りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

スポンサーリンク

ジロ・デ・イタリア2021 コースプレビュー 第2週

Embed from Getty Images

前回のモンテ・ゾンコランは2018年。今回と同じ2014年に登場した。そのときはクリス・フルームの「復活の勝利」が演じられ・・・そして、その年のジロもまた、彼が制した。

 

例年とは違う日程(第10ステージまでが第1週で第16ステージまでが第2週)で繰り広げられる今年のジロ・デ・イタリア。

第2週はトスカーナ州から北上しヴェネト州を経て、一旦スロベニアに入り込みつつも、イタリア北東部オーストリア国境に位置する「ドロミテ」へ。

 

第14ステージには悪名高きゾンコラン。

そして、第2週最終日には総獲得標高5,500m、「2つのチマ・コッピ」を抱えるクイーンステージが待ち構える。

 

今年の総合争いを決定づける、超重要ウィーク。

白熱の展開を期待したい。 

 

第1週はこちらから→ジロ・デ・イタリア2021 コースプレビュー 第1週 - りんぐすらいど

 

目次

 

第3週はこちらから

www.ringsride.work

 

スポンサーリンク

 

  

 

第11ステージ ペルージア〜モンタルチーノ 162㎞(丘陵)

f:id:SuzuTamaki:20210411100542j:plain

いよいよ「ストラーデビアンケ」がジロにやってくる。

ウンブリア州のペルージアから、トスカーナ州シエナ県のモンタルチーノへ。

 

ストラーデビアンケの舞台たるトスカーナの丘陵地帯に広がる未舗装路は、全長163㎞のコースの約5分の1にあたる35.2㎞もの距離を誇る。

しかも、そのほとんどが厳しい登りとセットになっているのだ。

 

最も長く厳しい未舗装路が、レース中盤に登場する3級山岳パッソ・デル・ルーム・スペント。

登坂距離13.0㎞の平均勾配3.5%。ただしもちろんこれは全体を均したときの数字であり、実際には前半部分がより厳しい。平均8.5%の、最大勾配16%の区間が3.5㎞にわたってつづく。さらに山頂直前のラスト1㎞も、平均勾配8%。

f:id:SuzuTamaki:20210411102303j:plain

 

だがこの登りの山頂からフィニッシュまではまだ40㎞ある。

パッソ・デル・ルーム・スペントから下りを経て谷底で2つの未舗装路区間を攻略。

 

最後はもう一度パッソ・デル・ルーム・スペントを登る。

ただし先ほどとは別の登りで、今度は未舗装路ではない。

全体の登坂距離は9.3㎞で平均勾配は4.6%。最初の1.25kmの平均勾配は8.1%で、後半部分に平均9.1%・最大勾配12%の区間が待ち受けている。

f:id:SuzuTamaki:20210411102302j:plain

 

これを越えればフィニッシュまでは3.8km。ただし最後の最後に最大勾配12%の短い登りが控えており、これもまた、オリジナルのストラーデビアンケを彷彿とさせるフィニッシュになりそうだ。

f:id:SuzuTamaki:20210411102305j:plain

 

総合争い勢によるフィニッシュというよりは、この地獄のような未舗装路と総獲得標高2,500mのアップダウンを乗り越えたアタッカーたちによるステージ勝利争いが展開しそう。

優勝候補は2018年のストラーデビアンケで2位に輝いているロマン・バルデや2020年のストラーデビアンケで2位に入っているダヴィデ・フォルモロ、アルベルト・ベッティオルも昨年4位で未舗装路と登りのスペシャリストでもある。

総合勢ではエガン・ベルナルが今年のストラーデビアンケで3位に入っているので注目したい。パリ~ルーベ覇者ペテル・サガンももちろん忘れてはいけない。

 

 

 

第12ステージ シエナ〜バーニョ・ディ・ロマーニャ 212㎞(丘陵)

f:id:SuzuTamaki:20210415102734j:plain

「ストラーデビアンケステージ」を終え、その聖地シエナに到達したプロトン。彼らはそのまま北上し、フィレンツェへ。

フィレンツェを越えた先には4つの、実にトスカーナらしいごつごつとした丘。

 

最後の登りはフィニッシュまで9.4㎞の位置で頂上を迎える3級山岳パッソ・デル・カルナイオ。

登坂距離10.8㎞、平均勾配5.1%。山頂まで7㎞から4㎞までの区間(残り16.4km~残り13.4km)の平均勾配が9.5%で、最大勾配14%と、非常に厳しいアタック最適区間となる。

f:id:SuzuTamaki:20210411102439j:plain

 

距離も長く、総獲得標高は3,700mに達する。

総合勢の争いというよりは、逃げ切り向きのステージとなりそう。

これだけのアップダウンに耐えられるアルデンヌ・クラシックやイル・ロンバルディアに適性のあるエスケーパーにチャンスがありそうなので、ダヴィデ・フォルモロやエステバン・チャベス、マッテオ・ファッブロ、マテイ・モホリッチなどに期待したい。

