りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

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パリ〜ニース2020  注目選手プレビュー

 

新型コロナウイルスの問題により混乱に陥っているサイクルロードレース界。

その中で、なんとか今年もパリ~ニースは開催された。数多くの有力チームの出場辞退がありながらも、1チーム8名体制にしたり、ティレーノ~アドリアティコ出場予定だった選手たちが合流したりと、また別の見所が増してきた今回のパリ~ニース。

 

改めて、13名の注目選手たちを確認していきたいと思う。

(記事中の年齢表記はすべて2020/12/31時点のものとなります)

 

 

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総合系

ナイロ・キンタナ(アルケア・サムシック)

コロンビア、30歳

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総合優勝候補筆頭にUCIプロチーム(旧プロコンチネンタルチーム)を選ぶことになるのは珍しい。というのも、ベルナルやログリッチら有力総合優勝候補が欠場しているのに加え、このキンタナが今年、ここまで非常に調子が良いからだ。

ツール・ド・ラ・プロヴァンス(2.Pro)、ツール・デ・アルプ=マリティーム・ エ・ドゥ・ヴァール(2.1)と立て続けに総合優勝。後者のレースではロマン・バルデやリッチー・ポート、ティボー・ピノなどの今大会でもライバルとなる選手たちを倒しての総合優勝である。

もちろん、パリ〜ニースは登りだけでなく、個人TTも総合では重要になるが・・・コロンビア国内選手権個人タイムトライアルでは、エガン・ベルナルを退けての2位。少なくとも致命的なタイムロスというのはなさそうだ。

昨年もパリ〜ニース総合2位。そして今年は、ディフェンディングチャンピオンのベルナルが欠場。

となれば、いくらプロチームに移籍したと言えど、今年は十分に総合優勝の可能性があり、そうなればキンタナにとっては初のパリ〜ニース総合優勝である。

なお、アシストも「盟友」ウィネル・アナコナと弟のダイェル・キンタナがおり、やはりプロチームだからといって侮れない。元チーム・イネオスのディエゴ・ローザも強力だ。

そして、ワレン・バルギルとのチームワークが問題なければ・・・実際、プロヴァンスでもちゃんとアシストしていたから、問題ないだろう。

 

 

セルヒオ・イギータ(EFプロサイクリング)

コロンビア、23歳

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2019年ツアー・オブ・カリフォルニア総合2位、そしてブエルタ・ア・エスパーニャ区間1勝と注目を集めた若きコロンビアンは、2020年、国内選手権ロードレースで独走勝利、そしてツアー・コロンビア(2.1)では区間1勝と総合優勝を果たす。

エガン・ベルナルとリチャル・カラパス擁するチーム・イネオスに対してのこの成績は、予想を超えた実績であることは間違いなく、この走りがフロックでないかどうかが、このパリ〜ニースで試されることになるだろう。

元々はスプリンターと思われていたほどでゴール前での決定力は随一。「コロンビアのバルベルデ」なんて呼ばれているほどだ。一方で個人TTに関してはまだ特筆すべき成績は出していないため、弱点となるとしたらそこだろう。

あとは本格的な山岳にどこまで耐えられるか。

 

 

リッチー・ポート(トレック・セガフレード)

オーストラリア、35歳

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元クリス・フルームの右腕。2016年から自らのツール制覇を目指し独立するも、自身特有の不運特性により、とくに2017年・2018年はツール・ド・フランスの第9ステージでともにリタイアするという憂き目に。昨年はそういったトラブルはなかったものの年間を通して(ツアー・ダウンアンダー以外)全く振るわないシーズンに。本来の実力的にはクリス・フルームに十分匹敵できるものがあると感じながらも、気がつけば一度もグランツールの総合表彰台に立てぬままそのキャリアの終盤に差し掛かってしまっている。

だが、今年は昨年とは違う様子が見られてはいる。ツアー・ダウンアンダーでは彼の得意なコースレイアウトであったこと、チームメートのマッズ・ピーダスンに助けられたこともあり、3年ぶり2度目の総合優勝を獲得。

そして、「ツアー・ダウンアンダーだけ」の昨年の呪縛もとりあえず脱した。ツール・ドゥ・ヴァールもキンタナ、バルデに次ぐ総合3位。今回もピーダスンやエリッソンド、オンループ・ヘットニュースブラッドを制したばかりのジャスパー・ストゥイヴェンなど、実力者たちに支えられてもいる。

