Jsportsが送る2018年シーズンのレース第2弾は、初放送となる「ブエルタ・ア・アンダルシア」。
ヨーロッパツアーHCクラスのレースでありながら、毎年グランツールの総合優勝争いに絡むトップライダーたちが鎬を削る、大注目のレースである。
さらに今年は、サルブタモール問題でも騒がれているクリス・フルームが、今シーズンのデビュー戦として選んだレースとしても話題を集めている。
DAZNも本気の放送ラインナップを披露している中、このアンダルシアが、Jsportsにとって反撃のチャンスとなれるか。
今回はそんな、南スペインの「熱い」レースをプレビューしていく。
ブエルタ・ア・アンダルシアとは
ブエルタ・ア・アンダルシア、別名「ルタ・デル・ソル(太陽の道)」は、今年で64回目を迎えるスペイン伝統のレースである。
その名の通りスペイン南部・アンダルシア地方を走る。毎年2月中旬に開催し、一昨年前まではヨーロッパツアー1クラスのレースであったが、1クラスとは思えない豪華なメンバーが揃うこともあって、昨年からHCクラスに昇格。
今年は7つのワールドツアーチームが出場することに。ミケル・ランダ、クリス・フルーム、ヤコブ・フールサンといった、今年のツールの主役となるであろう選手たちも揃っている。
昨年はアレハンドロ・バルベルデとアルベルト・コンタドールが激闘を制した。また、その年にジロ初出場・総合4位となるティボー・ピノがステージ優勝と総合3位とこれもまた活躍した。その他、プールス、ローザ、ランダと、当時スカイに所属していた選手が総合4位~6位を独占したというのも面白い状況であった。
総合優勝はバルベルデ。わずか1秒差でコンタドールが2位につける、まさに激戦であった。
今年も山岳を中心とした難易度の高いコースがぎゅっと詰まった5日間。
ワールドツアークラスのレースと遜色ない盛り上がりを見せること間違いなしである。
コース詳細
第1ステージ ミハス~グラナダ 197.6km
マラガ県のミハスから、アルハンブラ宮殿で有名なグラナダへ。
昨年も同じくグラナダにゴールするステージで開幕し、1級山岳で絞り込まれた小集団スプリントを制したバルベルデが勝利。
今年も初日から山岳が多く、ゴールから20km手前に山岳ポイントがある、というところまで一緒ではあるが、昨年と違って今年はその山岳ポイントが3級でしかない。
全体的には難易度が低くなっているため、比較的大きな集団でのフィニッシュになる可能性はあるだろう。
一般的には逃げ切りも決まりやすいレイアウト。初日なので可能性は低いが、まさかの大逃げによる意外な形での初日リーダージャージというパターンもあるかもしれない。雨が降っていたらウェレンスに注意。
第2ステージ オトゥラ~ラ・グアルディア・デ・ハエン 140km
アンダルシアは2日目にして1級山岳山頂フィニッシュのクイーンステージに突入する。
決戦の舞台となるのは、2015年アンダルシアにも登場したアリャナダス峠。このときはクリス・フルームがアルベルト・コンタドールを29秒差で打ち破り、2秒差で総合リーダージャージを獲得している。
登坂距離は4.5km。平均勾配10.8%。ただし最初の1.5kmは大したことがなく、ラスト3kmの平均勾配は12.8%。最大勾配17%区間も含む。
距離はそれほど長くはないがかなり厳しい登りで、総合成績に大きな影響を及ぼすことは必至だ。現時点で最強の登坂力を示せる選手は誰だ。
なお、カハルラルのエースであるセルヒオ・パルディリャは、2010年のアンダルシアでこのアリャナダス山頂フィニッシュを制している。
第3ステージ マンチャ・レアル~エレラ 166.1km
初日から山岳色の濃かったアンダルシアで、3日目にしてようやく訪れたスプリントステージ。昨年も1ステージだけだったスプリントステージで、勝ったのはブライアン・コカールだった。
今年出場予定の選手の中で、目ぼしいスプリンターといえばダニエーレ・ベンナーティ(モビスター)、サッシャ・モドロ(EFキャノンデール)、アドリアン・プティ(ディレクトエネルジー)、クリスティアン・ズバラーリ(イスラエル)くらいか。
そんな状況だからこそ、新たな才能の発掘を見ることもできるかもしれない。ワンティ・グループゴベールのアンドレア・パスカロンなんかに期待。
第4ステージ セビリャ~アルカラ・デ・ロス・ガスレス 194.7km
