者で先日のフレーシュ・ワロンヌでも見事3勝目を飾ったジュリアン・アラフィリップ、そして初出場ながらブラバンツペイル優勝、アムステルゴールドレース2位、フレーシュ・ワロンヌ6位と絶好調ぶりを発揮し続け、当初の予定を変更してこのリエージュにも出場を決めたトム・ピドコックなど、実に豪華なメンバーが出揃っている。

 

例年激しいドラマチックな展開を生み出すこの「春のクラシック最終戦」を、男女レースともに徹底的にプレビューしていく。

 

放送スケジュール

【女子レース】

Jsports 18:20~(オンデマンド限定)

GCN pass 18:20~

【男子レース】

Jsports 20:30~

GCN pass 20:25~

 

 

YouTubeでもゲームを使ってラスト15㎞を予習実況しました!

youtu.be

 

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コースについて(過去2年のレース展開解説含む)

まず、個人的な話をさせてもらうと、正直、かつてのリエージュ~バストーニュ~リエージュはそこまで好きなレースでもなかった。

しかし、現UCI会長のラパルティアン氏が「リエージュは最近ひどくステレオタイプなレースになった」と発言したことが影響したのかどうかはわからないが、その翌年にあたる2019年から、コースが大きく変更された。

 

まず、フィニッシュ地点がアンスの街からリエージュの街に変更されたことにより、レース名通りの「リエージュを出発してバストーニュで折り返し、リエージュにフィニッシュする」というコースを取るようになった。

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https://www.liege-bastogne-liege.be/en/stage-1

 

そしてこのコース変更に伴い、これまでは終盤に設置されていた勝負所「コート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコン」がラスト15㎞の地点に移動したことで、ラストの登り一発勝負、小集団スプリントのような展開ではなく、ロンド・ファン・フラーンデレンやパリ~ルーベのような、ラスト15㎞~20㎞からのどうなるかわからない手に汗握る展開を楽しめるようになったのだ。

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https://www.liege-bastogne-liege.be/en/stage-1


これはもう好みの問題なので何とも言えないが、個人的にはこの改革は大成功だと思っている。

同じような改革を行ったのがアムステルゴールドレースで、2017年から勝負所のカウベルグをラスト20㎞に設置してから、毎年どこでアタックがかかるかわからない、緊張感をもったラスト数十キロの展開を楽しめるようになっている。

 

リエージュ~バストーニュ~リエージュも、コース変更が行われた2019年からの2大会は、共にトップライダーたちによる白熱のバトルが展開されている。

2019年はこのラ・ロッシュ・オ・フォー・コンで、そこまで常にジュリアン・アラフィリップに惜敗を繰り返し続けてきたヤコブ・フルサンが一気に加速。

アラフィリップはこれについていけず、かろうじて食らいついたマイケル・ウッズとダヴィデ・フォルモロも突き放してそのまま独走勝利を成し遂げた。

Embed from Getty Images

 

2020年は同じくラ・ロッシュ・オ・フォー・コンで、今度はジュリアン・アラフィリップが最初にアタック。

ここにマルク・ヒルシとプリモシュ・ログリッチが食らいつき、ここにのちにタデイ・ポガチャルが合流。

最後に追い付いてきたマテイ・モホリッチと合わせて5名による小集団スプリントが繰り広げられ、両手を挙げたのはアラフィリップだったが、手を挙げるのがわずかに早すぎて、ギリギリでログリッチが先着することとなった。

Embed from Getty Images

 

 

どちらもコート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコンで決定的なアタックが繰り広げられたという意味ではある意味で単調ではあるが、それでも3年目となる今年が必ずしもそこで動くとは限らない。

以下、このコース上における重要な登りについて解説していく。

 

 

残り81.1㎞~「コート・ド・ストック」

登坂距離1km/平均勾配12.5%

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https://www.liege-bastogne-liege.be/en/stage-1

「史上最強の自転車選手」エディ・メルクスの記念碑が建てられたこの登りは、わずか1㎞と短いながらも平均勾配が12%に達するという、ユイの壁も顔負けな超激坂である。

フィニッシュまで80㎞以上を残すため勝負所にはならないものの、レースの本格的な開幕を告げる象徴的なポイントとなるだろう。

昨年は逃げ集団に入っていたミヒャエル・シェアーが、ここで他のメンバーを切り離して独走を開始。その後、残り35㎞地点で吸収されるまで独りで逃げ続けた。

今年はここでもしかしたら最初の重要な脱落者なんかも、出てくるかもしれない。

 

 

残り78.1㎞~「コート・ド・ラ・オートルヴェ」

登坂距離2.2km/平均勾配7.5%

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https://www.liege-bastogne-liege.be/en/stage-1

