個人ランキングに続き、今年の「北のクラシック」での全ワールドツアーチームの成績を、「獲得UCIポイント」に基づいてランキング。
最もポイントを稼いだ「チーム」はもちろんあのチームだが、逆に最も稼げなかったチームとは・・・?
今回は成績の良い順番に発表。前後編の2部制とし、前編は上位9チーム、後編は下位9チームを紹介していく。
対象6レース
- オンループ・ヘットニュースブラッド(3/2)
- E3・ビンクバンククラシック(3/29)
- ヘント~ウェヴェルヘム(3/31)
- ドワーズ・ドール・フラーンデレン(4/3)
- ロンド・ファン・フラーンデレン(4/7)
- パリ~ルーベ(4/14)
※18あるワールドツアーチーム全てが出場している「北のクラシック(石畳クラシック)」レースを抜粋した。
では早速見ていこう。
(表中の年齢は全て2019/12/31時点のもの。また、各レースの項目に記載された数字はそのレースでの「順位」。「ポイント」の項目に記載された数字はその選手の獲得UCIポイントの合計を示している)
スポンサーリンク
第1位 ドゥクーニンク・クイックステップ 3143pt.
数字からもわかる最強軍団。2位のチームを2倍以上引き離す。5名ともTOP20の選手なんだからそりゃそうだよね。
各レースで必ず2人以上は上位に入れているのも特徴的。逆にそれがうまくいかなかったヘントとロンドは、ウルフパックの完全敗北というべきレースだった。
今年の北のクラシックを見ていて感じたのは、このチームはその圧倒的なチーム力でレースを支配し、コントロールしたときは盤石だが、逆に混戦状態に持ち込まれると、牽引の責任を背負わされることが多く不利になるということだ。グランツールにおけるスカイみたいなもので、強豪チームの宿命なんだろう。数年前に「数の有利(笑)」と言われていた頃はこの陥穽に陥っていたときだったのかもしれない。
そこからの挽回で、今はスティバルやユンゲルスなどの選手が先駆けで前に飛び出しレースをコントロールするようになった。だから彼らに対抗するためには、混戦の中で彼らより早く抜け出すこと。ヘントはそれが功を奏した。
そして、そんなドゥクーニンクの最大の天敵が、誰よりも強烈で誰よりもアグレッシブな走りをするような選手。すなわち、マチュー・ファンデルポールである。規格外な彼のような走りができる選手の前では、組織的なドゥクーニンクの戦略はもはや、意味をなさない。
第2位 EFエデュケーション・ファースト 1244pt.
まさに「ピンクのウルフパック」と呼ぶべき結果となった。
ファンマルクが抜け出しコントロールした後にベッティオルがアタックし、ラングフェルドが集団コントロールをするという見事なコンビネーションを発揮したロンドは、伝説のレースとなった。
まだまだこの3人以外の安定感は少ないが、突出した選手がいない代わりに、アルデンヌも含め総じて能力の高い選手は揃っている。個ではなくチームの力で勝つという、ロードレースの魅力たっぷりな戦い方を、これからも見せていってほしい。
第3位 チーム・ユンボ・ヴィズマ 1055pt.
ファンアールトだけでなく、クラシック適性の高いスプリンターのファンポッペル、そして最近はフルーネウェーヘンの発射台としても飛躍的な成長を遂げているテウニッセンも安定して強い。
が、それがゆえに、ファンアールトの実力を活かしきれない結果になってしまったのではないだろうか。パリ〜ルーベではなぜ、彼のためにアシストが早々に降りてこなかったのか? まだ自分の耳にはその明確な理由が入ってきていないのだが、果たして。チーム内で彼を絶対的エースとしてチームビルディングできていないのだろうか。みんな強いけど、それがゆえに勝てない、ウルフパックの素質があるのに、なりきれていない、勿体ないチームだ。
マチューそしてコレンドンサーカスの強さはそこにある。彼らはマチューを絶対的なエースに据えている。だからこそ、ロンドでの落車のリカバリーもデヴォルデルの献身的なアシストもあって問題なく行われた。あのチームは逆説的に「チーム力がある」のだ。
テウニッセンも才能あるクラシックライダーなのはわかる。だが、ファンアールトという存在を抱える以上、このチームが決断し、整えなければならない戦略の立て方は、これからも十分に考えていかなければならないだろう。
第4位 チーム・カチューシャ・アルペシン 1000pt.
