https://www.digital-swiss-5.ch/
新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で軒並みレースの中止・延期が決まっている2020年シーズン。
ツール・ド・スイスも中止が決まったレースの1つだが、その代替のバーチャルレースとして開催が決まったのが「デジタル・スイス5」。
主催はハンマーシリーズと同様のVelon*1。
常に既存のロードレースシーンの常識を打ち破る発想を続けていくチーム/選手主体のこの組織が、危機的な状況に陥るサイクルロードレース界に希望の光をもたらしてくれるか?
Jsportsでも実況・解説付の放送が決まったこの「バーチャルステージレース」について、徹底的にプレビューしていく。
Podcast「りんぐすらいどれでぃお」で、Cyclistでレースレポートを書いたあきさねゆう氏と振り返っております。
りんぐすらいどれでぃお: 9.あきさねゆう(@saneyuu)さんと振り返るデジタル・スイス5 on Apple Podcasts
- デジタル・スイス5とは
- コースについて
- 出場チーム・選手
- AG2Rラモンディアル(ALM)
- バーレーン・マクラーレン(TBM)
- ボーラ・ハンスグローエ(BOH)
- CCCチーム(CCC)
- ドゥクーニンク・クイックステップ(DQT)
- EFプロサイクリング(EF1)
- グルパマFDJ(GFC)
- イスラエル・スタートアップネーション(ISN)
- チーム・ユンボ・ヴィズマ(TJV)
- ロット・スーダル(LTS)
- ミッチェルトン・スコット(MTS)
- モビスター・チーム(MOV)
- NTTプロサイクリング(NTT)
- チーム・イネオス(INS)
- チーム・サンウェブ(SUN)
- トレック・セガフレード(TFS)
- トタル・ディレクトエネルジー(TDE)
- ラリーサイクリング(RLY)
- スイスナショナルチーム
- 各選手からのコメント
- 放送スケジュール
スポンサーリンク
デジタル・スイス5とは
デジタル・スイス5は、今年中止が決まっているツール・ド・スイスの主催者が、Velonおよびバーチャルサイクリングサービス「ROUVY*2」と協力し開催を決めた「仮想空間におけるプロ・レース」である。
同様のコンセプトは先日のロンド・ファン・フラーンデレンのバーチャル版「デ・ロンド2020 ロックダウンエディション」でも行われ、グレッグ・ファンアーヴェルマートやワウト・ファンアールト、トーマス・デヘントなどの並み居るトップライダーたちが参戦。大きな盛り上がりを見せることとなった。
今回のデジタル・スイス5がより画期的なのは、5日間に及ぶステージレースであることと、13名の選手がそれぞれ単独で出場することとなったロンドと違い、元々ツール・ド・スイスに参加する予定だったチームの中から全19チームが出場する、より本物らしい「チーム戦」が行われること。
ただし、さすがに150名を超えるプロトンをバーチャル上で再現していくのは難しいのか、各チーム最大14名ほどをエントリーし、5ステージそれぞれで任意に選んだ3名を出場させることができるという形式に。
また、それぞれのコースも30㎞前後の計1時間ほどで終わる距離のレースとなっている。
そのあたりはさすが、ハンマーシリーズの主催者Velonである。
ロードレースのチーム戦という要素を活かしつつ観る側にも十分なエンタテインメントを提供しうるフォーマットを準備し、これまでのロードレースとは違った楽しみ方を演出できるように工夫している。
各チームも短い距離や3名という出場選手数の縛りなどから、一般的なロードレースとは異なる戦略を求められることになるだろう。
単なる、中止レースの代替ではない。このデジタル・スイス5だからこそ切り開ける地平もあり、新たな発見も数多くあるはずだ。
次節ではそんなデジタル・スイス5の今回のコースを確認していく。
コースについて
デジタル・スイス5は全5日間。4/22(水)から4/26(日)まで開催される。
各ステージの距離は短めだが、合計で178.5㎞、獲得標高は実に4,728mにも達する。
オールフラットなスプリントステージからしっかりとした山頂フィニッシュまで、バリエーション豊かで結構本格的なレースであると言える。
以下、各ステージの特徴を確認していこう。
第1ステージ ムードン〜ロイカーバート 26.6㎞(山岳)
Race 1: Moudon - Leukerbad - The Digital Swiss 5: 22. – 26. April
スイス・ヴォー州のムードンから、ヴァレー州の温泉リゾート地ロイカーバートまで。距離は短いが、いきなりの本格的な山岳ステージで、獲得標高は1,192mにも達する。
最初の4㎞は平坦路だが、続く7㎞のエルシュマットに至る登りの平均勾配は10%にも及ぶ。そのあともアップダウンが続き、ゴール前6〜7㎞からは6%ほどの登りとダウンヒル、そして最後の1㎞もわずかな登り勾配となっている。
アルデンヌ・クラシックにも強いようなパンチャータイプに有利か?
