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ツアー・オブ・カリフォルニア2019 コースプレビュー

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Class:ワールドツアー

Country:アメリカ

Region:カリフォルニア州

First edition:2006年

Editions:14回

Date:5/12(日)~5/18(土)

 

北米最大のステージレース、ツアー・オブ・カリフォルニア。

今年はヨーロッパの各レースがシーズン通して後ろ倒しとなっているため、ジロの開幕とほぼ同時にスタートするという、不思議な感覚に襲われるタイミングでの開催。

アメリカならではの広い道路で繰り広げられるスプリントは面倒なもののない純粋な力と力のぶつかり合いになりやすく、ジロをパスしてツールを睨むトップスプリンター同士の争いが楽しめる。

総合勢はそこまで難易度の高いステージが多くないこともありグランツール総合優勝争いをするような選手は集まらないが、その分若手のこれから台頭する選手たちによる争いが繰り広げられ、次代のエースを輩出する「若手の登竜門」としての役割を果たしている。

 

過去の総合優勝者は以下の通り。

  • 2013年:ティージェイ・ヴァンガーデレン
  • 2014年:ブラッドリー・ウィギンス
  • 2015年:ペテル・サガン
  • 2016年:ジュリアン・アラフィリップ
  • 2017年:ジョージ・ベネット
  • 2018年:エガン・ベルナル

 

上記総合優勝者以外にもタオ・ゲオゲガンハートダニエル・マルティネスなどの若手の有力勢が台頭してきているレースでもあり、総合勢以外でも昨年はショーン・ベネットやジャスパー・フィリプセンなどが活躍を見せている。

昨年の若手の活躍については以下の記事を確認のこと。

www.ringsride.work

 

今年も有力な若手選手が集まってきているが、それについては次回の注目選手紹介で取り扱うとして、今回はコースプレビューである。

 

そのコースが、今年のカリフォルニアはいつもと違う。

 

カリフォルニアと言えば、必ず20km程度の中距離個人TTがあることが勝敗の重要なポイントとなってきた。

過去の優勝者を見てみても、山岳ではわずかに競り負けつつも、個人TTのタイム差でこれをひっくり返すというパターンは多い。2015年にアラフィリップにTTで19秒差をつけたサガンや、2017年にTTでマイカを逆転したベネットなどである。

 

しかし、今年はその伝統的な中距離TTが外された。

代わって用意されたのがマウント・バルディとサウスレイクタホ。それぞれその年のクイーンステージとして登場し、同じ年に登場することのなかったこの2つの山頂フィニッシュが、今年は同時に出現。さらにはマウント・ハミルトンも登場する。

すなわち、例年以上に非常に「クライマー有利」なコースレイアウトとなっているのだ。

 

今回はそんなカリフォルニアの全7ステージのプロフィールを解説。

ジロに負けない熱い戦いを繰り広げるカリフォルニアをしっかりと予習していこう。

 

 

 

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第1ステージ サクラメント~サクラメント 143km(平坦)

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2017年から続く「オールフラットステージでの開幕」。そしてカリフォルニア州都サクラメントでのこのスプリントステージはほぼ毎年の恒例行事となっている。

2017年のサクラメントの覇者、マルセル・キッテルは休養に入った。2018年のサクラメントの覇者、ガビリアはジロに出場している。しかし2011年と2014年~2016年の覇者である「キング・オブ・サクラメント」のマーク・カヴェンディッシュはスタートリストに名を連ねている。確かに今年、いよいよ限界が来たように感じられるカヴェンディッシュ。しかし先日のツアー・オブ・ターキーでは3位に入り、まだその輝きが完全には潰えていないことを証明してみせた。チームプレゼンテーションでも晴れ晴れしい笑顔を浮かべており、もしかしたら再び「王」がこの街に凱旋する瞬間を見ることができるかもしれない。

Embed from Getty Images

 

その他の有力勢はハルヴォルセン(イネオス)、ファンポッペル(ユンボ・ヴィズマ)、フィリプセン(UAE)、デゲンコルプ(トレック)、バウハウス(バーレーン)、ツァベル(カチューシャ)、ブアニ(コフィディス)、ヤコブセン(ドゥクーニンク)、サガン(ボーラ)、ヴァルシャイド(サンウェブ)、マケイブ(アメリカ選抜)など多数。

その中で個人的には、今大会からEFエデュケーション・ファーストに合流する元フンダシオン・エウスカディのセルヒオ・イギータに注目したい。とはいえ彼はスプリンターとはいえもはやクライマーなので、さすがにこの日は活躍はない、かなぁ?