このチームは今、完全にポリッツの独力でこの位置にいる。本来、北のクラシックでこの位置にくるようなチームではない。
しかしポリッツは、個人ランキング4位であることからもわかるように、今間違いなく最も才能のあるクラシックライダーの1人だ。今こそこのチームが、彼を中心に北のクラシックで存在感を示せるチームとなるべく、体制変革を必要とするタイミングではなかろうか。ザッカリンやキッテルが厳しい状態である以上・・・さもなければ、ポリッツもいつまでもこのチームに残ることはないだろう。
これからの移籍市場の動向に注目したい。
第5位 UAEチーム・エミレーツ 936pt.
このチームも、今回のランキング的にはクリストフのワントップ。そもそもUCIポイントを獲得できている選手が5人に満たない。
しかし、クリストフの勝利は、ガビリアのアシストのおかげでもあったし、そのガビリアは初出場のロンドでも積極的な動きを見せていた。今後、その新たな才能の発揮が楽しみになるチームでもある。
同じように結果は出せなかったが期待したいのがフィリプセン。ガチガチの石畳激坂クラシックでの成績はこのチームは出せないかもしれないし他でも勝ててるので出せなくても良いと思うが、スプリンターズクラシックでは十分、支配的な立ち位置にいられるチームだろう。
第6位 ボーラ・ハンスグローエ 812pt.
このチームも非常に総合力の高いチームであることがわかる。それだけに、サガンの不調と、ドリュケールの戦線離脱はあまりにも痛い。オスのルーベ落車も。
今後はセカンドエースの登場が待たれる。その意味でゼーリッヒの、あの暴風のヘントにおける執念の走りとその中で8位に入るタフネスさは期待大。
第7位 AG2Rラモンディアル 803pt.
ここもナーセンだけが頑張っている印象。ファンデンベルフも終盤まで頑張るが、勝利には絡めない。確実に北のクラシック強化を意識した移籍計画を進めていたはずなのに、残念な結果である。
昨年のパリ〜ツール2位のコズネフロワや、フランスシクロクロス王者のヴァントゥリーニは今回北のクラシック不参加だが、どうだろう。確かに前者はどちらかというとパンチャー、後者はスプリンターという印象だが、彼ら若手の覚醒がないと、外部から持ってくるだけの現在の状況だと、今後も厳しいのではないかな・・
第8位 ロット・スーダル 780pt.
ベノートは間違いなく才能のあるクラシックライダーだ。もしルーベでの不幸なリタイアがなければ、ファンアーフェルマートとナーセンと並ぶ成績は出せるくらいに。そして同じくらい、「でも勝てない」立ち位置に・・。
クークレールも今年の北のクラシックでは存在感を示してはいた。ロンドでのマチューの動きにもしっかり反応し、彼とベノートがうまくコンビネーションを取れれば・・・あるいはもう1人くらい、強力な選手がいれば、EFのようにコンビネーションで勝利を得られる気はする。
ウェレンスは今回なぜかパンチャーたちが成績を出したオンループでの成績だけでこの位置なので、その「もう1人」には数えることはできない。
今年はアワーレコードに集中していたカンペナールツとか、ユンゲルスみたいに覚醒しないかな。オリバー・ナーセンの弟のローレンスとか。あとはなんとか外から持ってくるか・・・。もちろんアルデンヌに集中しても良いんだけど、せっかくのクークレールももったいない気がして。
第9位 CCCチーム 725pt.
これが現実である。エースだけならば勝利がないのにこれだけのポイントを稼いでいるのに、チームではこの順位。同じくクラシックエースがはっきりしているように見えるボーラとの差を見ると歴然である。ファンケイルスブルクもヴィシニオウスキーも決して悪い選手ではないのに、なぜこうなったのか。本人たちの問題というよりも、もっと大きな枠組みでの問題にも感じる。
そのあたり、来シーズンに向けての移籍戦略で成功を目指して欲しい。新チーム(と言っても過言ではないだろう)は初年度はどうしても厳しく、2年目から真の個性や結果を出しやすい。バーレーンがそうであったように。来年のCCCには大きな期待を寄せておこう。
スポンサーリンク