自転車ロードレースシミュレーションゲーム「Pro Cycling Manager 2020」を用いて、2020年シーズンのツール・ド・フランスを「本来の期間」で「本来のスタートリスト」を再現しながら実況する企画に向けて、全21ステージのコースをプレビュウしていく。
今回は第2週。
山、山、山の第1週と比べると比較的穏やかな1週間で、最初の2ステージは山岳ポイントのほとんどないド平坦ステージ。
ただ、今大会2度目の中央山塊訪問のあたりから少しずつ起伏が増えてきて、最後はかの有名な「グラン・コロンビエ」を「3回」登るステージへ。
しかも、ツール・ド・フランスでは初となる、「グラン・コロンビエ山頂フィニッシュ」である。
束の間の休息を挟みつつも、激動の第3週に向けた伏線を張っていく6日間を徹底的に解説していく。
- 第10ステージ ル・シャトー=ドレロン(オレロン島)〜サン=マルタン=ド=レ(レ島) 163.2㎞(平坦)
- 第11ステージ シャトライヨン=プラージュ〜ポアティエ 164.3㎞(平坦)
- 第12ステージ ショヴィニー〜サラン(コレーズ県) 210.8㎞(丘陵)
- 第13ステージ シャテル=ギヨン〜ピュイ・マリー(カンタル) 185.4㎞(丘陵)
- 第14ステージ クレルモン・フェラン〜リヨン 193.6㎞(平坦)
- 第15ステージ リヨン〜グラン・コロンビエ 181㎞(山岳)
スポンサーリンク
↓第1週はこちらから↓
↓第3週はこちらから↓
第10ステージ ル・シャトー=ドレロン(オレロン島)〜サン=マルタン=ド=レ(レ島) 163.2㎞(平坦)
山岳ポイント最大値:0pt
ようやく平坦らしい平坦ステージが来た。というより平坦すぎて、これはこれでジロ・デ・イタリアに近い感じがしてまたツール・ド・フランスらしくはない。
なんでこんなレイアウトになっているかというと、海沿いを走るから。
というか海沿いというか海の上を2回走るようなステージ。
フランス西部に浮かぶ「オレロン島」から、一度橋を渡って本土に至り、そこからまた橋を渡って「レ島」へと向かうコースとなっている。
いずれも、ツール・ド・フランスが初めて訪れる島である。
なおレ島には、ルイ14世時代の有名な建築家ヴォーバンによる星形要塞が完璧な形で残っているという。
ゲーム上では残念ながら見つけることができなかったが、現実のレースでは空撮でそれが映り込むことが実に楽しみである。
第11ステージ シャトライヨン=プラージュ〜ポアティエ 164.3㎞(平坦)
山岳ポイント最大値:1pt
スタート地点は海沿いだが、やがてすぐ内陸へ。
ただ、まだまだ中央山塊の厳しいアップダウンにまでは到達しない。前日に続き、今大会では珍しいピュアスプリントステージである。
おそらくは今大会6回目の集団スプリントとなりそう。とくに登りがあまり得意ではないスプリンターたちにとっては、昨日と今日とでしっかりと勝利およびポイントを稼いでおきたい。
たとえばヴィタルコンセプトのブライアン・コカールなど・・・4年ぶりのツール・ド・フランス。2度、優勝まであとわずかというところにまでたどり着いた彼が、今回のチャンスをしっかりとモノにできるか。
第12ステージ ショヴィニー〜サラン(コレーズ県) 210.8㎞(丘陵)
山岳ポイント最大値:12pt
今大会最長ステージ。そしてプロトンは、今大会2度目の中央山塊へ。
山岳ポイントも5つ用意されているが、カテゴリのない登りも無数に配置され、常に登っては下って。スプリンターたちはとにかく足を残すことに専念せざるを得ず、最後はパンチャーたちによる争いとなるだろう。
翌日のステージに備え総合争い勢がペースを落とすことを選択すれば、大逃げが決まる可能性もあるだろう。
注意すべきはゴール前25.6km地点から登り始める2級山岳「スック・オ・メイ」。
平均勾配は7.6%とそこそこのように思えるが、山頂まで残り2㎞から1㎞のところが勾配11~14%とかなりの激坂区間。
ゴールまで距離があるのでここで総合争いが起きることはないだろうが、逃げにせよメイン集団にせよここからステージを狙うアタッカーが飛び出す可能性がある重要ポイントだ。
ラストも残り3㎞から勾配3~6%の登りがフィニッシュまで続く。
パンチャータイプに有利なレイアウトと言えるだろう。メイン集団でのゴールとなれば、アラフィリップやサガン、マシューズなどに期待したいレイアウトだ。
第13ステージ シャテル=ギヨン〜ピュイ・マリー(カンタル) 185.4㎞(丘陵)
山岳ポイント最大値:39pt
第1週と比べると落ち着いたレイアウトの多い第2週だが、もちろん総合争いに影響を及ぼすステージはしっかりと登場する。
「カンタル県のピラミッド」とも呼ばれるピュイ・マリー擁するこのステージもその1つだ。序盤から1級・2級・2級と容赦なく登りが連続していく。
山岳賞狙いの選手も含む大規模な逃げ集団が形成される可能性は高いだろう。
そのうえで、総合争いの舞台となり始めるのはゴールまで残り15㎞から登り始める2級山岳「ネロンヌ峠」。
登坂距離3.6km・平均勾配8.2%・ 最大勾配9.5%。
