いよいよ開幕する今年最初のグランツール、ジロ・デ・イタリア。
Jsportsでも5年ぶりの放映となり、その注目度は例年以上。
そして、エガン・ベルナルやレムコ・エヴェネプールなど、有力選手が揃いつつもその状態は不明確と、混戦が予想される。
今回はそんなジロ・デ・イタリア2021に出場する全23チーム184名の選手全員のスタートリストと簡単なプレビューをお届けする。
※年齢はすべて2020/12/31時点のものとなります。
※各国ロードチャンピオンについては表中の国名を太字にしております。
目次
- 1~.イネオス・グレナディアーズ(IGD)
- 11~.AG2Rシトロエン・チーム(ACT)
- 21~.アルペシン・フェニックス(AFC)
- 31~.アンドローニジョカトリ・シデルメク(ANS)
- 41~.アスタナ・プレミアテック(APT)
- 51〜.バーレーン・ヴィクトリアス(TBV)
- 61〜.バルディアーニCSF・ファイザネ(BCF)
- 71〜.ボーラ・ハンスグローエ(BOH)
- 81〜.コフィディス・ソルシオンクレディ(COF)
- 91〜.ドゥクーニンク・クイックステップ(DQT)
- 101〜.EFエデュケーション・NIPPO(EFN)
- 111〜.EOLOコメタ(EOC)
- 121〜.グルパマFDJ(GFC)
- 131〜.アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ(IWG)
- 141〜.イスラエル・スタートアップネーション(ISN)
- 151〜.チーム・ユンボ・ヴィスマ(TJV)
- 161〜.ロット・スーダル(LTS)
- 171〜.モビスター・チーム(MOV)
- 181〜.チーム・バイクエクスチェンジ(BEX)
- 191〜.チームDSM(DSM)
- 201〜.チーム・キュベカ・アソス(TQA)
- 211〜.トレック・セガフレード(TFS)
- 221〜.UAEチーム・エミレーツ(UAD)
関連リンク
Podcastでも『サイバナ』のあきさねゆうさんと全21ステージの解説&優勝予想をしています!
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1~.イネオス・グレナディアーズ(IGD)
総合★★ / スプリント★ /逃げ★★★
不確定なエース、最強のチーム
昨年総合優勝者テイオ・ゲイガンハートは今年はツール・ド・フランスに集中するために不出場。代わりに2019年ツール・ド・フランス覇者エガン・ベルナルがエースとしてやってきた。
ただし、昨年のツール・ド・フランスも背中の痛みで途中リタイアとなったベルナル。今シーズン序盤のツール・ド・ラ・プロヴァンスでは総合3位・ストラーデビアンケでは4位とその調子を取り戻しているように見えたが、ティレーノ~アドリアティコではやや失速。背中と腰の痛みが再発してきたということで、その後はレースに出場せず、母国コロンビアに戻って休養と高地トレーニングを行ってきた。
よって、今回はおよそ1ヵ月半ぶりのレース。そして彼自身も、結果を出せるかどうかは背中の痛み次第であることを認めている。
一方、チームとしても、ベルナルが厳しかったときにはただちにパヴェル・シヴァコフを代理エースとして立たせる準備はできているようだ。本人もその意志が十分にある。
また、昨年ツールで区間1勝し、今年イネオスに移籍してきたダニエル・マルティネスも、今年のUAEツアーで最強の山岳アシストであることを証明するなど、調子は良い。いざベルナルもシヴァコフも厳しいときには、ステージ優勝候補になるとともに、彼自身が第3の選択肢になったとしてもおかしくはない。
その他、昨年のジロの3つの個人TT「全勝」のガンナ、昨年ジロ区間1勝のナルバエス、前哨戦ツアー・オブ・ジ・アルプスで区間2勝のモスコン、そして今年ここまでのレースで全チーム中随一の山岳支配力をもつ最強山岳トレイン。
エースに不確定な要素はありつつも、総合にしてもステージにしても、今年「も」このチームが最強であることには変わりない。
11~.AG2Rシトロエン・チーム(ACT)
