Class:ワールドツアー
Country:アラブ首長国連邦
Region:ー
First edition:2019年
Editions:1回
Date:2/24(日)~3/2(土)
昨年まで2月頭に開催されていたドバイ・ツアー(2.HC)と、昨年までほぼ同時期に開催されていたアブダビ・ツアー(2.WT)とが合併して今年からスタートするステージレース。
実質的にはアブダビ・ツアーの後継レースと言えるが、期間がそれまでの4~5日間から7日間に増え、チームタイムトライアルの導入や山頂フィニッシュが2つになるなど、よりワールドツアーに近いクオリティへと進化を遂げている。
もちろん、中東マネーと主催者RCSスポルト(ジロ・デ・イタリア等の主催者)の影響力でもって集めた出場選手も非常に豪華。
ヴィンツェンツォ・ニバリ、アレハンドロ・バルベルデ、プリモシュ・ログリッチェ、リッチー・ポート、トム・デュムランなど、どこのグランツールかといったところである。
スプリンターについてもカレブ・ユアン、マーク・カヴェンディッシュ、エリア・ヴィヴィアーニ、フェルナンド・ガビリア、アレクサンドル・クリストフ、マルセル・キッテルなど、まさに頂上決戦といった様相である。
そんな、今年序盤の最大の注目所といえる今大会、すでに述べたようにコースについても大きく進化を遂げている。
果たして今年はどんなスペクタルなコースが設定されているのか。
しっかりと予習していこう。
- 第1ステージ アル・フダリアット・アイランド~アル・フダリアット・アイランド 16km(TTT)
- 第2ステージ ヤス・アイランド~アブダビ・ビッグフラッグ 184km(平坦)
- 第3ステージ UAE大学~ジュベル・ハフィート 179km(山岳)
- 第4ステージ パーム・ジュメイラ~ハッタ・ダム 205km(中級山岳)
- 第5ステージ フラッグ・アイランド~ホール・ファカン 181km(平坦)
- 第6ステージ アジュマーン~ジュベル・ジャイン 180km(山岳)
- 第7ステージ ドバイ・サファリパーク~シティ・ウォーク 145km(平坦)
第1ステージ アル・フダリアット・アイランド~アル・フダリアット・アイランド 16km(TTT)
新創設レースの開幕ステージは、オールフラットなレイアウトのチームタイムトライアル。急カーブも序盤の2か所くらいで、とくに後半は、ハイスピードな展開が予想される。
アル・フダリアット・アイランド(読み方合ってる?)は、UAEの首都アブダビの最近オープンしたばかりの埋め立て地で、自転車も借りられる無料のサイクリングロードも整備されている。今回のコースはこのサイクリングロードを使用したものだと思われる。
海に面して遮るものも少ない土地だけに、横風や砂が浮いてしまっているなどのトラブルはありえる。場合によっては危険と判断されてのニュートラル措置(この日の結果は総合タイムに影響しない)なども考えられるかもしれない。
例年の優勝候補はBMCレーシングチームだったが、今年はそのチームがバラバラになってしまい、後継のCCCチームが同じような実力を発揮するのは難しいだろう。となれば、クリス・フルームとミカル・クウィアトコウスキーを連れたチーム・スカイや、トム・デュムランにウィルコ・ケルデルマンのチーム・サンウェブ、あるいは世界チャンピオンのローハン・デニスとヴィンツェンツォ・ニバリが率いるバーレーン・メリダが台頭してくるかもしれない。
第2ステージ ヤス・アイランド~アブダビ・ビッグフラッグ 184km(平坦)
第1ステージに引き続き、アブダビ市街地を利用したオールフラットなスプリンター向けステージ。スタート地点のヤス島は、昨年までのアブダビ・ツアーでもコースに使用していたF1の「ヤス・マリーナ・サーキット」や、「フェラーリワールド」などが存在する島。今回はサーキットはコースに組み込まれてはいないようだ。
123mもあるという巨大な「ビッグフラッグ」が立てられたゴール地点は、昨年の第3ステージでも使用された。そのときはサンウェブのフィル・バウハウスがマルセル・キッテルを僅差で打ち破った。
今年もピュアスプリンター同士のわずか数㎝差での戦いが繰り広げられそうだ。
第3ステージ UAE大学~ジュベル・ハフィート 179km(山岳)
アブダビ首長国の東の端、アブダビ・ツアー定番のクイーンステージであったジュベル・ハフィート山頂フィニッシュ。途中は全て平坦なので、最後の登りの一発勝負となる。
