りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

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ジロ・デ・イタリア2019 全チームスタートリスト&プレビュー

今年のジロ・デ・イタリアに出場する全22チーム、176名の全スタートリストを、簡単なプレビューを添えて紹介。

独断と偏見による各選手の脚質も記載。

なお、レース中目にすることが多いであろう各国ロード王者の特別ジャージ着用者については、それぞれの国籍を太字にしているので参考にしてほしい。

なお、年齢については全て、2019年12月31日時点のものとしている。

 

↓コースプレビューはこちらから↓

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1〜.モビスター・チーム(MOV)

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総合★★★★☆

スプリント★☆☆☆☆

逃げ★★★☆☆

元はランダとバルベルデのダブルエースで臨む予定だったモビスター。しかしバルベルデがトレーニング中に事故を起こし、その怪我からの回復が遅れているため、ジロへの出場を断念。ランダの単独エース体制となった。

カラパスは昨年ジロ総合4位、ブエルタでもキンタナとバルベルデを支えた名クライマー。アマドールも過去にジロ総合4位や8位を経験している有力オールラウンダーだ。ロハスは平坦だけでなく山岳もこなせ、前待ち作戦にも使えるベテランルーラー。今年、石畳クラシックへの適性も見せたズッタリンは、現在伸び盛りの若手ルーラー。TTでの上位も狙える逸材だ。

アシストは十分揃っている。あとはランダがどこまで実力を発揮できるか。2015年にはファビオ・アルを献身的に支え自らも総合3位。2017年ツールではクリス・フルームを引き千切るほどの強力な牽引を見せた。来季の移籍の噂も漂う、迷える天才。今期ここまで決して良いとはいえない状況だが、舞い降りた千載一遇のチャンスを、決して無駄にはしたくないはずだ。

 

 

11〜.AG2Rラモンディアル(ALM)

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総合★★☆☆☆

スプリント★★☆☆☆

逃げ★★★★☆

総合エースを担えるとしたら、過去総合11位のヴュイエルモ。2年前のツールでも総合13位と、一時期は総合エースを担える存在として注目を集めた。

しかしそんな彼も、ここ2年はイマイチな状況。昨年ブエルタ総合11位のギャロパンと合わせ、あくまでもステージ勝利がこのチームの今年のジロの最大目標となりそうな気はする。

実際、本来のAG2Rってそういうチームだったと思うのだ。そして山岳逃げで結構勝っている印象。たとえばガスタウアーは昨年のブエルタの山岳ステージで区間5位。大ベテランのデュポンはジロでもブエルタでも逃げて3位は取ったことがある。

そんな中、注目したいのがピータース。まだプロ勝利のない若手だが、昨年のブエルタでは第11ステージで区間4位。今年のトロフェオ・ライグエーリアでも5位に入るなど、アップダウンの激しいステージでの逃げを得意とする。

直近のロマンディでも常に積極的な動きを見せていた彼が、今回のジロでの金星をあげる可能性は十分にある。総合を狙わない自由な走りが許されるチームだからのドラマを、期待している。

 

 

21〜.アンドローニジョカトリ・シデルメク(ANS)

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総合★☆☆☆☆

スプリント★★★☆☆

逃げ★★★★☆

最も注目すべきは、昨年も山岳逃げで目立ちまくり、今年のジロ・デ・シチリアのエトナ山ステージで2位、総合3位、そしてツアー・オブ・アルプスで区間2勝と総合5位に入る走りを見せたマスナダ。今年はもしかしたら意外な走りで総合上位に入ってくるかもしれない。そうなれば、来年のワールドツアーチーム入りもかなり可能性が高くなるだろう。

それ以外にも、イタリアのワンデーレースに強いメンツが揃っている。ジロ・デッラペンニーノ優勝およびGPインダストリア&アルティジアナート2位のカッタネオ、トロフェオ・ライグエーリア4位のガヴァッジ、ヴェンドラーメもGPインダストリア3位のほか、ツール・ド・フィニステーレ2位とトロ・ブロ・レオン優勝を果たしている。