最近で言えばフェリックス・グロスチャートナーも調子が良さそうだし、フィリッポ・ガンナなんかも、これくらいのアップダウンは余裕で逃げ切ってしまいそうだ。

 

 

 

第13ステージ ラヴェンナ〜ベローナ 197㎞(平坦)

f:id:SuzuTamaki:20210411095720j:plain

エミリア=ロマーニャ州、かつての西ローマ帝国やこれを征服した東ゴート王国が首都を置き、のちに小ピピンが教皇に寄進した土地として有名なラヴェンナを出発。

北上しながらベネト州の『ロミオとジュリエット』の舞台として有名なベローナの街へと向かう。

 

その道のりはポー平原の真っ只中であり、極端なまでのオールフラット。

2年前、この地で最終ステージの個人タイムトライアルが行われ、リチャル・カラパスがマリア・ローザ獲得を確定させたが、今年はここで最強スプリンターたちが覇を競い合うこととなる。

 

この日を含めて、スプリンターたちのチャンスはあと2回。

マリア・チクラミーノを巡る争いも白熱していそうだ。

 

 

第14ステージ チッタデッラ〜ゾンコラン 205㎞(山岳)

f:id:SuzuTamaki:20210411100541j:plain

その名の通り城塞に囲まれたヴェネト州の町チッタデッラから、いよいよイタリア北東部、ドロミテ山塊へと突入していく。

まず襲いかかるのは、ドロミテを代表する名峰ゾンコラン。過去にもジルベルト・シモーニ、イヴァン・バッソ、イゴール・アントン、マイケル・ロジャース、そしてクリス・フルームといった名選手たちがこの頂上を制している。

 

ただ、今回はそのほとんどで使われた最も厳しい登りであるオヴァーロルートではない。

2003年の第12ステージで使用されシモーニの2つのゾンコラン勝利のうちの1つを彩るストリオからの登りである。

f:id:SuzuTamaki:20210411102432j:plain

 

とはいえ、悪名高きオヴァーロルートよりは幾分か緩いとはいえ、相変わらず厳しいことに違いはない。登坂距離14.1㎞・平均勾配8.5%である。

しかもそれは、比較的緩やかな区間を含んだ全体の平均でしかなく、最も厳しいラスト3㎞は常に10%以上の勾配が続き、平均では13%。

そして最後の1㎞は15%・最大勾配27%・・・まさに地獄のようなフィニッシュがそこには用意されている。

f:id:SuzuTamaki:20210411102430j:plain

 

 

第14ステージというのは、ジロ・デ・イタリアにおいて常に肝となるステージである。

2017〜2019年において、この第14ステージを制したものがその年の総合優勝を決めている。

 

今年もまた、この登りが王者を生み出すか。

2019年ツール覇者エガン・ベルナル、2020年イル・ロンバルディア3位アレクサンドル・ウラソフ、2020年ツール総合4位ミケル・ランダ、2019年ツール総合4位エマヌエル・ブッフマン、2020年ブエルタ・ア・エスパーニャ総合3位ヒュー・カーシー、2014年イル・ロンバルディア覇者ダニエル・マーティン、キング・オブ・ジロ、ヴィンツェンツォ・ニバリ、2018年のジロを席巻したサイモン・イェーツ、そしてレムコ・エヴェネプール・・・・最強クライマーを巡る争いがここで頂点に達する。

 

 

第15ステージ グラド〜ゴリツィア 147㎞(丘陵)

f:id:SuzuTamaki:20210411100508j:plain

ヴェネツィアとトリエステの間のラグーンに位置する町グラドはぜひ空撮で見てみたい非常に美しい町である。

そこから北上し、イタリアとスロベニア国境に位置する町ゴリツィアを中心に一部スロベニアに入り込みつつ、31㎞の周回コースを2周半、その中に登坂距離1.7km・平均勾配8.5%・最大勾配15%の短い急坂ゴルニェ・セルボが3回登場してくる。

f:id:SuzuTamaki:20210411102428j:plain



そしてフィニッシュ前ラスト3㎞地点には、「スプリントポイント」ノヴァ・ゴリツィアと最大勾配14%の急坂。そして3回登場する直角カーブと短い未舗装路区間・・・最後の最後まで気が抜けない、トリッキーなコースである。

f:id:SuzuTamaki:20210411102429j:plain


強烈な山岳ステージに挟まれたこの日も、逃げ屋向き。しかも、登り自体はものすごく厳しいわけではないため、クライマーとは呼ばれえない選手たちにも幅広くチャンスがもたらされる。

