「太陽へのレース」、いよいよ開幕(3月5日~)。
まさにサイクルロードレースシーズンの本格的な幕開けを告げるこのレースを、徹底的にプレビューしていきたい。
注目選手(総合)
セルヒオルイス・エナオ(コロンビア、30歳)
先日の母国コロンビアでの国内選手権で、見事ロードレース部門優勝を果たしたセルヒオ・エナオ。最強のクライマーが集まるコロンビア選手権で最も速い男として認められたというわけだ。この最強コロンビアンが今年も大暴れを魅せられるか。
昨年のパリ~ニースでは、エースのゲラント・トーマスを登りでも下りでも見事にアシストした、トーマス総合優勝の最大の功労者である。というか登りではトーマス以上のポテンシャルを見せてもいた。今年は今のところトーマスの出場予定はなく、エナオがエースということも十分ありうる。昨年のバスク1周ではコンタドールには敗れたもののキンタナを下しての総合2位。そう、パリ~ニース総合優勝は十分に狙える実力を持っている。
昨年のパリ~ニース第6ステージで、各チームのエース級だけが残った局面でしっかりと集団を牽引するエナオ。今年は彼がエースの立場で戦えるか。
参加を予定しているチームメートはミケル・ニエベ、ワウト・プールスという豪華な山岳アシスト陣。この布陣の強さは今回参加を決めているチームの中でも随一であるように思える。
一方で、このメンバーの中で本当にエナオがエースを任せられるかどうか。もしかしたらプールスがエースを担うかもしれない。あるいはダブルエース体制という可能性もありうる。そこはもう少し時期が近づいたときにわかってくるかもしれない。
だがいずれにしても、アシストがしっかりと機能することによって、チーム・スカイが今年もパリ~ニースで総合優勝を狙うことは十分に可能となるだろう。やはり強いぞ最強軍団。
イルヌール・ザッカリン(ロシア、28歳)
昨年パリ~ニースでは、クイーンステージと言われたラ・マドーヌ・デュテル山頂フィニッシュを制覇。そのまま総合4位でレースを終えた。
そしてこの辺りから彼の名が注目され始めた。ジロ・ディタリアでは終盤まで総合上位をキープ。第19ステージで大クラッシュを経験し、悔しいリタイアに終わるも、そこからすぐさま復帰し、ツール・ド・フランスではパンタノやマイカを下してステージ優勝を決める。
今年はジロと、そしてブエルタの出場を決めている。それはすなわち、グランツールにおける総合表彰台を本気で目指すということを意味しているはずだ。その意味で、このパリ~ニースでも、総合表彰台を、いや、それこそ総合優勝を目指すつもりでいたいところだ。
イルヌール・ザッカリン。本当の飛躍を見せる年になれるか。
今年のアブダビ・ツアー第3ステージ「ジャベルハフィート」山頂フィニッシュで、わずかの差でルイ・コスタに敗れたザッカリン。しかし今年の足の調子の良さをしっかりと見せつけてくれた。
ヨン・イサギーレ(スペイン、28歳)
今年からバーレーン・メリダに移籍。昨年パリ~ニース総合5位。
今期ここまでも決して調子は悪くない。コンタドールやプールス、バルベルデといった今大会でも活躍が期待される選手たちと共に出場したブエルタ・ア・アンダルシア(ルタ・デル・ソル) でも、第1、第2ステージを上位グループと共にゴールするなど、総合上位で争える足をしっかりと見せつけていた。
だが、個人TTとなる第3ステージで、謎のリタイア。以降、姿を見せておらず、今回のパリ~ニースが復帰戦となる、はず。
本来、TTは得意な部類。とくに今回の第4ステージ「登りフィニッシュTT」は本人の特性を十分に活かせそう。また、昨年のツール・ド・フランスで下りの強さを発揮した彼にとって、第5ステージと第7ステージの下りは勝利の鍵となりそう。登りも、昨年のクイーンステージ9位とそこまで悪くない。
今年はワールドツアーのステージレースで総合上位をどんどん狙っていきたい。その意味で今回のパリ~ニースは結構重要な出発点となる。
トニー・ギャロパン(フランス、29歳)