総合★ / スプリント★★ /逃げ★★
豊富な山岳アタッカーで勝利を狙う
総合エースは不在。ただし、近年のAG2Rのジロは、最初から総合を狙うことなくステージを狙っているという印象で、2019年はナンズ・ピータースがその試みを成功に結び付け、昨年はラリー・ワーバスとアンドレア・ヴェンドラーメがそれぞれ山岳ステージで逃げに乗り区間上位に入るなど健闘している。
今年もその2人はメンバー入り。ヴェンドラーメはアンドローニ次代の2019年にもチャベスが勝った山岳ステージで2位に入っており、安定感の高さが売り。今度こそ。なお、スプリントステージでも上位に入れる謎脚質の持ち主でもある。
ほかにも2019年ブエルタ・ア・エスパーニャ山岳賞のブシャールや、2015年ブエルタ・ア・エスパーニャ逃げ切り勝利のグジャール、もちろんガロパンは、2014年ツール・ド・フランスでマイヨ・ジョーヌを着たり逃げ切り勝利をしていたりする。
とにかくアタッカーが豊富。積極的に逃げて、2年前同様に大きなチャンスを掴みたいところ。
そんな中、それでも総合でひそかに期待したいのが、2019年ツール・ド・ラヴニール総合4位のクレモン・シャンプッサン。
今年も春先のパンチャー向けProカテゴリレースで上位に入るなど調子の良い彼が、ステージ優勝はもちろん、総合でもTOP20に入ってくれれば・・・。
もちろん「フランス人若手の星」は、期待しすぎると潰れてしまう傾向があるのでほどほどにしておくが、やはり注目したくなってしまうのである。
21~.アルペシン・フェニックス(AFC)
総合★ / スプリント★★★ /逃げ★★
UCIプロチームの皮をかぶった実質的なワールドツアーチーム
元ベルギー王者ティム・メルリエは、昨年のティレーノ~アドリアティコでもパスカル・アッカーマンを打ち倒し、今年もマッズ・ピーダスンやフロリアン・セネシャルを彼らが得意とするクラシックスプリントで圧倒した。
今回がグランツール初出場となる彼ではあるが、いきなりステージ優勝を奪い取ったとしてもなんらおかしくはない。
チームメートもフェルファーク以外はワールドツアーチーム経験のない選手たちばかりだが、その実力は十分にワールドツアー級。とくに現ベルギー王者ドリース・デボントは、今年のスヘルデプライスでジャスパー・フィリプセンがサム・ベネット&ミケル・モルコフの最強コンビを打ち倒した際の発射台の1人であり、逃げ力も高いステージ優勝候補の1人でもある。
リースベーク、フェルメールシュの2人も、今年のクラシックシーズンで幾度となくマチュー・ファンデルプールの活躍を支えた1級クラシックライダーであり、彼らが逃げに乗ったとしたら、その勝利の可能性には常に警戒しておくべきであろう。
もはや、UCIプロチームであることを忘れてしまいそうな強力な布陣。3週間を終えた後、獲得UCIポイントで順位付けをした際に、どれだけのワールドツアーチームが彼らに敗北してしまうのか、算出してみるのが恐ろしくなってくる。
31~.アンドローニジョカトリ・シデルメク(ANS)
総合★★ / スプリント★ /逃げ★
期待の「アンドローニ南米選手」の今年はいかに?
今年のジロ・デ・イタリアのワイルドカードが発表された際にその名が存在しなかったことで、チームマネージャーのジャンニ・サヴィオが怒りのコメントを発表したことは記憶に新しい。
その後、その怒りの矛先が向けられていたヴィーニザブが度重なるドーピング違反者を出したことでジロ出場を辞退。結局、アンドローニのジロ出場が実現することに。
そして、過去エガン・ベルナルやイバン・ソーサを輩出し、その後もファウスト・マスナダやマッティア・カッタネオなど強力なライダーたちをワールドツアーチームに送り込み続けているこのチームが、今年もジェフェルソン・セペダという才能を引っ提げてジロに乗り込んできた。
2019年ツール・ド・ラヴニール最終ステージでも優勝しているセペダ。
直近の「ジロ前哨戦」ツアー・オブ・ジ・アルプスでは総合4位と、期待しかない状態。
果たして今回のジロで、その才能はどこまで発揮されるのか。そして翌年のワールドツアーチーム行きはあるのか?