そしてスプリンターではベレッティ。昨年も最終日ローマで5位を記録した。勝ちきるまでは難しいとは思うが、今年は3位以内を目指したい。

 

 

31〜.アスタナ・プロチーム

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総合★★★★★

スプリント★☆☆☆☆

逃げ★★★☆☆

昨年ジロとブエルタの両方で総合3位。ジロでは新人賞にも輝いた彼は今大会の優勝候補の1人。何より、チームの勢いが凄まじい!  常勝軍団ドゥクーニンクに匹敵する、今シーズン23勝(5/10現在)。クラシック中心のドゥクーニンクに対し、こっちはステージレースや山岳レースでの勝利が多い。

エースのロペスも当然調子は良い。超強力コロンビアンライダー決戦の舞台となったツアー・コロンビアで総合優勝、カタルーニャ1周でも、パリ〜ニース総合優勝で勢いに乗っていたエガン・ベルナルの鼻っ柱を叩き折った。派手さはないが、堅実に成績を手に入れるその走りは若くして老成しているとも言える。昨年はちょっとそれが過ぎる走りにも見えたけれど・・・。

アシストも当然豪華。昨年ロペスをアシストしながら自らも総合6位に入ったビルバオは右腕とも言って良い存在だろう。アルプス総合7位のヒルトはそのときはビルバオ以上の走りを見せていた。元はプロコンチネンタルチーム所属ながらワールドツアーチームの選手に引けを取らない走りを見せて、アスタナ入りを決めた男だ。カタルドもアルプス総合8位、ヴィレッラはブエルタ山岳賞獲得経験者で、パンチャー向けの丘陵ステージでの適性も高い。ボアーロ、ゼイツ共に平坦、山岳の頼れるアシストだ。

そして、もう1人のエースともいうべきバスク覇者ヨン・イサギレ。下りとTTが得意な彼は、まるでロペスの足りないところをカバーするような存在で、どちらがエースになってもおかしくはない。

実際、今年のこのチームは、ダブルエースでもまったく潰し合うことがないだろうという確信がある。今大会最もチームとしての力を有してそうなこのチームが、ライバルたちを圧倒できるか。

 

 

41〜.バーレーン・メリダ(TBM)

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総合★★★★☆

スプリント★☆☆☆☆

逃げ★★★☆☆

2013年・2016年総合優勝、のみならずツールもブエルタも制している、現役選手の中ではフルームと並ぶ実績の持ち主、ヴィンツェンツォ。イタリアに愛されたこの男が、3度目の奇跡を起こすか。

とはいえ、過剰な期待を寄せるつもりはない。むしろ伸び伸びと走ってもらいたい。ツアー・オブ・アルプスでも、プレッシャーから適度に解放されたような自由な走りで、勝ちはしなかったものの、確かな強さを感じることができた。

チームメートには昨年総合5位のポッツォヴィーヴォもおり、場合によっては総合エースを彼に任せてしまっても良いようにすら思える。

また、カルーゾも過去に総合8位に入っている実力者で、山岳逃げ切り勝利も十分狙える存在だろう。総合にこだわらない、何かしらの結果をチームとして持って帰れるような走りを期待したい。

 

 

51〜.バルディアーニCSF(BRD)

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総合★☆☆☆☆

スプリント★★☆☆☆

逃げ★★★☆☆

アンドローニと比べるとどうしても実績の薄いプロコンチネンタルチーム。基本は逃げで目立つのを目標としたい。

その中でも覚醒に期待したいのが昨年ベイビージロ総合12位のネオプロ、コヴィリ。ムニョスとルビオのコロンビアンコンビが逃げ切りワンツーを取ったステージで7位。ロバート・スタナードやショーン・ベネットなどの期待の若手に匹敵する走りを見せていた。

 

 

61〜.ボーラ・ハンスグローエ(BOH)