  

 

第2ステージ ランチョ・コルドバ~サウスレイクタホ 194.5km(山岳)

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カリフォルニア州とネバダ州の州境に位置するレイク・タホ。その南湖畔を意味するサウスレイクタホは、標高2000m超えのカリフォルニア名物山頂フィニッシュとなっている。

昨年はエガン・ベルナルがその年2度目の優勝を飾り、総合優勝を決定的なものにしたステージ。

Embed from Getty Images

 

しかし、今年のサウスレイクタ登坂はルートが少し異なる。昨年はフィニッシュ手前に1級山岳(登坂距離12.7km、平均勾配6.1%)が設定されており、ここが実質的な勝負所となったものの、今年はそこは通過せず。

よって、獲得標高こそ大きいものの、全体的にはそこまで厳しすぎず、場合によってはある程度の大きさの集団のまま、最後の3級山岳(登坂距離1.2km、平均勾配6.1%)の山頂フィニッシュを迎えることになるかもしれない。

とはいえ、総獲得標高は4500mと、厳しいことは間違いない。

疲弊した中で迎える最後の3級山岳山頂フィニッシュは、個人TTもなく、タイム差をつけられる機会の少ない今大会において、なんとかボーナスタイムも含め少しでも稼ぎ出しておきたいアグレッシブなライダーたちによる攻撃が活発化するかもしれない。

また、大逃げによる逃げ切り勝利にも気をつけたいステージとなるだろう。

 

 

第3ステージ ストックトン~モーガンヒル 207km(丘陵)

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スタートとゴールは平坦だが、その途中に超級山岳マウント・ハミルトン(登坂距離7.2km、平均勾配8.4%)が設定された丘陵ステージ。2年前にこの山がルート途中に設定された際には、ジョージ・ベネットやイアン・ボズウェル、ラクラン・モートン、そしてラファル・マイカの逃げが形成され、最後はマイカがステージ優勝。

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このときに稼いだタイムもあって最後はベネットが総合優勝をするという展開を生んだステージとなった。

なお、単独で逃げていたトムス・スクインシュが下りで落車して脳震盪を起こすという事態も発生。下りにも十分に注意したい。

 

基本的にはゴールまでは距離があり、超級といってもそこまで絶対的に厳しいわけでもないため、同じような展開が生まれるとは限らない。

しかし常に総合勢の動きには注意をしておく必要のあるステージとなるだろう。獲得標高は2900mだ。 

 

 

第4ステージ ラグナ・セカ~モロ・ベイ 212.5km(丘陵)

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「コークスクリュー」で有名なパンチャー向けレイアウトのラグナ・セカを、今年はスタート地点に選択。しかし途中のアップダウンは激しく、またラストもモロ・ベイの強烈な登りスプリント(登坂距離500m、平均勾配8%)となるため、 結局のところはパンチャーや登れるスプリンターに有利なレイアウトとなる。

 

2017年に同じフィニッシュを迎えた際は、ペテル・サガンが優勝。2位にリック・ツァベルがつけた。

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今年もこの2人は出場。 サガンはカリフォルニアで通算16勝しているカリフォルニア・マイスター。であれば、今回も最有力候補か?

しかし今年のサガンは明らかに調子が悪い。全然ダメではないんだけれど、勝ちきれない。結局今年はまだ、ここまでで1勝しかしていないのだ。

一方のツァベルは先日のヨークシャーで2年ぶりの勝利を遂げ、キッテルがチームを離脱したことにより、自らがチームの唯一のエースとして走る覚悟を備えているはずだ。

であれば、再びツァベルに脚光が浴びせられるか? それともサガンが王としての意地を見せられるか?