元NTT育成チームのテスファションも、ツアー・オブ・ジ・アルプス第1ステージなど、スプリンター/パンチャー向けのステージで今年何度かシングルリザルトを記録しており、今回のジロでもちょっと期待。
ほかはどれだけ積極的に逃げに乗れるか。
41~.アスタナ・プレミアテック(APT)
総合★★★ / スプリント★ /逃げ★
絶好調ウラソフが表彰台・・・いや、頂点を目指せるか?
昨年はヤコブ・フルサンとミゲルアンヘル・ロペス、そしてウラソフのトリプルエースが期待されながらも、ウラソフが体調不良、ロペスが落車で開幕早々にリタイア。その後はフルサンがほとんど孤軍奮闘する羽目になった。
今年はウラソフが単独エースとして出場。
今年すでにパリ〜ニース総合2位、「前哨戦」ツアー・オブ・ジ・アルプス総合3位と、かなり絶好調な状態で乗り込んできている元U23版ジロ・デ・イタリア覇者。
アシストとしては昨年のモンヴァントゥ・デニヴレチャレンジ勝利を完璧にアシストしてくれた「次期エース最右翼」テハダに、ベテランのサンチェスとゴルカ、そしてパンチャーでありながら昨年のフルサンを懸命にアシストしてくれていたフェリーネなどが揃い、チームの総力を挙げて、というわけではないにしてもかなり頑張っていると思う。
あとはテハダがどこまでその実力を発揮して最後までウラソフの傍にいてくれるか、そしてそこからウラソフがどこまでトップライダーたちに食らいつけるか。
目指すは表彰台。いや、むしろ、その頂点すら・・・決して、夢ではない。
51〜.バーレーン・ヴィクトリアス(TBV)
総合★★★ / スプリント★ /逃げ★★★
今大会最強のダブルエースと強力なアタッカーたち
昨年ツール総合4位のランダと昨年ジロ総合5位のビルバオのダブルエース体制。
もちろん、昨年のツール同様、ビルバオがランダのエースに専念する可能性はある。
とはいえ、今シーズンの序盤でこそランダの好調さが目立ちつつも、より直近のイツリア・バスクカントリーではビルバオの方が僅かに総合順位が上。そして「前哨戦」ツアー・オブ・ジ・アルプスではビルバオが総合2位と絶好調ぶりを見せているため、実際のエースがどうなるかはわからない。
そんなダブルエースを支えるのが、昨年のツールでランダを支えつつ自らも総合10位に入ったスーパーアシストのカルーゾ。
さらに昨年ジロでも区間優勝しているトラトニクに、逃げスペシャリストのモホリッチ、さらには今年のパリ〜ニースのクイーンステージでラスト50mまで逃げ続けた男マーダーと、総合争いとステージ優勝のどちらも高いレベルで狙えるバランスの取れた布陣だ。
その中でしっかりとポジションを確保した新城はやっぱり凄い。基本はアシストに徹することになるだろうが、日本人としてはやはり、僅かなチャンスを掴み取ってほしいとはどうしても、思ってしまう。
61〜.バルディアーニCSF・ファイザネ(BCF)
総合★ / スプリント★ /逃げ★★
ジロで実績のあるベテランたちが集う
過去ジロで3勝しているバッターリン、2019年ジロで一時新人賞ジャージも着ていたカルボーニ、昨年のエトナステージで区間2位のヴィスコンティなど、ジロで実績を出している選手たちが集う。
その意味で、今年も非常に期待が持てる。まずは積極的な逃げを。そして、できればステージ優勝を。
上記メンバー以外ではたとえばフィオレッリがボスニア・ヘルツェゴビナのステージレース、ベルグラード〜バンジャルカでシングルリザルトを3回、総合5位でフィックスしている。
とはいえ1クラスとは名ばかりのコンチネンタルチームが中心となって活躍するレースだけに、あまり参考にはならないだろう。
71〜.ボーラ・ハンスグローエ(BOH)
総合★★ / スプリント★★★ /逃げ★★★
昨年より好調なサガンと、山岳エスケーパーが揃う
昨年に続きペテル・サガンをエースに。
昨年はツールとジロを連戦で出場し、いずれもポイント賞を目指したが、果たせず。ただ、ジロではスプリントではなくかつてのロンド勝利のときを思い出させるような逃げ切りで優勝。しかもフィニッシュと同時に虹がかかるという演出に、やはりこの男はヒーローなのだと感じさせた。