総合優勝するか?と言われると微妙かもしれない。しかし、「全くダメ」な昨年とは違った姿を見せてくれる気がする。

なお、今回のロースターにはヴィンツェンツォ・ニバリの姿も。彼ももちろんエースになりうる存在だが・・・最近の彼の走りは本気で勝利を狙うというよりはトレーニングのような雰囲気も感じ、また今回はあくまでも「ツール前哨戦」のパリ〜ニース。ポートが優先される、と信じている。

逆にニバリは平気で総合タイムを失ったうえで、第7ステージなどでステージ優勝や山岳賞を狙ってくるんじゃないだろうか。

 

 

ティボー・ピノ(グルパマFDJ)

フランス、30歳

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昨年ツール・ド・フランスでかつての強さを取り戻すかのような走りを見せてくれたピノ。そのツール自体は残念な結果に終わったが、そこから1年、再びツールの地でリベンジを狙えるか。

今年ここまでは決して万全ではない。ツール・ド・ラ・プロヴァンスは総合7位、ツール・ドゥ・ヴァールは総合6位。ヴァールの方ではバルデやポートにも敗れているわけだが、それでもこの時期のピノのことは信頼していきたい。

根拠:信頼。実際、突然崩れることのあるバルデやポートよりは、安定感はある、とは思う。総合表彰台に登れるかというと微妙かもしれないが・・・。

 

 

ディラン・トゥーンス(バーレーン・マクラーレン)

ベルギー、28歳

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グランツールライダーというイメージはないだろうが、1週間のステージレースにおいては割と実績を残している。パリ〜ニースにおいても2018年に総合6位。そして今年は、ボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナ総合5位、ブエルタ・ア・アンダルシア総合5位と悪くない。本来はランダのアシスト役の予定だったろうが、そのランダが2月初頭の交通事故での後遺症が芳しくなく欠場を決めたことで、ビルバオと共にエースを任されることに。

アンダルシアを見ても、やはり激坂フィニッシュでの安定感が高い。その意味で今回のパリ〜ニースは、フィニッシュ地点に激坂というパターンはあまりなく、彼の強さを活かしきれないかもしれないのがネック。

 

 

スプリンター系

サム・ベネット(ドゥクーニンク・クイックステップ)

アイルランド、30歳

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今年のドゥクーニンクにおける「最強スプリンター候補」。今回もきっちりと最強発射台のミケル・モルコフは連れてきており、カスパー・アスグリーン、イヴ・ランパールト、ボブ・ユンゲルスも(さらに言えばアラフィリップやスティバルも)スプリントのためのアシストとして機能する。道中はもちろんデクレルク。

あとは、本人の調子次第。ツアー・ダウンアンダーの頃は得意の登りスプリントでも遅れる姿を見せるなどやや不安の残る状況。UAEツアーのハッタ・ダムではそこは改善されたように思えるが、それでもユアンの後塵を拝す形になっている。

彼本来の強さとクイックステップの最強トレインが組み合わされば向かうところ敵なしなのは間違いないだけに、復活が期待される。

 

 

カレブ・ユアン(ロット・スーダル)

オーストラリア、26歳

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昨年もジロ2勝、ツール3勝(!)と絶好調だったユアン。今年もここまでかなり良い状況で、ツアー・ダウンアンダーはサム・ベネットを相手取って2勝している。

UAEツアーではアッカーマンやフルーネウェーヘンに敗れ、ピュアスプリントステージではサム・ベネットよりも下位に沈んだ日も見られたが、ハッタ・ダムの登りスプリントでは昨年に続く連勝。調子を取り戻してきたサム・ベネットをも退けた。

その意味で今回のパリ〜ニースもかなり期待できそう。ピュアスプリンター向きでないステージが多めなのも強みだ。そして、発射台についても、ロジャー・クルーゲとジャスパー・デブイストが今年初めて揃うということで期待大。クルーゲは先日のトラック世界選手権マディソンで銅メダル・オムニアム4位と、調子は上向きだ。

この「ツール前哨戦」で(しかも今年のツールの開幕の地であるニースで)弾みをつけ、今年の彼の目標の1つである「ツール初日勝利によるマイヨ・ジョーヌの着用」をぜひ達成してみせてほしい。

 

 

パスカル・アッカーマン(ボーラ・ハンスグローエ)

