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ジロ・デ・イタリア2021 コースプレビュー 第1週

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10年前、今年と同じトリノがグラン・デパルテンザとなったときはチームタイムトライアルが行われ、チームHTC-ハイロードが優勝した。

 

シーズン最初のグランツール、ジロ・デ・イタリアが、2年ぶりに本来の時期に戻ってきた。

さらに、Jsportsにも5年ぶりに復帰。

例年以上の盛り上がりで、「ピンクの祭典」が開かれそうな勢いだ。

 

今回は、そんなジロ・デ・イタリアの全21ステージのコースを詳細にプレビュー!

まずは第1週。イタリア北西部のトリノから一気に南下し、アドリア海沿いに半島の「アキレス腱」までいって折り返し、内陸を北に引き返していくまでの10ステージを解説していく。

まだまだ本格的な山岳ステージは多くないなかで、平坦での高速バトルを得意とするスプリンターたちが活躍する1週目となりそうだ。

 

以下のPodcastで『サイバナ』のあきさねゆうさんと全21ステージの解説&優勝予想を行っています!

 

目次

 

第2週はこちらから

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第1ステージ トリノ〜トリノ 8.6㎞(個人TT)

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トリノ中心地、トリノ王宮や大聖堂に囲まれたカステッロ広場からスタートし、ポー川の西岸を真っ直ぐに南下。

イタリア様式とフランス様式の融合したヴァレンティーノ城前で中間計測地点(3.8㎞地点)を通過したのちに橋を渡り、今度はポー川の東岸を真っ直ぐに北上する。

最後はグラン・マードレ・ディ・ディオ教会前でフィニッシュ。

 

ひたすら平坦かつ直線多めで構成された、実に完璧なTTスペシャリスト向けステージ。

短いという意味ではスプリンタータイプの選手にも有利ではあるが、昨年のジロ・デ・イタリアの3つのTTステージで優勝したフィリッポ・ガンナが最高の優勝候補であることは間違いない。

 

とはいえ今年のティレーノ〜アドリアティコではワウト・ファンアールトに負けるなど、決して無敵であり続けているわけではないガンナ。

たとえば今回、そのガンナへの対抗馬になりうる選手がいるとすれば、フランスTT王者にしてパリ〜ニースではローハン・デニスを打ち破った男レミ・カヴァニャ。

また、ワウト・ファンアールト同様にオールラウンダータイプのジョアン・アルメイダ、ブランドン・マクナルティ、そしてレムコ・エヴェネプールにも注目したい。

もちろん、ヨス・ファンエムデン、ヴィクトール・カンペナールツなどのTTスペシャリストたちも負けてはいられない。

或いはまだ見ぬ才能が現れるか? 初日から驚くべき戦いが繰り広げられることを期待している。

 

 

第2ステージ ストゥピニジ〜ノバラ 179㎞(平坦)

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トリノ中心部から南西に約10㎞離れた位置にあるストゥピニジから、ピエモンテ州の北東部、ミラノにも程近い街ノバラへ。

ひたすらポー平原を横切っていく道程は標高150〜300m程度の真っ平らなフラットステージである。

 

最後は今年最初のグランツールでの集団スプリント。

昨年4勝と圧倒的な強さを誇ったアルノー・デマールは今年はツールに集中するために欠場。

 

代わって最強を期待されているのがカレブ・ユアン。

対抗となるのがジャコモ・ニッツォーロやマッテオ・モスケッティ。

今年相変わらず無類の強さを誇っているティム・メルリエも、グランツールでの初勝利が期待されている。

 

さらに言えばUAEツアーでその実力の高さを証明してみせた元SEGレーシングアカデミーのネオプロ、ダヴィド・デッケル(ユンボ・ヴィスマ)が、まさかのプロ初勝利をジロ・デ・イタリアで・・・なんてことも、十分にありえそうだ。

 

その他、エリア・ヴィヴィアーニやフェルナンド・ガビリアの復活はありうるか。

ペテル・サガンもカタルーニャで1勝しており可能性は十分にある。

ファンとしてはアンドレ・グライペルも、勝てずとも上位に入ることを期待したい。

 

 

第3ステージ ビエッラ〜カナーレ 190㎞(丘陵)

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前日にミラノまで近づきつつも、この日はまたピエモンテ州の中で完結。ノバラ北西に位置するビエッラから南下してカナーレまで。

前半はポー平原のフラットな道のりが続くが、後半に激しいアップダウンが登場する。

 

山岳ポイントは3つ。最後の4級山岳マネラの山頂からフィニッシュまでは36.2㎞も残っているが、むしろ気を付けるべきはラスト14.9㎞地点に用意された「スプリントポイント」。

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登坂距離2.6㎞・平均勾配7.1%、最大勾配は山頂直前に用意された15%。

