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ジロ・デ・イタリア2019 コースプレビュー 第1週

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いよいよ開幕する、今年最初のグランツール、ジロ・デ・イタリア。

プリモシュ・ログリッチェ、サイモン・イェーツ、トム・デュムラン、ミゲルアンヘル・ロペスなど名だたるグランツールライダーに加え、エリア・ヴィヴィアーニ、フェルナンド・ガビリア、カレブ・ユアン、パスカル・アッカーマンなど、同様にトップレベルを争うスプリンターたちも集い、今年ももしかしたら「最も面白いグランツール」となるかもしれないこのジロ・デ・イタリアを、気合入れてコースプレビューしていく。

 

単純にコースレイアウトと展開予想をするだけでなく、できる限りその土地の見所や歴史、特産物などに触れていければとも考えている。

気に入ってくれたらリツイートなどで拡散よろしく。

 

今回はまずは第1週目。近年のグランツール全体の傾向に反して本格的な山岳はまだ登場しないものの、実にジロらしい2つの個人TTの設定と、そして厭らしいアップダウンコースの存在は、観ている側を飽きさせないための工夫に満ちている。

 

それでは行ってみよう。 

 

↓全22チームのプレビューを書いてます↓

www.ringsride.work

↓2週目のコースプレビューはこちらから↓

www.ringsride.work

 

 

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第1ステージ ボローニャ〜サンルーカ 8㎞(個人TT)

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第102回ジロ・デ・イタリアは、イタリア北部の歴史ある都市ボローニャで開幕する。

ボローニャの街の中心部からスタートする初日の個人タイムトライアルは、全長8㎞と非常に短いうえに、コースの大半がコーナーの少ない平坦路ということで、第1計測まではハイスピードでの展開が期待されるだろう。

 

ただし、ラスト2㎞が曲者。郊外のサントゥアリオ・デッラ・マドンナ・ディ・サン・ルカ(マドンナ・ディ・サン・ルカ教会)へと続く登りは、イタリア秋のクラシックの1つ、ジロ・デッレミリアでの勝負所となる激坂だ。

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全長2.1㎞、平均勾配9.7%、最大勾配16%。

本来この距離を得意とするはずのスプリンターやプロローグスペシャリストではなく、どちらかというとパンチャー系の選手などが好成績を出しそうなレイアウトとなっている。

いつもとは違ったタイプの選手が、今年最初のマリア・ローザ着用者となるかもしれない。

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イタリア秋のクラシックの1つ、ジロ・デッレミリアはこの登りを複数回こなしてフィニッシュする。昨年はアレッサンドロ・デマルキが逃げ切り勝利を果たした。 

 

 

第2ステージ ボローニャ〜フチェッキオ 205㎞(平坦)

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ボローニャの街をスタートしたプロトンは、北アペニンの山脈地帯を抜けてトスカーナ州フィレンツェの街フチェッキオに。

アペニンを通過する途上では標高774mにまで達し、レース後半ではいくつかの登りがあるものの、平均勾配3%ほどの最後の山岳の山頂からゴールまでは20㎞以上もあり、平穏な集団スプリントで終わる可能性は十分にあるだろう。

ラスト1㎞からは完全なストレートで、スプリンターたちを遮るものは何もない。

 

とはいえ、最後から2番目の山岳(3級山岳)も登坂距離6㎞ほど、平均勾配も7%近くあるため、逃げ切りも含めて何かが起こる可能性は充分にあり得る。

純粋にフラットなステージ、とは言えなさそうだ。

 

 

第3ステージ  ヴィンチ〜オルベテッロ  220㎞(平坦)

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かの有名な「万能人」レオナルド・ダ・ヴィンチの死後500年を記念して、彼の生地であるこのヴィンチ村がスタート地点に選ばれた。

そしてゴールを迎えるのは、ラグーン(潟湖)に浮かぶ砂州上の村オルベテッロ。

ラグーンを挟んで対岸に位置するモンテ・アルジェンターリオに向けて3本の砂州が伸びているが、その北西の砂州を渡ってモンテ・アルジェンターリオに一度降り立ってから、真ん中の砂州にある村にフィニッシュする。

 

ゴール地点の左右に広がるラグーンの空撮、そしてラグーンの中に建てられた独特な風車小屋の姿など、ここでしか見られない風景は必見である。

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コース自体は前日と違ってかなり素直なフラットコース。ガビリアvsヴィヴィアーニvsユアンvsアッカーマンなど、今年も注目のトップスプリンターたちが集まっているジロ。

フラットステージでも十分に見所に溢れている。

 