大穴? いや、今年のギャロパンは結構調子がいい。ヴォルタ・アン・アルガルヴェでは総合3位。そして総合2位となったエトワール・ドゥ・ベセージュでは、第5ステージの個人TTで優勝したのだが、ここが今回のパリ~ニース第4ステージと似た、「激坂含みの登りフィニッシュTT」というレイアウトなのだ。総距離もベセージュ11km、パリニース14kmと似通っている。
まあ、それでも、やはり、総合表彰台というのは難しいかもしれないが――第6ステージや第8ステージは彼好みのレイアウトだし、ステージ優勝というのも狙っていけるかもしれない。そろそろまた大活躍を期待したいフランス人である。あとバルギルとか。
トニー・ギャロパンと言えば美人の奥さん。楽しそうな家での練習風景である。ぐぎぎ。
リッチー・ポート(オーストラリア、32歳)
この辺りは大本命。昨年総合3位。今年はツアー・ダウンアンダーで総合優勝と、昨年以上に良いコンディションで臨むことに。もちろん最大のライバルはコンタドール。昨年のトーマスのような走りを、今度はポートがしっかりと再現できるかどうか。その意味で、第7ステージ山頂フィニッシュでの勝利は欠かせないところだろう。
個人TTでコンタドールを打ち負かせるかどうかも見もの。昨年のツール山岳TTでベルナール・イノー賞を獲得したその力を見せつけてやろう。
今年のウィランガ・ヒルで、昨年以上に強力な登りを見せたリッチー・ポート。今回のパリ~ニース第7ステージのような「長い登り」で同じような突き放し方ができるかどうかはまだ未知数。
アルベルト・コンタドール(スペイン、35歳)
現役引退まで秒読み段階に入ってきたかのように思えるコンタドール。しかしそれを言い出した辺りから、より積極的に、より「魅せる」走りを繰り出しているように思える。それがたとえわかりやすい結果に繋がらなくとも、彼の走りはいつだって我々を魅了してくれている。
今年のブエルタ・アンダルシアでも同様だった。区間優勝も総合優勝もあと一歩のところで逃し続けたものの、終始積極的な走りを見せてくれた。アブダビ・ツアーでも、キンタナのアタックにしっかりと反応し、今のところは調子がいいように思える。
そろそろ本気を出す時期のはずだ。昨年は非常に熱い戦いの末に、わずか数秒の差で届かなかったパリ~ニースの勝利。そう、パリ~ニースの勝利には、ツール・ド・フランスの勝利を導く、魔法のジンクスがコンタドールにはあるのだ。今年こそ。その思いはきっと、誰よりも強いはずだ。
アンダルシアで区間も総合もコンタドールから奪ったバルベルデは今年ともにパリ~ニースに参加する。ここでも最大のライバルとなるはずで、コンタドールにとってはそのリベンジを果たす場でもある。
その他、ロマン・バルデやステファン・クライスヴァイクなどの活躍に期待。
バルデはここまで、若干微妙なシーズン入りをしているので、そろそろ雰囲気を変えていきたいところだ。
サイモン・イェーツもジロを見据えてその調子の確認を行っておきたいところ。
もちろん、相変わらずイケイケなバルベルデ師匠も・・・
注目選手(ステージ)
ナセル・ブアニ(フランス、27歳)
パリ~ニースと言えばブアニ。ここまで、マグヌスコルト・ニールセンやブライアン・コカール、フェルナンド・ガヴィリアなどに敗れて2位・3位続きできている彼が、相性のいいパリ~ニースでシーズン最初の勝利を飾れるか。もちろん、昨年のパリ~ニースで鎬を削ったアルノー・デマールとの一騎打ちは楽しみである。
ただし熱中し過ぎてライバルを殴るなど危険な行為には出ないでね。あと開幕直前に暴力沙汰で病院送りとかにならないでね。
ヴォルタ・ア・バレンシアナでは2度の2位を経験するなど悔しい思いをしたブアニ。パリ~ニースでのリベンジが待たれる。
マイケル・マシューズ(オーストラリア、27歳)
区間2勝、ポイント賞獲得。マイヨ・ジョーヌも第5ステージまで着用。昨年はこのパリ~ニースで最高のシーズン入りを果たし、そのままツール区間優勝も含めた良いシーズンを過ごすことになったマシューズ。今年もこのパリ~ニースからのシーズン入りを狙う。とくに第1ステージは、ゴール前2kmから1kmまで5%程度の登りが用意されたレイアウト。ピュアスプリンターよりもマシューズのような「登れるスプリンター」に最適である。その場合の最大のライバルはおそらくデゲンコルブ、あるいはグライペルとなるだろう。