第2ステージ フラウエンフェルト〜フラウエンフェルト 46㎞(平坦)
Race 2: Frauenfeld - Frauenfeld - The Digital Swiss 5: 22. – 26. April
フラウエンフェルトの街を巡る1周11.5㎞の周回コースを4周回する。1周の獲得標高は45mほどで、計180mの獲得標高となる。オールフラットステージと言ってよい。
普通に考えれば集団スプリントステージ。とはいえ、今回のバーチャルレースのフォーマットで集団スプリントって、あるのか?
第3ステージ フィエッシュ〜ヌフェネン峠 33.1㎞(山岳)
Race 3: Fiesch - Disentis-Sedrun (Nufenenpass) - The Digital Swiss 5: 22. – 26. April
ヴァレー州の町フィエッシュをスタートし、昨年のツール・ド・スイスでも登った、「スイスの舗装された道としては最高峰」にあたるヌフェネン峠に至る。獲得標高は1,512m。
しかも、最初の20㎞は峠の間を走るおおよそフラットな道のり。最後の13.3㎞で一気に登るということで、平均勾配は8.5%。そしてゴール前10㎞、7㎞、5㎞地点で10%を超える区間が。最後のそれは1㎞近くその勾配が続く最難関地点で、正真正銘のクイーンステージとなっている。
各チームの名だたるクライマーたちが、このステージでは覇を競い合うことになるだろう。
なお、ヌフェネン峠の標高は2,478m。普通であればその標高の高さからくる酸素の薄さや気温の低さなども選手たちを苦しめるだろうが、バーチャルではそこまでは反映されないことが少し物足りなくはある。
第4ステージ オーバーランゲネック〜ラングナウ・イム・エメンタール 36.8㎞(丘陵)
Race 4: Oberlangenegg - Langnau - The Digital Swiss 5: 22. – 26. April
スイスの首都を擁するベルン州を駆け巡る。フィニッシュ地点はスイスを代表する穴開きチーズ「エメンタールチーズ」の産地である。昨年のツール・ド・スイスのグランデパールにも選ばれている。
スタート直後に登坂距離4.5㎞、平均勾配6%ほどの登りを登る。とはいえこの登りの最初の1.5㎞はほぼほぼフラットなので、実際の勾配はデータ以上のものがあるだろう。
その後は緩やかなアップダウンの連続で、最後はある程度まとまってのフィニッシュになる可能性も。
第5ステージ ブレニオ〜ディゼンティス 36㎞(山岳)
Race 5: Fiesch - Disentis-Sedrun (Lukmanierpass) - The Digital Swiss 5: 22. – 26. April
ティチーノ州の町ブレニオを出発してすぐ、15㎞に及ぶ長い登りを開始する。常に6〜7%近い勾配が続く難易度の高い登りで、最後の4㎞は4%程度の比較的緩やかな傾斜へと変わる。
そのままグラウビュンデン州の町ディゼンティスへ下る。最後はちょっとした小さな登りを超えながら、5日間の激しいバーチャルな戦いはフィナーレを迎える。
スポンサーリンク
出場チーム・選手
UCIワールドチーム16チームと、その他3チームの、計19チームが参戦。
各チーム登録選手数はバラバラだが最大で15名ほど。そこからステージごとに3名を選んで参戦させる。
以下は出場予定のチームと、それぞれのチームで登録を予定している選手たちの中から注目すべき選手をピックアップして紹介していく。
AG2Rラモンディアル(ALM)
登録選手(14名)
ロマン・バルデ、ミカエル・シェレル、シルヴァン・ディリエ、ジュリアン・デュヴァル、マティアス・フランク、ベン・ガスタウアー、ドリアン・ゴドン、アレクシー・グジャール、ピエール・ラトゥール、オリバー・ナーセン、オウレリアン・パレパントル、ナンス・ピータース、アレクシー・ヴュイエルモ、ラリー・ワーバス
AG2R La Mondiale (FRA) - The Digital Swiss 5: 22. – 26. April
今年のジロ、ツールでそれぞれエースを務めるはずだったロマン・バルデとピエール・ラトゥールが共に出場。主に第3ステージで活躍しうるか。昨年散々だったバルデ、同じく散々だったがブエルタで復調の兆しを見せていたラトゥールらが、まずはバーチャルレースで復活の狼煙をあげたいところ。
ヴュイエルモやディリエなどのAG2Rが誇るパンチャー勢は、第1ステージや第4ステージなどでの活躍が見込まれる。ナーセンもそこに加わるが、第2ステージでのスプリントでも優勝候補になりうるだろう。先日のバーチャル版ロンドでも終盤でアタックを見せるなど、バーチャルへの適性も良い?
