3年ぶりとなる、スペイン南部、熱風吹き荒れるアンダルシア地方での開幕。
ブエルタにしては珍しく平坦が多めで、割と緩やかに始まる1週目となる。山岳も、ブエルタ特有の厳しさではまだない。
まずはこの1週目で、スプリンター勢の活躍と、総合勢の調子の確認をしていきたい。
↓第2週のコースプレビューはこちら↓
- 第1ステージ マラガ~マラガ 8km(個人TT)
- 第2ステージ マルベーリャ~カミニート・デル・レイ 163.5km(平坦)
- 第3ステージ ミハス~アラウリン・デ・ラ・トレ 178.2km(中級山岳)
- 第4ステージ ベレス・マラガ~アルファカル 162km(中級山岳)
- 第5ステージ グラナダ~ロケタス・デ・マル 188km(中級山岳)
- 第6ステージ ウエルカル・オベラ~サン・ハビエル 155.7km(平坦)
- 第7ステージ プエルト・ルンブレラス~ポソ・アルコン 182km(平坦)
- 第8ステージ リナレス~アルマデン 195.5km(平坦)
- 第9ステージ タラベラ・デ・ラ・レイナ~ラ・コヴァティリャ 200.8km(山岳)
第1ステージ マラガ~マラガ 8km(個人TT)
史上3回目のグランデパールを迎えるアンダルシア地方の港町は、9年ぶりとなる開幕個人TTの舞台となった。
距離は8km。数多くの観光地についてはJsportsの情報に委ねるとして、コース的には直線が多くスピードは出るものの、海沿いの道の横風や、残り4.7kmから始まる6%の登りには注意したい。
距離的にはスプリンターもTTスペシャリストも共に優勝を狙えるレベルである。次の日は厳しい山頂フィニッシュで、早くもマイヨ・ロホがクライマーの手に渡ってしまうため、平坦専門家たちはこのステージでなんとしてでも勝利しておきたい。
リゾート地コスタ・デル・ソルの、青い空と海、白い壁の家々の美しさも堪能しよう。
スタート地点のすぐ近くには、ポンピドー・センターのマラガ分館が。写真はフランスの芸術家ダニエル・ビュランの手がけたガラス・キューブ。
第2ステージ マルベーリャ~カミニート・デル・レイ 163.5km(平坦)
へい・・たん?
3年ぶりのアンダルシアスタートで、3年前と同じく、カミニート・デル・レイ(王の小道)の厳しい登りをいきなりフィニッシュに持ってきた。
3級山岳だが、ラスト3kmで240mを登る厳しい勾配。
3年前は、トム・デュムランとの激戦を制したエステバン・チャベスが見事な勝利を成し遂げた。
チャベスの強さを世界に知らしめた瞬間であり、また同時に、デュムランがTTスペシャリストからオールラウンダーへと変貌していく瞬間でもあった。
今年もまたこの地にて、新たなるヒーローの誕生を見ることができるか。
第3ステージ ミハス~アラウリン・デ・ラ・トレ 178.2km(中級山岳)
出発地点のミハスからゴール地点のアラウリン・デ・ラ・トレまでは直線距離で15kmでしかない。ともにマラガ県の美しき海岸線コスタ・デル・ソルの一部だが、この日プロトンはこの海岸線を走ることはない。内陸に移動し、実にブエルタらしい標高の高い丘陵地帯を駆け巡ることになる。
スタートから50kmでいきなりの1000m超え1級山岳。この辺りも、2015年に近いプロフィールで、3年前はこの第3ステージの1級山岳を先頭通過したオマール・フライレが山岳賞ジャージを獲得。そのまま最後まで守り切り、飛躍のきっかけとなった。
当時はプロコンチネンタルチームのカハルラル所属だったフライレ。翌年はディメンションデータに移籍し、2度目のブエルタ山岳賞を獲得した。
そんな厳しそうなステージではあるものの、最後はほぼ間違いなく集団スプリントとなるだろう。この程度の山で遅れて最後まで集団復帰できないようなヤワなスプリンターはブエルタには来ていない。
3年前の第3ステージはサガンが勝利した。さて、今年は?
3年前のブエルタ第3ステージではサガンが勝利。実に2年ぶりのグランツール勝利となった。
第4ステージ ベレス・マラガ~アルファカル 162km(中級山岳)
コスタ・デル・ソルで開幕した2018年のブエルタ・ア・エスパーニャは、4日目にしていよいよ美しき海岸線を後にする。
海岸から北上したプロトンは、イベリア半島最後のイスラム王朝が座していたグラナダの地を通過し、南スペインの難関山脈シエラネバダの山々に挑む。
本日は1級山岳シエラ・デ・ラ・アルファグアラ。
登坂距離12.4km。平均勾配5.6%。
「まあまあ」な山岳である。まるでツールの山のような。
この程度の山は、ブエルタに挑む強者たちにとっては、前菜にすらならないだろう。
アルハンブラ宮殿とアンダルシアの山々。
第5ステージ グラナダ~ロケタス・デ・マル 188km(中級山岳)
シエラネバダ山脈に隣接する歴史都市グラナダより南下し、再び地中海沿岸に向かう。
標高は常に高いものの、ブエルタの基準で考えれば十分に平坦ステージであり、集団スプリントが予想されるステージ。もちろん、逃げ切り向きでもある。
序盤に通過するランハロン(Lanjaron)は「水かけ祭り」で有名な街。祭りは6月だが、プロトンのメンバー的にはぜひ、沿道から水をかけてほしいところだろう。何しろここはアンダルシア。選手たちにとっては、灼熱地獄と呼ぶべき地域だ!