もちろん今年は、オリカからではなく、チーム・サンウェブから。サンウェブのジャージってどこか真面目な印象があって、「キラキラ」なマシューズが着ると違和感しかないのだが・・・。
昨年のパリ~ニース第3ステージで、ブアニの進路妨害を主張して繰り上げステージ優勝となったマシューズ。実はアルントとは「斜向繰り上げ勝利」仲間。
チームメートのニキアス・アルントも今年調子がいいスプリンター。ピュアスプリントが展開されるであろう第2ステージなどでは彼に委ねられることになるかもしれない。
マグヌスコルト・ニールセン(デンマーク、24歳)
昨年ブエルタで2勝しブレイク。そして今年に入ってからも既に2勝している。今、間違いなく最も勢いのある若手スプリンターの1人である。
勝利しているバレンシアナ第3ステージやクラシカ・デ・アルメリアはともに、起伏の多いステージで、今回のパリ~ニースのスプリントステージも似たようなレイアウトである。相性はいいはずだ。そしてブアニやコカールにはすでに勝っている。あとはキッテル、グライペル、デマール相手に、どこまでの結果を叩き出せるか。
チームメートにも恵まれている。イェンス・ケウケレールは同じく昨年ブエルタで勝利しているスプリンター。ベテランのミヒャエル・アルバジーニは確か、サイモン・ゲランスの発射台なんかもよく務めている選手じゃなかったか?
バレンシアナでブアニを破り勝利するニールセン。なお、オンループ・ヘット・ニウスブラットでも16位と悪くない順位で、今後の北のクラシックなどでも活躍に期待したい。
リリアン・カルメジャーヌ(フランス、25歳)
昨年ブエルタで勝利した、フランスの若き才能。今年もすでに、エトワール・ドゥ・ベセージュで総合優勝を決めている。その意味で、総合順位でも期待したいところだが、とりあえずは第7ステージの登りや、第6・第8での逃げ切りなどに期待したいところ。それで総合10位に入れれば十分の戦果であろう。や、さすがにシカールがエースってことはないだろう、きっと・・・。
昨年ブエルタでの勝利のときは、トマ・ヴォクレールっぽいガッツポーズを決めたカルメジャーヌ。ヴォクレールの後継者として、いつの日か、マイヨ・ジョーヌにも袖を通してほしいところ。
ディエゴ・ウリッシ(イタリア、28歳)
ルイ・コスタと並んでUAEの勝利数稼ぎ頭になるであろう男。今年はここまでGPコスタ・デッリ・エトルスキでの勝利のみ。だがダウンアンダーのウィランガ・ヒル4位など、調子は決して悪くはない。今年は第1ステージの登りスプリントなどでの活躍が期待できそうだ。
ウリッシと言えばジロ、というイメージだが、100周年の今年は現状のところ参戦の意志なし? 本当に?
GPエトルスキでの逃げ切り勝利を決めたウリッシ。今年は世界選手権やヨーロッパ選手権なんかも狙っていきたいところ。
ダニエル・マクレー(イギリス、25歳)
今「勝てる」ブリテンスプリンターと言えば誰だ? マーク・カヴェンディッシュはもちろん。ベン・スウィフトも名前が挙がるだろう。そして3番目に挙げるべき人物は――いやもしかしたら今後は1番手に名前を挙げるべき人物になるかもしれないのは――この男、ダニエル・マクレーである。
ニュージーランド生まれのイギリス人。ブリティッシュスプリンターの例に漏れず、彼もまたトラック出身の選手である。ジュニア時代は、サイモン・イェーツと組んで世界選手権マディソン部門で優勝もしている。ロード転向後は、ツール・ド・ラブニールで区間優勝。そしてツアー・オブ・ブリテンでも、キッテルやカヴェンディッシュ、レンショーなどと競い合って区間6位につけている。それが3年前だ。
昨年からフォルテュネオ・ヴィタルコンセプト入り。そして初出場のツール・ド・フランス第6ステージで、カヴェンディッシュ、キッテルに次ぐ3位に入っている。このときは、クリストフやサガン、グルーネウェーヘンなどを打ち破っているのだ!
