りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

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ブエルタ・ア・アンダルシア2020  注目選手プレビュー

 

コースプレビューに続き、注目選手をプレビューしていく。

今回、スプリンターにおいても、ソンニ・コルブレッリやブライアン・コカールなど、注目すべき選手たちは複数名いる。

ただし、前回のコースプレビューを見てもらえればわかる通り、アンダルシアにスプリントステージはない。第2ステージがギリギリ・・・だが、これも、ラストが1.5㎞で平均勾配8.5%なので、かなり厳しいとは思う。

 

よって、今回は総合系の選手のみピックアップ。

とくに注目すべき5つの「チーム」ごとに見ていこう。

※記事中の年齢はすべて2020/12/31時点のものとなります。

 

 

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アスタナ・プロチーム(AST)

ヤコブ・フルサン(デンマーク、35歳)

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昨年度総合優勝者にして、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ覇者、UCI世界ランキング3位の男である。

今シーズンはこれが開幕戦。よって、その調子のほどは分からない。昨年は総合優勝したが、そのときは直前に2つのレースをこなしており、「足が温まっていた」状態だった。今回は意外な失速が、見られるかもしれない。

ただ、たとえ彼が落ちたとしても、そんな彼を昨年支えて自らも総合2位になった男、ヨン・イサギレや、今年のツール・ド・ラ・プロヴァンスにて鮮烈な新チームデビューを飾ったアレクサンドル・ウラソフがいる。

今年もアスタナが最も総合力の高いチームとしてこのアンダルシアで君臨しそうだ。

 

 

ヨン・イサギレ(スペイン、31歳)

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元モビスター。そこからバーレーン・メリダが立ち上げとなったときにエースとして招かれるが、そこではなかなか芽を出せなかった。

しかし、アスタナに移籍してきた昨年、彼はその才能をしっかりと発揮した。自らのイツリア・バスクカントリーでの総合優勝はもちろん、チームメートの勝利にも大きく貢献した。

その1つが、昨年のこのレースである。昨年はその前年に総合優勝しているティム・ウェレンスが圧倒的に有利な状況で推移していたが、クイーンステージとなる第4ステージで、逃げに乗せたルイスレオン・サンチェスと当時はアスタナにいたペリョ・ビルバオ、そしてこのイサギレとが波状攻撃を仕掛けウェレンスを丸裸にした。

そして、最後に仕掛けたのがフルサンだった。もはや、ウェレンスに為す術はなかった。

www.ringsride.work

 

今年はビルバオやサンチェスはいない。代わりに、新たに加わった才能ウラソフとフルサンと共に、今年も手数の多さでライバルたちを苦しめられるか。

また、頂上フィニッシュが1つもなく、下りが勝負を左右しやすい今年のアンダルシアにおいて、下り巧者のヨンはチャンスを掴み取りやすいかも?

 

 

アレクサンドル・ウラソフ(ロシア、24歳)

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元ガスプロム・ルスヴェロの、シヴァコフと並ぶロシアの次代の星である。2018年ベイビー・ジロ覇者、同ツール・ド・ラヴニール総合4位。昨年はツアー・オブ・スロベニアで総合3位など、エリートに混じって結果を出していた。現ロシアロード王者。

そして、期待と共に乗り込んだつい先日のツール・ド・ラ・プロヴァンスでは、第2ステージで残り2㎞からアタックして逃げ切り勝利。そのまま翌日のモン・ヴァントゥステージでも爆走したナイロ・キンタナに逆転されはしたものの、それ以上順位を落とすことなく総合2位で終えている。

ケルデルマンやピノといった錚々たる顔ぶれが並ぶこのレースでのこの成績は驚異的である。

昨年のアンダルシアはフルサン、ヨンに続く「第3のエース」ビルバオが重要な役割を果たしたが、今年はこのウラソフがその役割を担うことだろう・・・むしろエースになっちゃう?

 

 

 

バーレーン・マクラーレン(TBM)

ミケル・ランダ(スペイン、31歳)

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エースで走りたい!という思いを胸にアスタナを飛び出し、イネオスを飛び出し、モビスターを飛び出した男が辿り着いた先は、ヨン・イサギレ、ヴィンツェンツォ・ニバリと発足当時のダブルエースが共にチームを去った後のバーレーン・マクラーレン。もう1人のエースというべきワウト・プールスもいることはいるが、一応ここでなら、彼は真にエースとして走れる!・・・気がする。

とはいえ、今回のアンダルシアは2020年の、そして新チームでの開幕戦。しかも、2月頭にはトレーニング中に交通事故に遭っている・・・幸いにも大きな怪我はなく、こうして早くもレース復帰できているわけだが、全く影響がないということもないだろう。

また、最終日の個人TTの存在も、ランダが総合を狙うには足枷となる可能性も。

その意味で、今回はもしかしたら陰に徹するかも。なにせ、チームメートたちにも十分にエースになりうる存在を連れてきているから。

 

 

ディラン・トゥーンス(ベルギー、28歳)

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昨年のこのレースでは総合10位。そして今年も直近のボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナでは総合5位につけている。元はフレーシュ・ワロンヌなどで活躍するパンチャー、そして最近はステージレースでの総合も狙えるクライマーとして成長しつつある男だ。

今回も、ランダがシーズン開幕戦でイマイチだったりしたときのセカンド、サードオプションとして機能。また、第2ステージの激坂フィニッシュなんかでは誰よりも優位に戦える可能性はあり。