ただし、ラスト10㎞手前から砂州の上を走ることになるので、横風には注意したい。

何せ潟湖の中に風車小屋がわざわざ建てられるほどなので、風はよく吹く地域なのだろう。

2017年のジロでは実際に、ゴール直前の横風区間でクイックステップが攻撃を仕掛け、ガビリアの勝利を導いている。今年もドゥクーニンクの動向には注意が必要。

同じベルギーチームのロット・スーダルも同様に横風作戦を得意としているはずなので、ユアンもまた、勝機を得られるかもしれない。

 

また、ラストのレイアウトは基本的には直線基調だが、500mを切ってからは直角コーナーが立て続けに2回登場する点にも注意。ガビリア、よく転ぶから・・。

 

 

第4ステージ オルベテッロ〜フラスカーティ 223㎞(丘陵)

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2日間を過ごしたトスカーナを離れ、プロトンはローマへ。ローマの中心地の近郊をぐるりと回り、フラスカーティへ。

このフラスカーティはD.O.C.ワイン「フラスカーティ」の産地としても有名。

古代ローマから続く銘酒で、白ワインの生産が特に盛んらしい。フラスカーティ・スペリオーレとカンネッリーノ・ディ・フラスカーティがDOCG認定を受けているとのことで、できれば用意して観戦のお供にしておきたい。 

 

なお、ワインの産地ということは・・・アップダウンが激しいということである。

ラスト2㎞は平均4.4%の登りフィニッシュ。

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登り始めに最大勾配の7%区間があり、ピュアスプリンターは確実に振るい落とされることだろう。

総合勢が動くとかクライマーでなければ超えられないということはないだろうが、登れるスプリンターやパンチャーたちの争いとなることだろう。

 

サム・ベネットやカレブ・ユアンなどが最近、こういった登りスプリントを得意としているため注目すべきか。

そうでなければパンチャー、たとえばフアンホセ・ロバト(あるいは彼に導かれたマルコ・カノラ)、フレーシュ・ワロンヌ3位のディエゴ・ウリッシ、エンリコ・ガスパロット、そして昨年ジロでも勝ってるエンリコ・バッタリンあたりが期待できそうだ。

 

 

第5ステージ フラスカーティ〜テッラチーナ 140㎞(平坦)

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スタート直後から登り始め、それだけ見ると逃げスペシャリスト向けなレイアウトだが、終盤は真っ平らな区間も長く、結局は集団スプリントとなりそう。

ゴール地点の近くにはRiserva naturale Piscina delle Bagnatureという自然保護区が広がっている。

街中に広がる巨大な森は見応えも十分だろう。

 

 

第6ステージ カッシノ〜サン・ジョヴァンニ・ロトンド 238㎞(丘陵)

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スタート地点のカッシノは、修道院、そして第2次世界大戦の激戦地としても有名なモンテ・カッシーノのある街。

2014年のジロ・デ・イタリアはこのモンテ・カッシーノの山頂フィニッシュを用意したが、雨の降る中での麓でのポジション取りが原因で大落車が発生。

わずかに残った4名の中でのスプリントをマシューズが制した。

 

今回はこのカッシノをスタート地点に定め、イタリア半島の西から東へまっすぐ横一直線に横断する。

今大会最南端に位置するこの道程は、アペニン山脈を越え、モリーゼ州も一気に飛び越えて、「長靴のかかと部分」にあたるプッリャ州にまで到達する。

大移動である。

 

フィニッシュ地点のサン・ジョヴァンニ・ロトンドも、街自体がガルガノ国立公園の一部となっていることからも分かるように、実に自然豊かな丘陵地帯である。

すなわち、選手たちにとってはハードなアップダウンの街というわけだ。

 

ゴールの18㎞手前には2級山岳(登坂距離15㎞、平均勾配4.4%)。それを越えたのちも緩やかなアップダウンが続き、ラスト1㎞も3%程度の緩やかな登りフィニッシュとなっている。

登れるスプリンターたちが生き残っての小集団スプリントを敢行することも十分可能だとは思うが、ピュアスプリンターを抱えるチームがその長距離も含め無理をしない選択肢を取れば、絶好の逃げ切りステージとも捉えられるだろう。

 

 

第7ステージ ヴァスト〜ラクイラ 185㎞(丘陵)

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プッリャ州とはたった1日で別れを告げ、通過点に過ぎなかったモリーゼ州には見向きもせずに、プロトンはアブルッツィオ州で第7ステージのスタートとゴールを迎える。

アブルッツィオ州はアペニン山脈の中心地に4つの自然公園を抱え、その中には山脈の最高地点であるグラン・サッソーー昨年のジロでサイモン・イェーツが最初の勝利を手にした舞台ーーも聳え立つ。

 

この日のゴール地点ラクイラも、グラン・サッソの麓に位置しているものの、この日は決して山岳ステージではない。最高標高地点でも900mに満たない。

残り50㎞近くから登り始める2級山岳は7.5㎞の登坂で平均勾配6.6㎞。この山頂からゴールまでは長い平坦も含んだ40㎞以上もあり、ここが勝負所にはなりづらいだろう。

