りんぐすらいど

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2018年シーズンを振り返る① 今年のベストレース4選+1

2018年シーズンもいよいよ終わりを迎えつつある。

今年も「振り返る」シリーズを扱っていきたいと思う。

 

第1弾は毎年恒例「今年のベストレース4選」。

今年も絞り込むのに非常に苦労したが、数ある名勝負の中から独断と偏見で選んだ珠玉のレースたちを紹介していこう。

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第4位 ドバイ・ツアー 第4ステージ

中東ドバイの砂漠地帯で行われる5日間のステージレース。

大半が平坦基調のコースレイアウトで、過去の総合優勝者も一流スプリンターが名を連ねる、スプリンターのスプリンターによるスプリンターのためのステージレースである。

そんなドバイ・ツアーの中でも異色のステージが、標高400mオーバーの「ハッタ・ダム」へと至るステージ。ラスト200mで24mを駆け上る、最大勾配17%の激坂フィニッシュで、今年は第4ステージで登場した。

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ピュアスプリンターではなかなか勝つことのできないこのステージで、どれだけ粘って上位に生き残れるかで、ドバイ・ツアー総合優勝を果たせるかどうかが決まる。

今年は第2ステージで勝利して4秒のリードを保ったまま総合首位の座についていたヴィヴィアーニが、この日も先頭とタイム差なしでゴール。ステージ2位のマウヌス・コルトニールスンに2秒差にまで詰められるが、最終ステージで2勝目を飾り、見事初の総合優勝を果たした

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しかし、この日のステージを大きく盛り上げたのは間違いなくこの男。

ラリー・サイクリングに所属するわずか19歳(当時)のアメリカ人、ブランドン・マクナルティである。

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マクナルティはこの日、チームメートのロビン・カーペンターやアクアブルー・スポートのコノール・ダンなど合計6名の逃げ集団を形成し、序盤からエスケープ。4分以上のタイム差をつける集団の中で最も総合成績が良かったため、一時バーチャルリーダーの資格も手に入れていた。

勝負が大きく動き出したのは残り10km。マクナルティが逃げ集団から抜け出し、独走を開始。この時点でメイン集団とのタイム差は、1分20秒を超えていた。

 

ラスト1kmを超えた時点で、マクナルティとメイン集団とのタイム差は30秒以上。

もはや、逃げ切りは確実、と思われた瞬間だった。マクナルティ自身も、カメラに向かって振り返り、勝利を確信したかのような表情を見せた。

 

が、そこはハッタ・ダム。残り300mを切ってからが本番である。徐々に跳ね上がっていく勾配に、そこまでの勢いが幻だったかのようにマクナルティのペースが落ちていく。

これを容赦なく飲み込んだのがワールドツアーの面々であった。

マクナルティの奮戦空しく、若者は、残りわずか50mで餌食となる。

代わって勝利を腕を突き上げたのはバーレーンメリダソニー・コルブレッリ(イタリア)であった。

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このコルブレッリの勝利は、残り5kmから集団を牽引し続け、最後までマクナルティを捕まえることを諦めなかったバーレーンメリダのチーム力の賜物であった。それは、チームの絶対エースであるはずのヴィンツェンツォ・ニバリが自ら集団を牽引する姿を見ても明らかであった。

このときのチーム内結束の強さ、互いが互いを補完し合う関係のもう1つの結実がミラノ~サンレモでの勝利であり、このレースもまた、今年のベストレースの1つに数えてもおかしくないようなレースであった。

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しかし惜しかった、マクナルティ!

彼の才能の高さを、世界に知らしめた瞬間だった。

事実、シーズンのその後において、彼はその才能が間違いのないものであることを示し続けた。

 

たとえばツアー・オブ・カリフォルニア第6ステージ「サウス・レイク・タホ」。

エガンアルリー・ベルナルが同大会2勝目を記録したこの山頂フィニッシュステージを、マクナルティはステージ4位でゴールしている。

また、そのベルナルが昨年総合優勝しているツール・ド・ラヴニールでも、難関山頂フィニッシュである第7ステージで区間2位。というか、このときはやや早すぎたガッツポーズゆえに敗れるというある意味このドバイ・ツアー以上に悔しい敗れ方をしたのであって、実力的には勝者イヴァン・ラミーロ・ソーサ以上のものがあったといえる。

 

元々個人TTではジュニア世界チャンピオン、U23世界2位の実力をもつマクナルティ。今年は山岳における強さを見せつけたことで、俄然、将来有望なオールラウンダーの仲間入りを果たしたことになる。