ややその調子にムラがあるので、今回は吉と出るか凶と出るか。

 

 

ペリョ・ビルバオ(スペイン、30歳)

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元アスタナで、昨年はこのレースにおける「最強軍団アスタナ」の一角を担っていた。結果、総合1位・2位のフルサン、ヨンに並び総合4位に。

実際、スプリント力では並のクライマーを上回り、TT能力も決して低くない。むしろランダよりはずっと得意である。だから、今大会は、もしかしたらランダに代わって真のエースを担うかもしれない。

 

その他、強力なアシストとしてのダミアーノ・カルーゾや、逃げ切り勝利要員のマテイ・モホリッチ、またギリギリでスプリント勝負になる可能性のある第2ステージ向けにソンニ・コルブレッリなど、隙のない布陣だ。

 

 

 

モビスター・チーム(MOV)

マルク・ソレル(スペイン、27歳)

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2015年ツール・ド・ラヴニール覇者にして、2018年パリ〜ニース覇者。昨年はブエルタ・ア・エスパーニャでチームの指示に明確な不満の意を示したことで注目を集めたが、チームのエース格が次々と脱退したことでいよいよ彼が絶対のエースとして振る舞えるチャンスが巡ってきた。

今年はマヨルカ・チャレンジで1勝。師匠を差し置いて、チーム最初の勝者となった。そのあとのバレンシアナでは正直期待通りの走りではなかったものの、調子は決して悪くないはずだ。

チームの新参者であり、ソレルとはエースを巡るライバルとなるエンリク・マスが今回一緒に出るのはチームの意図なのか何なのか。実力を示してやるしかない。

TT能力も高いので普通に総合優勝候補。それはマスも同じだけど。 

 

 

エンリク・マス(スペイン、25歳)

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コンタドール運営の育成チーム出身で2017年のコンタドールアングリル制覇を密かに手助けし、彼にスペインの星と言わせた男。その期待通りに2018年は驚異のブエルタ・ア・エスパーニャ総合2位。実績だけでいえばソレル以上と言えるかも?

ただ、昨年はイマイチな結果に。初挑戦のツール・ド・フランスでも、結局アシストはほぼおらず。アラフィリップ活躍の陰に隠れてしまった。

今年はここまでチャレンジ・マヨルカを3戦とブエルタ・ア・ムルシア。ただムルシアは調子悪かったのか初日DNFとなっていた。

ここまでの状態を見れば一応、ソレルの方が可能性ありそう。いずれにせよ、今回は2人の状態を様子見するレースとなりそうだ。

 

 

 

ミッチェルトン・スコット(MTS)

ジャック・ヘイグ(オーストラリア、27歳)

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スペイン人のミケル・ニエベとのダブルエースかと思っていたが、cyclingnewsの記事を見る限り、今回はヘイグの単独エースとなりそうだ。

www.cyclingnews.com

 

今年のブエルタ・ア・エスパーニャもルーカス・ハミルトンとのダブルエースで臨む予定が噂されており、直近のボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナでもブエルタ顔負けの激坂フィニッシュを超えて総合2位に。かなり期待のできるシーズン幕開けを迎えている。

問題はタイムトライアルへの適性がどこまであるか。昨年のタイムトライアルは6位で総合でも6位だったが、今年のTTは昨年ほど登ってないようにも見えるので・・

 

エースも張れる存在のニエベに、ブレント・ブックウォルター、そしてアスタナからやってきた名アシストのアンドレイ・ゼイツも来ており、アシスト面では言う事なし。平坦アシストもアッフィーニにエドモンドソンと隙がない。

 

 

 

UAEチーム・エミレーツ(UAD)

ブランドン・マクナルティ(アメリカ、22歳)

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チームの若手有力選手がまた1人。ワールドツアーデビュー戦となった1月のブエルタ・ア・サンフアンでは、総合に大きな影響を及ぼした第3ステージの個人TTでも5位と健闘し、最終的にも総合4位。今回のアンダルシアのような本格的な山岳コースにどこまで対応できるかは未知数だが、期待はしていきたい。

もしも彼が厳しいようなら、今年はジロをフォルモロとのダブルエースで狙っているというダビ・デラクルスがエースで出てきそう。

 

 

 

その他、逃げで期待したいのは過去にブエルタ・ア・エスパーニャで勝ってるサンデル・アルメトマシュ・マルチンスキー(共にロット・スーダル)。一昨年・昨年とエースを務めたティム・ウェレンスが不在のため、自由な走りを許されることだろう。

同じくブエルタで勝ってるアンヘル・マドラソ(ブルゴスBH)やシルヴァン・ディリエ(AG2Rラモンディアル)、ミケル・イツリア(フンダシオン・オルベア)、ヨナス・ヴィンゲゴー(ユンボ・ヴィズマ)なども逃げで注目。

意外と総合で活躍するかもしれないのがアントワン・トールク(ユンボ・ヴィズマ)、ルーベン・フェルナンデス(フンダシオン・オルベア)だ。

 

 

スプリントの可能性があるのは第2ステージ。冒頭にあげたコルブレッリやコカールのほかに有力なスプリンターとしてはアモリー・カピオ(スポート・フラーンデレン)やアンドレア・パスクアロン(サーカス・ワンティゴベール)など。

元NIPPOのマルコ・カノラ(ガスプロム・ルスヴェロ)や元マトリックスのオールイス・アウラール(カハルラル・セグロスRGA)も第2ステージのような登りスプリントは得意だし、応援しよう。

 

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