ピータースは昨年のジロで山岳逃げ切り勝利を果たしており、期待。
バーレーン・マクラーレン(TBM)
登録選手(9名)
ペリョ・ビルバオ、グレガ・ボーレ、エロス・カペッキ、ソンニ・コルブレッリ、イバン・ガルシア、マテイ・モホリッチ、ヤン・トラトニク、ハーマン・パーンシュタイナー、ワウト・プールス
Bahrain McLaren (BRN) - The Digital Swiss 5: 22. – 26. April
イネオスから移籍してきたプールス、アスタナから移籍してきたビルバオが第3ステージでの主役となるだろう。ビルバオはシーズン初頭の現実のレースでも活躍していた。
また、第3ステージ以外のアルデンヌ風味のステージでも、リエージュ~バストーニュ~リエージュ覇者のプールス、激坂やスプリントもいけるビルバオは十分主役になりうるだろう。
第2ステージのスプリント要員としてイバン・ガルシアとコルブレッリ。ともに他のステージのアップダウンにも対応しうる。ガルシアはパリ~ニースでサガンを退けて勝利しており、調子は上々だ。
そして、バーチャル世界ではパワーの持続力や独走力がより重要になるのだとしたら、至高のタフネスライダー・モホリッチの出番である。
ボーラ・ハンスグローエ(BOH)
登録選手(9名)
エマヌエル・ブッフマン、マッテオ・ファブロ、パトリック・ガンパー、レナード・ケムナ、パトリック・コンラッド、マーティン・ラース、ルーカス・ペストルベルガー、マキシミリアン・シャフマン、イーデ・シェリング
BORA-hansgrohe (GER) - The Digital Swiss 5: 22. – 26. April
山岳ステージではブッフマン、コンラッド、そしてサンウェブからやってきた若きジャーマンクライマー・ケムナがエース格となる。とくに昨年ツール総合4位のブッフマンが、どれほど破壊的な力を見せてくれるか。
それ以上に注目したいのがもちろん、「現実世界では最後のレース」となったパリ~ニース総合優勝者シャフマン。その独走力や丘陵適性は、今回のバーチャルレースのフォーマットには非常に適応しているようにも思われる。
その他は割と若手の選手も連れてきており総合力は決して高くないが、エース級の突破力でどれだけの成績を積み重ねられるか、期待だ。
CCCチーム(CCC)
登録選手(12名)
カミル・マウェツキ、ミヒャエル・シェアー、ハイス・ファンフッケ、ファウスト・マスナダ、ネイサン・ファンフーイドンク、ビクトル・デラパルテ、イルヌール・ザカリン、シモン・ゲシュケ、グレッグ・ファンアーヴェルマート、パヴェル・コシェトコフ、ウィル・バルタ、アッティラ・バルター
CCC Team (POL) - The Digital Swiss 5: 22. – 26. April
現実世界ではワールドツアーチーム唯一の未勝利チーム。ただ、先日のバーチャル版ロンドではファンアーヴェルマートが見事な独走勝利。今回もその適性を見せてくれるか。
第3ステージで活躍してくれそうなクライマーとしては今年新加入のイルヌール・ザカリン。現実世界のUAEツアーでも、悪くない走りは見せていた。
昨年ジロで活躍し今年ワールドツアーチームデビューを果たしたファウスト・マスナダも、本来的にはスイスのような寒冷地レースには強いタイプ。まあ、バーチャルなので関係ないけど。
本来ならばハンガリー開催のジロ・デ・イタリアで華々しい凱旋を予定していたネオプロのハンガリー人バルターも、涙のリベンジレースである。頑張れ。
ドゥクーニンク・クイックステップ(DQT)
登録選手(13名)
カスパー・アスグリーン、ピーター・セリー、レミ・カヴァニャ、レムコ・エヴェネプール、マティア・カッタネオ、ミケル・モルコフ、ゼネク・スティバル、ボブ・ユンゲルス、ティム・デクレルク、サム・ベネット、アンドレア・バジョーリ、ドリース・デヴェナインス、ジュリアン・アラフィリップ
