りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

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Groupama - FDJ  2020年シーズンチームガイド

 

読み:グルパマ・エフデジ

国籍:フランス

略号:GFC

創設年:1997年

GM:マルク・マディオ(フランス)

使用機材:ラピエール(フランス)

2019年UCIチームランキング:12位

(以下記事における年齢はすべて2020年12月31日時点のものとなります) 

 

参考 

FDJ 2018年シーズンチームガイド - りんぐすらいど

Groupama - FDJ 2019年シーズンチームガイド - りんぐすらいど

 

 

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2020年ロースター

※2019年獲得UCIポイント順。

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チームの入れ替えはほぼなし。2020年も、ピノ、デマール、そしてゴデュの3頭体制で挑む。

このチームの弱点は、エースの少なさだと思う。グランツールの総合エースを担える存在としてのピノ、グランツールでの勝利を狙えるエーススプリンターとしてのデマール。それぞれの役割を担える選手が、できれば2人はほしい。

その意味で、2018年から少しずつ実績を出しつつあるゴデュの、2019年のさらなる成長は喜ばしいことだ。2020年、再びツールを走る可能性が取りざたされているピノにとって、ゴデュは最高のアシストであることは間違いないだろうが、そろそろ彼にも、グランツールのエースとしての座を、与えてあげるべきだとも感じる。

また、スプリンターにおいても、マルク・サローが順調に進化中。ブエルタ・ア・エスパーニャではエースを担い、勝てはしなかった上位に何度か入る走りを見せた。2020年の目標は、グランツールでの1勝だ。

ほかにも強力な選手はいる。2019年は逃げ切り勝利でも活躍したステファン・クンは、世界選手権やオリンピックでのTTで結果を目指したいところ。急成長株のトップともいうべきヴァランタン・マデュアは、総合エース候補であると共に、アルデンヌ・クラシックエースとしても期待しうる存在である。

めちゃくちゃ強いチームではない。しかし、国際化が急速に進むワールドツアーチームの中でも最もドメスティックなチームの1つでもあるこのチームが、マイペースに、フランスもしくはスイスの若手たちを育て上げながら、少しずつ結果を重ねていく姿を期待して見ていきたい。


注目選手

ティボー・ピノ(フランス、30歳)

脚質:クライマー

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2019年の主な戦績

  • ティレーノ〜アドリアティコ総合5位
  • クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ総合5位
  • ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ総合11位
  • ツール・ド・オー・ヴァル総合優勝
  • ツール・ド・ラン総合優勝
  • ツール・ド・フランス区間1勝
  • 世界ランキング55位

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2019年のツール・ド・フランスの主役の1人であった。ジュリアン・アラフィリップと共に彼が活躍したからこそ、2019年のツール・ド・フランスは一気に盛り上がったのである。第8ステージではピノとアラフィリップが共に逃げたステージはその最高潮であった。

それだけに、第19ステージでの、あの涙のリタイアはあまりにも切なかった。実際、2019年のピノは、とにかくこのツールのためだけにシーズンを過ごしていた。チームも今までになく彼をそれだけに集中させ、デマールにもツール出場を回避させるなど、ピノのための体制を明確に作り上げていた。

そのピーキング、体制構築はすべてうまく行き、マイヨ・ジョーヌすらも見えていた中での、あのリタイア。その衝撃はあまりにも強く、その後彼は、しばらくの間自転車を見ることすら拒絶したという。

それでも彼は、2020年、再びツールを焦点に据える。同じようにツール一本に絞ったスケジュールでいくのか、デマールはツールに出るのかどうか、はわからない。ただ、彼はもうツールを逃げることはしない。

2019年の走りが奇跡ではなかったことを証明できるか。頑張れピノ。

 

 

アルノー・デマール(フランス、29歳)

脚質:スプリンター

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2019年の主な戦績

  • ジロ・デ・イタリア区間1勝、区間2位×2
  • オコロ・スロベンスカ区間1勝、総合2位
  • パリ〜ツール4位
  • サイクラシックス・ハンブルク8位
  • ブリュッセル・サイクリング・クラシック6位
  • 年間5勝
  • 世界ランキング84位

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2017年・2018年と連続で出場し、いずれもステージ優勝を果たしていたツール・ド・フランスを、2019年は回避した。ピノの総合に集中するためだったのかもしれないが、代わりに出場したジロ・デ・イタリアで初優勝。マリア・チクラミーノを着用した瞬間もあり、最終的には奪い返されるものの、良い戦いを演じていた。

2020年はどうなるか。再びツールの地に立てるのか。ただ、個人的には、ジロやブエルタで伸び伸びと走る彼の姿も悪くないとは思っている。

また、彼のもう1つの武器とも言われているクラシックはどうか。本人はいつかパリ〜ルーべを勝ちたいと言っているらしいが、今の所、なかなか良いところにまでは行けていないのが現状・・・。

