いよいよ開幕するツアー・オブ・カリフォルニア。
出場する19チーム133名の選手の中から10名の注目選手をピックアップしていく。
カリフォルニアは「若手の登竜門」。毎年、将来を嘱望される若手有力勢がこの大会で台頭していく。
今回も単純に実力者だけでなく、数名の若手選手もピックアップしてみた。きっと活躍するに違いない彼らの走りにしっかりと注目していこう。
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スプリンター勢
ペテル・サガン(スロバキア、29歳)
ボーラ・ハンスグローエ(BOH)所属
ツアー・オブ・カリフォルニアはプロデビュー以来一貫して出場を続け、8年間で数え上げたステージ勝利数は16回。総合優勝が1回に、ポイント賞も6回。まさにキング・オブ・カリフォルニアである。
しかし、昨年は初めて勝利なし。また、今年もここまで1勝しかできておらず、調子は明らかに悪い。モチベーションが落ちているような気もするが、本人のコメントは割と飄々としていたそんな感じを与えないものではある。
心配は杞憂なのか。それともこのカリフォルニアでも勝てないくらいやはり深刻なのか。
この1週間でしっかりと確かめていきたい。
マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、34歳)
チーム・ディメンションデータ(TDD)所属
彼もまた、カリフォルニアと相性の良いスプリンターだ。その勝利数は10を数える。特に今年も第1ステージの舞台となっているカリフォルニア州州都サクラメントのステージとの相性はよく、通算4勝している。
典型的なピュアスプリンターであるカヴェンディッシュにとって、カリフォルニアの広く真っ直ぐな道路はその実力を発揮しやすく、また強力なチームメートの力も借りやすいというのが勝利数の秘訣だろう。
そんなカヴェンディッシュも、年を重ねるごとに勝てなくなりつつある。2016年のツール4勝がピークだったかのように、今年に関しては年初のブエルタ・サンフアンで、スプリント開始位置は完璧だったにも関わらず、その後ずるずると番手を下げていくという、決定的に力不足の瞬間を見てしまった。
もうカヴは終わったのか。
しかし彼は執念で再び戻ってきた。ツアー・オブ・ターキーではステージ3位を記録して、まだまだ戦えることを示した。今回のカリフォルニア開幕直前には、2年間彼を悩ませ続けてきた病気が当面の間は発症しないことを確認したと告げていた。
そしてカヴェンディッシュはまた、一線を退き休養に入ることを決めたキッテルに対するメッセージを残した。かつて自らのシャンゼリゼ連覇記録を止めた最大のライバルの1人。彼よりも早く立ち止まることを決めた最大のライバルを思いながら、マン島ミサイルはなおもチャレンジを続ける。
なお、チームメートのヤンセファンレンズバーグも才能豊かなアフリカンスプリンター。もしもカヴがやはり力を出しきれない場合は、その代役を務めることになるだろう。
リック・ツァベル(ドイツ、26歳)
チーム・カチューシャ・アルペシン(TKA)所属
ツール・ド・フランス6年連続ポイント賞などの偉業を残した伝説のスプリンターの息子。そして、かつてはアレクサンデル・クリストフの、最近ではマルセル・キッテルの発射台としてキャリアを重ねてきた男。
その実力は間違いなかった。たとえば2017年のエシュボルン・フランクフルト。クリストフをリードアウトするツァベルは、そのままデゲンコルプらの後続を突き放し、クリストフと共にワンツーでゴールに飛び込んだ。その年のカリフォルニアでも、モロベイの登りスプリントで、クリストフに先行して2位でゴールしていた。
しかし昨年、チームがクリストフの代わりにキッテルを迎えたあと、新エースとの相性はイマイチだった。結果としてチーム自体もリザルトを残せない中、今年、キッテルが急遽出場を取りやめたツール・ド・ヨークシャーで、鮮烈なるスプリント勝利。そしてキッテルのチーム離脱。ずっとアシストだと思われていた男が、突如としてエースとして輝くチャンスが訪れた。
この機会を逃すわけにはいかない。奇しくもこのタイミングで父がチームに合流。期待を結果に変えられるか。
新たなツァベルの伝説が始まる。
ジャスパー・フィリプセン(ベルギー、21歳)
UAEチーム・エミレーツ(UAD)所属
思えば、この若者に注目するきっかけになったのが昨年のこのカリフォルニアだった。最初のスプリントステージで、先輩たるガビリアに対して果敢に食ってかかったその貪欲さは目を瞠るものがあった。ちょっとやり過ぎてそのあとガビリアに怒られたわけだが、その1年後にダウンアンダーで、今度はユアンにガンガンやられたことがきっかけでステージ勝利を手に入れたのは数奇なものだ。ユアンの降格を聞いて本人はそんなひどいことされたとは思ってないと発言したらしいが、そりゃ以前は自分がやってたことだからなー。
取りも直さず、この年齢で驚異的な才能の持ち主であることは間違いない。ダウンアンダーだけでなく、アルガルヴェではアッカーマンの前で3位ゴールしたり、ノケーレ・コールスでもアッカーマンに食らいつき3位ゴールしたり、トップスプリンターにはまだなりきれていないが、準トップの位置にいるといって過言ではない。当然今大会の優勝候補の1人だ。