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総合★★★☆☆

スプリント★★★★★

逃げ★★★★☆

今大会最も期待すべき存在は、今やトップスプリンターの仲間入りを果たしたアッカーマン。昨年は9勝でサガン、ベネット以上の勝利数を稼いだ。先日のエシュボルン・フランクフルトではクリストフ、デゲンコルプを破って優勝。今回、ヴィヴィアーニやガビリアを相手取ってどれだけの戦いができるか、期待だ。

もう1人の主役は過去総合5位、ブエルタ総合3位のマイカ。しかし一時期と比べ、ここ最近は結果を出せていない・・アルプスでも強く積極的な走りを見せていたものの最終ステージで遅れる姿も。チームとしても彼のためだけのチームを作るわけにはいかず、アッカーマンのアシスト(ゼーリッヒ、マッカーシー、シュヴァルツマン)も多く連れてきている状態。盟友ポリャンスキーと共に、挽回できるか。

ただし総合エース候補としてはむしろ最近好調のフォルモロの存在も。カタルーニャ1周最終ステージのバルセロナ・モンジュイックの丘周回コースにて逃げ切りを果たしたほか、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュでも終盤に抜け出して、優勝者フルサングに次ぐ2位。ジロのアップダウンコースとの相性も良さそうで同じく逃げ切りを狙えそうなのと、ここ2年ジロ総合10位を連続で取っているというのも好材料。ある程度フリーな走りを許されそうなうえ、状況によってはマイカに変わる総合エースを担うだろう。

マイカは本気で頑張らないと、ピンチ。

 

 

71〜.CCCチーム(CPT)

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総合★★☆☆☆

スプリント★★★★☆

逃げ★★★☆☆

26名中実に19名がチームを去り、新たに17名を加えるという、ほぼチームの新創設に近い変容を遂げた旧BMCレーシング。新メンバーのうち11名がプロコンチネンタルおよびコンチネンタルからの移籍でもあり、チーム総合力は間違いなく減少した。今大会エースを担うであろう2人ーーアントゥネスとマレツコもまた、プロコンチネンタルチームからの移籍だ。それゆえに今大会はあくまでも挑戦者の姿勢で挑むことになるだろう。

それでも可能性がないわけではない。マレツコはそうでなくてもワールドツアー入り間違いなしと思われていた逸材で、昨年のジロでも最高で区間2位にまで上り詰めている。今年は期待に反して結果を出せていないものの、今回のチャンスをしっかりと掴むことはできるか。登りが苦手なのと、3週間を走りきったことがまだないことが不安要素。

アントゥネスは地元ポルトガルでは強く今年のアルガルヴェでも総合8位。ただしさすがに今回のジロで総合争いできるとは思っていないだろうから、基本的には山岳逃げ切り勝利を狙うことになるだろう。

今回のロースターには実は、2017年デュムランのジロ制覇を支えた大ベテラン、テンダムの姿も。アントゥネスらを支える役割も勿論だが、彼自身の10年以上ぶりの勝利も見れたら、それはきっととても感動的だと思われる。

 

 

81〜.ドゥクーニンク・クイックステップ(DQT)

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総合★★★☆☆

スプリント★★★★★

逃げ★★★★☆

昨年に続き、最強スプリンターとして名を馳せることができるか、ヴィヴィアーニ。今年はチームの元エースで、昨年の彼と同じようにステージ4勝&マリア・チクラミーノを手に入れていたガビリアとの直接対決。真の最強を決める重大な一戦となりそうだ。サバティーニ、セネシャルとアシストも昨年ほどではないが揃っており、結果を出す準備は整っている。

そして、今年すでに北のクラシックで大活躍を果たしているボブ・ユンゲルスが2年ぶりにジロ総合を狙う。アシストは決して十分ではないが、2年連続マリア・ビアンカを獲得した実力者が、強豪揃いの今年のジロで存在感を示せるか。

 

 

91〜.EFエデュケーション・ファースト(EF1)

