Class:ワールドツアー
Country:オランダ
Region:リンブルフ州
First edition:1966年
Editions:54回
Date:4/21(日)
丘陵地帯を駆け巡る、「アルデンヌ・クラシック3連戦」の第1戦。
激しいアップダウンとカーブの多さが特徴で、「千のカーブ」と形容されることも。
この後に続くフレッシュ・ワロンヌ、リエージュ~バストーニュ~リエージュと比べると登りの激しさは抑えられており、クライマーよりはパンチャー向きのレースと言える。
先日の前哨戦「ブラバンツペイル」でアラフィリップやマシューズらを抑えて見事優勝したマチュー・ファンデルポールはこちらにも参戦。
常識はずれの「怪物」が、今期最後のロードレースで果たしてどんな結末をもたらしてくれるか、注目の一戦だ。
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コースについて
全長265.7㎞。35個の登りが用意された、正真正銘の丘陵レース。ピュアスプリンターの出番も、北のクラシックが得意な重量級選手の出番もなく、パンチャーやクライマーなどの軽量級の選手たちが活躍し始める。
狭い道と曲がりくねった無数のカーブも特徴で、強力なアタッカーたちが抜け出すと集団は容易には追いつけないコース特性となっている。
かつてはこのレースを象徴する登り「カウベルグ」がゴール直前に置かれていたが、以前は4回登ったこの登りを、2年前より最後の1回を減らし、最後のカウベルグ登坂からゴールまで20㎞も残すという大きなコース変革を行なった。
結果として、かつては「最後だけ見所のあるレース」だったこのアムステルが、まるで北のクラシックのように、残り40〜30㎞から見逃せない展開が続くアグレッシブなレースへと変化した。
昨年は残り30㎞、一昨年は残り40㎞で決定的な動きが。
そんか過去のレース展開を振り返りつつ、今年のコースの注目ポイントを確認していく。
残り40㎞「No.29クルイスベルグ」
登坂距離600m、平均勾配8.8%、最大勾配15.5%
現在のコースが採用された最初の2017年大会で、優勝者ジルベールやティシュ・ベノート、セルジオ・エナオなどの強力な8名の逃げグループが作られた登り。グレッグ・ファンアーフェルマートやアレハンドロ・バルベルデなどの優勝候補が取り残された。
なお、この登りの直後(登り終えてから1㎞先)にある「No.30アイゼルボスウェグ」は、登坂距離900m、平均勾配9.3%、最大勾配17.0%とさらに強烈。この2つのセットでアタックが決まりやすいので、この辺りでは必ず集団前方にいないと危険。
勝ちを狙える準エース・サブエースをここでアタックさせられると、チームの勝利への選択肢を増やすことができるだろう。
残り30㎞「No.32クーテンベルグ」
登坂距離1.2㎞、平均勾配5.9%、最大勾配22%
今大会最大の勾配区間を含む登り。
2017年大会ではここで、ジルベールらに取り残されたメイン集団からクウィアトコウスキーが抜け出してブリッジ。ファンアーフェルマートはこのときも決定的な動きに乗ることができなかった。
登坂力・激坂対応力のある選手が確実に抜け出すことのできるポイント。得意な選手は挽回や攻撃のチャンスであり、苦手な選手はやはりこの前の段階で攻撃を仕掛けておきたい。
2017年における最終セレクションの舞台。十分に注意しておきたい。
残り19.5㎞「No.33カウベルグ(3回目)」
登坂距離800m、平均勾配6.5%、最大勾配12.8%
大会を象徴する登り。ゴール前20㎞という絶妙な位置に置かれ、レースの展開を左右する重要な動きが起こりやすい。
昨年は優勝者クロイツィゲルと2016年覇者ガスパロットとがこの登りの手前で抜け出し、この登りで逃げていた5名と合流する。
登り自体の難易度はそれほどでもないが、やはりゴールまでの距離が絶妙。決定的な動きをするにはやや早すぎるが、平気で逃すには遠すぎる。微妙な心理のあやを狙って、今年攻撃するのは誰だ?