Deceuninck - Quick-Step (BEL) - The Digital Swiss 5: 22. – 26. April
結構ガチで勝ちに来てる強力なメンバー。スプリントではユンゲルス→モルコフ→ベネットのトレインとか最強だろう。
もちろんバーチャルでそもそもトレインは機能するのかは不明。まあ、ベネットは単独でも、今回のデジタル・スイス5のレイアウトなら行けてしまうだろう。
登りではアラフィリップがデヴェナインスのアシストを受けたりしつつ暴れ回りそう。バーチャルレースが独走力が鍵なら、エヴェネプール、アスグリーン、ユンゲルス、あるいは若き逃げスペシャリストのカヴァニャあたりが、無類の強さを発揮してしまいそうである。
ただエヴェネプールは先日のバーチャル版ロンドでも、序盤から積極的に仕掛け続けてレースをコントロールしながらも終盤タレてしまうなど、まだまだ慣れてない雰囲気は見せていた。
その辺りが今回、どう適応できているか。
EFプロサイクリング(EF1)
登録選手(10名)
ラクラン・モートン、モレノ・ホフラント、ヨナス・ルッチ、ローソン・クラドック、ジェームス・ウェーラン、トム・スカリー、ショーン・ベネット、ミッチェル・ドッカー、サイモン・クラーク、マグナス・コルトニールセン
EF Pro Cycling (USA) - The Digital Swiss 5: 22. – 26. April
分かりやすく目立つトップ選手(ウランとかウッズとかイギータとか)は出場しないが、登りもスプリントも逃げもこなせる万能髭コルトニールセンや、アルデンヌ風味のレースだと無類の強さを発揮して今年の2月のレースでもニバリらを下しているサイモン・クラーク、タフネスさなら人一倍のローソン・クラドックなど地味ながら実力者揃いの布陣。
元々から純粋なロードレース以外にもよくコミットしているチームだけに、慣れないフォーマットへの適応力という点では他のチームよりも上手かも。
グルパマFDJ(GFC)
登録選手(12名)
ヴァランタン・マデュアス、マチュー・ラダニュ、ブルーノ・アルミライル、セバスティアン・ライヒェンバッハ、バンジャマン・トマ、ダヴィ・ゴデュ、トビアス・ルドヴィクソン、ファビアン・リーンハルト、シュテファン・キュング、ルディ・モラール、キリアン・フランキニー、シモン・グリエルミ
Groupama-FDJ (FRA) - The Digital Swiss 5: 22. – 26. April
クライマーとしてはピノは出場せず、ゴデュ、モラール、ライヒェンバッハなどが担当。独走力ではキュングやルドヴィクソンが強みとなるだろう。
また、パンチャータイプのコースでは、若手フランス人期待のパンチャーの1人、ヴァランタン・マデュアスに注目。総合系にもなりうる才能の持ち主で、それこそシャフマンなどに近いタイプだ。
イスラエル・スタートアップネーション(ISN)
登録選手(9名)
ダニエル・マーティン、ガイ・ニヴ、アンドレ・グライペル、ダヴィデ・チモライ、マッテオ・バディラッティ、アレクサンダー・カタフォード、ピッコリ・ジェームス、レト・ホレンシュタイン、リック・ツァベル
Israel Start-Up Nation (ISR) - The Digital Swiss 5: 22. – 26. April
登りではダニエル・マーティンが、スプリントではアンドレ・グライペルが控える。チモライ、ツァベル、そして登りではジェームス・ピッコリが脇を固める。
グライペルは今年2月に車との接触事故により、シーズン開幕早々の長期離脱を余儀なくされていた。しかし代わりに、室内トレーニングによるリハビリはずっと続けていたようで、むしろ今回のフォーマットにはかなり慣れている方かもしれない。
グライペルの「復活」はもしかしたら、このバーチャルの世界で最初に見ることができるかも?