ツール・ド・フランスという晴れの舞台で、大先輩カヴェンディッシュの後輪を捉えたシーン。その後ろにいるのは、クリストフ!
そして今年はマヨルカ・チャレンジの緒戦トロフェオ・ポレラスで3位。さらに最終戦トロフェオ・パルマでは、グライペルを退けての見事な優勝。着実に力をつけつつある。
チームは今年もツールへの出場権を獲得。今回のパリ~ニースでもしっかりと活躍し、勢いをつけながら、ツールでの勝利をぜひ、掴み取ってほしい。
他にももちろんマルセル・キッテルやアンドレ・グライペル、そして登りスプリントと言えばデゲンコルブ、さらにはクリストフ、フルーネヴェーヘンなど、強力なスプリンターたちが揃っている。トゥーンスはデゲンコルブのアシストが最優先となるだろうが、昨年のパリ~ニースでもいい走りを見せていただけに期待したいところはある。
登りでも、昨年区間優勝を遂げているアレクセイ・ルツェンコ、ダニエル・マーティン、あとはダニエル・ナヴァーロなども、逃げでいい走りを見せてくれるかも。ピエール・ローラン、ドンブロウスキー、タランスキーのキャノデ肩透かし3人衆はどうなるかな??? むしろスラフテルやウッズの方が結果出したりして・・・
ステージ詳細
第1ステージ ボワ・ダルシー~ボワ・ダルシー(148.5km)
基本的には平坦ステージなのだが、問題となるのがゴール前ラスト2kmから始まる平均勾配5%程度の登り。残り1km地点で一度下るのだが、最後もごくわずかに登っている。
キッテルなどのピュアスプリンターは実力を発揮しづらいレイアウトと言えるだろう。最も勝率が高いのはグライペルやデゲンコルブ、マシューズ、クリストフなどの「登れるスプリンター」。その中でもここはデゲンコルブを優勝候補に挙げておきたい。
とはいえ1kmの登りさえ超えてしまえば基本は下り基調だし、そこまでがっつりと登りスプリンター向きとは言えないかもしれない。パワー系よりも、軽量系が有利になるスプリントかもしれない。
第2ステージ ロシュフォール=アン=イブリーヌ~アミリー(195km)
第1ステージと違って完全に平坦なスプリントステージ。ごくわずかに下ってもいて、ハイスピードなスプリントバトルが展開されるだろう。
こうなると、今最も強い平坦スプリンター、マルセル・キッテルが黙ってはいないだろう。ほかにもクリストフ、フルーネヴェーヘンなど・・・。
だがここは、やはりこの男、ナセル・ブアニに決めてもらいたい。ただし興奮しすぎて降格したり失格されたりしないでね。
第3ステージ シャブリ~シャロンシュルソーヌ(190km)
ワインの産地で有名なシャブリを出発し、ブルゴーニュ地方を南下するステージ。基本的には平坦のフィニッシュだが、ポイントとなりうるのはゴール手前25kmの地点にある2級山岳「シャレシー」。地図を見ても農村の中の小高い丘、って感じで大した登りでないようにも思えるのだが、キッテルなどがここで遅れて勝負に絡めない、となることは十分にありうるだろう。
そうなると戦いはクラシック慣れしているスプリンターたちに限られてくる。クリストフや、デマールや、マシューズや、あるいはこのあたりで、ダニエル・マクレー(フォルテュネオ・ヴィタルコンセプト)が華麗な1勝を成し遂げてくれるかもしれない。期待したいところだ。