その意味でチャンスがありそうなのが、アスタナ・プレミアテックのファビオ・フェリーネ、バルディアーニCSFのジョヴァンニ・ヴィスコンティ、ボーラ・ハンスグローエのチェーザレ・ベネデッティとマッテオ・ファッブロ、ドゥクーニンク・クイックステップのミケルフレーリヒ・ホノレ、EFエデュケーション・NIPPOのアルベルト・ベッティオル、トレック・セガフレードのジャンルーカ・ブランビッラ、そしてUAEチーム・エミレーツのキング・オブ・ジロ、ディエゴ・ウリッシなどに注目だ。

 

 

第16ステージ サチレ~コルティナ・ダンペッツォ 212㎞(山岳)

f:id:SuzuTamaki:20210426095954j:plain

フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州の町サチレを出発。しかし、平地を走るのはスタート直後のごくわずか。最初の10㎞を過ぎればいきなりの1級山岳、そしてドロミテの山中へと放り込まれていく。

最後はドロミテの真っ只中に位置するアンペッツォ地方の中心、1956年の冬季オリンピック会場となったスキーの町コルティナ・ダンぺッツォでフィニッシュする。

 

厳しい登りの連続と超長距離とを同居させる、実にジロ・デ・イタリアらしい今大会最難関ステージ。

大会最標高地点(チマ・コッピ)を含む2,000m級の山を終盤に3連続で登らせ、総獲得標高は5,500m。

これが休息日明けではなく第2週の最後に持ってきたのは、大会主催者の慈悲なのか、逆に最高の嫌がらせなのか・・・

 

最後の2,000m級の山岳3連戦を見ていこう。残り97.9㎞から登り始めるこの3連戦では、どこで動きが起きてもおかしくはない。

まずは残り97.9㎞から登り始めて残り83.9kmでピークに達する1級山岳パッソ・フェダイア

f:id:SuzuTamaki:20210411102424j:plain

全体の平均勾配は7.6%だが無視してよい。

重要なのはラスト5.5㎞の10~12%区間である。ラスト3㎞付近で最大18%の地点も存在する。

 

とはいえ、ここはいくらなんでもフィニッシュまでは遠すぎる。(エースの調子が良ければ)イネオスなんかが中心になって集団のペースを一気に上げ、「勝てない選手」たちが次々と剥がれ落ちていくことがあっても、ここで無謀なアタックを繰り出すものはそうそういなさそうだ。

 

いや、いるかもしれないが…その場合は世紀の大逆転劇が繰り広げられる余地はある。エヴェネプールとかがもしかしたら伝説を創ってしまうかもしれない。調子が取り戻せていれば、だが。

 

 

続いてはチーマ・コッピのパッソ・ポルドイ

f:id:SuzuTamaki:20210411102422j:plain

だが、ここは長くて標高が高いというだけで、実はそこまで難しい登りではない。

平均勾配は6.8%だし、常に一定の(他の難関峠に比べれば)緩やかな勾配が延々と続くだけであり、選手たちは淡々と踏み続けていくだけとなるだろう。最大勾配も10%。普通ならアタックポイントになるであろうこの区間も、この日に限ってはただ耐えるだけの区間となりそうだ。

 

何しろ、この山頂を越えて残り58.8㎞。この先残り27.6㎞地点から登り始める最後の登りこそが、この日最大のモンスターなのだから。

 

 

すなわち、1級山岳パッソ・ジャウ

チーマ・コッピと標高はわずか6mしか違わない、事実上今大会「2つ目のチーマ・コッピ」たるこの登りは、登坂距離9.9km・平均勾配9.3%

f:id:SuzuTamaki:20210411102420j:plain

 

しかも、パッソ・フェダイアのように、その登りのうちの最後の5.5kmが実は本体だ、なんてことはなく、約10㎞の道のりすべてが万事この9~10%の急勾配が延々と続いている、そんな登りなのだ。

長い道のりと激坂・淡々とした登りなどのバリエーション豊かな2,000m級の2つの山を越えたあとにくる、この10㎞の「地獄」。

本当に強いものしか、ここを先頭で乗り越えることはできないだろう。

 

最後は17.5㎞の下り。だが、これはもう、追いつくとかを期待できるものではないだろう。パッソ・ジャウを先頭で通過した数名(もしくは1人)がそのままフィニッシュまでの長いエピローグを演じるだけの下りとなりそうだ。

 

逃げ切りが決まる可能性ももちろんあるが・・・あまりにも厳しすぎて、本当に強い選手がステージ勝利を狙うことになりそうだ。

 

そして繰り返しになるが、この日は大逆転も狙えるステージ。モンテ・ゾンコランでは思うように調子を上げられていなかった選手やここまで牙を隠していた伏兵が鮮烈なる勝利を挙げる可能性もある、ドラマティックな1日となりそうだ。

 

 

 

もちろん、ジロ・デ・イタリアはここでは終わらない。

ツールやブエルタのように、3週目が厳しくない、なんてことはない・・・むしろここからが、本当のジロ・デ・イタリアである。

 

第3週はこちらから

www.ringsride.work

 

 

スポンサーリンク

 

  

 

スポンサーリンク