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総合★★☆☆☆

スプリント★★★★☆

逃げ★★★★☆

2015年には2勝しているモドロ。以降はなかなか勝ちきれないものの、昨年も2位には入り込んでいる。今回もエースナンバーを背負い、目指すはあくまでも勝利だ。

このチームはほかに、ロマンディでひたすら元気に牽引しまくっていたカーシーの覚醒が期待できる。元々プロコンチネンタルチーム時代の2016年にカタルーニャ1周で総合9位に入り込み、次に来るイギリス人総合系ライダーの有力候補の1人になっていた男。そのあとはやや伸び悩んでいたものの、ついに花開く瞬間が訪れそうだ。

アスタナから移籍してきたカンゲルトも、リエージュで積極的なアタックを繰り出していたりと、その足の調子は悪くなさそう。ロンドでの勝利をきっかけにそのチーム力の高さに注目が集まりつつあるEF。今年は違うってところを見せられるか。

また個人的には、ハーゲンスバーマン・アクセオンから移籍してきたベネットにも注目したい。昨年のカリフォルニアでは、ラグナ・セカのアップダウンコースで「踊る」スクインシュと共に逃げ切り惜しくも2位。ベイビージロではしっかりと逃げ切り勝利。今大会も、比較的自由に走れるはずなので、みんなをあっと驚かせるような走りを見せてほしい。

 

 

101〜.グルパマFDJ(GFC)

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総合★★☆☆☆

スプリント★★★★☆

逃げ★★★☆☆

昨年と交換のようにして、今年はピノがツールに集中するために、デマールがジロに。実際、デマールにとっても、ツールでの勝利は決して簡単ではない中で、ジロで稼げるなら稼ぎたいところ・・と言えるほど、今年のジロは甘くない面子だけれども。ジロ自体は2016年にも出ているがそのときは2位止まりで勝てはせず。あのときは彼自身もミラノ〜サンレモ優勝など絶好調だったが、それ以上にキッテルやグライペルも絶好調だったので。シンケルダム、グアルニエーリ、コノヴァロヴァスなどデマールの最強を支えるフルメンバーが揃っており、この体勢の完璧さは全チーム中随一。それだけに確実に結果は持ち帰りたい。

もちろん個人的な最大注目はマデュアス。今年来るだろうとは思っていたが、パリ〜ニース総合11位にバスク総合17位、終始積極的なアタックに、アムステルゴールドレース8位。期待以上の走りを見せてくれた彼が、このジロで、山岳逃げ切り勝利を果たして見せたとしても驚くことはないだろう。それだけのことを成し遂げられる才能の持ち主だ。

 

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111〜.イスラエルサイクリングアカデミー(ICA)

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総合★☆☆☆☆

スプリント★★★☆☆

逃げ★★★★☆

元デマール発射台の1人でツアー・オブ・ジャパンでも勝ってる男、チモライ。今年は直前のカスティリヤ・イ・レオンでステージ2勝&総合優勝、そしてエシュボルン・フランクフルト4位とかなり好調。本人としてもついに実現したジロへの出場、このチャンスは、なんとしてでもモノにしたいはず・・・チームメートにはズバラーリもいるが、調子の良さから見ても、おそらくはチモライの単独エースでやらせてくれるはずだ。

山岳ステージでは、昨年は勝てなかったプラサがリベンジ勝利果たせるか。2015年にはツールとブエルタで連続で山岳逃げ切り勝利、ツールではサガンのダウンヒル猛追から逃げ切り、ブエルタでは115㎞を独走で。しかも登りでもアウターでガシガシ登っていたとか?  あとはジロで勝てれば3大グランツール勝利達成。もう良い年齢だし厳しいかもだけど、期待したい。

ニーランズも昨年からずっと注目されているアタッカー。ハードな山岳を乗り越えるイメージはまだないが、終盤まで逃げ残って体力が残っていれば、タイミングを見つけて抜け出してチャンスを掴みとる鋭さは持っている男だ。

 

 

121〜.ロット・スーダル(LTS)

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総合★☆☆☆☆

スプリント★★★★★

逃げ★★★★☆

完全なるユアン体制。発射台としてのデブイスト、ファンデルサンド、クルーゲと、ゴール前10㎞からの牽引役としてカンペナールツ、ハンセン。デヘントも今年、その役目を積極的に引き受けている。