来年もまだラリー・サイクリングで走ることが決まっている彼だが、果たしてどんなさらなる活躍を見せてくれるのか。楽しみである。

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第3位 フレッシュ・ワロンヌ

ベストレースを選ぶにあたって、「最後の一瞬」で勝負が決まる類のものは選ばないようにしている。レース全体の動きを通して「ベストレース」であると感じているからだ。

そういう意味で、このフレッシュ・ワロンヌをベストレースの1つとして選出することに若干のためらいがあった。しかし、それでも選ばざるを得なくなるくらいに、今年のこのレースは衝撃的だった。

 

まずは何といっても、これまで4年連続で勝利してきたアレハンドロ・バルベルデの敗北。そして、2015年・2016年と2位続きだったジュリアン・アラフィリップの勝利である。

昨年2位のダン・マーティンは「フレッシュ・ワロンヌで勝つためにはバルベルデの引退を待つしかないよ」的なことも言っていたが、その翌年に、この若者が成し遂げたのだから快挙である。

 

しかも、真正面から力で捻じ伏せるような勝ち方だった。

イェレ・ファネンデルトの後ろからアラフィリップが飛び出したとき、少し出遅れた集団からバルベルデも同時に飛び出した。そして崩れ落ちるファネンデルトを躱し、バルベルデは必死にアラフィリップに喰らいつこうとした。

 

が、結局は届かなかった。アラフィリップの勢いは減じることなく、ついにバルベルデがペダルを踏むその足を止めた。

これまでバルベルデが他のライバルたちに対して見せつけた圧倒的な走りを、今年はアラフィリップが見事に再現してみせたのだ。 

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今年のモビスターも、完璧な布陣で挑んだ大会だった。

昨年、ライバルたちのアタックをほぼ全て抑え込んだカルロス・ベタンクールをはじめ、ウィナー・アナコナ、アンドレイ・アマドール、そしてスカイから移籍してきた3人目のエース、ミケル・ランダなどなど。

そのままグランツールでも戦えるような万全の態勢で臨んだモビスターだったが、今年はライバルたちもより一層、本気だった。

 

ミラノ~サンレモ勝利もあって調子を上げつつあったヴィンツェンツォ・ニバリが、中盤で形成された逃げに乗る動きを見せたことで、モビスターは本気で追走する必要が生まれた。そして、他のチームは誰も、これを助けようとはしない。

おかげで、盤石のアシスト陣もその疲労の蓄積を避けられなくなり、終盤のコート・ド・シュラーヴの段階ではもう、バルベルデはほぼ単騎状態となってしまった。

 

この状況では、いつものようなユイの壁での最適なポジション取りは望むべくもなかった。実際、最後の最後でアラフィリップに追いつききれなかったのも、結局は、ラストスパートのスタート位置が明らかに後方になってしまい、出遅れてしまったからだった。

それでも2位につけるあたり、バルベルデ自身の調子は決して悪くはなかった。

それ以上にアラフィリップの今年の実力の高さが間違いのないものだったのだ。

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そしてもう1人、クイックステップ・フロアーズで重要な働きをしていたのが、ニバリと共に逃げに乗っていた24歳のドイツ人、マクシミリアン・シャフマン

ニバリらが脱落した後も先頭で逃げ続け、ユイの壁も残り200mまで粘り続けた。

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彼の走りがあったからこそ、これを追いかけるイェレ・ファネンデルトがアラフィリップを背後に従えたまま本気で足を使わざるをえなかったし、アラフィリップもその後ろでじっくりと構えることができたのだ。

そして、バルベルデに対してかなり優位な位置でのスパートを仕掛けることができた。アラフィリップの勝利の大きな要因に、シャフマンの存在があったことは間違いない。

 

このシャフマンはその後、ジロ・ディタリアの山岳ステージでの逃げ切り勝利や、ドイツ・ツアーでのモホリッチやデュムランに対してスプリントで勝利したりと、オールラウンドな活躍を続けている。

今年、プロデビュー2年目。プロ勝利も今年が初。

まだまだ成長途上の、注目すべき若手の一人である。

 

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第2位 UCIロード世界選手権 男子エリートロードレース

まだ記憶に新しい、インスブルックでの世界王者決定戦。

思えばこれも、バルベルデvsアラフィリップといった前評判のレースであった。そして、まるでフレッシュ・ワロンヌでの借りを返すかのように、こちらはバルベルデが経験と実力の差を見せつけて勝利を掴んだ。

