りんぐすらいど

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ツール・ド・ポローニュ2019  コースプレビュー

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Class:ワールドツアー

Country:ポーランド

Region:-

First edition:1928年

Editions:76回

Date:8/3(土)〜8/9(金)

 

ブエルタ・ア・エスパーニャ以上の歴史の古さを持つ伝統的なステージレース。

かつては旧首都クラクフを最終ステージに据えていたが、近年は逆にここをスタート地点に定めて7日間の道のりをこなしていく。

また近年は各ステージの距離が短い傾向にある。ツール・ド・フランス直後というこの時期、そしてブエルタ・ア・エスパーニャを控えるこの時期に、有力選手たちが参加しやすく、また彼らに取って次の目標に向けた調整しやすいレースに、という考えからのようだ。

そしてその狙いは成功している。

 

ブエルタ前哨戦の1つ。

ポーランドのステージレースの各コースを簡潔にプレビューしていく。

また、各ステージの注目選手予想も軽くしているので参考に。

 

 

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第1ステージ  クラクフ〜クラクフ  136km(平坦)

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ポーランドの旧首都クラクフを舞台にし、最後は市街周回コースで決着する、昨年とほぼ同じレイアウトの集団スプリントステージ。ラスト1kmはひたすらストレート。

昨年はパスカル・アッカーマンがその巨体を活かしたパワースプリントでラスト250mから爆走。最高速度70km/h超えの超スプリントで、後ろについたホッジに手も足も出させなかった。

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今年もジロ2勝&ポイント賞と絶好調のアッカーマンが強さを見せつけるか、それとも昨年のホッジの代わりに出場するヤコブセンがチームメートのリベンジを果たすか、それともツールを回避してブエルタに向けた調整を狙うガビリアがやっぱり強かったと思わせてくれるか。

チーム・サンウェブの、すでにブエルタのエースが内定しているマックス・ヴァルシャイドもまた、優勝候補として注目すべきだろう。あちはスポンサーのためのマレツコ・・・起伏にものすごく弱いイメージだったが先日のツール・ド・ワロニー第1ステージでは意外にも上位に食い込んでいたので可能性はなくはなくはない。

 

 

第2ステージ  タルノフスキェ・グルィ〜カトヴィツェ  153km(平坦)

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こちらもおそらく昨年とほぼ同一のコース。工業都市カトヴィツェへと向かう。

基本的に平坦だが、ラスト2kmから1kmに緩やかな登り。昨年と同じであれば勾配は2%程度となるだろうし、そこからラウンドアバウトをUターンして今度は先ほどの登りを逆向きに下ってのゴールとなるはず。

有力スプリンターたちの足を止めるほどの登りではないし、下りでハイスピードなスプリントバトルとなりそう。むしろラウンドアバウトでの180度ターンは、よりチームのアシスト力を問うステージとなりそうだ。

有力候補なやはりアッカーマン、ヤコブセン、ガビリアとなりそうだが、チームメート状況を見てみると、アッカーマンにはジロでも彼を助けた名発射台ゼーリッヒ、ヤコブセンにはユンゲルスサバティーニの最強トレイン、そしてガビリアにはコンソンニがついている。

昨年はラスト1kmでヤン・トラトニクがアタックしたことで集団はやや混沌に陥り、その中で先駆けしたダニー・ファンポッペルの背中からアッカーマンが時速80km/hで抜け出して勝利した。ホッジはまたも2位。今年も登りを利用してゴール直前アタックをかましてくる選手に注意。

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第3ステージ  ザブジェ〜ホジュフ  157km(平坦)

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やはり昨年と同じザブジェ〜ホジュフで最後はホジュフの市街地周回コース。

昨年は、第1・第2と2位続きで悔しい思いを味わっていたホッジが、ミケル・モルコフの強力なリードアウトを受けて圧勝。ボーナスタイムにより総合リーダージャージも手に入れた。