チーム・ユンボ・ヴィズマ(TJV)
登録選手(11名)
ロベルト・ヘーシンク、プリモシュ・ログリッチ、アムンドグレンダール・ヤンセン、ヨナス・ヴィンゲゴー、マイク・テウニッセン、トビアス・フォス、セップ・クス、クリス・ハーパー、パスカル・エーンクホーン、ジョージ・ベネット、ポール・マルテンス
Team Jumbo-Visma (NED) - The Digital Swiss 5: 22. – 26. April
パリ〜ニースにも出場しておらず久々の新・最強軍団。その鬱憤を全て晴らすかのようにかなり本気の体制。どちらかというと登りにフォーカスが当たってる感があるが、ログリッチをエースにヘーシンク、ベネット、クスと脇を固め、ハーパー、フォス(昨年のラヴニール覇者)なども可能性を見せてくれそう。
もちろん、一筋縄ではいかない平坦ステージでは、昨年のツール初日勝者のテウニッセンがエースで戦うことだろう。昨年のツール・ド・ポローニュで逃げ切り勝利したヴィンゲゴーも忘れるな。
ロット・スーダル(LTS)
登録選手(16名)
ティム・ウェレンス、ハーム・ファンフッケ、ニコラス・マース、コービー・ホーセンス、カールフレドリク・ハーゲン、サンデル・アルメ、ステフ・クラス、フレデリク・フリソン、ヴィクトル・ヴェルシェーヴ、スタン・デウルフ、トッシュ・ファンデルサンド、フロリアン・フェルメールシュ、ヘルベン・タイッセン、ジャスパー・デブイスト、ブライアン・ファンフーテム、ラスムス・イーヴァスン
Lotto Soudal (BEL) - The Digital Swiss 5: 22. – 26. April
全チーム中最大の16名を連れてきている本気チーム。さすが自転車大国ベルギー。みんな早く走りたくてウズウズしていたのか。毎日別の選手を出すんだろうか。というか16名だとどう頑張っても1人余るんだけど。
メンバーもかなり豪華。今回のコースレイアウトにはかなり向いてそうなウェレンスに、昨年のブエルタ総合でプレイクしたハーゲン、過去にブエルタ逃げ切り勝利経験のあるアルメ、スプリントではファンデルサンドにデブイスト、2月のブエルタ・ア・アンダルシアで誰もが予想しえないほどの走りを見せてくれた新時代のクライマー・ファンフッケにも注目だ。
ジルベールやユアン、デヘント、デゲンコルプなどのトップオブザトップの選手は多くないが、それでも強いメンバーだ。
・・・ところで、ヴェルシェーヴって誰?と思って調べてみたら、今年はロット・スーダルU23に所属している21歳の選手だった。来年からのロット・スーダルとの2年契約はすでに結ばれてはいるものの、そういう選手も出られるんだ。
ミッチェルトン・スコット(MTS)
登録選手(12名)
クリストファー・ユールイェンセン、ルーク・ダーブリッジ、ミヒャエル・アルバジーニ、ミケル・ニエベ、アンドレイ・ツェイツ、エドアルド・アッフィーニ、エステバン・チャベス、アダム・イェーツ、ダリル・インピー、マイケル・ヘップバーン、ジャック・ヘイグ、ニック・シュルツ
Mitchelton-SCOTT (AUS) - The Digital Swiss 5: 22. – 26. April
他のチームに先駆けて早くからバーチャルレースにシフトしていたこのチームは、ある意味で今回の最有力候補と言えるかもしれない。出場選手もかなり豪華で、アダム、ヘイグ、チャベス、ニエベのクライマー陣に今年のアンダルシアで早速完璧なアシストぶりを見せてくれたツェイツが加わる。パンチャー気味のスプリントではアルバジーニ、インピーが強さを見せてくれるだろう。
ところで、今年のツール・ド・スイスで引退を決めていたというアルバジーニはどうするのだろう。ロマンディもスイスも中止が決まり、本当に今年で引退するつもりなら、まさかこのデジタル・スイス5で・・・?
