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ツール・ド・フランス2019 注目コースプレビュー

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ついに明かされた、ツール・ド・フランス2019のコース全容。

マイヨ・ジョーヌ誕生100周年を記録する今回のツール・ド・フランスは、全体的に東~南に偏ったルートを描いているように見える。

それはすなわち、ノルマンディーや中央部の平原地帯ではなく、フランスの誇る山岳地帯をひたすら巡ることを意図したルートであることを表している。

実際、2019年のコースはヴォージュ山脈、中央高地、ピレネー、そしてアルプスを巡り、5つの山頂フィニッシュを抱える「クライマー向け」コースとなっている。

 

今回は、発表されたばかりのこのコース全体像を踏まえつつ、いくつかの注目コースをピックアップして紹介してみたい。

 

 

  

第1ステージ ブリュッセルシャルルロワブリュッセル

「人喰い」エディ・メルクスの最初のツール・ド・フランス総合優勝から50周年を記念し、彼の母国ベルギーの首都ブリュッセルを発着する192km。

Bruxelles(フランス語)とBrussel(オランダ語)の表記とが混ざり合う、日本人にはイメージしづらいこの地域特有の事情も込められた、象徴的なステージだ。

 

もちろん、ベルギーのこの地域は「北のクラシック」のメッカでもあり、伝説の登り「カペルミュール」ことヘラーツベルヘンもコースに組み込まれている。

とはいえ、その登場はスタートから43km地点と序盤も序盤のため、レースの風景を華やかにする役割を果たしはしても、この日の勝者を左右する重要な役割までも担うことはないだろう。

だが、もしかしたらこの日最初の山岳ポイント(あるいはこの日唯一の山岳ポイント?)になる可能性はあり、その意味で、逃げに乗った最初の山岳王候補者たちによる熾烈な争いの舞台となるかもしれない。

それはそれで楽しみだ。「最強」ではない、ただしその燃え滾る想いだけは本物の若き逃げ巧者たちが新たな時代をカペルミュールを彩ってくれるだろう。

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そして、2019年最初のマイヨ・ジョーヌ争いは、ブリュッセルへと至る緩やかな登りスプリント(勾配5%)の果てに勃発する。

あまりにも速いペースでの世代交代が進むスプリンター頂上決戦の最初の勝者は果たして誰だ!?

suzutamaki.hatenablog.com

 

  

第6ステージ ミュルーズ~ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユ

2012年のクリス・フルーム、2014年のヴィンツェンツォ・ニバリ、そして2017年――昨年のファビオ・アル。いずれもマイヨ・ジョーヌを手にしたことのある最強格のクライマーたちの勝利を生み出してきた、新しくも既に伝説の峠ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユ。

今大会もこの山を、3週間の戦いにおける最初の「総合争い」の舞台とすることに決めたようだ。

 

しかし、今年のラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユは、これまでの3回とは違った顔を見せる。

これまでの3回はすべて、5.9kmで501.5mを登る、平均勾配8.5%の1級山岳としての顔だった。

しかし今年はここに、さらに追加の1kmが用意されている。

しかも、それは未舗装路、すなわち今年のジロのフィネストーレ峠にも登場したようなグラベル・ロードなのである。

参考:2019年ツールには24%の未舗装路の山頂フィニッシュ登場か? – Bike News Mag

 

そして、この1kmの中には、最大勾配24%の激坂区間も存在しているという。

ただでさえ強力な破壊力を持つ「キングメーカーの山」は、今年さらなる威力をもって、新たな時代のチャンピオンを迎えようとしている。

 

スプリンターだけじゃない。クライマーにおいても、新たな英雄の誕生が待たれるところである。

suzutamaki.hatenablog.com

 

  

第14ステージ タルブ~トゥールマレー

100年以上の歴史をもち、80回以上の通過を許した、フレンチ・ピレネーの象徴的な峠トゥールマレー(ツールマレー)。

しかしそれだけの歴史を持ちながら、この峠の頂上がゴール地点になったことは過去たったの3回しかない。

今年はこの伝説の峠を存分に堪能すべく、ひどくシンプルで、かつ短いステージが用意された。

個人的に今大会最も注目しているステージだ。

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最も最近にこの峠をゴール地点にしたのは、峠通過100周年を記念した2010年の大会である。この年は、2つのステージでこの峠が使われ、2つ目となる第17ステージでこの山頂をフィニッシュ地点に置いた。

 

そしてこのとき、「最強」を巡って熾烈な争いを繰り広げていたのが、アンディ・シュレクアルベルト・コンタドールという、2人の名クライマーだったのである。

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あれから9年。

新たな時代を迎えようとしている中、2010年代最後の「トゥールマレー覇者」の座は果たして誰の手に渡るのか。

きっと今回も、これからの時代を創らんとする才能がこの山で「最強」であることを示すだろう。

決して見逃せない一戦だ。

 

 

第18ステージ アンブラン~ヴァロワール

いよいよアルプスで迎える最終決戦は、この第18ステージで1つの頂点を迎える。もちろん第19ステージも第20ステージも山頂フィニッシュが待ち構えており、厳しい山岳ステージであることは間違いない。

しかし、この第18ステージは200km超えのロングステージに2000m超えの超級山岳を3つ越えるという、ジロ・ディタリアかと見紛うばかりの難関ステージとなっている。

 

やはり注目はイゾアール~ガリビエの2連戦。

2011年のツールでは、前年のトゥールマレー決戦では決着をつけられなかったアンディとコンタドールが再び激突し、アンディが勝利。

さらに、トマ・ヴォクレールがこの日もマイヨ・ジョーヌをキープする驚異的な走りを見せていた。

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もちろん今回は、このガリビエの頂上での決着ではなく、そこから18kmのロングダウンヒルを経てのゴールである。

そして、このレイアウトに近かったのが昨年の第17ステージ。

ガリビエでアタックしたプリモシュ・ログリッチェが、アルベルト・コンタドールを含む追走集団を突き放し、標高2642mから1200mを下る超級ダウンヒル決戦を制した。

今年総合4位のログリッチェ。彼の止まらない進化を再び見ることができるか。

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こういうレイアウトがある意味、一番「わからない」のだ。

最後が下りである以上、最後の最後まで勝負をお預けにするという消極的な戦いは起こりづらい。もちろん、その直前のガリビエが一つのポイントとなるのだが、その前にもう1つ、凶悪なイゾアールが待ち構えていることで、アタックポイントが一つに定まらない。

大逃げ集団からの前待ち作戦も使いやすいレイアウト。あらゆる作戦が許され、あらゆる戦略が裏目にも出やすい。

今年のジロのフルームの80km独走勝利のような前代未聞のドラマすら生み出されかねない。これが、この第18ステージの200kmが秘めたるポテンシャルなのだ。 

 

ここで何事も起きなければ、最後まで大きな波乱が起こることなく3週間は終えられることだろう。

 

果たして、100周年目のマイヨ・ジョーヌを手に入れるのは誰か。

そして「最強」チーム・スカイの牙城を崩せるのは果たして、どのチームか。

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ツール・ド・フランス2019、開幕まで残り250日。