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ストラーデ・ビアンケ2022 注目選手プレビュー

 

前回のレース&コースプレビューに引き続き、今年のストラーデ・ビアンケに出場する選手たちの中から「注目の選手」を解説していきます。

過去のストラーデ・ビアンケの実績、そして昨年や今年の丘陵系レース全体の調子の良さなどを勘案して、11名の選手を選出。

その注目ポイントなどを解説していきます。

 

目次

 

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ジュリアン・アラフィリップ(クイックステップ・アルファヴィニル)

フランス、29歳、173㎝、62㎏、プロ9年目

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過去の実績

2019年優勝

2020年24位

2021年2位

今年の実績

ツール・ド・ラ・プロヴァンス総合2位&ポイント賞

ドローメ・クラシック5位

フォーン=アルデシュ・クラシック25位

 

石畳も丘陵も万能な最強のクラシックライダー。過去3回しか出場していないが、2019年には初出場でいきなりの優勝。そして昨年も、ギリギリまで残り続け惜しくも2位に終わった。

ゆえに今年も期待したいところだが、現時点ではまだエンジン全開といった感じではない状態。ドローメ・クラシックは5位だが、その前日のフォーン=アルデシュ・クラシックでは25位と、そこまででもなかったので。

とはいえ今年はロンド・ファン・フラーンデレンは狙わず、逆にイツリア・バスクカントリーを経由してフレーシュ・ワロンヌ&リエージュ~バストーニュ~リエージュに向かう「アルデンヌ・クラシック最重視」スケジュール。となれば、このストラーデ・ビアンケもその前哨戦として重要なレースなので、きっちりと照準は合わせてきているはず。文句なしの優勝候補だ。

 

 

アレハンドロ・バルベルデ(モビスター・チーム)

スペイン、41歳、177㎝、61㎏、プロ21年目

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過去の実績

2013年:13位

2014年:3位

2015年:3位

2016年:10位

2018年:4位

2021年:47位

今年の実績

グラン・カミーノ区間1勝&区間2位&区間3位×2&総合優勝&ポイント賞

チャレンジ・マヨルカ1勝&2位&6位

ボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナ総合5位

 

アルデンヌの王とも言うべきこの男だが、意外とストラーデ・ビアンケは近年あまり出場していない。昨年は3年ぶりの出場だったが、全く振るわなかった。

とはいえ、過去には2回の表彰台に4回のTOP10。やっぱり相性は良い。

そして、プロ21年目、41歳の引退年となるにも関わらず、相変わらずまだまだ強い。普通にここまでで2勝しているって何なんだ?

そんな彼の凄すぎるプロキャリアを締めくくる「華」の一つにこのストラーデ・ビアンケでの勝利ってのは出来過ぎだけれど、全然ありえてしまうから恐ろしい。

 

 

ヤコブ・フルサン(イスラエル・プレミアテック)

デンマーク、36歳、181㎝、65㎏、プロ14年目

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過去の実績

2016年11位

2019年2位

2020年5位

2021年9位

今年の実績

ボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナ総合6位

グラン・カミーノ総合10位

 

グランツールライダー、というよりはワンデークラシックこそ専門といった感じで、2019年にはリエージュ~バストーニュ~リエージュ、そして2020年にはイル・ロンバルディアを制している。

ストラーデ・ビアンケとの相性も抜群に良く、2019年はアルデンヌ・クラシック3連戦すべてジュリアン・アラフィリップと一進一退の攻防を繰り広げていたが、このストラーデ・ビアンケでもまさしく同じ感じで最後のスプリント勝負までもつれ込み2位。詳細は前回の記事を参照

昨年からこっち、その「全盛期」たる2019~2020シーズンと比べると調子を落としてきているのは確かで、昨年と今年のレース全体の実績で言えば今回の優勝候補たちの中ではかなり下に位置する。

だが、ストラーデ・ビアンケでは常に上位に入り込むほど相性は良いので、今回も勝ちとまでは言えなくとも上位入りは期待できるか。今年のボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナに登場しレムコ・エヴェネプールも苦しめた未舗装路にも、元マウンテンバイカーとしての実力を発揮して強さを見せつけていた(写真)。

 

 

サイモン・クラーク(イスラエル・プレミアテック)

オーストラリア、35歳、175㎝、63㎏、プロ12年目

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過去の実績

2010年17位

2017年58位

2018年17位

2019年8位

2020年DNF

2021年8位

今年の実績

チャレンジ・マヨルカ5位&3位&6位

ブエルタ・アンダルシア区間9位&2位

オンループ・ヘットニュースブラッド11位

 

長年所属していたEFチームを一昨年末に契約終了し、ギリギリのところで人をかき集めていたキュベカ・ネクストハッシュに拾われたのが昨年。そのキュベカも解散が決まり、かろうじてイスラエルで1年契約。まさに綱渡りのプロキャリア。