いやいや、ここは引退も延期しましょう。こういう選手、大好きなんだよ。
モビスター・チーム(MOV)
登録選手(11名)
エイネルアウグスト・ルビオ、ホセホアキン・ロハス、ガブリエル・クレイ、ダリオ・カタルド、アルベルト・トーレス、カルロス・ベローナ、ネルソン・オリベイラ、エクトル・カレテロ、セルジオ・サミティエル、ユルゲン・ルーランツ、ヨハン・ヤコブス
Movistar Team (ESP) - The Digital Swiss 5: 22. – 26. April
バルベルデ、ソレル、マスといったトップライダーは参加せず、ロハス、カタルド、オリヴェイラなどのいぶし銀な選手たちと、ルビオ、クレイ、ヤコブスのようなネオプロの若手選手たちを連れてきている。
もちろん、いぶし銀系選手たちはみんないい選手たちばかり。とくにカタルドは昨年のジロでステージ優勝しているので、期待がもてることだろう。
NTTプロサイクリング(NTT)
登録選手(11名)
マキシミリアン・ヴァルシャイド、ステファン・デボッド、ベン・オコーナー、ミヒャエル・ゴグル、ヴィクトール・カンペナールツ、ルイス・メインチェス、ロマン・クロイツィゲル、エドヴァルド・ボアッソンハーゲン、ジノ・マーダー、ベン・キング、ラスムス・ティレル
NTT Pro Cycling (RSA) - The Digital Swiss 5: 22. – 26. April
リース監督のおかげかはわからないが、今年は結構調子の良い旧ディメンションデータ。オコーナーも昨年は苦しかったが今年はすでに2月の山岳レースで優勝している。期待したいところ。
個人的に最も期待したいのは、2年前のラヴニールで活躍しながらも、昨年はずっと影の薄かったジノ・マーダー。今回、一応地元のスイスのレースだし、今年の世界選手権に向けても、ぜひここで活躍してほしい。
チーム・イネオス(INS)
登録選手(12名)
ローハン・デニス、キャメロン・ワーフ、フィリッポ・ガンナ、イアン・スタナード、セバスティアン・エナオ、ミハウ・クフィアトコフスキ、イーサン・ヘイター、ルーク・ロウ、ベン・スウィフト、クリス・ローレス、カルロス・ロドリゲス、イバン・ソーサ
Team INEOS (GBR) - The Digital Swiss 5: 22. – 26. April
昨年ツール・ド・スイス総合2位のローハン・デニスに、まだその才能を完全には現実世界では示していない間違いのない才能ソーサなど、十分に期待できる選手は揃っているがツール覇者は1人も出場せず。
どちらかというと平坦やスプリンター系の選手が多めだが・・・
なおワーフは、今年冒頭に心疾患を理由に引退したキリエンカの代わりに獲得を発表した、トライアスロン選手。かつてはキャノンデールなどイタリア系のチームに所属して活躍し、ツアー・オブ・ジャパンでも総合上位に入ったことのある選手だ。
チーム・サンウェブ(SUN)
登録選手(7名)
ジェイ・ヒンドレー、ニコラ・ロッシュ、マイケル・マシューズ、クリス・ハミルトン、ニコ・デンツ、アルベルト・ダイネーゼ、ウィルコ・ケルデルマン
全チーム中最も登録選手を少なくして挑む。平均して1人2ステージ以上は出ることになる。とはいえ、それが別に不利になるフォーマットかといえばそうでもないとは思う。
メンバーは十分に強い。ケルデルマンは昨年よりも復調している感じはあるし、ロッシュは先日のバーチャル版ロンドでも結構強かった。ロンドなのに。
ヒンドレーやダイネーゼはもちろん2月のオーストラリアで圧倒的な強さを見せていた期待の若手たち。パリ〜ニースでの勢いをそのまま引き継いで、「チーム」としての強さを見せられるか。
あとマシューズ今回は「パンク」しないでね。
トレック・セガフレード(TFS)
登録選手(11名)
アントニオ・ニバリ、エドワード・トゥーンス、マッズ・ピーダスン、エミル・リエピンス、バウケ・モレマ、ニコラ・コンチ、クーン・デコルト、ジャンルカ・ブランビッラ、トムス・スクインシュ、ジュリオ・チッコーネ、ヴィンツェンツォ・ニバリ
Trek-Segafredo (USA) - The Digital Swiss 5: 22. – 26. April
ここも強い・・・全グランツール覇者ニバリに昨年のロンバルディア覇者モレマ、昨年のジロ山岳賞のチッコーネに世界王者ピーダスンである。しかも、今年のトレックはこのピーダスンを中心にかなり調子が良い。