まあ、マチューはやりそう。むしろもっと早いか?
残り15㎞「No.34グールヘンメルベルグ」
登坂距離1㎞、平均勾配5%、最大勾配8%
昨年大会では、クロイツィゲル、ガスパロットらに置き去りにされたメイン集団の中から、バルベルデ、サガン、アラフィリップ、ウェレンス、ヴァルグレン、フルサングが抜け出して先頭に合流。
前年大会の2強ジルベール、クウィアトコウスキーはここで脱落する。
いわば「最終列車」に乗り込む最後のチャンス。
残り8㎞「No.35ベメレルベルグ(3回目)」
登坂距離900m、平均勾配4.5%、最大勾配7%
2年前は先頭集団からジルベールとクウィアトコウスキーが抜け出したポイント。
昨年も12名の先頭集団から、フルサング、バルベルデ、アラフィリップ、サガン、ガスパロット、ウェレンス、ヴァルグレン、クロイツィゲルの8名が抜け出したポイント。
すなわち、「最終列車」の中でのセレクション、最後の優勝候補を決める重要ポイントとなっている。変な牽制を見せると勝機を完全に失うので、積極的な動きを心がけたい。
昨年はこの最後の登りを終えてもなお8名と人数が多く、最終的には残り2.2㎞の平坦部分でヴァルグレンがアタック。クロイツィゲルだけがついていき、残りはお見合い状態となった。
残り40㎞から常に展開動き続ける展開。
繰り返されるアタックチャンスを逃すことなく手に入れたアタッカーたちの中から、最後の勝者が現れる。
最もアグレッシブで、最後まで戦い続けられる選手は誰だ。
続いて今大会の注目チームを紹介していく。
注目チーム
1〜.チーム・ディメンションデータ(TDD)
今年のディメンションデータは独特な補強を行なった。アルデンヌ・クラシック、とくにこのアムステルゴールドレースの過去優勝者3名を一気に獲得した。1.ミケル・ヴァルグレン(昨年優勝者)、3.エンリーコ・ガスパロット(12年、16年優勝者)、5.ロマン・クロイツィゲル(13年優勝者)。
しかしだからと言って、ではこのチームが優勝候補最右翼かといえば・・・どうだろう。過去優勝者を並べれば勝てるというわけではない。少なくとも、北のクラシックは散々だった。・・・本当に散々だった。
その北のクラシックでそれでもまだ可能性を見せていた4.エドヴァルド・ボアッソンハーゲンも、このアルデンヌで活躍しうる存在ではある。
北のクラシックでの惨状の挽回をしなくてはならない。失敗の許されないアルデンヌが始まる。
21〜.バーレーン・メリダ(TBM)
2016年3位、2017年9位の22.ソンニ・コルブレッリ、2017年のラ・フレッシュ・ワロンヌ3位の21.ディラン・トゥーンスあたりが優勝候補と言えるだろう。
しかし個人的に期待しているのは23.イバン・ガルシア。アムステルでの実績は全くないが、現在急成長中の超アグレッシブライダー。昨年までは山岳エスケープや登りスプリントでの才能を示していたが、今年の北のクラシックでも要所要所で存在感を現し、クラシックライダーとしての才能が花開き始めている。
今大会も、早め早めの仕掛けで抜け出してそのままゴールまで爆走しそう。マチューと一緒にいたときに彼に勝てるかというと厳しいだろうが、きっと、わくわくさせる走りは見せてくれるはずだ。
似たような感じで24.マテイ・モホリッチにも注目しておくべきだろう。
51〜.ボーラ・ハンスグローエ(BOH)
2012年に表彰台に登っている51.ペテル・サガン。昨年は5年ぶりの出場で4位に。そして今年は、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュに初出場。ここまでの不調?も、今年このリエージュに焦点を合わせてるがゆえ、という見方もある。となれば、今回のアムステルの走りを見ながら、リエージュに向けての可能性を探っていきたい。