超激坂コート・ド・ストックを終えてすぐに訪れる長めの登り。

単体での破壊力はさほどないものの、特に最初の500mの平均勾配が12%と厳しく、コート・ド・ストックでやや混乱した集団の中からセカンドエース級の選手たちが最初の仕掛けを行うにはもってこいのポイントだったりもする。

事実、2年前にはグレッグ・ファンアーヴェルマート、ヴィンツェンツォ・ニバリ、フィリップ・ジルベールといった超強力な選手たちがここでアタック。単独で逃げていたジュリアン・ベルナールを飲み込んで先頭に立つこととなった。

これは次の「コル・ドゥ・ロジエ」で一旦引き戻されることとなるが、今年ももしかしたらここでちょっとした動きが巻き起こる可能性はあり、油断できない。

 

 

残り49.9㎞~「コート・ドゥ・デニエ」

登坂距離1.6km/平均勾配7.5%

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https://www.liege-bastogne-liege.be/en/stage-1

今年初登場の登り。オート・デニエの町を通過する登りである。

勾配は常に厳しく、とくに真ん中の500mは平均勾配が10%弱。

このあとは勝負所の1つコート・ド・ルドゥットも控えており、ここでジャブのようなアタックがかかる可能性も。

 

 

残り37.2㎞~「コート・ド・ラ・ルドゥット」

登坂距離2.0km/平均勾配8.9%

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https://www.liege-bastogne-liege.be/en/stage-1

リエージュ~バストーニュ~リエージュ名物の「PHIL,PHIL,PHIL,PHIL,ジルベール」のペイントが施された象徴的な登り。

しかし残り距離、登坂距離、ひたすら厳しい平均勾配、さらには山頂まで1㎞~500mに用意された平均勾配13%の超激坂ゾーン・・・あらゆる要素において、「最初の勝負所」として相応しい超重要ポイントの1つである。

2019年はここでタネル・カンゲルト、ティム・ウェレンス、ダリル・インピー、パトリック・コンラッドといった準優勝候補級の選手たち4名が抜け出して先頭集団を形成。最後の勝負所ラ・ロッシュ・オ・フォー・コンまで逃げ続けることに。

昨年はそういった紛れを嫌ったのか、ジュリアン・アラフィリップの指示でその右腕ドリス・デヴェナインスが集団の先頭に立って一気にペースアップ。アタックを封じ込めるとともに集団の人数を一気に絞り込んでいった。

 

 

2年続いたラ・ロッシュ・オ・フォー・コンでのアタック一発勝負を嫌うチーム、選手たちが、ここで勝負に出る可能性は十分ある。

少なくともここで先頭に飛び出すことができれば、のちに更なる優勝候補たちが追いついてきたとしても、上位でフィニッシュするチャンスが与えられるかもしれない――そんな思惑を持った選手たちのアタックに注目。もちろん、本当に強い選手たちにしか、それは許されないが。 

たとえばヒルシとポガチャルのダブルエース体制を作っているUAEチーム・エミレーツの片割れが飛び出すとか、優勝候補シャフマンを控えさせているボーラ・ハンスグローエが、ここ最近つねに調子の良いイーデ・スヘリンフやマッテオ・ファッブロをアタックさせるなどのパターンはあってもおかしくなさそうだ。リチャル・カラパスの積極性にも警戒が必要。

 

 

残り24.6㎞~「コート・ド・フォルジュ」

登坂距離1.3km/平均勾配7.8%

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https://www.liege-bastogne-liege.be/en/stage-1

このあとに最後の勝負所コート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコンが控えていることを考えれば、ここで決定的な動きが起こることは考えづらい。しかし、そのプロフィールは十分に強烈。

昨年はここでメイン集団からルイスレオン・サンチェスとルイ・コスタがアタックを仕掛け、そこにジュリアン・アラフィリップが反応するなど、ドゥクーニンク・クイックステップが支配していたプロトンで動きが巻き起こり始めていた。

「ラ・ロッシュ・オ・フォー・コン以前」からの攻撃が起こりそうな今年においては十分注目すべきポイントだと思っている。

 

 

残り15.6㎞~「コート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコン」

登坂距離1.3km/平均勾配11.0%

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https://www.liege-bastogne-liege.be/en/stage-1

言わずと知れた最後にして最大の勝負所。残り距離、登坂距離、平均勾配ともに最高のポイントに設置されており、まず間違いなく決定的な攻撃が巻き起こる最重要ポイント。

登り口から厳しいが、本当に厳しいのは残り15.1㎞から14.6㎞のポイント。13%を超える激坂区間で、優勝候補たち同士の激烈な加速バトルが繰り広げられることになるだろう。

これが終われば山頂からフィニッシュまでは14.3㎞。単独になれば独走するしかなくなり、小集団になればしばらくはローテーションを回しながら最後のスプリントに備えることになるだろう。

今年、この登りを先頭で越えるのは一体誰だ?