なお、ピーダスンはやっぱりアルカンシェルを着て走るんだよね? バイクもアルカンシェル仕様・・・はさすがに厳しい? そういったところにも注目しておこう。
トタル・ディレクトエネルジー(TDE)
登録選手(12名)
ロレンツォ・マンザン、ジュリアン・シモン、リリアン・カルメジャーヌ、ロマン・シカール、フロリアン・メートル、ファビアン・グルリエ、ロマン・アルディ、ジョフレ・スープ、ポール・ウルセリン、ジェローム・クザン、レイン・タラマエ、シモン・セリエ
Total Direct Energie (FRA) - The Digital Swiss 5: 22. – 26. April
昨年最強のプロコンチネンタルチーム(UCIプロチーム)はバーチャルでもやる気満々。カルメジャーヌやタラマエは今回のようなレイアウトには強そう。パンチャータイプとしては混戦に強いアルディや逃げ屋クザンなど。スプリントではマンザンがスープと組んでワールドツアーに挑む。
個人的に注目したいのは昨年のツアー・オブ・カタールでギリギリで勝ちを逃したグルリエの成長。いつか花開くと信じてるので・・今回のバーチャルレースでもその片鱗を見せて欲しい。
ラリーサイクリング(RLY)
登録選手(5名)
スティーブン・バセット、ギャビン・マニオン、マッテオ・ダルシン、ライアン・アンダーソン、ニコラス・ズコウスキー
RALLY Cycling (USA) - The Digital Swiss 5: 22. – 26. April
ほぼギリギリの数である5名での登録。なんとか存在感を示したいところだが・・
スイスナショナルチーム
登録選手(13名?)
ファビアン・リーンハルト、セバスティアン・ライヒェンバッハ、シュテファン・キュング、マッテオ・バディラッティ、ミヒャエル・シェアー、ミヒャエル・アルバジーニ、シルヴァン・ディリエ、マティアス・フランク、ロビン・フロワデヴォー、クラウディオ・インホフ、シュテファン・ビッセガーフィリッポ・コロンボ、ニノ・シューター
Swiss National Team (SUI) - The Digital Swiss 5: 22. – 26. April
錚々たるメンバー・・・と思いきや、
リーンハルト、ライヒェンバッハ、キュング(グルパマFDJ)
バディラッティ(イスラエル・スタートアップネーション)
シェアー(CCCチーム)
アルバジーニ(ミッチェルトン・スコット)
ディリエ、フランク(AG2Rラモンディアル)
の計8名はそれぞれ自身のチームの登録にもなっており、このあたりどういうルールなのかわからない・・・どっちからも出られる的な?
残りの5名はこのチームにだけ所属しているメンバーなのだが、その中でもインホフは昨年のツール・ド・スイスにも出場し、何日間か山岳賞ジャージを着る活躍を見せた選手。今年30歳の中堅である。
ビッセガーは昨年のツール・ド・ラヴニールで1勝している将来有望な今年22歳。今年の8/1からEFプロサイクリングに(トレーニーとしてではなく正式に)加入が決まっている。さらに2022年まで契約が続いておりすごい。
コロンボは2002年生まれの今年18歳。MTBクロスカントリーでは世界選手権スイス代表入して金メダル獲得に貢献したほか、2018年のヨーロッパ選手権ジュニア部門で銀メダルも獲得している。これもすごい。
そして最後に、ニノ・シューターの名前が。
ご存じ、マウンテンバイクの現役レジェンド。クロスカントリー種目で2015年から5年連続の世界王者、計8回の世界王者に輝いている。
マウンテンバイクにおけるマチュー・ファンデルポールの最大のライバル。今年のオリンピックで両者が激突する瞬間を楽しみにしていたが・・・
今回、ある意味最大の目玉選手かもしれない。通常のロードならまだしも、バーチャルであれば、彼が一流ロードレーサーに対して存在感を示せる可能性もあるだろう。
スポンサーリンク
各選手からのコメント
(Pedersen, Nibali, Roglič to line up in Digital Swiss 5 — Velonより)
マッズ・ピーダスン(トレック・セガフレード)
「普段ならホームトレーナーで時間を費やすことは好きじゃないんだけど、今は本当にこれが楽しいよ。とくに今回のようなレースの形でまた互いに競争することができて、今のこの難しい状況を解決する別の形というのを取ることができるのは本当に嬉しい。互いの距離を保ちながらレースをできるのはすごく良いことだし、ハードなレースをしてまた心拍数を上げていけるのがとても楽しみだ」