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今年のヤコブセンも、モルコフこそいないものの同じく強力なリードアウター、サバティーニを従えている。スプリンター頂上決戦 in ポローニュ。果たして勝つのは誰だ。

 

 

第4ステージ  ヤボジュノ〜コチェス  173km(丘陵)

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スタート地点は昨年と同じ。途中までのルートもほぼ同一だが、最後は西に曲がってシュチルクに向かった昨年と違い、東に向かってコチェスへと至る。ただ、両方とも同じ地域の高原リゾート地帯であることは変わらず、最後が短い激坂フィニッシュ、そのフィニッシュ地点を途中2回通過するというレイアウトは昨年とほぼ同じようなものだ。

コース途中のフィニッシュ地点は1級山岳扱いで登坂距離3km、平均勾配7%。直後に登坂距離1.2km、平均勾配9.6%の激坂2級山岳もせっとになっており、これが2セットを用意されているため、昨年同様に数十名に絞り込まれた集団でフィニッシュを迎えそうだ。スプリンターたちの出番はないだろう。

ラストの登りは登坂距離1.35km、平均勾配12.6%。昨年のシュチルクのフィニッシュよりもキツイ登りだ。

 

昨年は残り1kmからリチャル・カラパスが先行。しかし登りが厳しすぎて残り500mで失速してしまう。残り300mでこれを吸収した集団から2017年覇者ディラン・トゥーンスが飛び出すが、そこにぴったりと貼りついたのが昨年の優勝者ミカル・クウィアトコウスキーだった。

残り100mでトゥーンスを突き放したクウィアトコウスキーがそのまま勝利。総合優勝に向けた大きな一手となった。

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いかに力をセーブしながら勝負所を見極めて仕掛けるかが重要なレイアウト。昨年はラスト300mがポイントだった。トゥーンスもクウィアトコウスキーもいない今年、優勝候補として名前が上がりそうなのは、UAEチーム・エミレーツのディエゴ・ウリッシや、EFエデュケーション・ファーストのツアー・オブ・カリフォルニア総合2位セルヒオ・イギータ、あるいはロット・スーダルのビョルグ・ランブレヒトあたりだろうか。

ディメンションデータのエンリーコ・ガスパロットなんかもこういうレイアウトを得意とする。

 

 

第5ステージ  コパルニア・ソリ・「ヴィエリチカ」〜ビェルスコ=ビャワ  154km(丘陵)

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2級山岳2つと1級山岳1つ、それからカテゴリのついていないアップダウンも豊富で、残り22.5kmで一度フィニッシュラインを越えた後から始まる1周7kmの周回コースも、勾配3%程度ではあるが登りを含んでいる。そしてラスト2.4kmもこの3%程度の登りの頂上に置かれている。

しかし、ほぼ同じコースを使用した昨年は、パスカル・アッカーマンやシモーネ・コンソンニ、ジャコモ・ニッツォーロなども残ってフィニッシュを迎えることに。

それでも、さすがに2,000mを超える獲得標高の前に、彼らの足も残っていなかったようだ。最後はクウィアトコウスキー、ディラン・トゥーンスといった前日の激坂フィニッシュを制したパンチャーたちが先着。

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今年も、やや登りにも強いヤコブセンやガビリアなどが残る可能性もあるが、最後にこれを差すのはウリッシやイギータ、ランブレヒト、ガスパロットなど前日の優勝候補たちとなりそうだ。

また、昨年3位のバッタリンも注目すべきだし、AG2Rのシルヴァン・ディリエ、モビスターのエドゥアルド・プラデスなんかも気になる存在だ。

スプリンターという点ではイネオスのベン・スウィフトもこういうレイアウトを得意とする。ただイネオスの場合はもしかしたら、タオ・ゲオゲガンハートがボーナスタイムを稼ぎに来るかもしれない。

 

 

第6ステージ  ザコパネ〜ザコパネ  129km(山岳)