 

 

 

優勝候補たち

プリモシュ・ログリッチ(チーム・ユンボ・ヴィスマ)

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昨年の覇者。そして絶好調は今年も止まらず、パリ~ニースではステージ3勝と実質的な総合優勝、イツリア・バスクカントリーでも最終日逆転による総合優勝、そしてアムステルゴールドレースでは最後にメカトラブルで遅れたもののワウト・ファンアールトの最も頼れるアシストを担い切り、フレーシュ・ワロンヌでは初出場ながら王者アラフィリップにギリギリまで食らいつく走りを見せてくれた。

今や、総合的に見て現役世界最強のライダーと言っても過言ではない男、それがこのログリッチである。

今年も文句なしの優勝候補。ただ、最終局面での純粋なスプリント力では下記の優勝候補たちにやや遅れを取る部分はあるため、そこは少し不安が残る(昨年はその点でライバルであったヒルシやポガチャルをアラフィリップがやや進路妨害したことが勝利の要因だったとも言える)。 

 

 

ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)

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昨年はガッツポーズをしてみせたものの、ギリギリでログリッチに差される。さらに直前の動きを斜行とみなされ、降格により5位。悔しい思いを味わった。

今年はツール・ド・ラ・プロヴァンスでイバン・ソーサとエガン・ベルナルのコンビネーションに敗れて総合2位。ストラーデビアンケではマチュー・ファンデルポールに最後突き放されての2位。ティレーノ~アドリアティコでは第2ステージで今度はファンデルプール相手に競り勝つが、続く第3ステージでは逆に敗れる。得意の「壁」ステージでは勝負所でメカトラも相まって脱落するなど、ここ数年の絶好調と比べると決して最高な状態とは言えなさそうなリザルトが続いていた。

とはいえ、常に勝負を動かそうとする姿勢は変わらなかった。ミラノ~サンレモでもリザルトだけ見れば16位だが、しっかりと勝負所で自ら仕掛けていった。ロンド・ファン・フラーンデレンでも42位に沈むが、そもそも今年の彼は北のクラシックよりもアルデンヌ・クラシックに焦点を合わせているように感じられた。

そして第1戦のアムステルゴールドレースでは6位。悪くない中で迎えたフレーシュ・ワロンヌでは、ログリッチに先行されるも、王者として仕掛けるべきタイミングを熟知しており、バルベルデも突き放して見事3度目の優勝を掴んだ。

十分にコンディションを上げた中で挑む、昨年のリベンジマッチ。

今度は早く手を挙げ過ぎないでね・・・(フレーシュ・ワロンヌでもちょっと胸のスポンサーアピールするの早すぎたように見えてハラハラした・・・)

 

 

タデイ・ポガチャル(UAEチーム・エミレーツ)

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昨年3位。だが、最後の局面でアラフィリップが前を塞がなければ、もしかしたら先頭でフィニッシュを突き抜けていたのは彼だったかもしれない。

それくらい、彼のスプリント力は抜き出ているように感じる。昨年のツール・ド・フランスで2回、そして今年のイツリア・バスクカントリーで1回、いずれも最終局面のスプリントでプリモシュ・ログリッチを上回っている。バルベルデとアラフィリップを上回るほどかどうかはまだ不明だが、それでもこの男はときおり規格外の力を見せつけることがある。昨年のツール・ド・フランス第20ステージや、今年のティレーノ~アドリアティコ第5ステージのように。 

ただ、アムステルゴールドレースに出場しておらず、先日のフレーシュ・ワロンヌでも新型コロナウイルスの影響で出場できておらず、逆転敗北を喫したバスク1周以来のコンディション状況が不明なところが不安要素。

とはいえ、基本的には今年も昨年以上に絶好調な彼が、優勝候補の筆頭に躍り出ることは間違いないだろう。

 

 

アレハンドロ・バルベルデ(モビスター・チーム)

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このリエージュ~バストーニュ~リエージュ当日に41歳の誕生日を迎える。過去4回のリエージュ~バストーニュ~リエージュ覇者は、5回目の勝利をバースデイに飾ることに何の違和感もないだろう。41歳のモニュメント勝者。それは決して夢でも希望でもなく、あまりにも現実的に存在するリザルトだ。

