りんぐすらいど

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3つのトピックスで振り返る「ジロ・ローザ2019」

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正式名称はジロ・ディターリア・インテルナツィオナーレ・フェンミニーレ

女子版ジロ・デ・イタリアとも呼ばれるが、その位置付けは現在の女子ロードレース界最大のステージレースであり、開催時期も男子のツール・ド・フランスが開催される7月上旬。

開催日数も今年は10日間。初開催は1988年と女子ロードレース界ではとりわけ古く、時期・日数・歴史全てにおいて女子ロードレース界の頂点に立つレースである。

 

今回は、女子レースについてまだまだ初心者である筆者が、シクロワイアードや海外の記事、そして実際のレースの映像を振り返りながら、ジロ・ローザの10日間についてまとめてみた。

今回のレースで強かったのは誰か。また、急速に頭角を現しつつある才能は誰か。

女子ロードについてこれから学んでいきたいという人にとって少しでも参考になれば幸い。

またもちろん、詳しい人からのツッコミや指摘も歓迎したい。

 

 

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トピックス1 「女王」マリアンヌ・フォスの圧倒的なる強さ

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プロ歴14年。ジロ・ローザと世界選手権を3度制し、プロ勝利数は191にのぼる女子ロード界に君臨する「女王」マリアンヌ・フォス(オランダ、CCCリブ)。彼女が、今回のジロ・ローザも席巻した。

純粋なステージ勝利数は今回だけで4回。ジロ・ローザの通算の勝利数を25に伸ばした。

また、逃げ切りが決まった第4・第8ステージも、メイン集団の先頭を取っている。そのことも考えれば、実質的に6勝していると言っても良いかもしれない。10ステージ中4〜6勝である。

その最大の武器は、男子レースでいうところのアレハンドロ・バルベルデやジュリアン・アラフィリップに近い、アップダウンステージでの登り勾配スプリントへの適性である。勝利した第2ステージは5〜6%、第3ステージは3〜4%、第7ステージは6%の勾配が3kmも続き、第10ステージは短くも急な、しかも石畳の登りフィニッシュとなっている。

過去にもフレーシュ・ワロンヌを5勝している。今年も、やはりアップダウン気味のワンデーレースであるトロフェオ・アルフレッド・ビンダでスプリント勝利を果たしている。登りスプリントにおいては、今なお最強であり続けているようだ。

一方、総合成績を大きく左右する山頂フィニッシュステージ(第5・第9)では大きくタイムを落とした。第5ステージのサン・ジャコモ湖(登坂距離7.3km、平均勾配8.3%)も、第9ステージのアルトピアノ・デル・モンタジオ(登坂距離12.4km、平均勾配7.3%)も、いずれもステージ優勝したファンフルーテンやファンデルブレッヘンからは7分近くタイムを失い、最終総合成績は17分遅れの20位。

近年勝利しているステージレースはツール・ド・ヨークシャーやツアー・オブ・ノルウェーなどの(おそらく)パンチャー向けステージレースばかり。本格的なクライマー向けのレースではもう勝てなくなってきてはいるのだろうか。

 

 

トピックス2  得意の「独走」で2連覇を果たしたファンフルーテン

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登りスプリントでは圧倒的な強さを誇るフォスに対し、36歳という年齢ながら、2位のファンデルブレッヘンに3分45秒の大差をつけて昨年に続く総合優勝、さらにはポイント賞も山岳賞も奪い取って3冠を達成して見せたのがアネミエク・ファンフルーテン(オランダ、ミッチェルトン・スコット)である。

彼女の圧倒的な武器は、その類稀なる独走力である。第5ステージのサン・ジャコモ湖(登坂距離7.3km、平均勾配8.3%)では、登り始めからいきなりアタックを仕掛けたファンフルーテンがそのまま独走。この日だけで3分近いタイム差をライバルたちから稼ぎ取った。

さらに翌日の12.1kmかつ獲得標高500m弱の登坂TTもまた、彼女の独壇場であった。ここでも、最大のライバルであるファンデルブレッヘンに対し、52秒ものリードを手に入れた。

最後の総合争いの舞台、第9ステージのアルトピアノ・デル・モンタジオ(登坂距離12.4km、平均勾配7.3%)では、ファンフルーテンの再三に渡るアタックと独走に対し、粘り強く食らいつき追いかけ続けた世界王者アンナ・ファンデルブレッヘン(オランダ、ブールスドルマンス)が、最後はこれを追い抜いて勝利を奪い取った。しかしここまで積み重なってきたタイム差はどうしようもなく、過去2度のジロ・ローザ制覇を果たしているファンデルブレッヘンに追いつく2勝目を確実なものとした。

「女子版ツール・ド・フランス」である「ラ・クルス」(7/19)でも昨年・一昨年と連勝しているファンフルーテン。今年も、もし出場するのであれば、3度目の総合優勝の有力候補となるであろう。

 

 

トピックス3  若手期待の星?  デミ・フォレリングに注目

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プロ歴も長い大ベテランたちの活躍を中心に語ってきたが、最後に若手選手の注目株、と自分が考えている選手についても触れておこう。

新人賞のジュリエット・ラボウ(フランス、サンウェブ)も勿論注目すべき選手だろう。今年21歳という驚くべき若さでありながら、第6ステージの個人TT(12.1km、獲得標高500m弱)でルシンダ・ブラントやエリザ・ロンゴボルギーニに匹敵する走りを見せつけた。第9ステージの本格山頂フィニッシュでも3分10秒遅れの10位と健闘している。総合でも11位だ。

だが、彼女以上に今回注目したいのは、総合13位のデミ・フォレリング(オランダ、パークホテル・ファルケンブルグ)。今年23歳になる彼女はギリギリで新人賞の対象外であり、総合成績でも13位と、ラボウよりは下位にあたる。

しかし全10ステージ中5ステージでTOP10に入り込み、うち山頂フィニッシュの第5・第9ステージではそれぞれ10位、6位とトップクライマーたちに負けない登坂力を示していた。第6ステージの個人TTでラボウに40秒、そして初日のチームTTでの1分半ものビハインドを背負ったことが敗北に繋がった。

しかもこのフォレリング、どうやらプロチーム入りしたのは今年から、ということで、年齢だけでなく経歴としてもフレッシュな選手なのだ。

それでいて今年、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ3位やフレーシュ・ワロンヌ5位、そしてOVOエナジー・ウィメンズツアー総合5位といった、パンチャー寄りクライマー向きの各種レースで好成績を収めている。フォスと似た脚質とも言える。

まだまだ未知数な才能を秘めた彼女の活躍に、今後も注目しておくべきかもしれない。

ただ、チームTTに関してはいかんともし難いので、チームごと改善に努めるかチームを変えるべきか・・・?(パークホテル・ファルケンベルグが普段チームTT能力がどれくらいなのかは分からないけれど・・)

 

 

 

以上、女子レース初心者の筆者が、今回のジロ・ローザの結果を振り返りながら感じたこと3つをピックアップしてみた。

実際のところ、それぞれの項目で注目すべきポイントはまだまだあるかもしれない。ここでとらえ損ねているポイントもある気はしている。もし気づいたところがあれば、遠慮なく指摘してほしい。

 

来年はより詳しい状態でジロ・ローザを視聴していきたいな、とも思う。

また、より気軽に視聴できる環境がもっと整っていけば良いとも思う。

知れば知るほど、より面白くなっていく女子ロードレース。その助けにこの記事が少しでもなっていれば幸いだ。

 

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