読み:イスラエル・スタートアップネーション
国籍:イスラエル
略号:?
創設年:2015年
GM:チェン・タル(イスラエル)
使用機材:ファクター(イギリス)
2019年UCIチームランキング:19位
(以下記事における年齢はすべて2020年12月31日時点のものとなります)
参考
Israel Cycling Academy 2018年シーズンチームガイド - りんぐすらいど
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2020年ロースター
※2019年獲得UCIポイント順。
始まりは2014年。当初は「サイクリング・アカデミー・パワード・バイ・サガン」という名で、ペテル・サガンがアンバサダーを務める形で発足した。
その後はサガンとの関わりは薄れたようだが、オーナーのユダヤ系カナダ人富豪シルヴァン・アダムスはジロのイスラエル誘致を始めとし、このチームの地位向上に力を尽くした。2019年のスカイ解散騒動の中では、その買収主の一人としても名前が挙がったが、結局彼は、カチューシャ・アルペシンの運営会社の買収を通してワールドツアー昇格を果たした。
ダン・マーティンやアンドレ・グライペルなど、注目の選手の獲得はあるものの、まだまだプロコンチネンタルチーム上がりという印象は拭えない。ただ、元々プロコンチネンタルチームの中でも上位に入っていたチームなのは確か。1クラスやHCクラスでは結構勝ち星を稼いでいたこのチームと選手たちが、ワールドツアーでどこまで存在感を示せるか。
注目選手
ニルス・ポリッツ(ドイツ、26歳)
脚質:ルーラー
2019年の主な戦績
- パリ〜ルーベ2位
- ロンド・ファン・フラーンデレン5位
- ツアー・オブ・ブリテン総合5位
- E3ビンクバンク・クラシック6位
- ルンド・ウム・ケルン4位
- 世界ランキング40位
絶望に沈んだ2019年シーズンのカチューシャ・アルペシンの中で、ひときわ輝く戦績を誇ったのがこの男である。
元々2018年にはドイッチュラント・ツアーで区間1勝、スパルカッセン・ミュンスターラント・ジロで3位など、地元で強いスプリンターという印象だった。
しかし2019年には、E3ビンクバンク・クラシック6位、ロンド・ファン・フラーンデレン5位、極め付けはパリ〜ルーベ2位と、北のクラシックで圧倒的な強さを見せつけた。
元々の武器である登れるスプリンター力も健在で、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ初日ステージでも4位に入る。
今後もフランドル、アルデンヌともに高レベルな成績を出していけそうな、まさにジルベールの後継者になりうる存在だ。
なお、パリ〜ニースの個人TTでは2位。あのクウィアトコウスキーを凌駕した。世界選手権ミックスドリレーではドイツ代表に選ばれるなど、TT能力の高さも大きな武器である。
ダン・マーティン(アイルランド、34歳)
脚質:クライマー
2019年の主な戦績
- イツリア・バスクカントリー総合2位
- ツール・ド・フランス総合18位
- クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ総合8位
- UAEツアー総合7位
- グラン・ピエモンテ5位
- イル・ロンバルディア18位
- 世界ランキング88位
2016年から2018年にかけて、3年連続でツール・ド・フランスの総合TOP10に入る安定感の高さが持ち味だったが、2019年は18位と大失墜。イツリア・バスクカントリーでは総合2位なので、決して力が衰えた訳ではないと思うのだが・・・得意のクライマー向けワンデーでも振るわない1年だった。
チームを変え、心機一転を図りたい。2020年は、目標の1つであるオリンピックも待ち構える。
トム・ファンアスブルック(ベルギー、30歳)
脚質:オールラウンダー
2019年の主な戦績
- バンシュ〜シメイ〜バンシュ優勝
- パリ〜ブールジュ2位
- GPシクリスト・ラ・マルセイユ3位
- ツール・ド・ユーロメトロポール4位
- ダンケルク4日間レース総合5位
- 世界ランキング90位
プロ生活最初の3年間をトップスポート・フラーンデレン(現スポートフラーンデレン・バロワーズ)で過ごしたのち、現ユンボ・ヴィズマ、現EFエデュケーションと転々としてきた。
2019年から現チームに。ベルギーのスプリンター向けクラシックに強く、バンシュ〜シメイ〜バンシュでは何とオリバー・ナーセンをスプリントで下して優勝。ワールドツアーチームのエーススプリンターとしてはまだまだ物足りなくはあるが、レースを選べば勝ち星を稼いでくれる選手となるだろう。