グレッグ・ファンアーヴェルマート(CCCチーム)
「数週間前に初めてバーチャルレースを体験してみて、デジタル・スイス5への参加にもより興味が湧いてきた。バーチャルレースは決して簡単ではない。それは通常のロードレースよりも距離は短いものの、より戦略の幅は狭く、より高い強度が求められる。ロードレースがないこの時期に、ロードレースファンの皆に何か見るべきものを提供することは非常に重要だと思っている。また、ファンにとってだけなく、我々選手にとってもモチベーションを維持するものとなり、チームにとってもスポンサーへのアピールになるという点で重要だ。来週はとても厳しい1週間になるだろう。すでに1度バーチャルレースで優勝している身として、もう一度勝利を手にするために全力を尽くすよ」
ジュリアン・アラフィリップ(ドゥクーニンク・クイックステップ)
「デジタル・スイス5の開幕が本当に楽しみだ。それは僕にとって経験したことのないようなレースであり、この非常に困難な時期に自分たちの状態をテストするためのレースができることを嬉しく思う。ファンのみんなを楽しませることのできるような激しいレースを展開していけるよう頑張るよ」
エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(NTTプロサイクリング)
「チーム全体がこの新しい試みに興奮している。僕たちがロードレースのできないこの時期に、目指すべき目標があるのはとても良いことだ。トレーニングでホームトレーナーに乗ることはもちろんたくさんあったけれど、レースとしてそれを使うのは初めてだ。それはファンの皆にとっても十分にエキサイティングな経験になると思っている。そしてそれは、スポンサーにとっても我々選手たちにとっても。とても、とてもハードなレースになるだろうし、それはきっと、間違いなく、面白くなるはずだ」
放送スケジュール
日本ではJsportsが日本語実況・解説付で放送してくれることに! ハンマーシリーズからの繋がりだろうか。
テレビでは第1~第3ステージに関しては翌日に録画放送を、第4・第5ステージをライブで放送する。
第1ステージ 4/23(木)20時~ Jsports4(録画放送)
第2ステージ 4/24(金)15時20分~&20時40分~ Jsports4(録画放送)
第3ステージ 4/25(土)11時30分~ Jsports4(録画放送)
第4ステージ 4/25(土)24時10分~ Jsports2(生放送)
第5ステージ 4/26(日)21時10分~ Jsports4(生放送)
さらに、Jsportsオンデマンドでは第1ステージからLiveで配信! 第1~第3ステージはおそらく日本語実況はないと思うけれど・・・。
第1ステージ 4/22(水)24時10分~(生放送)
第2ステージ 4/23(木)24時10分~(生放送)
第3ステージ 4/24(金)24時10分~(生放送)
第4ステージ 4/25(土)24時10分~(生放送)
第5ステージ 4/26(日)21時10分~(生放送)
Jsportsでは現在、過去の名レースやユンボ・ヴィズマ特集、さらには昨年のツール・ド・フランスやブエルタ・ア・エスパーニャやワールドツアーレースも続々再配信しているので、今加入がオススメ!
オンデマンド含め、みんな加入・登録しよう! U23割引きも!(ダイレクトマーケティング)
※オンデマンドのリンクのタイトルが謎ですが普通にオンデマンドページに行けます。
サイクルロードレース文化が危機に陥っている今だからこそ、ファンも一丸となって盛り上げ、文化の担い手を守っていこう!
スポンサーリンク
*1:UCIワールドツアーチームが共同出資して2014年に設立した企業。現在はボーラ・ハンスグローエ、CCCチーム、ドゥクーニンク・クイックステップ、EFプロサイクリング、ロット・スーダル、ミッチェルトン・スコット、チーム・イネオス、チーム・ユンボ・ヴィズマ、チーム・サンウェブ、トレック・セガフレード、UAEチーム・エミレーツの11チームが参加している。https://www.velon.cc
*2:スマートトレーナーを使用したバーチャルサイクリングサービス。Zwiftと比べると知名度はまだないが、よりバーチャルなデザインや世界観を重視するZwiftと異なり、レース背景は現実の画像を使用、アバターも使用しない一人称視点など、よりリアルさにこだわっている。実際のコースの「シミュレーション」として活用する場面もあったりする。