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ブエルタ・ア・エスパーニャ2021 コースプレビュー 第3週

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比較的平穏に終わった第2週を経て、第3週は強烈な超級山岳山頂フィニッシュが2つ。「悪名高き」コバドンガに、登坂距離15㎞・平均勾配10%の凶悪な登り。

最後は30㎞超の丘陵系個人TT。第2週の最終日の総合リザルトが大きく入れ替わる可能性を十分に持つ5日間となる。

 

果たして、最後にマイヨ・ロホを着て「巡礼地」で表彰されるのは一体誰だ?

 

 

目次

 

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第16ステージ ラレド~サンタ・クルス・デ・ベサナ 180㎞(平坦)

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今大会最後の集団スプリントステージ?

北部スペインのブルゴスからスタートし、東海岸のバレンシアナ、そして南海岸のアンダルシアを経て、3週目は再び北スペインへ。

ビスケー湾を臨むカンタブリア州の街ラレドからサンタ・クルス・デ・ベサナまで。

今大会最後の平坦カテゴリステージとなり、実際、第19ステージも一筋縄ではいかない可能性があるため、集団スプリントを見られるのはこの日が最後になるかもしれない。

ライバルたちも疲弊し、ここまで飛び抜けた強さを誇っているドゥクーニンク・クイックステップは再び完全な支配権を得るのか。それともトレンティンやダイネーゼらが、そこになんとか食らいついていくか。

 

 

第17ステージ ウンケラ~ラゴス・デ・コバドンガ 185.8㎞(山岳)

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悪名高き「コバドンガ」

カンタブリアの名峰、「悪名高き」コバドンガでいよいよ総合最終決戦に向けてのゴングが鳴り響く。

しかし、この日の問題はコバドンガだけではない。その途中に、ブエルタ初登場の登り1級ラ・コラーダ・ルロメーナ(登坂距離7.6㎞、平均勾配9.3%)が2回、登場する。

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2回目の登坂の山頂からフィニッシュまではまだ56.2㎞残っており、これ自体が総合争いに直接の影響を及ぼすことはないだろうが、ここでしっかりと足が削られたうえで、最後の超級ラゴス・デ・コバドンガ(登坂距離12.5㎞、平均勾配6.9%)に突入する。

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ローラン・ジャラベール、ペドロ・デルガド、ルイス・エレラ、ナイロ・キンタナなど数多くの有力選手たちが制してきたこのコバドンガ。

最も最近では2018年の第15ステージで登場し、このときは残り8㎞で総合4位ミゲルアンヘル・ロペスがアタックするも決まらず、カウンターで飛び出した総合11位ティボー・ピノが、残り6㎞から独走を開始した。

すでに総合争いからは脱落気味だったピノは見逃され、そのまま逃げ切り勝利。この年2回勝利することになるピノのまずは1勝目となった。

総合勢はピノが行ったあとにマイヨ・ロホを着るサイモン・イェーツやエンリク・マスらが加速する動きを見せるも決定的な抜け出しは決まらず。残り2㎞を切ってからようやくロペスが抜け出すが、サイモン・イェーツからはわずか2秒、マスに対しても6秒しか奪うことができず、総合争いは期待されていたほどには動くことのない1日となった。

 

果たして今年はどうなるのか。プリモシュ・ログリッチが相変わらず安定した強さを見せるのか、エンリク・マス&ミゲルアンヘル・ロペスの「Wエース」がこれを出し抜くのか、それともベルナルの復活が見られるか。

 

 

第18ステージ サラス~アルト・デル・ガモニテイロ 162.6㎞(山岳)

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登坂距離15㎞・平均勾配10%の凶悪なる登り

いよいよ訪れる、今大会最難関ステージ。総合における最も劇的な戦いがこの日、繰り広げられることになるだろう。

最初に1級山岳を2つ。プエルト・デ・サン・リャウリエンツ(登坂距離9.9㎞・平均勾配8.6%)とアルト・デ・ラ・コベルトリア(登坂距離7.9㎞・平均勾配8.6%)という、こちらも非常に厳しい登り。

それでも、フィニッシュまではいずれも距離があるため、ここはあくまでも、本当の戦いの前のスパイスで終わることになるだろう。

 