 

 

ダヴィ・ゴデュ(フランス、24歳)

脚質:クライマー

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2019年の主な戦績

  • ツール・ド・フランス総合13位
  • ツール・ド・ロマンディ区間1勝、総合5位
  • UAEツアー総合3位
  • リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ6位
  • グラン・プレミオ・ブルーノ・ベヘッリ4位
  • イル・ロンバルディア11位
  • ミラノ〜トリノ5位
  • 世界ランキング47位

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ピノがツール一本に絞り、かつそれを完走できなかったこともあって、実はゴデュが、チーム随一のUCIスコアラーとなっている。

何しろ、シーズン序盤のUAEツアーではプリモシュ・ログリッチェやアレハンドロ・バルベルデにまったくひるむことのない堂々とした走りを見せて総合3位。ツール・ド・フランスではピノのための献身的な牽引を見せ、傷心のピノの代わりに出場したイタリアの秋のクラシックでも、とくにミラノ〜トリノでは終盤、繰り返し繰り返しアタックを仕掛ける熱い走りを見せてくれた。

その脚質は純粋なクライマーというだけではなくパンチャー的なところもあり、ロマンディの激坂フィニッシュではついにワールドツアー勝利を手に入れた。

これからも着実に成長し、実力を伸ばしていくこと間違いなしの存在。キンタナやベルナル、ポガチャルなどと比べるとゆっくりな台頭のように思えるが、やはりラヴニール覇者というのは、間違いなく強い。

 

 

その他注目選手

マルク・サロー(フランス、27歳)

脚質:スプリンター

2019年にブレイクした男の1人。パリ〜ブールジュやツール・ド・ヴァンデ、エトワール・ド・ベセージュなどのフランス国内1クラスレースなどで勝利を重ね、最終的なUCI世界ランキングではデマールの上を行った。フランス国内のワンデーレースでのリーグ戦「クープ・ドゥ・フランス」でも今年の覇者となっている。

そしてブエルタ・ア・エスパーニャへの挑戦。残念ながら勝利はなかったが、サム・ベネットやフェルナンド・ガビリアなどの一流選手たちを相手取り、堂々たる立ち回りを見せた。

彼もまた、2020年はさらに進化してくれることだろう。

 

 

ヴァランタン・マデュア(フランス、24歳)

脚質:パンチャー

パリ〜ニース総合11位、ジロ・デ・イタリア総合13位。イツリア・バスクカントリーの激坂フィニッシュでも5位に入り、アムステルゴールドレースでは8位。シーズン開始前から期待していた選手だが、概ね期待通りの走りを見せてくれている。

2019年は話題には登ることが多いものの、まだ明確な驚くべきリザルトは出せていない。2020年はきっと、注目すべき50の選手の中には入ってくるだろう。

 

 

ファビアン・リーンハルト(スイス、27歳)

脚質:パンチャー

ライヒェンバッハやフランキニー、クンなど、スイス人との関係も深いグルパマFDJだが、2020年もスイスのコンチネンタルチーム「IAMエクセシオール*1」から、期待のスイス人を獲得してきた。

この男の名を覚えている人もいるかもしれない。2019年のツール・ド・スイスで、スイスナショナルチームの一員として参戦し、第2ステージから第5ステージまで立て続けにTOP10に入った男だ。さらにツール・ド・スイス前哨戦となる、同じスイスで開催されたパンチャー向けワンデーレース、カントン・ダルゴヴィでも7位。起伏をものともしないパワースプリントを得意とするタイプで、マデュアと共に、アルデンヌ・クラシックでの活躍を期待したい。

 

 

総評

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2019年ツールにおけるピノの躍進は、総合優勝すら十分に視野に入るものであった。またゴデュの実力も世界トップクラスに手が届くまでに至ってはおり、彼らの2020年グランツールでの飛躍は期待したい。ただ、何かちょっとでも歯車がかみ合わなければ一気に崩れ去る不安定さも併せ持っている。山岳アシストが不足気味なのも、気になるところだ。

北のクラシックはクンとデマールが中心になるのだろうが、正直ここは、あまり期待はできない。アルデンヌ系はピノ、ゴデュ、そしてマデュアがどれだけの成長を見せられるか。

ステージ優勝はもちろんデマールと、サロー。あるいはクンの逃げ切り。

そしてチームTTは、2019年ツールで見せた強さを、これからも維持していってくれることに期待したい。実際、このチーム、TTスペシャリストの数は多いのだから。

 

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*1:かつて存在したスイス籍のワールドツアーチーム「IAMサイクリング」の育成チームが独立したもの。

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