ユアン自身も、ピュアスプリントでは今年まだ勝ててないとはいえ、4度の2位は強さの証。さらに、ハッタ・ダムやターキーで見せた登りスプリントへの適性の高さは、ヴィヴィアーニやカビリア、アッカーマンにはない絶対の強み。今年のチクラミーノの最有力候補はもしかしたらこのユアンになるかもしれない。

総合争いは完全に諦めたチームになるだろうが、過去にモン・ヴァントゥでも勝利している現役最強の逃げスペシャリストのデヘント、アルデンヌマイスターのファネンデルらの存在は、このチームがスプリント以外での勝利も強く目指していることを示している。

 

 

131〜.ミッチェルトン・スコット(MTS)

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総合★★★★★

スプリント★☆☆☆☆

逃げ★★★☆☆

「忘れものを取りに来た」サイモンが、ブエルタ覇者の看板を引っ提げて、1年越しのリベンジに舞い戻る。昨年のブエルタの勝ち方を見れば絶対の優勝候補のようにも感じるが、その前に立ち塞がるは今最も勢いのある男ログリッチェ。一方のサイモンは今期ここまで、リザルトだけを見るとそこまでパッとしない。

しかし、次々とステージレースの総合優勝を掻っ攫っていくログリッチェに対し、サイモンの方はどこか、フルームに近いというか、決して力を使いすぎないようにしながら慎重に調整を進めているようにも感じる。出場したレースは3つだけ。そのうちの2つは序盤のアクシデントで遅れ、またカタルーニャは(あるいはアンダルシアも)アダムのために走っていた。その中で鮮烈な大逃げ勝利や、個人TTでのまさかの勝利など、実力ははっきりと見せている。カタルーニャで見せたアダムとのタンデム逃げでも、その足は十分に回っていた。

だからこそ、今年のここまでのリザルトだけ見て、今年はログリッチェの年だとは思わない。むしろ、昨年と違い、3週目にこそ覚醒したサイモンの姿を見られるかもしれない。

それを支えるのが過去総合2位、ブエルタ総合3位のチャベス、元スカイの優勝請負人ニエベ、さらにはBMCからやってきた平地もいけるオールラウンダー、ブックウォルターの存在も頼もしい。

昨年のサイモンを支えたヘイグは膝の故障でジロをパス。代わりにホーゾン、ヘイグの後継者とも言うべきルーカス・ハミルトンは今年着実に成長しつつある有望クライマー。彼の活躍は絶対に見逃せない。

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141〜.NIPPOヴィーニファンティーニ・ファイザネ(NIP)

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総合★☆☆☆☆

スプリント★★★☆☆

逃げ★★★☆☆

総合は狙わず、カノラとロバトのダブルエース体制。ちょっと前までの勢いであればカノラ一択だが、実際にロバトがカノラをアシストしたアンダルシアの登りスプリントでは、ロバトのリードアウトにカノラがついていけない場面も。カノラの調子が悪いというよりは、ロバトの調子が今、結構良いのだと思われる。ターキーの登りスプリントでも、ベネットを破りユアンに次ぐ2位に。

よって、状態を見つつどちらがいくかを都度決めるダブルエース体制が有力そう。より厳しい登りスプリントでは、ロバトでいく感じか。

今年のトロフェオ・ライグエーリア2位のバジョーリも十分に勝利に期待できる存在。日本人としても、ツアー・オブ・ジャパン山岳賞経験者の初山の積極的な逃げに期待したいところ。

前回の出場となる3年前はクネゴの山岳賞争いなどで十分に目立つ走りを見せていたニッポ。今年も頑張れ!