この登りを利用したレイトアタッカーによる逃げ切り勝利が決まるか、それともしっかりとこれをコントロールしきったスプリンターチームによるスプリント勝利となるか。

予想の難しいステージとなりそうだ。

 

優勝予想としては、レイト・アタッカーの中でも前哨戦ツアー・オブ・ジ・アルプスで2勝しているジャンニ・モスコンはやはり調子が良さそう。

ほかにもレイト・アタック名手のルイスレオン・サンチェス、スプリントとなればミラノ~サンレモでもポッジョ・ディ・サンレモを難なくこなしていたカレブ・ユアン、ペテル・サガン、最近調子の良いディオン・スミスなんかも、上位に入り込めそうだ。

 

  

第4ステージ ピアチェンツァ〜セストラ 187㎞(丘陵)

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最初の3日間を過ごしたピエモンテ州を離れ、エミリア=ロマーニャ州へ。

ポー平原の残滓たるピアチェンツァから一気に南下し、モデナ県最南端のアペニン山脈山中の村セストラまで。

 

今大会最初の山頂フィニッシュ。

とはいえラストは2.5㎞ほどの下りと小さな登りと平坦になっており、厳密な山頂フィニッシュではない。

標高も最も高いところで1,052mと、そこまででもない。

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それでも、このラスト2.5㎞に山頂を置いている2級山岳コッレ・パッセリーノは、登坂距離4.3km・平均勾配9.9%・最大勾配16%のかなり凶悪な登り。

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残り6.8㎞のこの登りは、短く、そのあとに平坦が控えていることを考えると、そこまで大きな差はつかないかもしれないが、最初の総合争いが勃発する可能性は十分にあるだろう。

 

優勝候補は総合優勝候補でもあるエガン・ベルナルやサイモン・イェーツ、レムコ・エヴェネプールなどであることは間違いない。

一方で、勾配は厳しくも距離は比較的短い登りであるがゆえに、アルデンヌ系の強いワンデークラシックスペシャリストにもチャンスがありそうだ。

たとえばダヴィデ・フォルモロ、ダニエル・マーティン、ロマン・バルデ、バウケ・モレマなど・・・。

大会最初の山岳バトル、制するのは果たして?

 

 

第5ステージ モデナ〜カットーリカ 177㎞(平坦)

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イタリア半島の付け根の中央に位置するモデナから、アドリア海沿いの町カットーリカまで。

エミリア=ロマーニャ州をまっすぐ横切っていくこの日は、一切の登りが存在しない実にジロらしい真性オールフラットステージ。

最後はどうあがいても集団スプリント。ただ、残り3㎞を越えてから4つの直角コーナーが待ち構えている点には注意。

 

それでも、最後の1㎞は完全なストレート。

最有力スプリンターは間違いなくカレブ・ユアンだが、荒れた展開に強いジャコモ・ニッツォーロよりは、チーム力の高いアルペシン・フェニックスのティム・メルリエの方が対抗馬としては向いているかもしれない。

あとは発射台が強力なフェルナンド・ガビリアが、ガビリア自身のコンディションを整えることができていれば、十分に勝ちを狙うことはできるだろう。

ユアンvsガビリア。かつて最高のライバル関係であったはずの2人が、ここで本気の激突を見せてくれることを強く期待している。

 

 

第6ステージ フラサッシ鍾乳洞〜アスコリ・ピチェノ(サン・ジャコモ) 160㎞(丘陵)

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マルケ州の小さな村ジェンガにある、ヨーロッパ最大級の鍾乳洞の近くでスタートを切り、そのまま同じマルケ州内のアスコリ・ピチェノへ。

コース中盤に登坂距離10.4㎞、平均勾配7.4%の2級山岳フォルカ・ディ・グアルド。

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そして長い下りを経て、ラストは15.5㎞に及ぶ長い長い登り、サン・ジャコモへ。

平均勾配は6.1%だが、ラスト5㎞ほどの平均勾配は7.6%に及び、より厳しくなっていく。

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総獲得標高は3,400m。

まだまだジロの本当に厳しい登りには遠いが、今大会最初の本格的な山頂フィニッシュで、まずは「勝てない選手」が炙り出されていきそうだ。

というかなんでこのステージのカテゴリ、山岳じゃないんだ?

 

 

第7ステージ ノタレスコ〜テルモリ 181㎞(平坦)

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イタリア半島中部東海岸沿いのアブルッツォ州ノタレスコからアドリア海沿いに南下して、モリーゼ州の海沿いの町テルモリへ。

とくに海沿いを走る後半70㎞は完全なフラットで、横風には注意が必要ではあるものの、基本的には集団スプリントでの決着となるだろう。

 

とはいえ、それは第5ステージほどには「純粋な」スプリント合戦とはならなさそう。直線基調はラスト2㎞を少し超えたあたりまでで、そこからは3つの直角カーブと狭い道が続く。

そして、ラスト1.5㎞地点には最大勾配12%と瞬間的な激坂が。

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ここでアタッカーが飛び出して逃げ切り・・・という展開になるパターンはそう多くはないだろうが、多少なりとも混乱や遅れる有力勢が出てくる可能性はあると思われる。

荒れた展開に強いニッツォーロにとってはチャンスか?

