りんぐすらいど

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オンループ・ヘットニュースブラッド2022プレビュー② コース詳細と注目チーム&選手

 

前回の「過去のレース振り返り」に続き、いよいよ今年のオンループをプレビューしていく。

中盤が多少変化した今年のコースを確認しつつ、今年出場する注目チーム、選手を紹介していく。

過去4年のうち2度を制している常勝軍団クイックステップがまた頂点を奪うのか。

それとも、今年はいつもと違う男、ワウト・ファンアールトがいよいよ栄光を掴み取るのか。

 

目次

 

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コースについて

1945年から続くこのレース。元々はロンド・ファン・フラーンデレンへの対抗として生まれた経緯があるが、現代のロンド・ファン・フラーンデレンが中盤にカペルミュール、フィニッシュはオウデクワレモントとパテルベルグという構成であるのに対し、2018年以降のオンループ・ヘットニュースブラッドはそのフィニッシュ付近のレイアウトがかつての――2010年のあの「伝説」の舞台ともなっている――カペルミュール~ボスベルクフィニッシュとなっている。

 

その基本線は変わらない。ただ、中盤あたりのレイアウトはやや変化が。2019年~2021年の勝負所となった残り43㎞のモレンベルクや残り70㎞のレケルベルクは登場しない。

今年の「13の急坂」は以下の通り(これ以外にも平坦石畳区間が9つ登場する)。

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急坂の種類は違うが、同じく残り70㎞や40㎞のエリアには注意していきたい。すなわち、残り74㎞の「最長の急坂」ホステレリーや、残り40㎞からのマールボロウストラート&ビーセストラートの連続登坂。

そしてもちろん、ラスト17㎞からのカペルミュール。その破壊力は決して象徴的なものだけではなく、ここで数を残すことのできたチームが、最後の勝利を掴める確率が最も高い。

 

果たして、今年はここで誰が勝つのか。

 

 

今年も最強⁉ クイックステップ軍団

現コースになってからも、2019年・2021年の2回勝利している「常勝軍団」クイックステップ。元々は彼らもこの開幕戦を制することは長らくできていなかったが、2019年はその悪い伝統を打ち破ったメモリアルな年となった。

2020年も、ティム・デクレルクが献身的なアシストによってイヴ・ランパールトを勝負圏にまで運び上げていた。そして2021年はそのチームとしての力が最も炸裂したシーズンであり、直後のE3サクソバンク・クラシック、そしてロンド・ファン・フラーンデレンでの快勝にも見事につながったレースであった。

詳細は前回の記事を参照

www.ringsride.work

 

今年も強力無比なメンバーを揃えてきている。

 

1.イヴ・ランパールト(ベルギー、31歳)

2.ベルト・ファンレルベルフ(ベルギー、30歳)

3.ヨセフ・チェルニー(チェコ、29歳)

4.イーリョ・ケイセ(ベルギー、40歳)

5.カスパー・アスグリーン(デンマーク、27歳)

6.フロリアン・セネシャル(フランス、29歳)

7.ゼネク・スティバル(チェコ、37歳)

 

昨年のE3&ロンド覇者のアスグリーン、2019年覇者のスティバル、昨年の最終発射台を務めブエルタ・ア・エスパーニャでも区間勝利しているセネシャル、そして勝利自体はなかなか無いがクラシックでは常に上位に入り込んでいる最強のクラシックハンター、ランパールト。

そしてTTスペシャリストのチェルニーはアスグリーンと同じく万能に力を発揮し、ファンレルベルフも発射台としての実績が多く、昨年のようなスプリント展開になったときは、今年のスプリントエースのセネシャルのための重要な役割を果たすだろう。

Embed from Getty Images

 

あらゆる勝ち方を狙える、隙の無い布陣。今年もやはりチームとして最強なのは間違いない。

とはいえ、昨年の勝者ダヴィデ・バッレリーニはいない。また、昨年中盤で見せ場を作ったジュリアン・アラフィリップもいない。

E3やロンドに比べればまだ難易度の低いオンループにおいては、逆にこのチームが突出することはできず、個々人の力量で競い合わされて敗北することも少なくないのも事実。

とにかく枚数を残すこと。できれば、どの局面においても、常に3名は。それができなければ、2018年や2020年のように、敗北してしまうだろう。

 

 

そして、この常勝軍団のライバルとなるのが、やはりあの男だ。

これまでオンループとの相性は常に悪かったが、彼も、彼のチームも、今年は例年とは一味違う。

 

 

今年は一味違う⁉ 新生ユンボ・ヴィズマの実力や如何に

ワウト・ファンアールトは過去3回、このオンループに出場しているが、実は一度もTOP10に入れていない。2018年(38位)はまだプロコンチネンタルチームに所属していたときだし、2019年(13位)はダニー・ファンポッペルに助けられながら残り43㎞で形成された17名の中に入り込んでいたが、「今日は自分のベストな日ではなかった」とのちに認めているように、不十分な走りで最後の6名の中には入り切れなかった。