 

むしろ重要な局面は残り9㎞から現れる。まずは最大勾配9%の登坂。そしてラスト1㎞は、平均勾配7.6%、最大勾配11%の激坂だ。

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過去、2005年と2010年にもフィニッシュに選ばれており、それぞれダニーロ・ディルーカとエフゲニー・ペトロフが勝利している。

今年もパンチャー、クライマーがしのぎを削りそうなフィニッシュ。総合勢の最初の力試しとなるか。

 

 

なお、アブルッツィオ州の州都でもあるラクイラは、10年前に300人以上の犠牲者を出した大地震に見舞われた街でもある。

この日も、何かしら追悼の映像が流れる可能性はあるだろう。

 

また、ジロ・デ・イタリアにおいても非常に歴史的な街でもある。

今から105年前、1914年のジロ・デ・イタリア第6ステージのフィニッシュ地点に選ばれたのがこの街だったが、それはグランツール史上最も過酷なステージとして記録されている。

プッリャ州のバーリからスタートしたこの日の総走行距離は実に428㎞。スタート時には81名いた選手たちのうち、ラクイラに辿り着けたのはわずか8名だったという。

自転車ロードレースがまだエクストリームスポーツのようなイメージだった頃の話である。

 

 

第8ステージ トルトレート・リド〜ペーザロ 239㎞(丘陵)

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アブルッツィオ州の町トルトレートからアドリア海沿いに一気に北上し、マルケ州第2の都市ペーザロへ。

全長239㎞は今大会最長(第6ステージが238㎞とわずかに届かず)。

 

ペーザロは作曲家ジョアキーノ・ロッシーニの生地であり、毎年ロッシーニ・オペラ・フェスティバルが開催されてもいる。

しかしチェーザレ好きの自分にとっては、彼の妹ルクレツィアの最初の旦那が所有していた土地、という認識。

チェーザレがのちに征服し、支配した土地の一つであり、その点で思い入れのある町だ。

 

海沿いを走る長距離ステージということで、前半は真っ平らなレイアウトなのだが、終盤でわざわざ内陸の丘陵地帯に寄り道してしまう。

よって、ここ数日同様にピュアスプリンターには優しくないステージに。とはいえさほど強烈な登りが連続するわけではないので、チームの力を借りられれば、ヴィヴィアーニやガビリアならば十分に越えることはできそうだ。

 

ラストは登りフィニッシュではないが、残り6㎞からの非常にテクニカルな、曲がりくねったダウンヒルは勝敗を分けるポイントとなるかも。

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残り2㎞には超鋭角カーブ、ラスト1㎞を超えてからは2つの直角カーブ。

逃げ切りを狙うエスケーパーたちが(あるいは終盤に抜け出した選手たちが)ギリギリで逃げ切るのに向いているレイアウトと言えそうだ。

ヘタに集団スプリントになる方が危険とも言える。悲惨な落車だけは避けてもらいたい・・・。

 

 

第9ステージ リッチョーレ~サンマリノ 34.7㎞(個人TT)

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アドリア海沿いの街リッチョーレを出発し、世界で5番目に小さいミニ国家・サンマリノへと至る。

なんといってもその最大の特徴は、前半と後半とで真っ二つに分かれたコース特性。

前半の平坦区間も20km近くに及び、TTバイクで走る必要性は十分にある。

一方で後半の12kmは最大勾配11%の本格的な登坂レイアウト。

ここをTTバイクのまま登るのか、それとも素直にノーマルバイクに交換するのか、についてはチームの重要な戦略の見せどころとなるだろう。

「スカイ」流に、最初の数名の選手を視察役にして状態を見る、というのも十分アリだ。エースがチームカーに乗るとか、ね(ただしスタートとゴールが離れているのでこれは難しいか?)。

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2つある中間計測ポイントはいずれも「平坦部分」の記録しかとってくれない。すなわちここの計測は勝敗の参考にするには不十分だ。

レイアウト的には真っ平なTTのみを得意とするタイプには厳しく、かといってクライマーが有利とも言い切れない。やはりTTも登りも得意なオールラウンダータイプに有利で、その意味でプリモシュ・ログリッチェやトム・デュムランが得意とするところだろう。

サイモン・イェーツも最近はTT能力が大幅に改善されており、アップダウンを含むコースではかなり良い結果を出せる。今年のパリ~ニースでは優勝すら射止めている。

逆にミゲルアンヘル・ロペスなんかは後半の登りでどれだけ挽回できるかである。

 

距離も長く、総合争いにも大きく影響すること間違いなしの前半戦の山場。

この日を終え、マリア・ローザを身につけて立つ選手が、このあとの2週間のうねりの中心となることだろう。

 

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