第4ステージ ボジュー~モン・ブルイイ(14.5km) 個人TT
フィニッシュ地点のモン・ブルイイは、昨年パリ~ニースの総合争いの鍵として設定された「ボジョレーの丘」であったが、このときは悪天候によりステージキャンセルとなった。今年はそれが復活。しかも、ラスト1kmの平均勾配が9%を超えるこの激坂2級山岳が、今回はタイムトライアルのフィニッシュ地点として設定された! たった14kmのTTでありながら、総合争いに大きな影響を与えうるステージとなったのだ。
ここで最も勝利の可能性が高い選手はアルベルト・コンタドールであろう。昨年もこのステージでの勝利を狙っていた選手だ。そうでなければリッチー・ポートか。総合系のTTが強いオールラウンダーが勝利を狙ってくることになるだろう。
それ以外には、昨年ジロの山岳TTで勝利したステファン・クライスヴァイク。単距離とはいえトム・デュムランを下した実績のあるマイケル・マシューズ。あるいはジュリアン・アラフィリップなんかも、適性があるかもしれない。トニー・ギャロパンも可能性があるだろう。
トニー・マルティンには、ちと厳しいレイアウトな気がする。あとは、TTが苦手な総合狙いの選手が、どこまでタイムを落とさずにすむか。そういう意味で、平坦TTよりもダメージが少なくて助かるといったところか。
第5ステージ キャンシ=オン=ボジョレー~ブル=デ=ピアージュ(199.5km)
アップダウンは激しいが、基本的には平坦集団スプリントフィニッシュになるであろうステージ。ただしラスト500mがわずかに登っている。これくらいの登りでもキッテルは全然ダメになる印象が・・・今回のパリ~ニースは中東に比べてキッテルが活躍できないステージばかりである。
だからグライペル、デゲンコルブ、マシューズなどに期待。ここは、アルガルヴェでもデゲンコルブを打ち破っているグライペルに1票を入れておこう。デマール、フルーネヴェーヘンもそのとき良い走りをしていたので、その辺りがくる可能性もある。やはりデマールも、パリ~ニースで1勝はしておきたいしね。
第6ステージ オバーニュ~フェイヨンス(193.5km)
いよいよ舞台は南仏へ。マルセイユ近郊のオバーニュを出発したプロトンは、ラスト50kmで2つの1級山岳を超えて、最後は2級山岳山頂フィニッシュへ。
総合争いも勃発するだろうが、逃げ切りによる勝利というのも十分にありうる。何しろスタート直後にも、大逃げにはぴったりな登りが待っているのだから・・・ハナからステージ狙いで巧みにタイムをロスしてきた逃げ巧者たちの出番である。ピエール・ラトゥールとか、アクセル・ドモンとか、ハリンソン・パンタノ、スペルディア、ルツェンコ、カンゲルト、ドンブロウスキー、シシュケヴィチュス、シルヴァン・シャヴァネル・・・その中で、山岳賞と合わせて狙ってきそうなのがトーマス・デヘント(ロット・ソウダル)。そうなると黙っていられないのが昨年の山岳賞アントワーヌ・デュシェーヌ(ディレクトエネルジー)。山岳賞といえばオマール・フライレ(ディメンション・データ)も忘れてはならない。今回のTTでは実力が発揮しきれなかったトニー・マルティンが大逃げという可能性も?