中盤に1級山岳プエトロ・デ・ラ・パルマス(標高1200m、登坂距離15.7km、平均勾配5.4%)。直後に2級山岳も連続するが、こちらは登坂距離も短く、またその山頂を越えてからゴールまでは長い下りも含めて逃げ切るには厳しそうな距離。
それでも、逆転を狙った挑戦的な攻撃が見られるかもしれない。
もう1つの見所は、ラスト1km手前から始まる最大勾配18%の激坂フィニッシュ。総合勢以外で期待できそうなパンチャーとしては、ジロで勝ったシルヴァン・ディリエやアスタナのモレノ・モゼール、ロットNLのエンリコ・バッタリンなどか。ワンティのギョーム・マルタンも比較的激坂に強いイメージだ。
また、レース日程としては終盤であり、かつ中央に厳しい山岳があるレイアウトから、ティム・ウェレンスやルーベン・プラサなどの山岳逃げスペシャリストが黙っていないようにも思える。
特に雨が降った場合は・・・。
第5ステージ バルバテ~バルバテ(個人TT) 14.2km
今年のアンダルシアは、14.2kmの個人TTの結果でもって決着する。全体的にはフラットだが、約1.5km地点から6km地点にわたり、獲得標高100mのゆるやかな登りが存在する。14.2kmというのも微妙な距離で、スプリンターに有利な短距離TTというわけではなく、だからといってTTスペシャリストが得意とする距離とも言えない。
今回の面子の総合勢で言えば、クリス・フルームが最もTTが強いイメージがあるが、このあたりの距離のTTだとあまり良い結果を出してはいない。クライスヴァイクももっと山がちな方が強く、逆にミケル・ランダは未知数。彼はTTで調子が良いときと悪いときの差が激しいので、たとえばランダとフルームとがわずかなタイム差で接戦を繰り広げていたとき、この日は非常に見所のあるレースとなるだろう。
ステージ優勝に関して言うと、これといった優勝候補を挙げるのは難しい。ウェレンスプールスは、似たような距離だった昨年のTTで上位に来ている。ほかにはプラサ、ステフ・クレメント(ロットNL)、あるいは昨年の世界選手権ITTで13位、先日のエトワール・ドゥ・ベセージュのTTでも7位だったアレクシー・グジャール(AG2R)なんかの走りに注目だ。
とにかく第2ステージの山頂フィニッシュが、総合争いにおける最重要地点となるのは間違いない。しかし、この山頂フィニッシュの登坂距離も決して長いわけではなく、勝負が最終日にまでもつれ込む可能性も十分にありうる。
スプリンターが活躍できるステージが少ないが、それだけに有力選手の数も少なく、大金星を挙げる選手の登場なんかにも期待が持てそうである。
注目選手
クリス・フルーム(チーム・スカイ)
現役最強のグランツールレーサー。昨年はツールとブエルタを同年で制覇する「ダブルツール」も達成。今年はツール「5勝クラブ」入りを目指すと共に、ジロへの挑戦も予定しているという。
ここ2年はオーストラリアでのシーズン入りが恒例となっていたフルームだが、3年ぶりにこのアンダルシアでの開幕戦を迎えることに。当時はコンタドールと殴っては殴り返すかのような激戦を繰り広げ、最終的に2秒差で総合優勝。前年のブエルタの借りを返すかのような勝利だった。
今年は、昨年ツールで自身を強力にサポートしてくれたミケル・ランダが最大のライバル。チームメートもプールス(昨年総合4位)、デラクルス(昨年ブルゴス総合3位)と強力なメンバーが揃えており、調整ではなくしっかりと総合優勝を狙ってくるはずだ。
3年前はクイーンステージのアリャナダス峠山頂フィニッシュで勝利。今年もこの峠が登場するため、期待は否が応でも高まる。
ミケル・ランダ(モビスター・チーム)
2015年ジロ総合3位に始まって、昨年はツール・ド・フランス総合4位、ブエルタ・ア・ブルゴス総合優勝などしっかりと活躍。だが、エースで走れる環境を求め、アスタナ、スカイに続きこのモビスターへと移籍した。
モビスターこそ、エースで走れるチャンスが少ないチームなのではないか・・・と思ってしまうが、それでも昨年総合優勝者で先日のバレンシアナでも絶好調だったバルベルデをあえて出場させず、ランダ単独エースとしてこのアンダルシアを走ることが決まった。アシストもアマドールやベンナーティなど豪華なメンバーを揃えてもらっている。この期待に応える必要がある。
昨年は初日から果敢に攻める姿勢を見せたが、最終的には総合6位とイマイチな結果に終わってしまった。