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ポーランド屈指の避暑地、保養地であるザコパネの大周回コースを3周する、観戦する側にとってはとてもありがたいコースレイアウト。

大周回の1周は29km。その中には登坂距離2.7km、平均勾配8.8%という厳しい登りの1級山岳が含まれており、着実にプロトンの足を削っていく。

そして最後は登坂距離4.2km、平均勾配6.8%の1級山岳を登って、その頂上からゴールまで4.5kmのダウンヒルでフィニッシュする。

昨年も同地域で似たようなレイアウトで行われたが、いよいよ優勝候補のクライマーたちが絞られていくステージとなった。

最後の登りで絞り込まれたのは以下の9名。

 

  • ゲオルグ・プライドラー(グルパマFDJ)
  • エマヌエル・ブッフマン(ボーラ・ハンスグローエ)
  • ミカル・クウィアトコウスキー(チーム・スカイ)
  • サイモン・イェーツ(ミッチェルトン・スコット)
  • ディラン・トゥーンス(BMCレーシング)
  • セルゲイ・チェルネトスキー(アスタナ・プロチーム)
  • ジョージ・ベネット(ロットNLユンボ)
  • ローレンス・デプルス(クイックステップ・フロアーズ)
  • ティボー・ピノ(グルパマFDJ)

 

今年は見事に全員出場せず。

代わりに今年のスタートリストから似たようメンバーを選出しようとすれば

 

  • タオ・ゲオゲガンハート(チーム・イネオス)
  • パヴェル・シヴァコフ(チーム・イネオス)
  • ダヴィデ・フォルモロ(ボーラ・ハンスグローエ)
  • ラファル・マイカ(ボーラ・ハンスグローエ)
  • アントワン・トールク(ユンボ・ヴィズマ)
  • ミゲルアンヘル・ロペス(アスタナ・プロチーム)
  • ディエゴ・ウリッシ(UAEチーム・エミレーツ)
  • ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(バーレーン・メリダ)
  • セルヒオ・イギータ(EFエデュケーション・ファースト)

 

あたりが残ると予想したい。

昨年は残り1kmで頂上を超えた後、抜け出したプライドラーが逃げ切り勝利を果たしたが、今年は頂上からゴールまで4kmと少し長い。昨年のような逃げ切りは厳しいかもしれない。

となれば最後の小集団スプリントでウリッシ、イギータあたりが制するのではないか、なんていう風に想像しておこう。

 

 

第7ステージ  ブコビナ・リゾート〜ブコビナ・タトシャンスカ  153.3km(山岳)

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1級山岳を2つ大周回コースを2周半。最後は登坂距離3.45km、平均勾配5.45%の比較的緩やかな、しかし長い登りフィニッシュ。

ここまでパンチャー向けのコースが続いていた中で、この日は割としっかりとしたクライマー向けのステージ。マイカやロペスなどがしっかりと実力を示してくれそうだ。

 

昨年は残り10kmからサイモン・イェーツがアタックし、そのまま逃げ切り勝利。総合逆転も狙ったもののそこまではいけず、しかし総合2位にまで一気にジャンプアップした。 

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これがブエルタ総合優勝への布石だったのか。そういった意味ではやはり、この日マイカやフォルモロ、ロペスあたりのブエルタ出場予定組にはぜひ頑張ってほしい。

 

ただ、逃げ切りも決してありえなくはないステージだけに、個人的には地元ポーランド人のトマシュ・マルチンスキー(ロット・スーダル)に期待したい。

2年前のブエルタ・ア・エスパーニャで山岳逃げ切り2勝している実力派クライマー。彼が故郷に錦を飾る勝利、というのも実に感動的だと思うんだけどどうだろう。

あとはまあ、もちろん、スポンサー様のためにもセルジュ・パウェルスとかサイモン・ゲシュケとかも頑張らなければならない。 

 

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