ゴール地点は2月のクラシカ・アルメリアのゴール地点。今年はユワン、昨年はマウヌス・コーが優勝している。
残念ながら2名とも今大会には出場しないようだが、代わってヴィヴィアーニやトレンティンなど、強力なスプリンターたちの出場が決定しているため、期待したいところ。
第6ステージ ウエルカル・オベラ~サン・ハビエル 155.7km(平坦)
ブエルタには珍しいくらいに純粋なスプリントステージ。といっても、ジロやツールのそれのように、完全な平坦ではないのだが。しかも、距離も150kmちょっとと、まるで休息日のような趣である。
一応気を付けるべきところとしては、レースの大半を海沿いで過ごすため、横風には常に注意を払うべきだという点くらいか。
なお、ゴール地点の近くには、マール・メノール(小さな海)と呼ばれる世界的にも有名なラグーン(塩湖)が存在する。
高い塩分濃度で浮力が強く、また透明度が非常に高いため、「世界で最も大きなスイミングプール」という言葉すらある。この地中海との間を隔てるように浮かぶ砂嘴の美しさも含め、空撮が楽しみである。
第7ステージ プエルト・ルンブレラス~ポソ・アルコン 182km(平坦)
特に言うべきこともない、ブエルタ基準ではオールフラットと言うべきステージ。
ゴール地点のポソ・アルコンの近くには、スペイン最大の自然保護区である「シエラス・デ・カソルラ、セグラ・イ・ラス・ビージャス」がある。
3年前の第6ステージはこの保護区内にあるカソルラをゴールとしており、このときチャベスが大会2勝目、そして一度は奪われていたマイヨ・ロホをデュムランから奪い返している。
いかにもアンダルシア地方らしい風景の中での闘いとなりそうだ。
第8ステージ リナレス~アルマデン 195.5km(平坦)
リナーレスの街をスタートしたプロトンは、早速シエラ・デ・カルデーニャ・イ・モントロ自然公園に突入し、その中で3級アルト・デ・エスパニャレスを駆け登る。そのまま下りがないままに公園を抜け、やがてコルドバ北の平原地帯を北上していく。
ラスト6kmから緩やかに登り始め、最後の200mは7%の勾配。この程度の登りならば、ブエルタに出場するようなスプリンターたちであれば難なくこなせそうだろう。とくに、ここまでの平坦スプリントでたとえばヴィヴィアーニにやられまくってしまったスプリンターたちがいたとすれば、彼らにとっては反撃のチャンスである。
もちろん、常識的に考えればパンチャーの出番となるステージ。現時点での出場予定選手の中では、ベルトヤン・リンデマンやファビオ・フェリーネ、ダヴィド・ゴデュ、ジャイ・マッカーシー、トニー・ギャロパン、ダニエル・モレーノあたりが純粋なパンチャーとして期待できるかもしれない。
第9ステージ タラベラ・デ・ラ・レイナ~ラ・コヴァティリャ 200.8km(山岳)
37kmほど走った選手たちは、最初の1級山岳に到達する。15.3kmで851mを登る。平均勾配は5.6%。
これを登りきったあと、短い下りと緩やかな登りの3級山岳を含むアップダウン区間を経て、85km地点から13kmで585mを登る平均勾配4.5%の2級山岳が待ち受ける。
いずれも、山岳賞を狙う選手以外にとっては、さほど興味を惹かれるものではないだろう。
総合優勝争いを考える選手たちにとって重要なのは、2級山岳からの長い下りを経て、登り下りが小刻みに刻まれた平坦区間を越えた先に控える、今大会初の超級山岳アルト・デ・ラ・コヴァティリャの登りである。
10kmの登坂の平均勾配は7.8%。
しかしこの数値は、最初と最後に平坦区間が存在する所為であり、ラスト8kmあたりからは10%近い勾配が連続する厳しい登りとなっている。
ラスト2.5kmあたりから再び激坂区間が現れ、最後のアタックがこの地点で繰り出されることになるだろう。
1週目ラストということもあり、仲良く集団でゴール、となる可能性は低いだろう。おそらくはこの日、先頭でゴールした選手が、今大会最初のマイヨ・ロホ候補として注目を集めるはずだ。
サイモン・イェーツがジロの勢いをそのままに今大会も強さを見せつけるか。
ブルゴスでも強かったミゲルアンヘル・ロペスが、新世代の可能性を見せてくれるだろうか。
あるいは、ナイロ・キンタナがツールの雪辱を晴らせるだろうか。
今大会最初の大注目ステージだ。
とはいえ、ブエルタにしてはまだまだ甘いステージである。
第2週に控える、凶悪な山岳3連戦を考えると、この日マイヨ・ロホを着られた選手が最後までそれを守り続けられる可能性は、決して高い方ではないだろう。だからあくまでも、「最初のマイヨ・ロホ候補」でしかない。
第2週はさらなる激戦が待ち構えている。