ドイツ、26歳

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ピュアスプリントではもしかしたら現状、今年最強かもしれない。初戦のマヨルカ・チャレンジこそトレック・セガフレードのマッテオ・モスケッティに完敗したものの、その後は相変わらずの強さを見せ、クラシカ・ドゥ・アルメリア勝利、そしてUAEツアーでは、並みいる強豪選手たちを押し除けて、区間1勝を稼ぎ出している。

もしUAEツアーが最後の2ステージも予定通り行われていたならば、より正確に現在のピュアスプリント王者が判明していただろうが、それが叶わなかった現時点では、暫定としてこのアッカーマンがユアンよりも、サム・ベネットよりも上手ということになる。

また、パリ〜ニース前半戦にはつきものの悪天候についても、同様の悪天候に多く見舞われた昨年のジロ・デ・イタリアでの好走から、問題ないと判断できそう。

もちろん、今回はペテル・サガンも出場。第1ステージや第5ステージのような起伏を含むステージではサガンが、第2・第3のようなピュアスプリントステージではアッカーマンが、というような役割分担はありそうだが、今年のジロでアッカーマンが完全にサガンのアシストとして働く予定であれば、今回のパリ〜ニースはその事前練習の場になるかもしれない。

 

 

エリア・ヴィヴィアーニ(コフィディス・ソルシオンクレディ)

イタリア、31歳

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ツアー・ダウンアンダー前哨戦クリテリウムではカレブ・ユアンの背後で2位に入るなど好調そうな様子を見せていたヴィヴィアーニ。しかし、本戦第2ステージでの落車による影響か、その後は全く振るわなかった。

本当に落車の影響なのか? 新チーム、新機材、クイックステップでないこと・・・様々な要因が、もしかしたら彼の失墜を予言してしまっているのかもしれない。直近のトラック世界選手権では、前回のオリンピックで金メダルを獲得した種目オムニアムで9位と、少し不安になるリザルトだ。

盟友サバティーニが今回欠場なのも気になる。果たしてアレハールトやルモワンヌは十分にヴィヴィアーニをアシストできるのか?

元々は1人でもこなせるタイプのスプリンターだったため、そこまで発射台に固執する必要はないとは思うが・・・ヴェルモート、助けてあげてくれ。

 

 

ジャコモ・ニッツォーロ(NTTプロサイクリング)

イタリア、31歳

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「2位ッツォーロ」と揶揄されることもある「なかなか勝てない男」が、今年は絶好調。いや、勝ってるのはダウンアンダーだけで、あとは結局2位3位が多いんだけど、しかし今年の彼が本当に強いのは確か。

他の優勝候補たちもまだまだ本調子じゃなかったり不確定な要素がある中で、彼にも大きなチャンスがありそうだ。

ワルシャイドはワルシャイドでツール・ド・ランカウイ2勝と悪くなく、彼がニッツォーロを本気でリードアウトしてくれれば期待はさらに倍増である。

 

 

その他注目の選手

ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)

フランス、28歳

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2017年には総合5位。今年は彼の生まれ故郷での個人タイムトライアルも用意されているということで期待は高い。

が、今年の彼は今のところ調子が上がっていないのが明らか。今回はまず「復活」なるかに注目したい。

無理に総合は狙わずステージ狙いの可能性も。第1ステージなんかは完全に彼向きである。

 

 

ペテル・サガン

スロバキア、30歳

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ティレーノ〜アドリアティコ中止の煽りを受け、急遽こちらに出場が決まる。なんと2011年以来9年ぶりのパリ〜ニース出場である。

今期ここまでリザルトを残していないこともあり、(エースナンバーを着けているとはいえ)基本はアッカーマンがピュアスプリントエースを担うとは思っている。しかしアッカーマンが対応できない登りを含んだステージ(第1、第5、第6など)では十分に可能性があるだろう。

何より、今年初挑戦予定のジロ・デ・イタリアに向けて、どんな走りを見せるのか楽しみである。

 

 

トーマス・デヘント(ロット・スーダル)

ベルギー、34歳

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世界屈指の「逃げ王」。とくに3月のこの時期はここ近年必ずと言っていいほど強い逃げ切り勝利を見せている。今回も期待大。

最有力は第6ステージ。第5ステージや第8ステージも可能性があるだろう。もしかしたら第1ステージも・・・? 現時点の情報だと風が強いというので・・・。

 

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