そして登坂距離12.2㎞・平均勾配1.8%という緩やかな2級山岳を越えたのちに、いよいよ「それ」はやってくる。

アルト・デル・ガモニテイロ。

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登坂距離14.6㎞、平均勾配9.8%。

この長さで、この勾配。1回の登りで1,400mを一気に登る。

登りの大半は10%以上どころか11%以上のエリアも非常に多く、最後の1㎞は最大勾配17%部分を含む平均13%という異様な登り。

今ブエルタの最終決戦の舞台として最も相応しい、地獄のような登り。

ここで何が起きるかは、全く想像がつかない。

 

 

第19ステージ タピア~モンフォルテ・デ・レモス 191.2㎞(丘陵)

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ドラマティックな逃げ切り勝利を見られるか?

アストゥリアス州の西の端タピアから南西に進み、スペイン西海岸へと近づくガリシア州モンフォルテ・デ・レモスへと至る「移動ステージ」。

後半はスプリンター向けのレイアウトにはなっており、集団スプリントの可能性もないわけではない。しかしスタート直後に3級と2級を2つ立て続けに登ることと3週目の平坦基調ステージということで、大きな逃げ集団ができあがっての逃げ切りというパターンが最も可能性として考えられそうな気はする。

そうなると、平坦系のルーラータイプに勝利の可能性があるステージであるとも言える。今年のジロ・デ・イタリアでいうとヴィクトール・カンペナールツやツール・ド・フランスでいうとニルス・ポリッツのような。

そんな、普段はアシストとして活躍するような選手たちにも大きなチャンスがもたらされるドラマティックなステージになる可能性もある。

個人的に注目したいのは今大会結構アグレッシブに動いているロット・スーダルのマキシム・ファンジルスやアンドレアス・クロン、イネオス・グレナディアーズのディラン・ファンバーレやバーレーンのヤン・トラトニクなど・・・。

 

 

第20ステージ サンシェンショ~モス、カストロ・デ・エルビーリェ 202.2㎞(山岳)

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ミニ・リエージュ~バストーニュ~リエージュ
スペイン西岸、大西洋を臨むガリシア州のサンシェンショから南下して同じガリシア州の「モス」まで。カストロ・デ・エルビーリェはおそらくこの街にある遺跡か?

公式サイト曰く「ミニ・リエージュ~バストーニュ~リエージュ」。フィニッシュまでの間にも4つの山岳ポイントが用意され、それ以外にもカテゴリのついていない登りが無数に用意されている。

フィニッシュ地点は登坂距離9.7㎞・平均勾配4.8%の登り。とくにフィニッシュまで7㎞から6㎞地点に10%以上の強烈な勾配。そしてラスト数百メートルも9.5%。

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おそらくは逃げ集団の中から勝者が生まれることだろう。ジャンルーカ・ブランビッラやジュリオ・チッコーネ、過去にリエージュ~バストーニュ~リエージュを制しているワウト・プールスやU23版イル・ロンバルディアを制しているアンドレア・バジョーリなど、あるいは同じくリエージュで好成績を出しているマイケル・マシューズが、今度こそ勝利を掴んでチームの貢献に報いる姿も見てみたい。

 

 

第21ステージ パドロン~サンティアゴ・デ・コンポステーラ 33.8㎞(個人TT)

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巡礼地で繰り広げられる最終決戦

ブルゴス大聖堂から始まった2021年のブエルタ・ア・エスパーニャの3週間の戦いは、エルサレム、バチカンと並ぶキリスト教3大巡礼地の1つ、サンティアゴ・デ・コンポステーラにフィニッシュする。

例年のお馴染みだったマドリードスプリント決戦ではなく、最近のジロやツールと同様の「TT最終決戦」。

30㎞超のそれなりの長距離と起伏の存在が、最後の最後で大きな総合争いにおける大逆転を演出する可能性は十分にある。プリモシュ・ログリッチも、グランツール最終日TTでは失速する経験も多いため、なんとかこの日までにしっかりと差を付けておきたいところ。

3週間の熾烈なる「巡礼」の終着点で、果たして誰が真紅のジャージを身に纏っているのか。

 

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