 

 

第8ステージ フォッジア〜グアルディア・サンフラモンディ 170㎞(丘陵)

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イタリア半島の「アキレス腱」に程近いプッリャ州の街フォッジアからナポリの方面に向けて内陸を突き進んでいく。

ステージ中盤に2級山岳ボッカ・デッラ・セルヴァ(登坂距離18.9㎞、平均勾配4.6%)が用意されているが、この山頂からフィニッシュまでは50㎞以上残っており、逃げ集団の中から山岳賞を狙う選手にとっては重要なポイントとなっても、総合争いの舞台とはならないだろう。

 

問題はラストの4級山岳。とくにラスト3㎞を切ってからしばらくは、勾配が9~10%に達する非常に厳しい登りだ。

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そのあとはやや緩やかなポイントが続くが、とにかくラスト3㎞からの総合勢によるアタックで大きくはないもののしっかりとタイム差がつきそうなステージとなっている。

 

ただしそれは、必ずしも先頭で繰り広げられる争いとはならないかもしれない。

総獲得標高は3,400m。やはり「丘陵」ステージだけにまだまだジロのジロらしい洗礼は受けていないステージではある。

翌日に控えた今大会初の「山岳」カテゴリステージに向けて総合勢も多少は足を休めておきたい思いもあるだろう。

結果としてこの日は、逃げ切り向きのステージと見ることもできそうだ。

カレブ・ユアンの守りというのがこの大会の第一目標とはいえ、もちろん調子がよければ彼自身の勝利も狙いたいであろうトーマス・デヘント、あるいは昨年からイタリアのレースでは滅法目立っているマッテオ・ファッブロなどが、この日大きな成果を見せてくれる可能性はありそうだ。

 

 

第9ステージ カステル・ディ・サングロ〜カンポ・フェリーチェ 158㎞(山岳)

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総獲得標高は第8ステージと同じ3,400m。

一方で距離はより短く、また、常に登るか下るかを繰り返す、平坦区間の一切ないジェットコースターステージである。

これぞ、ジロ・デ・イタリアの山岳ステージ。しかも、ラストの登りに未舗装路が組み込まれていることもまた、ジロらしさを一層高めている。

今大会最初の超重要総合争いステージであることは間違いなく、激しいバトルが繰り広げられることだろう。

 

その最後の登り、スキー・リゾートの1級山岳カンポ・フェリーチェは、全体を見ると登坂距離6.6km・平均勾配5.8%となる。

しかし、最も注目すべき厳しい区間はラスト3㎞に凝縮されている。

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ラスト1.6㎞が平均勾配8.8%・最大勾配14%。

しかもこのプロフィールだけでもかなり厳しいのに、ここがすべて未舗装路区間だというのだから恐ろしいことだ。

真に力あるものだけが生き残ることができるうえに、運も試される。パンクやメカトラが起きたときに、リカバリできる道はその先に待ってはいないのだから。

 

なお、この日もまた、総合争いが先頭で巻き起こるとは限らない。

むしろ、ここまでのステージで早くも総合争いから脱落した元・総合上位候補の選手たちがいれば、この日は彼らがリベンジするチャンスとなるだろう。

ありえそうな選手といえば・・・ジュリオ・チッコーネやダヴィデ・フォルモロ、ロマン・バルデなどか・・・?

そのあたりは実際のレースを見てみないことには、何とも言えないけれども。

 

 

第10ステージ ラクイラ〜フォリーニョ 139㎞(平坦)

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ジロ・デ・イタリア2021の「長い第1週」のフィナーレを飾るのは、地震と共に記憶される町ラクイラから北上してウンブリア州のフォリーニョまで。

第8ステージで一旦ナポリ付近まで進んだプロトンは、そこから内陸部をたどりながら折り返しの北上中で、この日もひたすら内陸部を突き抜けていく。

 

とはいえ、前日までの厳しい登りばかりのステージではない。一応渓谷沿いに進む道のりが多く、アップダウンもスプリンターたちを振るい落とすほどのものではない。

そしてラスト38.7㎞地点で4級山岳の山頂を越えたあとは、ひたすら緩やかな下りと平坦だけが残されている。

 

よって、この日は今大会4回目か5回目かの集団スプリントのチャンスとなる。

後半に向けてチャンスが少なくなっていく中で、勝ち星を稼いでおきたいスプリンターとそのチームによるコントロールで、逃げ切りは望むべくもないだろう。

 

 

第2週はこちらから

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