読み:チーム・カチューシャ・アルペシン
国籍:スイス
略号:TKA
創設年:2009年
使用機材:Canyon (ドイツ)
2017年UCIチームランキング:11位
(以下記事における年齢はすべて2018年における数え年表記となります)
2018年ロースター
現役最強のクロノマン、トニー・マルティンに加え、2018年は現役最強スプリンター、マルセル・キッテルを迎え入れた。2017年はクリストフの発射台として最高の活躍を見せてくれていたリック・ツァベルと合わせ、ドイツの才能が次々と集まりつつある。2017年からスポンサーにドイツ企業のアルペシンが加わったうえに、バイクの供給メーカーもドイツのキャニオンであることも要因となっているだろう。
総合エースはザッカリンが担う。しかし彼を登りでアシストする人材は十分とは言えない。また、ザッカリンの出場しないグランツールで上位を狙える才能がいるわけではない。短いステージレースであればスピラックなどで狙えるだろうが・・・。
よって、中心的に狙うのはキッテルによるスプリント勝利。チーム変更による影響は未知数だが、昨年ツールで独りの力でも勝てる姿も見せていたキッテルならば、2018年も大暴れしてくれることだろう。
注目選手
マルセル・キッテル(ドイツ、30歳)
脚質:スプリンター
2013年からの5年間で出場した4回のツール・ド・フランスで合計14勝。ジロでも「イタリア本土に入るまで」ならば圧倒的な強さを誇る。イタリア本土に入るとなぜか勝てない呪いにかかっているので、イタリア国内のみで開催された2017年のジロはパスしてカリフォルニアに出場していた。2018年はイスラエルステージがあるので、そちらは出場するかも??
2017年のツールは5勝。これまでの彼の戦い方と違う点は以下の2つ。
- 混戦の中、単独で集団後方から飛び出して加速力で他を圧倒する走りを見せた。→ これまではチームに守られて完璧なリードアウトのうえで勝つパターンが多かったが、2017年は違った。
- 中盤の山岳ステージでも逃げに乗るなど、苦手だったはずの登りを克服している。
そして自身初となる5勝。この勢いならばシャンゼリゼでの6勝目も十分に期待ができ、カヴェンディッシュの記録に並ぶこともできそうだったが、まさかの落車リタイアを喫してしまった。
マシューズとのマイヨ・ヴェール争いも白熱していただけに、非常に残念。
短い距離のTTでも意外な強さを発揮する。ツール初日のデュッセルドルフ個人TT(14km)でもボアッソンハーゲンやフィニーを上回る9位である。
整った顔立ちに比して、ゴリゴリの肉体に、野獣のような咆哮。このアツさが、彼の魅力の1つでもある。
イルヌール・ザッカリン(ロシア、29歳)
脚質:オールラウンダー
カチューシャに正式加入した2015年に、いきなりロマンディで総合優勝。さらにジロでも1勝を挙げた。
翌年はパリ~ニースでゲラント・トーマスとコンタドールに競り勝っての頂上ゴール優勝。さらにジロ・ディタリアでも終盤まで総合5位と大健闘。最後は派手にクラッシュしてリタイアを余儀なくされるが、直後に復帰してツール・ド・フランスでも1勝を挙げる。
2017年はジロとブエルタで総合表彰台を目指し、いずれも優れた走りを見せた。ブエルタでは総合3位に入り目標を達成。2018年はいよいよ頂点を目指すか。
安定感や持続的な走りという点ではフルームやデュムランには劣るが、機を見て鋭いアタックを仕掛けることを得意とする。それで総合3位~5位には入りやすいのだが、ある意味で「見逃された」結果であることも事実。頂点を目指すなら、他を引き千切るだけの力が必要だ。
ついにグランツール総合表彰台に登ったザッカリン(右)。次の目標はこの頂点であり、その可能性は十分にある。
トニー・マルティン(ドイツ、33歳)
脚質:TTスペシャリスト
過去4回のITT世界チャンピオン、5回のドイツチャンピオンに輝いている現役最強のTTスペシャリスト。山岳逃げの能力も卓越しており、ツールでの逃げ切り勝利の経験もあり。最近Jsportsで放送された2009年ツール・ド・フランスでは、モン・ヴァントゥー頂上ゴールでの粘り強い走りに目を瞠った。
とはいえ本格的な登りに対する適性はやはりトム・デュムランに一歩劣る。それがゆえに今年の世界選手権は逃しており、来年も厳しいかもしれない。また安定感もあるとはいえないタイプで、母国開催で気合を入れていた2017年ツール初日のデュッセルドルフでは4位に終わった。
2016年、クイックステップ時代のラストシーズンに見せた、石畳クラシックへの適性の高さにも期待がかかる。2018年シーズンはクリストフも去ったため、本格的にマルティンがエースでルーベを走る可能性もあるかもしれない。
その他注目選手
シモン・スピラック(スロベニア、32歳)
脚質:クライマー