登坂距離10.8km、平均勾配6.6%。全体を見ると緩やかだが、とくに残り6.8kmから2.8kmあたりにかけての平均勾配は8~9%に達し、残り2.8km地点の瞬間的な最大勾配は11%にも達する。
昨年はラスト4kmでミゲルアンヘル・ロペスがアタック。これにアレハンドロ・バルベルデが喰らいついて、最後は得意のスプリントでロペスを打ち破った。
クライマーの実力が鮮やかに出るステージだけに、シーズン序盤の足の調子を確認するにはもってこいだろう。
第4ステージ パーム・ジュメイラ~ハッタ・ダム 205km(中級山岳)
アブダビでの3日間を終え、ここからドバイに。ドバイ・ツアーの名物であるパーム・ジュメイラとハッタ・ダムを一度に味わえるある意味豪華なステージだ。その2つを結ぶので当然距離も長い。
ハッタ・ダムの登坂距離は1kmだが、進むにつれてその勾配は厳しくなっていく。最後の100mの平均勾配は14%、そしてゴールラインの直前は17%にも達するという。昨年は19歳のアメリカ人ブランドン・マクナルティがひたすら逃げ続けたが、このハッタ・ダムの残り「50m」でソンニ・コルブレッリに捕まえられてしまった。ついでマグナス・コルトニールセンやティモ・ローセンといった、登りにも強いスプリンターたちが上位を占めていた。
今年も激坂を得意とするスプリンターたちが鎬を削るのだろうか。しかし、いつものドバイ・ツアーと違い、今回はクライマーも多く出場しているため、上位入賞者のラインナップは例年とは大きく変わる可能性も。
第5ステージ フラッグ・アイランド~ホール・ファカン 181km(平坦)
アラブ首長国連邦が位置するアラビア半島の「角」を、ペルシャ湾に面した西の端シャールジャ首長国から、オマーン湾に面した東の端フジャイラ首長国まで横断する。昨年のドバイ・ツアー第3ステージと似ている構成だが、今回はフジャイラについたあとさらに海岸線を北上し、ホール・ファカンに辿り着く。
ルートの大半が砂漠のため、全体的にはフラットなレイアウトで、再びスプリンターたちに出番が回ってくる。昨年のフジャイラフィニッシュとなった第3ステージではマーク・カヴェンディッシュが勝利していた。ブエルタ・ア・サンフアンでははっきりとその足を失っているところを見せてしまった彼が、今年再び勝ち星を挙げることはできるのか。
第6ステージ アジュマーン~ジュベル・ジャイン 180km(山岳)
UAEに新たに生まれた「もう1つの山頂フィニッシュ」。アジュマーン首長国から北上し、アラブ首長国連邦の北の端ラアス・アル=ハイマ首長国に向かう。「角」の先っぽがこんなにも山岳地帯だったとは・・・。
登坂距離は20km。平均勾配は5%。1000m以上もの標高を登る本格的な山頂フィニッシュとなっている。幅も広く、勾配が強烈というわけではないが、じっくりと登れるクライマータイプでなければ先頭に残れないのは確かだろう。
急勾配でないという点で純粋なクライマーだけでなくオールラウンダータイプにも有利なレイアウト。チーム・サンウェブのトム・デュムランやウィルコ・ケルデルマン、ユンボ・ヴィスマのプリモシュ・ログリッチェ、チーム・スカイのミカル・クウィアトコウスキーなどに注目だ。
第7ステージ ドバイ・サファリパーク~シティ・ウォーク 145km(平坦)
7日間にわたるUAEツアーの最終日は、ドバイ・ツアーらしい平坦スプリントステージ。エーススプリンター同士のガチンコの対決が見られることだろう。エリア・ヴィヴィアーニ、フェルナンド・ガビリアの頂上対決に、カレブ・ユアンや復調気味のマルセル・キッテル、昨年ジロ3勝のサム・ベネットなどがどこまで喰らいつけるか。
そして、ヤコブ・マレツコやダニエル・マクレー、クリストファー・ハルヴォルセン、マックス・ワルシャイド、そしてマッテオ・モスケッティなど、台頭しつつある伏兵たちの驚きのスプリントにも期待したいところだ。
ここまで見てきたように、まさにアブダビ・ツアーとドバイ・ツアーの融合といったところで、それぞれの見所を贅沢に盛り込みながら、かつ山頂フィニッシュが2回。スプリントステージも複数用意され、実にバランスの良い大会となっている。
今まではステージ数の少なさや勝負所が1個しかなかったことなどから、出場選手は豪華だけれどトップレースとまでは言い難かったアブダビ・ツアー。
しかし今回、この非常にバランスの取れたステージ構成を用意したことによって、今後、2月の超重要レースとしてその存在感を高めることになりうるかもしれない。
その意味でも、第1回となる今回は注目して見ていきたい。