 

 

151〜.チーム・ディメンションデータ(TDD)

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総合★★☆☆☆

スプリント★★★★☆

逃げ★★☆☆☆

昨年は終盤まで良い感じに走りながら最後は落車リタイアしてしまったオコーナーが今年はエースナンバーで挑む。目指すは総合TOP10以内。あの走りがフロックでないことを証明してみせてほしい。

もう1人期待してるのがギボンズ。もちろん、エーススプリンターは2016年ポイント賞のニッツォーロだろう。結局ジロでの勝ちは得られず「2位ッツォーロ」どまりの彼の待望の勝利も待ち遠しい。

だが、2017年から「いつかジロで勝つ」と期待してるギボンズの走りに個人的には注目していきたい。普段の平坦スプリントはニッツォーロの献身的なアシストを演じつつ、その明らかな登り適性を武器に、アップダウンステージや登りスプリントではエースとして上位に食い込むことは間違いないだろう。逃げてみるのも一興か。

激坂フィニッシュでは今年もフレーシュ・ワロンヌ10位と衰えを見せていないガスパロットでの勝利は十分狙える。クラシック大爆死のディメンションデータ。ここで挽回を狙えるか。

 

 

161〜.チーム・イネオス(INS)

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総合★★★☆☆

スプリント★☆☆☆☆

逃げ★☆☆

絶対の優勝候補の1人と思われていたベルナルが、まさかのトレーニング中の怪我により欠席。合わせて同じく若手の有望株モズコンもパスすることに。

一気に存在感を失うか?  いや、まだまだこのチームには伏兵が沢山潜んでいる。ツアー・オブ・アルプスで圧倒的なポテンシャルを見せつけたシヴァコフ&ゲオゲガンハートコンビ、そして、忘れてはいけない、その才能はベルナル以上とも称されるソーサの存在。

ある意味でトリプルエース。しかも、まだ若くどんな動きをするかもわからないこの3人の存在が、今年のジロを破茶滅茶に掻き回して面白くしてくれることが楽しみで仕方ない。

それを支えるクネースやプッチョのいぶし銀の活躍も見所だし、直近でもヨークシャーでのローレス優勝を支えたダンバーも、シーズン途中からの合流となった昨年から常に積極的な走りを見せていて意外性のある男だ。

エースを欠いたにも関わらず「必ず何か魅せてくれる」信頼感に満ち溢れた、現代最強チームの1つだ。

 

 

171〜.チーム・ユンボ・ヴィズマ(TJV)

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総合★★★★★

スプリント★☆☆☆☆

逃げ★☆☆☆☆

プリモシュ・ログリッチェ。

まだ彼はグランツールの表彰台には立ったことがない。そもそもグランツールでの出場経験は今回で4度目。台頭も遅く、トップチームに参戦したのはわずか3年前だ。そんな男が、2年前覇者&昨年総合2位のデュムランや、昨年ブエルタ覇者のサイモンを差し置いて、今年のジロ総合優勝候補筆頭に躍り出ている。それだけ彼の今の勢いが本物であることを誰もが認めており、彼が偉業を成し遂げられる男であると信頼しているのだ。

その信頼を支える一角を担うのが、チームの体制だろう。とくにクイックステップから移籍してきたデプルスは、UAEツアーで驚異的な牽引を見せつけていた。また、昨年のツアー・オブ・ユタで覚醒したクスも、昨年のブエルタの1週目で驚くべきアシスト力を発揮していた。ほかにもクラシカ・サンセバスティアン終盤で強い走りを見せたトルホークやボウマンなど、若いながらも実力に満ち溢れたライダーたちが揃ったこのチーム体制は、イネオスやアスタナとはまた違った「最強チーム」の貫禄を備えている。

チームにとっては3年前のリベンジともなる今回のジロ。そして110年の歴史の中で初となる、スロベニア人マリア・ローザの誕生を見ることはできるか。

 

 

181〜.チーム・カチューシャ・アルペシン(TKA)

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総合★★★☆☆

スプリント★★☆☆☆

逃げ★★★☆☆

マルセル・キッテルの衝撃的なチーム離脱が発表されたばかりのこのチーム。しかし、現時点でこのチームに全く希望が見えないわけでは決してない。北のクラシックでのポリッツの大活躍に、ヨークシャーでのツァベルの勝利など、若手の活躍が少しずつこのチームを盛り立てているように感じる。