もちろん、飛躍も期待したい。30歳と言う年齢は、純粋なスプリンターにとってはやや旬を過ぎてはいるものの、クラシック的なレースや荒れた展開においては、その経験の面において強みを発揮できる時期だ。
その他注目選手
ユーゴ・ホフシュテッダー(フランス、26歳)
脚質:スプリンター
2018年の3月、ベルギーと北フランスで7レース連続TOP10入りを果たした、コフィディス最強スプリンターの1人がイスラエル入り。2019年も、ロンド・ファン・ドレンテ5位、ノケレ・コールス5位、シュヘルデプライス4位、エシュボルン・フランクフルト5位など、勝てはしないが上位を何度も繰り返している。ファンアスブルックと活躍できる領域は似通っており、安定感的にはホフシュテッダーの方が上かも。
ただ、イスラエルには同じ役割を持つ選手が多い。次に見るネイランズもそうだし、エストニア人のミッヘル・レイム、ルディ・バルビエなんかも。
その中で、エースを明確に任されるのは、誰か。
クリスツ・ネイランズ(ラトビア、26歳)
脚質:パンチャー
2017年から現チームに所属。2018年にはドワースドール・ヘットハヘラントで優勝するなど、プロコンチネンタルチームとしては強い選手という認識だった。ミラノ〜サンレモにおいて、最後のポッジョ・ディ・サンレモでニバリと共にアタックした姿も印象的だった。
しかし2019年はその実力が確かなものになり、成績が安定していく。6月のツール・ド・ハンガリーでステージ2勝と総合優勝。8月のアークティックレース・オブ・ノルウェーでは総合3位。そして9月のグランプリ・ド・ワロニーではジャスパー・スタイフェンとジャスパー・デブイストを共に打ち破り優勝。ワールドツアーの選手たちとも対等に渡り合える実力であることを示した。
そして2020年は自らもワールドツアーチームの一員となるネイランズ。果たして進化を止めずに、さらなる成績を叩き出せるか。
ジェームス・ピッコリ(カナダ、29歳)
脚質:オールラウンダー
2019年のツアー・オブ・ユタのプロローグで、今年の世界選手権TT6位のローソン・クラドックを打ち破って優勝。まさかの大番狂わせと思ったが、その後も覚醒は止まらなかった。連日の山岳ステージでも、2位、5位、5位と好成績を重ね、最終的にも総合2位。前年、このレースで覚醒したセップ・クスのことを思えば、この選手の未来にも期待したくなる。
また、いざ調べてみればこのユタで突然強くなったわけではないことがわかる。2019年だけでもツール・ド・台湾でステージ1勝、ツアー・オブ・ジラで総合優勝、その他、アメリカとカナダの2クラスのステージレースで総合2位。ずっとコンチネンタルチームで燻っていたが、実力は確かなものだった。
2020年で29歳になるこの男は、数年先まで期待を持てる新鋭ではないものの、ロードレーサーとしては最も、とくに総合において成績を出しやすい年代を迎える。2020年、彼の輝きに注目したい。契約も1年なので、この1年で結果を出す必要もある。
アンドレ・グライペル(ドイツ、38歳)
脚質:スプリンター
ツール・ド・フランスは2015年の4勝、15年・16年のシャンゼリゼを含め11勝、ツアー・ダウンアンダーは2回の総合優勝と18回のステージ優勝。ジロ・デ・イタリアでは7勝。生涯におけるプロ勝利数は156回。稀代の最強スプリンターが、2019年は、わずか1勝にとどまった。年初の、西アフリカでの1クラスのレースで。
彼が決して弱かったわけではない。きっと。アルケア・サムシックという、慣れないフランスチームで、十分な彼らしさを発揮できなかっただけだ。だから彼は、あと1年残っていた契約を破棄して、新天地を選んだ。
この地でも、決して楽な状況ではない。チームにはすでに、若くてタフなスプリンターたちがひしめいている。エースを担えるかどうかも、判然としない。
それでも多くのファンは、彼が強さを再び取り戻すことを楽しみにしているはずだ。
とりあえず、2019年は出られなかったツアー・ダウンアンダーで、「復活」を見せてくれ。
総評
実質的にはプロコンチネンタルチームからの昇格1年目となるため、結果までは求めない。ただ、ドイツクラシックスペシャリストの星ポリッツにはぜひ、頑張ってほしいところ。もちろんアシストは、と言われるとかなり厳しいけれど・・・。ダン・マーティンにはグランツールの総合TOP10入りと、アルデンヌでの上位入賞を。
大きなレースではなく、小さなレース、1クラスやHCクラスを中心に勝利数を稼いでいきたい。チームTTは未知数。
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