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レースは全長258km、獲得標高差4681m。

歴代最高の厳しさとまで言われたこの難関山岳コースで行われたレースは、当初17分以上ものタイム差を逃げ集団が作るようなゆったりとした展開で始まった。

しかし周回コースの入り口にあたる「グナーデンヴァルト」を超えるといよいよ集団はペースアップ。世界選手権3連覇中のペテル・サガンも脱落し、本格的なサバイバルレースが開始される。

 

最後から2回目の「イグルス」の登りで、優勝候補の一角であったブエルタ覇者サイモン・イェーツも脱落する。

最終周回の「イグルス」の登りでは最後まで逃げていた2人を吸収し、逆に今年「オンループ」「アムステル」の2つのクラシックレースを制しているミケル・ヴァルグレン(デンマーク)がここで単独で飛び出した。

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2つのクラシックは共に、同じような終盤での不意打ちアタックから勝利をモノにした。

しかし今回は、ゴールまで距離にして20km以上残っており、さらには最後に最も厳しい登り「グラマルトボーデン」が控えていた。

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登坂距離2.8km、平均勾配11.5%、最大勾配28%の別名「ヘッレ(地獄)」。

この激坂を前にして、さしものクラシックハンターも失速。ロマン・バルデを先頭にした精鋭クライマーたちの集団に飲み込まれる。

 

結局のところ、今年の世界選手権はクライマーのためのコースだったのである。

 

「ヘッレ」はクラシックハンターだけでなく、今年ツール山岳賞のジュリアン・アラフィリップも、オールラウンダーとして類稀なる才能を発揮しつつあるジャンニ・モズコンをも飲み込んだ。

彼らは確かに登りにおいてもその実力を示しつつあったが、それでもまだまだ純粋なクライマーとしての領域には達しきれていなかったのだ。

 

だから、最後の最後に残った4人は精鋭中の精鋭だった。

ツール総合2位の経験をもつバルデ。昨年ジロ・ディタリア総合優勝のトム・デュムラン。昨年ブエルタ総合7位で今年も最高のコンディションを発揮しているマイケル・ウッズ。そして、当然バルベルデ

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そしてこの4人の顔ぶれであれば、バルベルデが頭一つ飛び抜けたスプリント力をもっていることは誰もが分かっていた。

だからこそバルデはちらちらと後ろを振り返り、なんとかアラフィリップと合流しようと画策していた。

だからこそバルベルデは、普段の彼にしては珍しく、積極的に前を牽く姿を見せていたのである。

 

結果は、バルベルデの判断が功を奏した。ピノ、アラフィリップ、バルデと精鋭中の精鋭を揃えてきていた最強軍団フランスに対し、彼は自らの足を信じて真っ向から勝負を仕掛けた。

最後のスプリントも先頭で直線に入り、そのまま誰にも前を譲ることなく、力でこれを捻じ伏せた。 

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例年のフレッシュ・ワロンヌで見せるような、余裕をたっぷり見せての勝利ではなかった。

プロ18年目。幾度となく目指し、目の前にまで迫ったことも1回や2回ではない。その栄光を、彼はついに掴み取ったのだ。

信じられない、という表情はその後、少年のような無邪気さとなって表彰台でも消えることがなかった。 

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第1位 ジロ・ディタリア 第19ステージ

やはり、今年最大のベストレースはこのレースである。

歴史に残る大逆転劇。数多くのドラマの詰まった185kmであった。

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今年のジロは、クリス・フルームとトム・デュムランという、現在のグランツールの最高峰に位置する2人が本気の直接対決を行う初の大会ということで注目をされていた。

しかし蓋を開けてみると、クリス・フルームはシーズン序盤の不調を引きずるかのような低迷を見せ、一方のデュムランはここまで総合2位をほぼ3週間維持するような走りを見せていたものの、それ以上に多くのファンを驚かせる走りを続けていたのがサイモン・イェーツ(イギリス、ミッチェルトン・スコット)であった。

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これまでもブエルタでのステージ優勝やツールでの新人賞など、才能の高さを確かに見せつけ続けてきた彼ではあったが、それでも今回のジロでの活躍は「覚醒」以外の何ものでもなかった。

エトナ山頂フィニッシュの第6ステージでは実質的にチームメートのチャベスに勝利を譲る形となり、第9ステージのグラン・サッソ、第11ステージのオージモなど難関山頂フィニッシュやパンチャー向けステージでも積極的に勝利を奪いに行った。