事実、今年もグラン・プレミオ・ミゲル・インドゥラインで優勝し、イツリア・バスクカントリーでは区間3位が2回と総合7位。アムステルゴールドレースでは5位、そしてフレーシュ・ワロンヌでは、8回目の表彰台に登るという快挙を成し遂げた。

世界王者に輝いたあと、さすがに年齢には勝てないか・・・と思えたような瞬間もあったが、またここにきてその勢いを取り戻しつつある。正直あと数年は現役で戦えてしまえそうな走りだ。

だから、今回も十分に優勝候補である。出場する選手たちの誰よりも勝ち方を知っている男。最後のコート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコンでついていけさえすれば、最後のスプリントにおいてはかなり期待できる存在だろう。 

 

 

トム・ピドコック(イネオス・グレナディアーズ)

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ブラバンツペイルだけでなくアムステルゴールドレースでもほぼ優勝と言ってもいいようなフィニッシュ。そしてフレーシュ・ワロンヌでも6位。位置取りがやや悪かっただけで、よーいドンで戦っていれば、表彰台も十分狙えた走りだったように思う。

そんな絶好調ぶりを本人もチームも理解しているのか、本来であればマウンテンバイクシーズンに向けてフレーシュ・ワロンヌでロードシーズンを中断する予定だったところを、急遽予定変更でこのリエージュ~バストーニュ~リエージュまで出場することとなった。ある意味で、フレーシュ・ワロンヌより彼向きと思われるこのレース。純粋なクライマー向けではあるものの、そもそもピドコックはU23版ジロ・デ・イタリア総合優勝者であり、一流クライマーたちとも競り合える実力は十分にあるはずだ。

そして、最後まで食らいつくことができれば、やはりスプリントにおいては最も期待できる存在の1人。あのワウト・ファンアールトをスプリントで下した男なのだから。

 

また、マチュー・ファンデルプールに並ぶ、常識外れのアグレッシブさも併せ持つ。たとえばラ・ロッシュ・オ・フォー・コンでついていけなかったとしても、あとからメイン集団から抜け出して追いついてくる可能性は十分にある。もしくは、ロッシュ・オ・フォー・コンより前に仕掛けてくる可能性も。

ただ、周りは歴戦のベテランだらけ。前回のフレーシュ・ワロンヌがそうだったように、若さが思わぬ苦戦を彼に強いることがなければよいのだが。

フレーシュ・ワロンヌでの落車が原因で改めて欠場が決定。残念である。 

 

 

 

女子レースについて

最後に、女子レースについても見ていこう。

まずコースは140.9㎞と、男子よりも120㎞近く短い。

しかし、残り61.7㎞地点のコル・ドゥ・ロジエ以降は男子と全く同じレイアウトで戦うことになるため、同じ勝負所を参照していただければ問題ないだろう。

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https://www.liege-bastogne-liege-femmes.be/en/stage-1

女子版リエージュ~バストーニュ~リエージュはこれまで4回開催されているが、いずれも独走勝利で幕を閉じた。

2017年と2018年大会(アンスフィニッシュ)ではいずれも現世界王者のアンナ・ファンデルブレッヘンが、2019年大会は前世界王者のアネミエク・ファンフルーテンが、昨年大会はトレック・セガフレードのリジー(エリザベス)・ダイグナンが勝利している。

ただし昨年のダイグナンの独走は残り13㎞地点のコート・ド・ラ・ロッシュ・オ・フォーコンではなく、残り35㎞以上残したコート・ド・ラ・ルドゥットで始まった。

ロッシュ・オ・フォー・コンでは同じく独走マイスターのグレース・ブラウンが追走を仕掛けるが最終的には届かず、同年の女子版ツール・ド・フランス覇者ダイグナンが見事な初勝利を飾った。

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それでは、今年の優勝候補は誰になるのか。

直近のレースのリザルトや過去2年のLBLのリザルトをもとに、以下5名の選手をピックアップしてみた。

 

アネミエク・ファンフルーテン(モビスター・チーム)

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2019年、現在のコースレイアウトに変更後最初の勝者となった彼女は、過去2回のジロ・ローザ総合優勝、2回のストラーデビアンケ優勝、2回のロンド・ファン・フラーンデレン優勝、そして世界王者も経験しており現在はヨーロッパチャンピオンジャージを身に纏っている。

今年もその2回目のロンド制覇とドワースドール・フラーンデレン優勝を飾っており絶好調で、直近のアムステルゴールドレースも3位、フレーシュ・ワロンヌも4位と問題ない走りを見せている。

とくに独走力の高さは群を抜いており、ラ・ロッシュ・オ・フォー・コンで単独で抜け出せたとき、彼女に追い付けるものは存在しないであろう。

 