はたまたエシュボルン・フランクフルトで2位につけるなど調子を取り戻しつつあるデゲンコルプが得意の登りスプリントで栄光を掴むか。ヤコブセンやイギータも候補の1人となるだろう。

 

 

第5ステージ ピズモ・ビーチ~ベンチュラ 218.5km(丘陵)

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 ハリウッドスターも多く住んでいるという、高級リゾート地「サンタバーバラ」。アメリカの「リビエラ(イタリア語で「海岸」を意味する)」と呼ばれるこの地は、ライダーたちにとっては厳しい丘陵地帯として襲い掛かってくる。

コース中央に1級山岳。それ以外にも複数の山岳ポイントが用意され、獲得標高は3000mを超える。最後、ゴール前5.5kmには、「中間スプリントポイント」なのに、登坂距離900m、平均勾配9%という「激坂」が待ち構えている。

ピュアスプリンターは少なくとも最後の勝負に絡めなさそう。登れるスプリンターたちによる最終決戦が行われる可能性が高いだろう。

 

もちろんこういうステージは(そしてツアー・オブ・カリフォルニアではよくある)逃げ切り勝利に最適なステージとも言える。

今年のアメリカンドリームを達成する男は誰だ。個人的には、ショーン・ベネットに昨年のリベンジを果たしてもらいたいという思いはある。

 

あ、丘陵ステージの例に漏れずここもワインが有名なようで葡萄畑が広がっている。

カリフォルニアワインを用意しての観戦も悪くないかも。

 

 

 

第6ステージ オンタリオ~マウント・バルディ 127.5km(山岳)

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いよいよ今大会のクイーンステージ。距離は短いが、2つの1級山岳と、そして強烈なるマウント・バルディが待ち構える。登りか下りかしかないステージ。

 

最後のマウントバルディはその前の1級山岳の登りとほぼセットの長い登坂となる。そしてマウント・バルディ自体は登坂距離8.2km、平均勾配8.4%。

さらにマウント・バルディの村を通過したあとの7kmは700mほどを登る平均勾配9.4%、最大勾配16%の強烈な道程。およそ10回のスイッチバックを繰り返す。

さらに最後の1マイル(1.6km)は平均12.8%の激坂。じりじりとした戦いがここで演出されることだろう。

 

マウント・バルディの過去の優勝者は、リーヴァイ・ライプハイマー(2011年)、ロベルト・ヘーシンク(2012年)、ジュリアン・アラフィリップ(2015年)、アンドリュー・タランスキー(2017年)である。

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優勝者と2位との間には平均で16秒以上の遅れを生んでしまうというこのマウント・バルディ。TTの存在しない今年は、ここが勝敗を左右する唯一絶対の砦となる可能性が高い。

リゴベルト・ウランやリッチー・ポートのようなグランツールライダーたちが順当な勝利を手に入れるか、あるいはタデイ・ポガチャルやフェリックス・グロスチャートナーのような若手が「カリフォルニアの魔法」にかけられて飛躍するか。

ジロ以上に熱い戦いが勃発することに期待したい。

 

 

第7ステージ サンタ・クラリタ~パサデナ 141km(平坦)

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2019年ツアー・オブ・カリフォルニアの最終ステージは、コース中央に大きな山岳があるように見えるが、実際には大したことはなく、ゴールまでの距離も下りを含んだ長い道のりをもち、最終的にはスプリンターたちも生き残っての集団スプリントとなる可能性は高い。

よって、全ての決着は前日に決まり、この日はほぼ、総合勢にとってはパレードランのような展開となることだろう。2015年のような、わずかなボーナスタイムで優勝が左右されるような僅差の戦いになっていなければ。

 

もちろん、この日までに勝利を手に入れられていないチームにとっては、最後の逃げ切りチャンスでもある。スプリンターチーム(とくにカヴェンディッシュのようなピュアスプリンターのそれ)も数少ないチャンスの日となるため、必死に追走を仕掛けることになるだろうが、最後の激しい追いかけっこはどちらの軍配が上がるか。 

 

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