また、チームとしては、昨年のカタルーニャ1周で総合3位に輝いた若き才能マルク・ソレルの動向にも注目したい。昨年はそれ以来さほど目立った活躍ができていなかったが、今年こそ更なる爆発の機会が到来しそうである。
ヤコブ・フールサン(アスタナ・プロチーム)
長きに渡りトップ選手たちのアシストを務め続けてきたベテラン。昨年はアスタナのエースの一角としてクリテリウム・ドゥ・ドーフィネで総合優勝。しかし直後のツールでは悔しい落車リタイアを経験してしまった。
今年、チーム内ライバルだったアルが移籍したことにより、正真正銘のエースとしてツールに臨むことができそうである。気合は十分。先日のバレンシアナでも、第2ステージでの飛躍のチャンスを作ったのは彼のアタックからだった。最後のスプリントはルイスレオン・サンチェスに譲ったことで自身は総合3位に留まったが、状態が良いことはしっかりと見せつけてくれた。
バレンシアナで、バルベルデと共に逃げ、難しいと思われていた第2ステージでの逃げ切りを成功させた。サンチェスとのコンビネーションもばっちりであった。
バレンシアナではチームとしての強さも印象的だったアスタナ。クフャトコフスキらの逃げを捕まえることができたのは、モビスターではなくアスタナの力によるものだったと言ってもいいかもしれない。そのときに活躍したビルバオは今回出場していないが、代わりにミカル・ヴァルグレンなどが出場しており、チーム力は十分だと言えるだろう。
ギョーム・マルタン(ワンティ・グループゴベール)
フランス期待の星。24歳。昨年初出場のツール・ド・フランスでは総合23位と、目標としていた総合20位以内に入ることは敵わなかった。しかし今年もチームはツール出場権を獲得。今度こそ・・・という思いとともに、このアンダルシアでは総合TOP10入り目指したい。
先日のグランプリ・シクリスト・ラ・マルセイユでは5位を獲得。激坂や起伏の激しいアルデンヌ風味のレースにも強いという印象はあるので、総合だけでなく、たとえば第4ステージでの勝利などにも期待したい。
チームメートには、昨年のツールで名前でよくネタにされたトーマス・デハント。彼も実際、逃げ力のある選手なので頑張ってほしい。また、アンドレア・パスカロンは1~HCクラスのレースでスプリント上位に入ること多数な逸材。第3ステージでのまさかの勝利もありうるはずだ。
アマーロマヌエル・アントゥネス(CCCスプランディ・ポルコウィチャ)
コンチネンタルチームに所属していた昨年のヴォルタ・アン・アルガルヴェ最終ステージで優勝。今年からCCCに昇格。27歳。
そして先日のバレンシアナでは、第4ステージの終盤で力強い走りを披露し、総合10位に喰い込んだ。ヤン・ヒルトを失ったチームにとって、今年の総合エース候補の1人であることは間違いない。
バレンシアナの勢いを維持し、今回のアンダルシアでも大暴れしてほしい。
マトヴェイ・マミキン(ブルゴスBH)
ブエルタの山岳ステージで積極的な逃げに乗っていた印象の強い、若きロシア人クライマー。23歳。今年はプロコンチネンタルチームへと移籍。代わりにエースの座を獲得した。
先日のバレンシアナにも出場したがここでは力を発揮できないまま早期リタイア。調子を整え、今回のアンダルシアでは結果を出すことができるか。
その他注目選手
2年前のジロで一躍実力を発揮したスティーヴン・クライスヴァイク。TTも得意な方ではあるので、十分に勝機はあるとは思うが、あのときのジロ以来はそこまでパッとしない印象。ロット・スーダルのエース、マキシム・モンフォールは、35歳のベテランではあるが、かつてはブエルタ総合6位やジロ総合11位などの成績を出していた選手。ギャロパンも移籍して、総合エースを任せられる選手が少なくなりつつある赤ロットでは、その走りに期待がかけられている。
他にもディレクトエネルジーのレイン・タラマエだったり、イスラエル・サイクリングアカデミーのベン・ヘルマンスだったりと、元ワールドツアーチームの選手でありながらプロコンチネンタルチームに移籍し、ただしエースの座をしっかりと手に入れることのできた選手たちが、その実力を見せてくれるかどうか。
カハルラルのエース、パルディリャの走りにも注目だ。
レース日程(時間は日本時間)
2/14(水) 第1ステージ 23:30~
2/15(木) 第2ステージ 23:30~ ※クイーンステージ
2/16(金) 第3ステージ 23:30~
2/17(土) 第4ステージ 23:30~
2/18(日) 第5ステージ 23:30~ ※個人TT