モンテ・ゾンコランでは一時復活したクリス・フルームに敗れるものの、その最強の脚に喰らいつく走りを見せ、逆にライバルたちとのタイム差を更に開きにかかった。第15ステージでは3勝目を記録してハットトリック。エトナのことを考えると実質4勝。

そして、決して得意ではなかったはずの個人タイムトライアルでも満足のいく走りを見せていた彼は、もはや誰もが総合優勝を疑うことのできない領域にまで達していた。

 

しかし、逸り過ぎたのだ。あまりの自らの調子の良さに、彼はその身を委ね過ぎてしまったのかもしれない。

兆候は第18ステージ。最後の登りで彼はわずかに遅れ、ライバルたちに30秒近く離されてしまった。

そして、運命の第19ステージ。フィネストーレ峠の登りで、彼はついに、力尽きた。

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一方、クリス・フルームはこのときすでにトム・デュムランとは3分以上ものタイム差をつけられていた。

総合表彰台ならばまだしも、これを逆転しての総合優勝という可能性はかなり絶望的となっていた。

 

 

だが、事態は誰もが予想しない方向へと動き出す。

サイモン・イェーツを振るい落とした「スカイ・トレイン」はフィネストーレの登りで延々とペースアップし、そして峠の後半に用意された未舗装路にて、最後の発射台ケニー・エリッソンドの手によって、ついに「最強」が発射された。 

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だが、このときゴールまで残り80km。

まさか、このまま最後まで独りで逃げ切ることなど、誰も想像できなかったに違いない。

ましてや、3分というタイム差をひっくり返してしまうなんてことは。

 

 

しかし、フルームはこれを成し遂げた。

その要因の1つには、たとえばデュムランが、自らも独りでこれを追う、という決断を下すことができず、下りが苦手なピノとそのアシストを待つという判断を下してしまったことに見ることもできるだろう。

しかしやはり、ありえるはずのない大逃走劇を成功させ、3分をひっくり返すどころかそこからさらに40秒を稼ぎ出すような走りを見せたフルームの力と覚悟、精神力が圧倒的であったのは間違いない。

何しろ彼は、フィネストーレの下りが終わった直後、冷静に補給を取っていた。彼にとってこの独走は、決してたまたま手に入れた千載一遇のチャンス、というわけではなく、綿密に組み立てられた戦略の一部に過ぎないのだと言うように。

 

かくしてフルームは、第101回ジロの覇者となり、昨年ツールから3回連続のグランツール制覇、そして3大グランツール制覇者の1人となった。

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だが、彼のこの驚異的な走りを目にしたライバルたちは、彼らもまた自らを新たなステージに押し上げていくこととなる。

たとえばデュムランは、翌日、まるでこの日の消極性を無理矢理封じ込めるかのように、最後の最後まで攻撃的な走りを続けていた。

さらに、ツール・ド・フランスでも、マイヨ・ジョーヌを着るゲラント・トーマスを相手取ってアタックの連続を繰り出していった。

 

結果として、今年のジロもツールも総合2位で終えるという悔しさで終わったデュムラン。 

しかし、彼のこの姿勢が来年も続くようであれば、来年こそは、と期待することは十分できるだろう。

「最強」の名に相応しい、実力だけでない精神性をも兼ね揃えた男が、オランダ人としては30年ぶりとなる勝利を掴み取ることができるか。

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そして、このとき大きな敗北を経験したサイモン・イェーツは、同じ年のブエルタで早くもリベンジを果たすことに成功する。

彼もまた、悔しさを力に変え、プレッシャーをパワーに変え、狙った目標を必ず掴み取る精神とを併せ持つチャンピオンとしての資格を若くして手に入れることができたようだ。

もちろん、彼を支えることに全力を賭したチームの盤石な体制あってのものである。チームとしてグランツール総合優勝を狙いに行く姿勢においては、スカイに次ぐ徹底ぶりを持っているのがもしかしたらこのチームなのかもしれない。

 

来年は「置き忘れたものを取りに行く」つもりであるというサイモン。

ジロでのリベンジが、まずは目指すべきものとなるのか。そして、やがていつか、ツールで新たな時代の王者となる最大の候補であるのは間違いないだろう。 

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最強の最強たるゆえんを見せつけられた今ステージ。

そして、「最も面白いグランツール」と評されることも多いジロ・ディタリアの魅力を象徴するステージでもあったこのレースこそ、文句なしで今年の「ベストレース」に相応しいものと言えるだろう。