そろそろ、この男が長い眠りから目覚めるべきときだ。ザッカリン。2016年は総合5位で走りながら、最後はダウンヒルで大落車してチャンスを失った男。翌年のブエルタでは総合3位。ここ最近はさっぱりなように感じつつも、直近のロマンディでは総合8位とやや復活の兆しを見せつつある。アシストの体制は十分ではないかもしれないが、絶対のエースという立場から少し離れて、我武者羅に勝利を目指す姿をもう一度見せてほしい。

昨年1勝しているバッタリンも当然、期待したい選手の1人。山岳逃げでは元コンタドールの右腕ナバーロが可能性を持つ。

 

 

191〜.チーム・サンウェブ(SUN)

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総合★★★★★

スプリント★☆☆☆☆

逃げ★☆☆☆☆

2017年覇者、そして2018年総合2位のデュムラン。その実力は間違いなく、昨年はそのまま出場したツールでも総合2位。

今年こそついにツールを狙うか、と思われた中で再びジロを狙うことを宣言した彼は、その意図を以下のように語っている。

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今年の彼の状態は決してよくないと見られている。彼自身も似たようなことを告げてはいる。だが、サイモン同様、そもそも出場レース数も少なく、その実際のところは不明。総合優勝候補であることに疑う余地はない。

昨年総合9位のオーメンのさらなる成長にも期待したい。ダウンアンダー新人賞のハミルトンも。

王者にして挑戦者。常に進化し続けるこのチームの今年の「奇跡」を楽しみにしたい。

 

 

201〜.トレック・セガフレード(TFS)

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総合★★★☆☆

スプリント★★★☆☆

逃げ★★★★

モレマももう、総合優勝に対する過度なプレッシャーを感じなくとも良いだろう。来年はニバリも合流する予定という中で、2年前のツールでの逃げ切り勝利のような、自由な走りの末の栄光を目指す、そんな走りを期待したい。

その意味で、ブランビッラも、ここ最近の不調から少しずつ抜け出しつつあるように感じる。先日のロマンディの登りスプリントでも、バランスを崩して転倒してしまいはしたものの、その走りのキレはかなり良かった。

若手のチッコーネはバルディアーニで走っていたネオプロ時代にジロで逃げ切り勝利を果たしている。そしてコンタドールの育成チームからの昇格組であるモスケッティは、UAEツアーのハッタ・ダム登りフィニッシュで、ユアンに喰らいついて2位に入り込んだ足を持つ。

今年は正直、全くといっていいほど目立てていないトレック。しかし、このジロで栄光を掴む下地は十分に出来上がっている。暴れてくれ!

 

 

211〜.UAEチーム・エミレーツ(UAD)

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総合★★☆☆☆

スプリント★★★★★

逃げ★★★★

2017年ジロの最強スプリンターが帰ってきた。チームを変えて。立ちはだかるは、旧チームの2018年ジロ最強スプリンター。チーム力では向こうが上? いや、しかしこのチームについても、ガビリアが自らのための最強トレインを育てあげた。コンソンニは野心溢れる若きスプリンター。ブエルタ・ア・サンフアンではガビリアの最強発射台の役目を担った。モラノはガビリアと同じコロンビアの若き才能。ガビリアがリタイアした後のツアー・コロンビアできっちりと1勝を持ち帰った有望株だ。

スプリントだけではない。イタリアの山岳との相性はばっちりのポランツェ、ツアー・オブ・ターキー総合2位のコンティ、フレーシュ・ワロンヌ3位でまだまだ切れ味を失っていないキング・オブ・パンチャーのウリッシなどが、きっちりとステージ優勝も量産できる状態にある。ボーリもまた才能あるTTスペシャリストであり、ガビリアのアシストをこなすと共に、もしかしたらTTステージでの優勝もありうるかもしれない。少なくとも上位には入れ込める逸材だ。

元、ワールドツアー唯一のイタリア籍チーム。その誇りと意地でもって、今年のジロの中心に立ってみせろ。 

 

 

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