そして2020年(11位)は残り70㎞で形成された7名の勝ち逃げ集団に入れずに終わる。

いずれにせよ、重要なところで重要なポジションを護りきれずに終わることの多いファンアールト。それはオンループのみならず他のクラシックでも同様だが、とくに開幕戦となるオンループでは、コンディションがまだ整い切れていないがゆえに、彼自身の問題で勝負集団に入り込めないというパターンが多かった。

 

今年も、決してこのレースに焦点を当てているわけではないだろう。万全のコンディション、というわけにはいかないはずだ。

だが、今年のクラシックにおける彼の気合の入り様は例年とは違うはずだ。オフシーズンでも走り込みを行うなどいつもと体のつくり方を変えているし、その結果かシクロクロスでは彼のキャリア史上最高のコンディションで10戦9勝というマチュー・ファンデルプール並みの圧勝ぶりを見せてもいた。

そしてコロナ下でのアメリカ開催ということもあり、世界選手権への出場もパスしていることなど、例年とは異なる状況でこの開幕戦に臨めることは、ポジティブな要素と言えるだろう。

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そして、それはまた、チームも同様である。

昨年のネイサン・ファンフーイドンク獲得に続き、今年はティシュ・ベノートとクリストフ・ラポルトという強力なクラシックライダーを新たに獲得。

今回のオンループにはラポルトは出場しないが、オンループでの実績もあるベノートが参加することで、「ファンアールト頼り」にならない展開の中での勝利や作戦も考えていけるだろう。

今年のユンボ・ヴィズマのメンバーは以下の通り。

 

1.ワウト・ファンアールト(ベルギー、28歳)

2.パスカル・エーンクホーン(オランダ、25歳)

3.エドアルド・アッフィニ(イタリア、26歳)

4.マイク・テウニッセン(オランダ、30歳)

5.ティシュ・ベノート(ベルギー、28歳)

6.トッシュ・ファンデルサンド(ベルギー、32歳)

7.ネイサン・ファンフーイドンク(ベルギー、27歳)

 

昨年のヘント~ウェヴェルヘムで最高のアシストをしてみせたファンフーイドンクに、ベノート、そして色々噛み合わないことも多いが本来であればファンアールトとダブルエース体制を取れるだけの実力をもつテウニッセン。

昨年はファンアールトは出場していないが、昨年のようなスプリント体制になってもファンアールト自身はもちろんテウニッセンやファンデルサンドの存在は重要なトレイン要員となりうるだろう。

 

もしもこのチームがクイックステップのようなチーム力を発揮することができれば、レースは一気に面白くなるだろう。

今年はそういった新たな時代になる可能性が十分にある。まずはベノートを加えたこの「新生ファンアールト班」がどのように機能するか。楽しみである。

 

 

その他、注目の選手たち

上記2チームはチームとして突出した存在ではあるが、その他、注目の選手たちを確認していこう。

まずは昨年のパリ~ルーベ覇者であり、昨年のようなスプリント展開になった場合でも勝機のあるソンニ・コルブレッリ(バーレーン・ヴィクトリアス)の存在。チームメートのハインリッヒ・ハウッスラーやマテイ・モホリッチもまた、アシストやアタッカーとしてかなり期待ができる存在だ。

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2020年覇者ジャスパー・ストゥイヴェン(トレック・セガフレード)ももちろん今年も優勝候補。昨年はミラノ~サンレモを制し、世界選手権でもファンアールト以上の走りをしてみせた彼は、少なくとも上位には確実に入ってくるだろう。2020年のように、カペルミュールを乗り越えられるかどうかが鍵。また、ストゥイヴェンと並んでチームのクラシックエースであったはずのエドワード・トゥーンスが復活することも期待したい。トムス・スクインシュも今年は割と調子いいぞ。

実績だけで言えばグレッグ・ファンアーヴェルマート(AG2Rシトロエン・チーム)も忘れてはいけない。過去2回このレースを制しているだけでなく、現コースになってからも2019年には優勝争いに絡んではいる。オリヴェル・ナーセンとのダブルエース体制はもちろん期待すべきだし、昨年のE3サクソバンク・クラシックでは終盤に二人とも残っていたが・・・そのときややひと悶着あったっぽいことが気になる。ほかにもミヒャエル・シェアーやハイス・ファンフックなど、いい選手は揃っているチームなんだけど、勝利まで手に入れられるかどうかは。

今年絶好調のブライアン・コカール(コフィディス)、2018年覇者で昨年は復活劇を見せているミケル・ヴァルグレン(EFエデュケーション・イージーポスト)、昨年のクラシックの実績は十分にあったセップ・ファンマルク(イスラエル・プレミアテック)なども注目すべき選手たちである。

 

もう一つ、チームとして注目したいのはアンテルマルシェ・ワンティゴベールマテリオ。スヴェンエリック・ビストラム、ディミトリ・クレイス、アンドレア・パスクアロン、アドリアン・プティといった有力選手たちが揃い、そしてUAEチーム・エミレーツ時代は不運も多かったアレクサンデル・クリストフがエースとしてどれだけの力を発揮できるか。

今年の勢いも含め、台風の目となりうるチームだと思っている。

 

 

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