だが、そんな冷遇が信じられないくらいに、安定した成績を出し続けている男。その中でも去年・今年とさらに強くなっている印象すらある。今年はここまで9日間レースに出場したが、そのうちの5日間でTOP10入り。TOP12入りは7日間と、勝ってはいないものの安定した実績を出している。

それはこのストラーデ・ビアンケも同様。フルサンと並び、勝ちはしないだろうけれど上位に入りそう候補の1人である。その二人がうまく化学反応起こして、2018年のオンループ・ヘットニュースブラッドのアスタナの勝利みたいなドラマを生んでくれないものだろうか。

 

 

タデイ・ポガチャル(UAEチーム・エミレーツ)

スロベニア、23歳、176㎝、66㎏、プロ4年目

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過去の実績

2019年30位

2020年13位

2021年7位

今年の実績

UAEツアー区間2勝&総合優勝

 

言わずと知れた現役最強選手。昨年はツール・ド・フランス総合優勝のみならずリエージュ~バストーニュ~リエージュとイル・ロンバルディアも制するなど、山岳系ワンデーレースへの高い適性を見せた。そしてこのストラーデ・ビアンケでも7位。今年も十分に上位に入る可能性はある。

だが、真に恐ろしいのは次に紹介するアレッサンドロ・コーヴィとのコンビネーション。UAEチーム・エミレーツは「前哨戦」トロフェオ・ライグエーリアでも最終盤にこのコーヴィとフアン・アユソーとヤン・ポランツを先頭に残し、表彰台を独占していた。ディエゴ・ウリッシをさらに7位に入り込ませるという圧倒ぶりだ。

今回もウリッシもいるしマルク・ソレルもいる。単独でも十分に強い彼らがコンビネーションを発揮したときの恐ろしさは、全チーム中随一かもしれない。

 

 

アレッサンドロ・コーヴィ(UAEチーム・エミレーツ)

イタリア、23歳、180㎝、66㎏、プロ3年目

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今回初出場

今年の実績

ブエルタ・ア・アンダルシア区間1勝&ポイント賞

ブエルタ・ア・ムルシア優勝

トロフェオ・ライグエーリア3位

 

今年初出場の若手だが、昨年のクラシカ・サンセバスティアン5位やコッパ・ベルノッキ2位など急成長中。今年に入っていきなりプロ初勝利&2勝目を飾るなど、今最も勢いのあるイタリア人若手パンチャーである。

何より注目は、昨年のジロ・デ・イタリアの「ストラーデ・ビアンケ」ステージで、逃げ切りとはいえ区間2位。最後はマウロ・シュミットにスプリントで敗れたが、初出場のこのストラーデ・ビアンケ本戦に対する相性の良さはばっちりと示していた。

「前哨戦」トロフェオ・ライグエーリアでもチームメートたちと共に表彰台独占。今回も最終盤で「タデイ・ポガチャルを囮に使う」なんてことをしながらさらっとカンポ広場に先頭で入ってくる姿なんかを、ぜひ見てみたいところ。

 

 

ティム・ウェレンス(ロット・スーダル)

ベルギー、30歳、182㎝、71㎏、プロ11年目

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過去の実績

2017年3位

2019年10位

2021年13位

今年の実績

ツール・デ・アルプ・マルティーム・エ・ドゥ・ヴァール区間1勝&総合2位

チャレンジ・マヨルカ1勝&4位&8位

クラシカ・ハエン・パライソ・インテリオール2位

 

今年出走した7日間のうち実に6日間でTOP10入り、しかも5日間でTOP5入りとかなり絶好調。勝利も2回もある。まあ、シーズン序盤調子いいのは、彼の定番ではあるのだが。

あとはその勢いをアルデンヌ・クラシックにまで持ち込めるか。ストラーデ・ビアンケとも相性は良いので、十分に期待したい。期待したいと長年言い続けていて、そろそろ、本当に・・・。

直前のオンループ・ヘットニュースブラッドは風邪で出走せず。体調が完全に戻っているのか、トレーニングは十分か、という不安はあるが、逆にやる気・モチベーションは十分のはず。

喘息持ちなので、できれば砂埃が舞わない悪天候の方が強さを発揮しやすいだろう。

 

 

ジャンニ・モスコン(アスタナ・カザフスタンチーム)

イタリア、27歳、182㎝、70㎏、プロ7年目

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過去の実績

2016年18位

2017年17位

2018年14位

2019年58位

2020年DNF

今年の実績

オンループ・ヘットニュースブラッド122位

トロフェオ・ライグエーリアDNF

 

今年ここまでのレース数は少なく、上記の2日だけ。そして散々な結果なので本当に大丈夫か?というところが最大の不安。ストラーデ・ビアンケの過去の実績もそこまででもない。

