りんぐすらいど

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ツール・ド・フランス2020    注目コースプレビュー

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今年もこの時期がやってきた。

来年のツール・ド・フランスの、コース発表の時期。

 

2020年もまた、フランスの東と南の山岳地帯を張り付くようにして巡るクライマー向けツール。アルプス、ピレネー、中央山塊、ジュラ、ヴォージュの5つの山岳地帯全てが今回も盛り込まれ、しかも2020年は第1週から強烈な登りが連続する。

平坦コースは平坦コースで、登りが多く含まれるピュアスプリンターには優しくないレイアウトで、ブエルタのコースディレクターが関与したのかと疑いたくなる様相である。

 

一方で、近年流行りだった「短距離山岳ステージ」が今回はなし。代わりにシャンゼリゼ前に、超級ラ・プランシュ・デ・ベルフィーユに登る山岳タイムトライアルが設定され、クリス・フルーム曰く「ここ数年で最も厳しいツール」。

 

 

果たして、実際に2020年のツールはどんなステージが待ち受けているのか。

大まかな概要についてはメジャーなサイトがすでに紹介してくれているので、今回は、重要と思われる5つのステージを確認していくことにしよう。 

 

 

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第2ステージ    ニース〜ニース  187㎞(山岳)

今年のツール・ド・フランスのグランデパール(開幕地)は南仏のニース。

すなわち、「パリ〜ニース」のニースである。それがゆえに序盤から山岳地帯が多く盛り込まれ、とくにこの第2ステージでは、「ミニ・パリ〜ニース」とも言うべき特徴をもったコースとなっている。

 

何しろ、今年のパリ〜ニースの第7ステージ、サイモン・イェーツらを振り切ってダニエル・マルティネスが逃げ切り優勝した山頂フィニッシュ「トゥリーニ峠」がコース中に組み込まれ、さらには毎年のパリ〜ニース最終日の定番である「エズ峠」が終盤には用意されている。

いずれも、今年のパリ〜ニースの総合争いを決定付けた登り。とくにエズ峠は毎年熾烈な逆転劇を生み出す伝説の登りでもあり、来年のツールはそこで、最初の総合優勝候補たちによるマイヨ・ジョーヌ争奪戦が繰り広げられることとなるだろう。

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今年のパリ~ニース最終日を制したのはヨン・イサギレ。今年は、ここ数年(未遂も含め)続いていた大逆転劇は起こらず、エガン・ベルナルが総合優勝を果たした。 

 

2020年のツールの第1週はこのあと、第4ステージと第6ステージでそれぞれアルプスと中央山塊の山頂フィニッシュ。

さらに第8・9ステージは山頂フィニッシュでこそないものの、ピレネーの難関山岳を多く含んだハードなコースとなっている。

その間には移動ステージとして平坦カテゴリのステージが続くが、いずれも登りをそれなりに含んでいる、純粋な平坦ではないステージばかり。

来年のツールは第1週から、厳しい山・山・山なステージの連続となりそうだ。

 

 

第15ステージ    リヨン〜グラン・コロンビエ    175㎞(山岳)

今年のツール・ド・フランスはピレネーの名峰トゥールマレーの珍しい山頂フィニッシュが話題を呼び、ティボー・ピノが鮮烈なる勝利を飾った。

2020年のツールでは、また珍しい山頂フィニッシュが用意される。珍しいというか、初である。ジュラ山脈の名峰「グラン・コロンビエ」。この山頂に初めてフィニッシュが置かれた。

 

しかも、このステージは実質的にグラン・コロンビエを2回登る。

まずリヨンを出発したプロトンは、しばらくは谷あいの平坦な道を進み、グラン・コロンビエの西の麓ヴィリュー=ル=プティへ。

そこからグラン・コロンビエの頂上までは行かず、その途中で道を外れて北上し、同じく西の麓のロシューへ降りる。

そこから、過去のグラン・コロンビエ登坂とはよくセットになっていた北方のビシュ峠を越えて山脈の東側へ。

そして2012年のツール初登場時にも使われた伝統のキュロスからの登坂ルートで頂上を目指す。

 

この山はティボー・ピノにとってはお馴染みの山である。

ツール・ド・フランスにおけるこの登りの歴史は浅いが、半世紀以上前から、ツール・ド・ランではたびたび登場してきた。そのツール・ド・ランで、2011年にこの山を制したのがピノだった。彼はこの年のツール・ド・ランで2勝し、それが彼にとってのプロ初勝利だった。

そして今年、彼はツール・ド・ランで再びグラン・コロンビエを制し、総合優勝も果たした。その後の彼は、ツール・ド・フランスでトゥールマレーを制する。

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もう一度、奇跡を。

そして今度は、全フランス人の悲願を。アレ、ティボー。

 