3.6㎞の間ずっと勾配が一定でほとんど変化がないのが特徴。それが8%前後の勾配なのだからじわじわと足に来る厳しさであり、ここで少しずつ集団が絞り込まれ、逆転を狙う選手によるアタックも繰り出されることだろう。
なお、この登り区間の最大勾配は9.5%だが、実は山頂を越えた直後に瞬間的に勾配が増し、12%、14%、果ては17%なんて区間が存在する。
山頂が最もギャップを生みやすい瞬間のため、決定的な分断はここで巻き起こることになるだろう。
そして、ラストの山頂フィニッシュは1級山岳「ピュイ・マリー」。
登坂距離5.2%・平均勾配7.9%というプロフィールだけ見れば大したことがないように思えるが、上の画像を見てわかるように後半が異様な勾配をもつ。
具体的には残り2㎞地点から10%を下回る瞬間がなく、残り1㎞からは14~15%が延々と続く。
今大会最大の「激坂フィニッシュ」。イネオスのチーム戦略はここでは役に立たず、完全に個の力のぶつかり合いとなる。
このステージの後総合上位に居座れる選手は、今大会で本当に勝つ可能性のある選手たちだけとなるだろう。
第14ステージ クレルモン・フェラン〜リヨン 193.6㎞(平坦)
山岳ポイント最大値:10pt
この日こそザ・平坦詐欺極まれり、といったところ。
ステージ前半に登坂距離10km・平均勾配5.7%・最大勾配7.4%の2級山岳。
そのあとも山岳ステージ並みのアップダウンの果てに、ラストも決してスプリンター向けのレイアウトではない。
ゴール前12㎞地点と4㎞地点に2つの4級山岳。
1つ目は最大で13.6%もの激坂区間を含んでいるし、この2つの間にもカテゴリのついていない小さな登りが用意されている。
このレイアウトは十分パンチャー向きといった感じで、集団スプリントになる可能性がないとは言えないが、各チームのパンチャー・アタッカーたちも活躍しそうなステージである。
また、そんなレイアウトだからスプリンターズチームもやる気を出さず、総合系チームも2つの山岳ステージに挟まれている日がゆえにサイクリングモードに入り込み、大逃げが決まる可能性も。
人生を変えうるツール・ド・フランス勝利に向けた、一世一代の飛び出しを見せる男はいるか。
第15ステージ リヨン〜グラン・コロンビエ 181㎞(山岳)
山岳ポイント最大値:40pt
第1週に比べて少し大人しいように思えてきた第2週。
しかし、この最終日に満を持して凶悪なステージを用意してきた。
前半は長い平坦が続く平和なレイアウトではあるものの、コース中盤から一気に3つの登り――1級山岳・1級山岳・そして超級「グラン・コロンビエ」である。
しかも、この日は実質的にグラン・コロンビエを3回登る。
どういうことかというと・・・以下のコースマップを参照してほしい。
終盤の3つの登りが登場する区間だが、左下の方から最初の1級山岳「セッレ・ドゥ・フロメンテール」。
山頂まで残り3.5㎞あたりから10%以上の勾配が延々と続き、残り1.5㎞地点では20%近い最大勾配に到達する超激坂。
そんなこの「ドゥ・フロメンテール」だが・・・実はこれ、グラン・コロンビエに至る峠道の1つであり、その山頂までにはいかないものの、その途中まで登るルートなのである。
そこから一度西側に峠を下りて、北側の1級山岳「ビシュ峠」へ。
「ドゥ・フロメンテール」と比べると極端ではないものの、それでも長い登坂距離の中に何度も激坂区間が。
そしてラスト700mでまた10%弱の勾配が登場。山頂の地点でまだゴールまで46㎞残ってはいるものの、すでにメイン集団は決定的に絞り込まれていそうだ。
そしてこのビシュ峠もまた、グラン・コロンビエの一部。
ここから南下し、最後は2012年のツール・ド・フランス初登場時にも使用した「キュロスからの登り」を使用した3回目、そして山頂に至る最終グラン・コロンビエ登坂が開始される。
登坂距離17.3km・平均勾配7.2%・最大勾配12.6%。
ところどころに差し込まれた赤い急勾配区間の存在がこの登りの恐ろしさを思い知らせている。
すでにここまでの2つの登りがメイン集団は疲弊し削り取られている中で、この幾度となく勝負所が現れるレイアウトの中で、出入りの激しいアタック合戦が繰り広げられることだろう。
そして、このグラン・コロンビエの山頂にゴール地点に置かれるのは、実はツール・ド・フランスでは初のこと。
今年のツール・ド・フランスを象徴するステージとも言えるこの日、勝ってマイヨ・ジョーヌへの可能性を示す選手は一体誰だ。
なお、グラン・コロンビエが初めてコースに組み込まれたのは1999年のツール・ド・ランであるとのこと。
そして昨年のツール・ド・ランの最終日もグラン・コロンビエ山頂フィニッシュ。
ここで勝ったのが、ティボー・ピノ。
そしてその勢いをそのままに飛び込んだツール・ド・フランス本戦で、同様に初の山頂フィニッシュとなったトゥールマレーで勝利。
マイヨ・ジョーヌすら視野に収めるような活躍を見せていた。
昨年はその後、あまりにも哀しいフィナーレを迎えることとなったピノ。
今年こそ。
期待しているぞ。
↓第3週はこちらから↓
スポンサーリンク