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番外編 イル・ロンバルディア

最後に挙げるのは、シーズン最後のクラシックとなったイル・ロンバルディア

もちろん、番外編としてではなく他のレースと合わせてランキングしても上位に入れるような名レースだったとは思うが、ピノファンとしては冷静に評価することができなさそうだったためにランク外に。

 

実際、このレースは毎年名勝負を生み出す素晴らしいレースである。とくに昨年から連続で採用されている、ベルガモ~コモのレイアウトのときは。

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昨年の優勝者はヴィンツェンツォ・ニバリ。彼は、同じくベルガモ~コモのルートを使用した2015年でも優勝しており、今年は3度目の優勝を狙う。

一方、世界王者のバルベルデ、世界戦2位のバルデ、3位のウッズらも揃い、後段2名にとっては世界戦のリベンジの意味合いも強いレースであった。

 

序盤から8名の逃げが形成され、レースは中盤までは穏やかな展開が続く。

しかし、大きな動きが巻き起こったのはやはり、このレイアウトにおいては最初の勝負所として常に盛り上がる、最大勾配27%の「ソルマーノの壁」。

ゴールまで残り50kmを残したこの登りで主導権を握ったのはチーム・ロットNLユンボ。ほぼ全選手が揃ったトレインが一気にペースを上げ、そして最終発射台ロベルト・ヘーシンクによって放たれたプリモシュ・ログリッチェが独走体勢に入る。

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この判断は決して間違いではなかったと思う。純粋な登坂では最後まで喰らいつけない可能性のあるログリッチェにとって、得意の独走によって勝利を掴めるチャンスはここしかなかった。

しかし、この動きに即座に反応したのがこのレースを最もよく知っている男、ニバリ。

そして、シーズン後半常に好調を維持し続けている男、ティボー・ピノ

とくにピノは、よくぞここに喰らいつく走りができたものだ。

彼の覚醒は間違いなく本物であったことがよくわかる。

 

その後、登りでログリッチェを追い抜いたピノとニバリ。

グリッチェは下りで追い付き、さらに集団が抜け出した驚異の新人、エガンアルリー・ベルナルとが合流し、4名で残り20km弱から始まる最後の勝負所「チヴィリオ」へと突入する。

 

ピノにとって、この登りは本当の意味での最後の勝負所であった。昨年はここでニバリに置いていかれ、彼の下りのテクニックを前にして、為す術がないまま勝利を逃してしまった。

今年も、ニバリと共にダウンヒルに挑むつもりなど毛頭なかった。ここでやらなければどうせ勝てない、という思いが、このチヴィリオにおけるピノの再三再四にわたるアタックの連発を生み出した。

こういう、無謀と紙一重の真っ直ぐな姿勢こそが、ピノの弱みでもあり、そして魅力でもある。

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そしてついに、ピノがニバリを引き千切る。

頂上で20秒のタイム差をつけたピノは、そのまま単独でダウンヒルに。

ときおり傾けるバイクの角度も危なっかしく、常にハラハラとする下り方を見せていたものの、ニバリとのタイム差はむしろ開いていく一方。

昨年はできなかったバニーホップさえ見せる、絶好調ぶりを見せつけていた。

 

 

そして、ついに彼は栄光を手に入れる。

2012年にツールを初めて制したときのような独走の末に、彼はローラン・ジャラベール以来21年ぶりとなる、フランス人のイル・ロンバルディア勝利を掴み取る。

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ブエルタの2勝に続き、ミラノ~トリノの優勝。そして、彼にとって初のモニュメント制覇となったこのロンバルディア勝利。

かくして今シーズンは大成功のまま終えることのできたピノ

つい先日にはフランスのVelo Magazineが選ぶフランス人最優秀自転車選手に選ばれるという栄誉にも浴した(3年ぶり2度目。昨年・一昨年はバルデが受賞)。

 

兼ねてよりあると感じていたワンデーレース適性を来年も発揮してくれるシーズンとなるか?それとも、今度こそツール・ド・フランスでの復活を目指すか?

個人的にはジロかブエルタでの総合優勝争いに期待したいどころではあるが・・・。

 

とにかく、常にファンの心を掴んで離さない走りを見せ続けてくれるピノよ、これからも魅力的な戦いを見せ続けてくれ。

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