今年はどうか。すでにカタルーニャとロマンディでスプリント勝利しているなど、昨年よりはずっと調子は良さそう。
マリア・チクラミーノは・・・ジロの中間スプリントポイントのルールはツールと比べてサガンみたいなタイプには厳しいルールなので難しいかもしれないが、昨年のデマールのようにユアンが何勝もしたりしなければ可能性はあるだろう。
総合では2019年ツール・ド・フランス総合4位のブッフマンがエース扱いだろうが、今年は正直調子が良いとは言えない。昨年ブエルタ・ア・エスパーニャ総合9位で先日のツアー・オブ・ジ・アルプスでも区間1勝しているグロスシャートナーの方が、もしかしたらエースを任される可能性もある。
また個人的には昨年からイタリアのレースで活躍が目立つファッブロのプロ初勝利に期待したい。ジ・アルプスでも逃げに乗り続け良いリザルトを重ねているので、十分に可能性はあるだろう。
2019年ラヴニール総合2位のアレオッティにももちろん期待したいのだが、今期ここまであまり良い姿を見せられていないのは気がかりだ。
81〜.コフィディス・ソルシオンクレディ(COF)
総合★ / スプリント★★ /逃げ★
ヴィヴィアーニの復活は果たせるか
エリア・ヴィヴィアーニの復活はあるか。今年は一応1クラスとはいえ1勝している。メンバーもサバティーニ、コンソンニ、そして弟アッティリオとかなり手厚い体制で、なんとかチームの期待に応えたいところだが・・・。
一応逃げ要員も2013年ブエルタ山岳賞のエデ、2013年ツアー・オブ・ターキー総合優勝のベルハネなどタレントは揃ってはいる。その中でも今年のバレンシア1周のクイーンステージで2位につけているラフェ、カタルーニャ1周初日の逃げ切りメンバーの中に入って区間3位となったロシャスなどは、直近の状態から言ってもかなり期待ができる選手ではある。
下手をすれば何も手に入れることができないまま3週間を終えてしまいかねないこのチーム。とにかく貪欲に目立っていきたいところ。
91〜.ドゥクーニンク・クイックステップ(DQT)
総合★★★ / スプリント★ /逃げ★★
エースはやはりアルメイダか?
エースナンバーはエヴェネプール。しかし、チームも本人も、原則として彼がエースとして走ることは想定しておらず、あくまでもエースとしてメインで考えているのは昨年マリア・ローザ15日間着用・総合4位のアルメイダであるようだ。
チームもスプリンターを連れてきておらず、昨年総合9位・直近のツール・ド・ロマンディ総合3位と絶好調のマスナダ、昨年総合14位でリエージュ~バストーニュ~リエージュなど直近のレースでも終盤で活躍する姿も見せているノックスなど、かなり良いメンバーが揃っている。
ただ、昨年の最も厳しい山岳ステージや、今年のUAEツアーやティレーノ~アドリアティコなどでのクイーンステージにおけるアルメイダの走りを見ていると、表彰台の頂点を目指すにはあと一歩が足りない印象が強い。
そこで、常識を打ち破る力をもつエヴェネプールが奇跡を起こしてくれないか、と期待したくなる気持ちはどうしてもある。
また、TTにおいては今期の実績だけで言えばガンナをすでに超えているカヴァニャがどうなるかが楽しみ。もちろん、逃げにも期待だ。
ほか、昨年のこのジロでパンチャーとしての才能を覚醒させた感のあるホノレ。今年もバスクでチェルニーと共に山岳ステージ出逃げ切り勝利を果たしており、今回も期待できそう。
もし総合がうまくいかなくとも、スプリンターがいなくとも、十分に活躍する可能性のあるチーム体制だ。
101〜.EFエデュケーション・NIPPO(EFN)
総合★★ / スプリント★ /逃げ★★
今年も独特のジャージと確かな実力者たちで目立ちまくる!
今年もジロ特別ジャージで登場となるEFチーム。今回は黒ベースに、このチームの1つのアイデンティティであるインターナショナル性を象徴するような各国の国旗がちりばめられている。スポンサーしていることもあって日の丸も目立つ位置に!