さむ~いアルプスの山岳地帯に滅法強い氷系クライマー。2017年は2度目のツール・ド・スイス総合優勝を果たしたほか、同じアルプスのプロ・エッツタール5500も2位。2018年の世界選手権も意外と狙えるかもしれない。
代わりに暑さには弱いのか、期待されて出場するツールではなぜか結果を出せない。2018年も短いステージレースでのエースが中心的な役割となるだろう。
アレックス・ダウセット(イギリス、30歳)
脚質:TTスペシャリスト
過去5回、英国タイムトライアルチャンピオンに輝いており、それを含めた過去13回の勝利のうち、11回が個人タイムトライアルでの勝利であるという、まさしくTTスペシャリスト。
総合争いが第一のモビスターではあまりグランツールには出してもらえなかったが、カチューシャに移籍することでチャンスは増えるかもしれない。モビスター時代も世界選手権チームタイムトライアルの常連メンバーではあったため、その点でも期待ができるだろう。実際、2018年のカチューシャは、チームタイムトライアルでの活躍に期待ができそうなチームにはなっている。
ホセ・ゴンサルベス(ポルトガル、29歳)
脚質:クライマー
2016年まではカハルラルに所属し、ブエルタでよく逃げに乗っていた選手。この人物もいつの間にか若手と呼ばれる時期を過ぎていた。
2017年シーズンはジロの終盤でザッカリンを献身的にアシスト。カチューシャの積極的な攻撃の一端を担った。
2018年もザッカリンを助ける山岳アシストの第一人者となれるか。
イアン・ボズウェル(アメリカ、27歳)
脚質:クライマー
ザッカリンの数少ない頼れる山岳アシストへの補強として期待されて新加入。スカイ時代はブエルタなどで経験を積んでいた。
彼自身が得意としているのは、地元アメリカのツアー・オブ・カリフォルニア。2017年は途中まで総合3位と悪くない走りではあったが、個人TTで一気に順位を下げてしまった。
2018年はカリフォルニアを最大目標としつつ、2017年には出られなかったグランツールでの経験を積んでいきたい。
ジョナタン・レストレポ(コロンビア、24歳)
脚質:パンチャー
山岳ステージで粘り強い走りを見せるかと思えば、カデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレースやバスク1周で一流スプリンターに混じって上位入賞するなどの謎脚質を持つ。
うまく成長すればグランツールでのポイント賞候補にもなりうる才能を持っている。その意味で2018年は経験を積む年にしてほしいところ。
リック・ツァベル(ドイツ、25歳)
脚質:スプリンター
伝説のスプリンターの息子。こういう場合はプレッシャーにも押されて結果を出せないこともありそうだが、2017年のツァベルは十分すぎる結果を残した。
とくに注目したのは5月のエシュボルン・フランクフルト。ゴール前のリードアウトが強力過ぎて、後続の選手を引き千切ってしまうほどだった。結果、最大のライバルであったデゲンコルブを退けて、エースのクリストフと共にワンツーフィニッシュを決めた。
当時、体重も増え過ぎるなど不調に陥っていたクリストフにとって、久方ぶりのワールドツアーレースでの勝利だった。それをもたらしたツァベルに対する評価は一気に高まったことだろう。
2018年は同国のエース、キッテルをアシストする大役を担う。やがて自らがエースになる日のためにも、今シーズンでの活躍は非常に重要なものとなる。
2018年ツール 出場メンバー案
1.マルセル・キッテル(エーススプリンター)
2.アレックス・ダウセット(平坦アシスト)
3.ネイサン・ハース(平坦アシスト&アタッカー)
4.マルコ・ハラー(発射台)
5.ティアゴ・マシャド(アタッカー)
6.トニー・マルティン(ゴール前10km牽引要員)
7.ジョナタン・レストレポ(発射台)
8.リック・ツァベル(発射台)
キッテルをエースに、キッテルの為の構成をしてくる、というのが想像できる。ザッカリンはまずはジロとブエルタ。ゴンサルベスなどはそちらに行ってもらおう。
固いのはマルティンと、おそらくはツァベル。ハラーもクリストフの最終発射台を務めたこともあるため、重宝するだろう。アタッカーを数名入れてスプリント以外の勝利も狙いたいところなので、マシャドとハース、ときどきレストレポ。平坦アシスト役としてはほかにニルス・ポリットなどもいるが、それよりは山岳適性のある選手をもう少し入れる方がいいかもしれない。
総括
昨年最も勝利数を挙げた選手の1人であるキッテルを加えたことで、勝利数自体は膨れ上がっていく可能性はある。一方でグランツール総合争い、各種クラシックでの勝利を狙える頭数が少ないのが不安要素。
ダウセットが加わり、マルティンやホレンシュタインもいるため、チームTTでの成績は少し上がっていくかもしれない。
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