が、今回はしっかりとアスタナのエースナンバーを背負わせてもらっているので、その点は期待したいところ。実際、過去にはこのレースをエースで走れたことはないのだから。

そして昨年は何といってもパリ~ルーベでのあの強烈な走り。最後はパンクと落車で沈んでしまったが、同年の3勝と合わせ、ポテンシャルが上がりつつある状態なのは確か。

もちろん、ルーベとストラーデ・ビアンケとは全く異なるが、そのストラーデ・ビアンケとの関連性も高いイル・ロンバルディアとかでも3位に入っていたり、クライマー/パンチャー向けの2018年および2019年の世界選手権ロードレースでも上位に入っていたりと、ストラーデ・ビアンケを制する素質は非常に高い。

今年の実績がないというのは本当に大きな不安要素だが、期待する選手としては十分だろう。

 

 

グレッグ・ファンアーヴェルマート(AG2Rシトロエン・チーム)

ベルギー、36歳、181㎝、74㎏、プロ16年目

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過去の実績

2010年13位

2011年9位

2012年5位

2013年6位

2015年2位

2016年6位

2017年2位

2018年34位

2019年6位

2020年8位

2021年19位

今年の実績

オンループ・ヘットニュースブラッド3位

 

今大会出場選手の中でももしかしたら最もストラーデ・ビアンケ経験のある選手かもしれない。少なくとも実績という意味では間違いなくトップだ。しかし、勝利は一度もない。

今年も調子は悪くない。オンループ・ヘットニュースブラッドでは3位。しかし、勝つ姿というのはなかなか想像はしづらい。

今年も「上位入り」で終わるのか、それとも。

 

 

ブノワ・コヌフロワ(AG2Rシトロエン・チーム)

フランス、26歳、179㎝、64㎏、プロ6年目

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今回初出場

今年の実績

ドローメ・クラシック3位

グランプリ・シクリスト・ラ・マルセイエーズ5位

 

昨年は同じく「フランドルとアルデンヌの合いの子」的なレースであるブルターニュ・クラシックを(ジュリアン・アラフィリップを相手取って)優勝するなど、勢いのある名パンチャー。ストラーデ・ビアンケは初出場だが、相性が悪いわけがない。

今年も実績が少ないように見えるが、独自の基準で算出している丘陵系レース実績では今シーズン6位。今大会の優勝候補であることは間違いない。それこそ、ファンアーヴェルマート以上に。

そのファンアーヴェルマートと共に集団先頭付近に残り、うまくコンビネーションを発揮できれば良いのだが。もうワールドツアーチームではこことチームDSMしか残っていない「未勝利クラブ」脱出、なるか?

 

 

ミヒャエル・ゴーグル(アルペシン・フェニックス)

オーストリア、28歳、186㎝、70㎏、プロ7年目

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過去の実績

2018年DNF

2020年9位

2021年6位

今年の実績

特筆すべきものなし

 

サイモン・クラークと同じく、地味だが意外と頑張っているタイプの選手。とくにストラーデ・ビアンケでは昨年・一昨年と2年連続でTOP10に入ったのは決して偶然ではないだろう。

とはいえ、昨年ストラーデ・ビアンケ以外で活躍があったかというと・・・だし、今年もTOP10どころかTOP20以内に入れた日は一度もない。ストラーデ・ビアンケへの好相性だけで推すにはややリスクがある。ロマンはあるけれど。

マチュー・ファンデルプールがいれば良いアシストになったのだろうけれど・・。

 

 

で、結局優勝候補は?

色々考えた結果、ポディウムは次の3名を予想。

1位:ジュリアン・アラフィリップ

2位:アレッサンドロ・コーヴィ

3位:タデイ・ポガチャル

 

ル・トルフェのアタックで昨年のマチュー・ファンデルプールへの意趣返しのようにアラフィリップがアタックを敢行。すでに絞り込まれていた先頭集団の中から抜け出す。

だがここに食らいついた男が一人。初出場のアレッサンドロ・コーヴィ。最後のサンタカテリーナ通りの登りまで何とか食らいつくが、さすがにそこで引きちぎられてしまった。

ジュリアン・アラフィリップ。2枚目のアルカンシェルジャージを着る男が、2回目のストラーデ・ビアンケの栄冠を手に入れる。

メイン集団の先頭はグレッグ・ファンアーヴェルマートやヤコブ・フルサンらとのマッチスプリントを制してポガチャルが獲り、UAEチーム・エミレーツのツースリーを達成。

アレハンドロ・バルベルデ、サイモン・クラーク、ブノワ・コヌフロワなども頑張るがTOP10入りに留まる・・・なんてストーリーで。

 

 

なお、女子の方も同日に開催されるが、そっちは

1位:アネミエク・ファンフルーテン

2位:エリーザ・ロンゴボルギーニ

3位:マリアンヌ・フォス

 

と、安牌過ぎる予想を。

2019年・2020年覇者ファンフルーテンが今年も独走勝利。ロンゴボルギーニがまたしても惜しくも2位。集団先頭をフォスが獲り、カタジナ・ニエウィアドマやセシリーウトラップ・ルドヴィグ、マビ・ガルシアなどの常連上位勢がバタバタとTOP10に入り込んでくる感じで・・・。

 

はてさて、どうなるか。

 

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