Team presentation ✅
— EF Pro Cycling (@EFprocycling) May 6, 2021
Ready to roll for Saturday 🤜 pic.twitter.com/o0L3go39Vs
もちろんそんな一発芸で終わるわけでは決してない。昨年もジャージでインパクトを与えつつ、しっかりとステージ2勝と山岳賞を持ち帰っている。今年もその主役たるカイセドとゲレイロを共に連れてきており、加えて昨年ブエルタ総合3位のカーシーが、今大会も総合表彰台候補筆頭として注目を集める。
さらに個人的に注目したいのは、NIPPOデルコ・ワンプロヴァンスから移籍してきたイギリス人若手のサイモン・カー。今年のストラーデビアンケでも終盤常に先頭集団に近い位置で生き残り、最終的にも11位。今年はストラーデビアンケ風ステージもあり、逃げ切り勝利も期待ができそうだ。
あとティレーノ~アドリアティコ最終日TTでも好成績を残しているベッティオルが、初日の短いTTであれば上位に入り込む可能性も?
今年もジャージもリザルトでも、どんどん目立ってほしいところ。
111〜.EOLOコメタ(EOC)
総合★ / スプリント★ /逃げ★
とにかく逃げでどれだけ存在感を示せるか
元々はコンタドールが創設し、イヴァン・バッソと共に代表を務めるチーム。今年からジロ含むRCSの各種レースをスポンサードするEOLOがタイトルにつき、イタリア籍のUCIプロチームとして昇格。いきなりのジロ出場権を得た。
それに合わせてバルディアーニやアンドローニからジロ経験豊かなベテラン選手たちを多数獲得。ベレッティもアルバネーゼも今年ツアー・オブ・ターキーでシングルリザルトを連発し、ヴィーニザブから移籍してきたフォルトゥナトゥも直近のブエルタ・アストゥリアスの最終日山岳ステージで区間7位。
ハンガリー人のディナもツアー・オブ・ジ・アルプスで積極的に逃げて山岳賞2位となっている。
今大会はステージ勝利できれば万々歳。そうでなくとも連日逃げに乗り、いかに目立っていけるかが勝負となるだろう。
今大会もトレックの有力エーススプリンターとして活躍するマッテオ・モスケッティを輩出したチームだけに、新たな若手の才能の発掘にも期待したい。今回でいえばティレーノ第1ステージやストラーデビアンケで逃げたリヴィに注目。
121〜.グルパマFDJ(GFC)
総合★ / スプリント★ /逃げ★★
若手からベテランまで実力者は揃っており、山岳逃げに期待
元々はティボー・ピノがエースを務める予定だった。しかし昨年ツールで負った腰の負傷が尾を引いており、今シーズンもここまでまったく振るわず。大事をとってジロ出場も回避し、しばらく療養に専念するようだ。
結果としてデマールもゴデュもおらず、やれることといったらステージ勝利を目指して果敢に逃げに乗ることくらいか。一応昨年・一昨年とパリ〜ニース総合7位のモラールのほか、ライヒェンバッハ、バディラッティなどの有力クライマーはいるが・・・総合を狙うよりはやはりステージを狙った方が吉かとは思う。
そんな中、昨年ジロ最終日のセストリエーレで区間9位を記録した若手ハンガリー人のヴァルテルには最注目。今年もボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ最終日のモンジュイックの丘ステージで、ライヒェンバッハと共にステージ3位・4位を記録している。
逃げ切りを狙って果敢にアタックしつつ、総合TOP20に入ることができれば上出来だ。
131〜.アンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ(IWG)
総合★ / スプリント★★ /逃げ★
正直苦しい体制・・・だが、希望がないわけではない
昨年シーズン終盤になって突如ワールドツアー化が決まり、そこから慌てて補強したものだから正直ワールドツアーとしての体裁は整っていない。2年前のCCCチーム以上に状況は悪く、今季唯一の0勝。この時点で0勝は、ワールドツアーチームとしては過去最低の状況かもしれない。
メンバーは決して悪いわけではない。CCCスプランディ・ポルコウィチェ所属時代の2017年には総合12位を記録しているヒルト、平坦スプリントではミナーリ、起伏のあるスプリントではパスクアロンがエースとなるだろうし、とくにパスクアロンはレースによってはワールドツアーの選手たちを食うほどの実力を持つ。
元カチューシャ→トタル・ディレクトエネルジーのレイン・タラマエも、山岳逃げスペシャリストである。
そして、困ったときのシクロクロッサー。マチュー・ファンデルプールとワウト・ファンアールトと並び、現役シクロクロッサーのトップレベルを走るクエンティン・ヘルマンスがグランツール初出場。
ロードレースでも2018年にツール・ド・ワロニーで区間1勝&総合2位を記録している彼は、今年もイツリア・バスクカントリー第4ステージで区間9位、フレーシュ・ワロンヌにて14位など、登りの力もしっかりとつけてきているようで、今回のアンテルマルシェのメンバーの中では一番期待できるかもしれない。
果たして今大会、なんとか1勝をもぎ取って唯一の未勝利チームを脱出できるのか否か。
141〜.イスラエル・スタートアップネーション(ISN)
総合★★ / スプリント★ /逃げ★★
個々の逃げ力は高く、結果を残せる可能性は十分!