 

第17ステージ グルノーブル〜メリベル 168km(山岳)

2つの山を登る、シンプルなステージ。

 

しかし、この日のラストに待ち受けるは今大会最標高地点(2,304m)であると共に、おそらくは今大会最難関峠となる「<blockquote class="twitter-tweet"><p lang="en" dir="ltr"><a href="https://twitter.com/hashtag/TdF2020?src=hash&amp;ref_src=twsrc%5Etfw">#TdF2020</a> - Stage 17, MTF in Meribel. <a href="https://t.co/uqd8j4ft4R">pic.twitter.com/uqd8j4ft4R</a></p>&mdash; La Flamme Rouge (@laflammerouge16) <a href="https://twitter.com/laflammerouge16/status/1184056689890336768?ref_src=twsrc%5Etfw">October 15, 2019</a></blockquote> <script async src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script> ラ・ローズ」。

ラスト5kmは常に10%前後の勾配が続き、一部には20%区間が含まれる。今大会の総合優勝争いのクライマックスを迎えることになるだろう。

 

実はこの登り、今年8月のツール・ド・ラヴニールで一度登っている。

第8ステージ。あの、「登り一本勝負」の日である。

登坂距離22.3km、平均勾配7.7%というから、おそらくは同じルート。あのときは、オーストラリアの22歳、アレクサンダー・エヴァンスが優勝を果たした。

 

そのときの映像でも見覚えがあるであろうこの空に向かう道。

 

森林限界を迎えたこの最終決戦の舞台では、舗装されたばかりの自転車専用道路がプロトンを待つ。

 

 

第20ステージ リュール〜ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユ 36km(個人TT)

しかし2020年ツール・ド・フランスの最大の目玉は開幕の地ニースでもグラン・コロンビエでもラ・ローズでもなく、 この最終日前日に行われる「キングメーカーの山」ラ・プランシュ・デ・ベルフィーユ「山岳TT」であろう。

 

ツールでは2016年第18ステージ以来の山岳TT。 とはいえ、そこまで「超本格的」とは言えないあのときのTTと比べ、今回は超級山岳ラ・プランシュ・デ・ベルフィーユを登る。登坂距離6.4km、平均勾配8.1%。3年前はTTバイクで駆け抜けて優勝したクリス・フルームも、2位のトム・デュムランも、この日はさすがにノーマルバイクを選択することにはなるだろう。

ただしそれはもちろん、登りの直前で交換して、の話である。さすがのラ・プランシュ・デ・ベルフィーユ山岳TTとはいえ、レースの大半――ざっと30kmは、ほぼほぼ平坦と言ってっても良いレイアウトである。よって、山岳TTだからといって平坦TTの苦手なロマン・バルデやナイロ・キンタナが救われるということはあまりなく、前半の平坦区間を全力で走れて、なおかつ後半の登坂区間も高速で駆け抜けることのできるいつものオールラウンダー軍団――クリス・フルーム、ゲラント・トーマス、プリモシュ・ログリッチェ、トム・デュムラン、あるいはエガン・ベルナル——が結局は有利であると結論付けられそうだ。

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2016年山岳TTをTTバイクで制したクリス・フルーム。2020年は見事復活し、「5勝クラブ」入りを実現するか? 

 

とはいえ、第20ステージのタイムトライアルというのは、何が起こるか分からない。過去にも、TT絶対有利と思われていたデュムランやログリッチェが、ヨス・ファンエムデンやチャド・ハガなどの伏兵に敗れている。どっちもジロ・デ・イタリアの話だけど。

2020年のラ・プランシュ・デ・ベルフィーユはTTで走ることになるが、それでもやっぱり「キングメーカーの山」ではあり続けそうだ。この日の最後の走者の最後の瞬間まで、マイヨ・ジョーヌの行方は分からない。

 

なお、今年のツールで新たに取り入れられたラ・プランシュ・デ・ベルフィーユの「未舗装路区間」は2020年は使用せず。

 

 

 

と、いうことで、2020年のツール・ド・フランスのコースプレゼンテーションを見つつ、とくに気になった4つのステージについて概観してきた。

 

その他にも、注目すべきステージは沢山ある。総合優勝争いだけでなく、ベルナルが「アタッカー向きのツール」と形容するように、常にドラマを生み出す中央山塊の激坂ステージなんかも気になるところ。

だが細かいコースプレビューはまた、ツール開幕直前に行っていく。今は何となく、総合争いに影響を及ぼすこの4つのステージのことを意識しつつ、2020年のツール覇者として相応しい選手は誰なのかを考えながら2020シーズン前半戦を眺めていくことにしよう。 

 

・・・そろそろ、スカイ/イネオス以外のツール覇者を、見てみたいものだね。

 

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