エリーザ・ロンゴボルギーニ(トレック・セガフレード)

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彼女も去年からかなり絶好調な選手。とくに独走力はファンフルーテンほどではないにしても高く、今年は同じ丘陵系のレースであるトロフェオ・アルフレッド・ビンダで逃げ切り勝利を果たしている。

直近のアムステルゴールドレースでは8位。フレーシュ・ワロンヌでは3位としっかりと結果を出している。

リエージュ~バストーニュ~リエージュ自体は昨年は25位、その前は9位と、決してものすごく相性のいいタイプではない。

それでも勢いを信じて賭けるだけの価値はあるだろう。

 

マリアンヌ・フォス(チーム・ユンボ・ヴィスマ)

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プロ17年目。今もなお君臨する世界最強の女王。世界王者は3回、フレーシュ・ワロンヌは5回、ジロ・ローザは3回総合優勝している。シクロクロスもマウンテンバイクも強く、女子自転車界を引っ張り続けてきた存在だ。

その強さは今もなお衰えを見せず、今年はヘント~ウェヴェルヘムとアムステルゴールドレースで優勝。直近のフレーシュ・ワロンヌでは終盤のコート・デュ・シュマン・デ・ギースで切り離されて最後の勝負に挑めなかったものの、似たように終盤のグールヘンメルベルグで一度脱落したアムステルゴールドレースでは、最後にしっかりと追いついてきてスプリントで勝っている。

今回ももしかしたら最後のラ・ロッシュ・オ・フォー・コンで一度は遅れるかもしれない。純粋なクライマーに比べれば登坂力はやや劣るので。

しかしそこから追い付いてきてスプリントに持ち込めさえすれば、十分に勝ち目がある。そんな、非常に引き出しの多い女王らしい勝ち方に期待したい。女子界のバルベルデである(でもまだ33歳だから恐ろしい・・・)

 

デミ・フォレリング(SDワークス)

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女子界最強チームのSDワークスの一員。その実力はホンモノで、今年はストラーデビアンケ6位、ロンド・ファン・フラーンデレン5位、ブラバンツペイル2位、アムステルゴールドレース2位とかなり安定したリザルトを誇っている。

そしてフレーシュ・ワロンヌではチームのエースたるアンナ・ファンデルブレッヘンのために最終盤に集団を牽引し続け、最後は仕事を終えて10位フィニッシュ。もし彼女が単独エースであったならば、表彰台は確実に狙えていたことだろう。

もちろん今回もファンデルブレッヘンのアシストが第一の任務かと思われる。だが、ファンデルブレッヘンはフレーシュ・ワロンヌでこそ優勝したものの、病気もありその前の段階ではあまり良いリザルトを積み上げられていない。過去2回のエディションを見てみても、ファンデルブレッヘンが12位と26位なのに対し、フォレリングは3位と11位であり、リエージュ~バストーニュ~リエージュにおいては(たしかに3年前と4年前ではファンデルブレッヘンが優勝しているとはいえ、それは今と異なるレイアウトでの話であり)フォレリングの方が一枚上手ということはできそうだ。

少なくとも、この最強チームは非常に強力なダブルエース体制をもっており、そこにシャンタル・ブラークやアシュリー・ムールマンが加わることによってさらにあらゆる勝ち方ができるチームであると言えるだろう。

 

カタジナ・ニエウィアドマ(キャニオン・スラム・レーシング)

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最後の1人は非常に迷った。病気からの復調を確かに見せつけ、圧倒的な、文句なき勝利をフレーシュ・ワロンヌで飾ったアンナ・ファンデルブレッヘンにするべきか否か。

だが、今年ストラーデビアンケで9位、アルフレッド・ビンダで4位、ドワースドール・フラーンデレンで2位、アムステルゴールドレースで10位と重ねてきており、2019年も6位、そしてフレーシュ・ワロンヌではファンデルブレッヘンに負けたとはいえそこに食らいつく2位と、安定感も非常に高いこのニエウィアドマを最後の1人に推すことに決めた。リエージュ~バストーニュ~リエージュにおける実績においても、2017年に2位、今のコースレイアウトになってからも、2019年に6位と、決して悪くない。

オランダ人やイタリア人が並ぶ優勝候補レースの中で、ポーランド人として存在感をしっかりと示しても欲しい。男子の側のクフィアトコフスキが今年はちょっと調子が上がり切っていないだけに・・・。

 

 

明日のレース本番はもしかしたらTwitterのSpacesで鑑賞会をやるかもしれませんので、もしよろしければTwitterの方もチェックしてみてください!

 

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