EFと同じく、特別ジャージで挑むイスラエル。なんか、昔のイネオスっぽい色合い・・・。
Do you like our special Giro jersey? Now, you can win it for yourself!😍
— Israel Start-Up Nation / Israel Cycling Academy (@TeamIsraelSUN) May 7, 2021
𝗜𝘁'𝘀 𝘃𝗲𝗿𝘆 𝘀𝗶𝗺𝗽𝗹𝗲:
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2)Find your favorite photo
3)Post it on social media, tag us and send a cheerful message to our guys in @giroditalia!
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🇮🇹 #Giro pic.twitter.com/8mnatVLf5Y
こちらもアンテルマルシェと並んであまりワールドツアー感のないワールドツアーチームだが、昨年はマティアス・ブランドルとアレックス・ドーセットが見事なコンビネーションを見せて区間1勝。
スター選手に頼らない勝ち方で結果を残してくれた。
今年もこのコンビは健在。さらにツアー・オブ・ジ・アルプス山岳賞獲得した山岳エスケープスペシャリストのデマルキ、ツール・ド・ロマンディ区間2位・区間3位と調子の良いときのスプリント力が戻りつつあるベヴィンなど。
もちろん、総合ではダニエル・マーティンは十分に上位候補。ただ、彼はどれだけチームを転々としても、結局は総合争いでアシストがいないような境遇に見舞われるんだなぁ、と切なくなってくる。
誰もがそうなるとわかってるようなチームに移籍していく彼も彼だけど・・・。
151〜.チーム・ユンボ・ヴィスマ(TJV)
総合★★ / スプリント★★ /逃げ★
ベネット待望のエース、そしてフルーネウェーヘンの復帰
2017年ツアー・オブ・カリフォルニア総合優勝、昨年のイル・ロンバルディア2位、そして今年はついにニュージーランドロード王者に輝いたベネットが総合エース。
本当は昨年エースとしてジロに参戦予定だったが、コロナによるスケジュール変更に伴い有耶無耶となり、今年ついに念願が叶った形だ。
ただ正直、今年は昨年ほどの調子の良さはまだ見せられていない。また、明確に登れる選手がフォスとボウマンだけで、今期ここまでティレーノやバスクで山岳アシストの仕事をしっかりこなしていた19ラヴニール覇者フォスはともかく、ボウマンはどちらかというと山岳系ワンデーに強いパンチャー寄りの選手。
ベネットを守るための十分な体制をチームが用意できているかというと、甚だ疑問だ。
それよりはむしろ、ツール・ド・ポローニュでの事件以降出場停止処分が続いていたディラン・フルーネウェーヘンが、その処分期間明けと同時にこのジロへと緊急参戦したことに注目が集まっている。
そのフルーネウェーヘンを守るべく、今年UAEツアーで区間2位など目覚ましい活躍を見せてくれたネオプロのデッケル、アッフィーニなどが揃うスプリンター寄りのロースターにもなっているとも言える。
ただ、果たしてフルーネウェーヘンは本気でスプリントを放つことができるのか?