そしてもう1人、昨年から今年にかけて異様なスピードで成長を見せているパンチャールーラー、57.マキシミリアン・シャフマン。イツリア・バスクカントリーで怒涛の3勝。最後は厳しい山岳で総合リーダージャージを失いつつも、力強い走りを見せていた。
アップダウンのあるコースでの独走力も見せてくれていたので、アムステルのコースや展開にも向いているはず。
71〜.ドゥクーニンク・クイックステップ(DQT)
前哨戦ブラバンツペイルで2位だった71.ジュリアン・アラフィリップ。アムステルの過去の成績は7位、6位、7位などだが、今の彼の勢いの前に実績など役に立たない。
ブラバンツペイルでマチューに敗れたことについても、バスクでの大落車からの復帰戦で、逃げグループ形成のために積極的に走り続けられたことに満足するコメントを出している。マチューを2度にわたって振り払えなかったことは彼にとって驚きだっただろう。しかしそれは、今回のアムステルではより攻撃的に走ることを彼に選択させることになるだろう。
そしてもう1人、注目すべき選手がこのチームにはいる。すなわち、過去4度(10年、11年、14年、17年)アムステルを制し、そればかりか2011年にはアルデンヌ・クラシック3連戦の全制覇を成し遂げた伝説の男、74.フィリップ・ジルベール。今年はパリ〜ルーベ制覇も成し遂げたばかりの彼。思えば2017年の勝利も、まさかのロンド制覇の直後だった。
勢いに乗る男が2人揃う今回のアムステル。圧倒的な成績を残した北のクラシックに続き、このアルデンヌもウルフパックが制圧してしまうのか?
111〜.モビスター・チーム(MOV)
フレッシュ・ワロンヌを5回、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュを4回制している男、111.アレハンドロ・バルベルデ。しかしこのアムステルゴールドレースだけは、一度も制したことがない。2位が2回、3位が1回、TOP10入りは6回に及ぶ。
今年のバルベルデは昨年と比べてそこまで好調ではないともいわれる。勝利はUAEツアーでの1勝のみ。あとは2位が6回。いわゆる「アルカンシェルの呪い」か?とも囁かれている。
しかし、そもそも今年39になる男が昨年も一昨年も勝ちまくっていたこと自体がおかしかったのだ。今年もこれだけ成績を出していて、しかも北のクラシックでも異様な走りを見せていた彼に「不調」という言葉は似合わない。ここまで抑えめ?にしてきたからこそ、本領発揮のアルデンヌならば、という見方もできるだろう。
アルデンヌにおけるバルベルデの右腕、112.カルロス・ベタンクールは、直近のクラシカ・プリマヴェーラ・ドゥ・アモーレヴィータで勝つなど調子を上げてきている。112.カルロス・バルベロは今年の北のクラシックでスペイン人らしからぬ走りを見せ今後が期待される選手の1人だ。アムステルは初出場だが、パンチャータイプで向いている脚質だ。
2015年のクウィアトコウスキーに続く、アルカンシェルによるアムステル制覇、なるか?
その他注目選手
34.ブノワ・コズネフロワ(AG2Rラモンディアル)
41.アレクセイ・ルツェンコ(アスタナ・プロチーム)
61.グレッグ・ファンアーフェルマート(CCCチーム)
82.アルベルト・ベッティオル(EFエデュケーション・ファースト)
92.ヴァランタン・マデュアス(グルパマFDJ)
121.ワウト・ファンアールト(ユンボ・ヴィズマ)
144.ミカル・クウィアトコウスキー(スカイ)
151.マイケル・マシューズ(サンウェブ)
174.タデイ・ポガチャル(UAEチーム・エミレーツ)
181.マチュー・ファンデルポール(コレンドンサーカス)
241.オドクリスティアン・エイキング(ワンティ・グループゴベール)
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