マックス・ヴァルシャイド(ドイツ、26歳)
チーム・サンウェブ(SUN)所属
昨年のカリフォルニア最終日はほんのごく僅かの差でガビリアに敗れた。昨年はヨークシャーやミュンスターラント・ジロで勝利。今年はダウンアンダーやシュヘルデプライスで2位。着実に成長しつつある、サンウェブのセカンドエーススプリンター。
今年はブエルタ・ア・エスパーニャでエースを約束されているという。大舞台に向けて、まずは幸先の良いワールドツアー初勝利を遂げておきたい。
総合有力勢
リッチー・ポート(オーストラリア、34歳)
トレック・セガフレード(TFS)所属
かつてはクリス・フルームの最高の右腕。登坂力もTT能力も一級品で、1週間のステージレースでは無類の強さを発揮する。その獲得したタイトルは数知れず(パリ〜ニース、ツール・ド・ロマンディ、ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ、ツール・ド・スイス、ツアー・ダウンアンダー等)。しかしグランツールだけは未だ表彰台すら手に入れていない。運の悪さも特徴で、ここ2年のツール・ド・フランスは共に第9ステージでバイクを降りている。
今年のポートはすでにして不運である。ダウンアンダーこそウィランガ・ヒル6連覇というありえない成績を叩き出すも、その後は気管支炎により全く振るわず・・・今回ようやく復調したリッチーが調整のために選んだのがこの、初出場となるカリフォルニアだ。
実力だけならウランと並び間違いなく優勝候補。ただそう簡単にいかないのがカリフォルニアの常。TTがあれば間違いなさそうなのだが・・・
勝てなくとも、悪くない結果となることを願う。
タデイ・ポガチャル(スロベニア、21歳)
UAEチーム・エミレーツ(UAD)所属
昨年のツール・ド・ラヴニール覇者。そして、今年早速ヴォルタ・アン・アルガルヴェを制し、イツリア・バスクカントリーでも連日積極的な走りを見せての総合6位。その才能を遺憾無く発揮しつつあるスーパールーキーだ。
こういう選手が頂点に立ちうるのがカリフォルニアだ。とはいえさすがにまだ21歳。いくらなんでも・・・とは思いつつ昨年のベルナルの例もあるので。
比較的TTが得意な彼にとってTTがないのは不利な点だが、それはポートやヴァンガーデレンにも言えることなので、あとはもう純粋に、マウント・バルディ決戦で最も強い足を見せるだけである。
なお、カリフォルニアの新人賞は23歳以下対象であり、総合優勝を手に入れられなかったとしても、新人賞については筆頭候補であることは間違いない。
フェリックス・グロスチャートナー(オーストリア、26歳)
ボーラ・ハンスグローエ(BOH)所属
昨年のパリ〜ニースで強力なアシストをこなしつつ総合10位に入り注目し始めた。続くジロではチェルヴィニア山頂フィニッシュで3位。そして今年、ついにツアー・オブ・ターキーで総合優勝。
とはいえ層の薄い中での総合優勝。これでもって彼がチームの筆頭エース候補というには早すぎる・・・と思っていたらツール・ド・ロマンディではブッフマンより良い走りをしての総合4位。実力を示した。
今年はブエルタを走る予定とのことだが、場合によってはツールでブッフマンを支える役割も悪くないのでは。とりあえず、今回のロマンディはさらに評価を高めるうえで重要ななレースになるのは間違いない。
ブランダン・マクナルティ(アメリカ、21歳)
ラリーUHCサイクリング(RLY)所属
昨年のドバイ・ツアーで「ラスト50mまで逃げた男」。その正体はアメリカで最も将来を嘱望された総合系ライダーであり、昨年のカリフォルニアではサウスレイクタホを4位でゴールし、総合でも7位。ツール・ド・ラヴニールでは山頂フィニッシュでソーサやポガチャルと並ぶ力を見せつけた。
今年はとりあえずジロ・ディ・シチリアで総合優勝。とはいえ第3ステージで得意の大逃げをかまし、エトナ山ステージではなんとかその貯金を切り崩しての勝利だった。
まだまだ、期待に十分に応える走りではない。今回のカリフォルニアで少なくとも表彰台は狙っていきたいところ。
来期のチームは未定。今年はとりあえず母国チームで経験を積むことを選択した彼が、もしかしたら来年はいよいよヨーロッパに飛び立つかも知れない。その際の条件をより有利にするためにも、今回は重要なレースだ。
セルヒオ・イギータ(コロンビア、22歳)
EFエデュケーション・ファースト(EF1)所属
コロンビアの新たな才能。スプリンターでありながら、パンチャーのようでいて、そしてクライマーでもある男。才能の発掘に定評のあるヴォーターズGMが獲得しつつ、今シーズンの前半は経験を積ませるためにコンチネンタルチームのフンダシオン・エウスカディに在籍。そこでもバレンシアナ1周で新人賞、アンダルシア総合7位など、コンチネンタルチームとは思えない活躍を見せる。
そんな彼がついにEF入りを果たして迎える最初のレースがこのカリフォルニア。パンチャーにも総合優勝のチャンスがあるカリフォルニアは、彼が総合上位を狙うチャンスが十分にあるレースと言える。
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