ラスト1kmは平均勾配10%弱。間違いなく総合争いも白熱するだろう。
第7ステージ ニース~クイヨール峠(177km)
パリ~ニース2017のクイーンステージは間違いなくこのステージ。1300m登る1級山岳を超えたあと、さらに1000m以上登る1級山岳でフィニッシュ。7%前後の勾配をひたすらだらだらと登る16kmのロングクライムは、インターバル走行を得意とするコンタドールやポートを苦しめることになるかもしれない。むしろここで活きてくるのは、ニエベやプールスといった安定の山岳アシストを揃えているチーム・スカイ。昨年もトーマス以上の登坂力を見せたセルヒオ・エナオが、耐えて耐えて耐えたうえでのカウンター的なアタックで他のライバルを突き崩せるかどうか。
その他、昨年クイーンステージで勝利したザッカリンや、クライスヴァイク、あるいはディエゴ・ウリッシあたりが意外な登坂力を見せてくれるか? バルデ、バルベルデあたりの底力も見たいところ。
山岳賞狙いの選手たちも、せめてサン・マルティン峠までは残っていたい。これもいよいよ趨勢が決まってくる頃だろう。
ラスト15kmはだらだらと7%前後の登りが続く。実力のないクライマーは簡単に引き離されてしまうだろう。まさに頂上決戦が繰り広げられるステージだ。
第8ステージ ニース~ニース(115.5km)
ペイユ峠と名物エズ峠を越えて下りフィニッシュと、昨年最終ステージとほぼ変わらぬレイアウト。しかし昨年よりもさらに短くなったコースで、ハイスピードな山岳バトルが展開されるだろう。
前日に決まったマイヨ・ジョーヌ着用者がこの激しいステージでどこまでそれを守り切れるか。昨年は屈指の名勝負が繰り広げられたこのラスト60kmで、今年はどんなドラマが待ち受けているか今から楽しみだ。
たとえばもし、このときコンタドールがマイヨ・ジョーヌを着れていなかったとしたら・・・彼は間違いなく、勝負に出るだろう。最後の下りは今年のアンダルシア第1ステージをイメージすると、そのとき勝利を争ったバルベルデ、プールス、ヨン・イサギレ、コンタドール、バルギルあたりが前に出てくるかもしれない。最後に勝ちを掴むのは誰だ!?
表彰台予想
総合優勝:アルベルト・コンタドール(トレック・セガフレード)
結局はこの人かな、とも思ってしまう。とくにTTと、クイーンステージのレイアウトは、コンタドール向きのように思える。ただ長い登坂で息を切らすことも多いので、そこだけが不安だが・・・。昨年のリベンジを果たし、いい形でツールを迎えてほしい。
総合2位:ステファン・クライスヴァイク(ロットNLユンボ)
登りを含んだTTと、長い登りへの耐久力を見込んで、期待を込めてこの順位に。グランツール総合表彰台に向けて、飛躍のきっかけにしてほしい。
総合3位:リッチー・ポート(BMCレーシング)
バルベルデと悩んだが、ここはダウンアンダー総合優勝のポートに1票を入れておく。総合優勝までにはちょっと、届かないかな、くらいの位置に・・・。
山岳賞:トーマス・デヘント(ロット・ソウダル)
山岳賞と言えばこの人。貪欲に狙いにいけばしっかりと獲り切る実力はあるだろう。宿敵のマイカもいないし、今大会出場選手の中では頭一つ抜けた山岳エスケープ力を持っているはずだ。昨年山岳賞のアントワーヌ・デュシェーヌがどう出てくるか・・・。
ポイント賞:ジョン・デゲンコルブ(トレック・セガフレード)
スプリントを狙えそうな4ステージのうち、2ステージは多少の登りフィニッシュ。そして1ステージはゴール手前25kmに山岳ありと、ピュアッピュアなスプリンターには少し厳しいステージが揃っていると思われる。そのためキッテルは今回は比較的おとなしめで、どちらかというとこのデゲンコルブか、グライペルか、昨年ポイント賞のマシューズあたりが上位に入ることだろう。
その中でデゲンコルブを選ぶのは一つは願望である。ドバイ・ツアーでの勝利は興奮した。アルガルヴェでの敗北は悔しかった。辛いシーズンを乗り越えたデゲンコルブには、ぜひ再び栄光がもたらされてほしいものだ。
新人賞はないが、25歳以下で注目したい選手としては昨年ドーフィネ新人賞のジュリアン・アラフィリップ、昨年パリ~ニース総合7位のサイモン・イェーツ、そしてリリアン・カルメジャーヌにも密かに期待しておきたい。
そしてなんだかんだ言って最も注目している選手はダニエル・マクレーである。
この大舞台での1勝を見事に飾り、ツールにおける区間優勝への、大きな弾みとしていただきたい。
がんばれマクレー!