場合によってはデッケルがエースとして動く可能性もあるだろう。
フォス、デッケル。若手の走りに注目のチームである。
161〜.ロット・スーダル(LTS)
総合★★ / スプリント★★★ /逃げ★★
今大会最強スプリンターチーム・・・だが山岳要員も意外と◎
昨年4勝したデマールも、その前年のマリア・チクラミーノであるアッカーマンもいない中、今大会最強スプリンターは間違いなくこのチームのカレブ・ユアンであろう。
発射台としてもデブイスト、クルーゲのいつものデュオに加え若手有望なオルダーニもおり、平坦牽引役としては最強無比なデヘントも加わり最強布陣。
ユアンのスプリントを100%支援する、全力の体制だ。
かと言って、このチームの活躍の機会は必ずしもユアンのスプリントだけではない。
山岳逃げにおいても、ブエルタ優勝経験のあるマルチンスキーにツール・ド・ロマンディで連日逃げに乗っていたホーセンス、そして昨年ジロのエトナステージで区間3位、今年もUAEツアーのジャベルハフィートやパリ〜ニースのコルミアーヌなどで上位に食い込んでいるハーム・ファンフックなどが名を連ねている。
とくにファンフックは山岳逃げに全力を注げば十分に勝利が狙える存在だと思っているし、場合によっては総合上位を狙える可能性も・・・。
今大会最多勝利チーム候補No.1である。
171〜.モビスター・チーム(MOV)
総合★★ / スプリント★ /逃げ★★
ソレルは結果を残せるか? そして昨年に続き若手の活躍に期待
昨年のジロはまったくやる気のないロースターだった。
その中で新加入のセルジオ・サミティエが総合13位、ネオプロのルビオが第20ステージのセストリエーレでも終盤まで逃げるなど、若手が中心となって出せる力を出し切った、そんな印象があった。
今年はマルク・ソレルの単独エース。
2015年ラヴニール総合優勝者。2018年パリ〜ニース覇者。スペインの次代を担う男と期待されながら、昨年はまったく振るわなかった印象のあるこの男が、直近のツール・ド・ロマンディでは一時総合リーダーの座を手に入れクイーンステージでは遅れたものの最終日TTでも好走を記録して総合4位。
表彰台は難しいかもしれないが・・・悪くない走りはできそうな気がしている。
カタルドとヴィレッラ、そしてバレンシア1周総合2位のオリヴェイラがソレルを強力にサポート。ルビオは昨年に続き、山岳ステージでの逃げ切りでチャンスを掴み取って欲しい。
あと個人的に注目しているのが、2019年のツール・ド・ラヴニールでポイント賞を獲得しているマッテオ・ヨルゲンセン。丘陵系のステージでの逃げ力に可能性を持ち、たとえば今回も第18ステージなんかでチャンスがあるかも。
181〜.チーム・バイクエクスチェンジ(BEX)
総合★★★ / スプリント★ /逃げ★
総合優勝候補最右翼、ただ山岳アシスト体制に不安?
「4度目の正直」サイモン・イェーツ。昨年は直前のティレーノ〜アドリアティコで良いところを見せていたものの、新型コロナウイルスの影響で撤退せざるを得なかった。
今年は「前哨戦」ツアー・オブ・ジ・アルプス総合優勝を提げて参戦。もちろん、ジ・アルプスは決してものすごくレベルが高いレースだったわけではないだろうが、どのチームのエースも決して万全とは言い切れない中で、最も期待しうる存在がこのサイモン・イェーツである。
ただ、不安になるのはアシストの体制。カンゲルト、ニエベが山岳アシストの中心となるだろうしもしかしたらシュルツがそこに加わるかもしれないが、正直心許ないのが実情。
ルーカス・ハミルトンや今年かなり調子が上がってきているエステバン・チャベスがいてくれれば安心だったのだが・・・本格的な山岳ステージで、単独で先頭集団で戦わざるをえないサイモンの姿がイメージできてしまう。少なくともイネオスのチーム力とは歴然の差を感じてしまうところだ。
もちろん、見た目の実績だけでは計り知れないチーム力を持っているのもこのチームの魅力の1つ。かつてサンウェブが同様に心許ないように感じたチーム体制でしっかりとトム・デュムランを総合優勝させたときのように、バイクエクスチェンジには、無限の可能性を感じさせてほしい。
191〜.チームDSM(DSM)
総合★★ / スプリント★ /逃げ★★
総合よりもステージ狙いで
昨年、驚きの総合2位を記録したヒンドレー。ただ今年はカタルーニャ、ジ・アルプスともに完走できず。その前のパリ〜ニースも総合18位と振るわない。
AG2Rから移籍してきたバルデは逆にティレーノ〜アドリアティコ総合8位・ジ・アルプス総合9位とそこそこだが、果たして彼自身に総合狙う気があるのかは不透明だ。
思い切ってメンバー全員ステージ優勝狙いで自由に走るのは悪くない。アルントは丘陵ステージでも逃げに乗って小集団スプリントで勝ちを狙うのが得意だし、ロッシュもブエルタ逃げ切り勝利経験あり。
とくに若手のストーラーは昨年の第11ステージで区間3位、今年もジ・アルプス第3ステージ(モスコンが逃げ切った日)の集団先頭を取っていたりと、いいところまで行っている。
今回のジロでプロ初勝利!となっても何もおかしくはない選手だ。
201〜.チーム・キュベカ・アソス(TQA)
総合★★ / スプリント★★★ /逃げ★★
今大会期待度2位のヨーロッパ王者はユアンを倒せるか
ここもスポンサー問題で色々ゴタゴタしてしまい、大幅なメンバー入れ替えが発生。
なんとか残ってくれたヨーロッパ王者ニッツォーロが今季唯一の勝利をクラシカ・ドゥ・アルメリアで挙げてくれている。
今回のジロも、ユアンに次ぐ優勝候補ではあり、なんとか1勝はしていきたいところ。
あとは2018年総合5位、昨年総合11位のポッツォヴィーヴォが今年はどこまで狙えるか。安定感はあるが、さすがに年齢が気になる。
また、昨年は惜しくも逃げ切り勝利ならずの2位となってしまったカンペナールツが、今年も借りを返したいところ。もちろんTTも期待したいところではあるのだが、今年は正直、そこまでまだ目立ててはいない。
下手すればまったく結果が出せずに終わりかねないだけに、なんとかワールドツアーチームとしての矜持を見せてほしい。
211〜.トレック・セガフレード(TFS)
総合★★ / スプリント★★ /逃げ★★
布陣は非常に豪華。山岳逃げでチャンスを掴めるか
現役選手ではクリス・フルームと並ぶ3大グランツール制覇者たるニバリ。すでに結構な年齢だがジロ・デ・イタリアでの安定感は抜群で2010年以降出場した大会では昨年の総合7位以外はすべて表彰台。
しかし今年は4/14にトレーニング中の事故で手首を骨折。ジロ出場も危ぶまれた中でなんとか出場自体はすることに。
それでも、どこまでその実力を発揮できるか。無理はせず、ステージだけを狙う可能性も高いだろう。
ただ、ニバリがエースになれなくとも、チッコーネにモレマと、有力選手は多い。ブランビッラも今年ツール・デュ・ヴァール総合優勝するなど調子は良い。
総合ではなくひたすらステージ優勝や山岳賞を目指して、活発に逃げ続ける戦略を取っていくことになるかもしれない。
個人的にはこれまで惜しいリザルトが多いモスケッティが、そろそろジロ勝利を飾ってほしいとは思っている。
ただ、今年はここまで正直イマイチ。1勝はしているものの、イタリアの新設の1クラスレースであり、出場選手の顔ぶれも決してハイレベルなものではなかったため、あまり参考にならず。少し厳しいか。
221〜.UAEチーム・エミレーツ(UAD)
総合★★ / スプリント★★ /逃げ★★
最強発射台コンビから放たれるガビリアの「復活」に期待
エースはフォルモロ。過去このジロ・デ・イタリアでの総合10位経験が2回ある男。今年のUAEツアーなどでも、タデイ・ポガチャルのための山岳アシストの筆頭として終盤まで活躍する姿は見せていた。
しかし彼の本質はあくまでもリエージュ~バストーニュ~リエージュのようなワンデーレース。総合TOP10を狙えるかどうか、というところの戦いで終わってしまいそうな気はする。
むしろこのチームの本質はやはりガビリア。今回も、マキシミリアーノ・リケーゼとフアン・モラノという最強格の発射台を連れてきて、完全なガビリア体制。
この2人は昨年もグルパマFDJのトレインを圧倒する走りを見せていたりと、その実力は今大会においても随一。
あとはエースの調子さえよければ・・・直近1ヵ月もE3サクソバンク・クラシックでの落車の怪我によりレースに出られておらず不安が大いに残る。
またもちろん、「キング・オブ・ジロ」ディエゴ・ウリッシの活躍にも注目。昨年も区間2勝を成し遂げ、ジロでの区間勝利数を8に伸ばした。
今年も上積みができるか?
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