第11日までの様子をふまえて各チーム毎の総評を載せる。
総合順位順に掲載。★は戦前の期待度と比較して適当につけている。
- チーム・スカイ ★★★★★
- アスタナ・プロチーム ★★★★☆
- AG2R・ラモンディアル ★★★★☆
- キャノンデール・ドラパック ★★★★☆
- クイックステップ・フロアーズ ★★★★★
- オリカ・スコット ★★★☆☆
- モビスター・チーム ★★☆☆☆
- ロットNLユンボ ★★★☆☆
- UAEチーム・エミレーツ ★★☆☆☆
- トレック・セガフレード ★★☆☆☆
- BMCレーシング ★★★☆☆
- ボーラ・ハンスグローエ ★★★☆☆
- フォルテュネオ・オスカロ ★★★☆☆
- チーム・サンウェブ ★★★★★
- ワンティ・グループゴベール ★★★☆☆
- ディレクトエネルジー ★★★★☆
- コフィディス ★☆☆☆☆
- バーレーン・メリダ ★★☆☆☆
- ロット・スーダル ★★☆☆☆
- ディメンションデータ ★★☆☆☆
- カチューシャ・アルペシン ★☆☆☆☆
- FDJ ★★★☆☆
チーム・スカイ ★★★★★
ゲラント・トーマス、驚きの初日ITT勝利。一方で、第9ステージの悲運の落車リタイア。しかしそれでもこのチームには、クフャトコフスキとセルヒオ・エナオとランダにニエベという最強クライマーたちが残っている。クフャトコフスキはドーフィネに続く大車輪の活躍だし、ランダもニエベも第5ステージ・第9ステージともに比較的早く脱落していたが、総合順位でも割と上位にいるし、温存しているとみることもできる。だとしたらあまりにも恐ろしい。
そしてクリス・フルームの安定感もまた恐ろしい。攻め急ぎ、悲劇に見舞われたポートと比べ、彼やバルデの下りはただ速いだけでなく「安全」なのだ。2014年以外では大きな不運で遅れることもなく、もはやその安定感は実力の一端と言っていいだろう。
今年もまた、彼の総合優勝は固いのだろうか。
アスタナ・プロチーム ★★★★☆
アルのツール出場が決まったあとも、「あくまでもフールサンをエースで走る」と告げていたはずの首脳陣。そしてドーフィネでなんとか総合優勝を果たしたフールサンは、安心してツールを迎えられそうだった。
しかし、アルがイタリア選手権で優勝。さらに、第5ステージでは失速するフールサンを捨てて自らステージ優勝を飾った。雲行きが怪しくなる。契約延長を決めた直後だっただけに、フールサンは内心どのように思っていたのだろうか。第9ステージではアルがお家芸のメカトラアタックで無駄に体力を消耗したあと、タイミングよくカウンターアタックするが、フルームたちの追走集団の先頭をアルが牽く場面も。初山選手ならきっとワクワクしそうな展開だが、チームの今後があまりにも不安すぎる。
AG2R・ラモンディアル ★★★★☆
バルデは結局この第9ステージで、グラン・コロンビエとモン・デュ・シャの2つの下りで共にアタックを仕掛けたのだろうか。今シーズンの頭は不安に満ち満ちていた彼の走りが、ここに来てこれまで以上の積極性を見せ始めている。それが実ることのなかったこの日ではあるが、その下りのうまさと合わせ、今後の展開に期待が持てる走りを見せてくれた。ダウンヒルの能力はニバリとフルームに匹敵するものがある。
課題は独走力。第9ステージも、独走力さえあれば、あの結末にはならなかったのかもしれない。たとえこのあと、フルームに匹敵する走りを見せたとしても、マルセイユでのTTで差をつけられるのは必至。この点での成長が今後求められる。
キャノンデール・ドラパック ★★★★☆
ローランやヴァンガーデレンと並び、総合はもう諦めた方がいいんじゃないかと思われていたウランが、第5・第9でともに大健闘。総合4位。総合表彰台すら狙える位置にいる。しかもステージ勝利まで獲得してしまって、戦前の期待感が低めなチームだっただけに高評価。
あとはローランが1勝できるか。タランスキーもステージに切り替えて積極的な走りを期待したい。
クイックステップ・フロアーズ ★★★★★
「マルセル史上最強」。彼自身が語ったとされる言葉通りの結果となっている。本人にとってツール初の5勝。近年グランツールで5勝もしているのはデゲンコルブのブエルタくらいか。まだスプリントステージは残っており、どこまで記録を伸ばすか、計り知れない。
原因の1つはライバルの不在か。サガン、カヴ、デマールといったキッテルに対抗しうるスプリンターが戦線を離れ、グライペル、クリストフ、デゲンコルブも不調に苦しんでいる。マシューズも勢いはいいが届かず、フルーネヴェーヘンも位置取りはよいが結果に繋がらない。
もう1つの要因は、トレインがほとんど機能していない今大会、キッテルが積極的に試みている「俯瞰型スプリント」という戦術。この名称と詳細はサイバナさんのところで書かれているのでそちらを参考に。サバティーニの役割についても書かれており目から鱗。
また総合に関しても、マーティンも登りアシストがほぼいないにも関わらず総合6位と健闘。なんとかベスト10は維持したい。
そして実は一番目立っているんじゃないかと思うのがジュリアン・ヴェルモト。同じルーラーのバウアーがラスト10kmの機関車役を任されているため、スプリントステージの道中牽引をほぼ一手に引き受ける。濃い面子揃いの中でヴェルモトだけやや知名度が低いように感じていたが、こういう役回りは目立たずとも重要であるということを実感させてくれた。これは今回のツールの、スタートからゴールまで全て見せるという放送形態だからこそよくわかった、というのもあるだろう。ありがとうJsportsさん。テルプストラとか連れてきてこの役回りは難しいもんねぇ・・・。
オリカ・スコット ★★★☆☆
チャベスの不調は織り込み済み。ブエルタで本気出す。もしかしたら第2週・第3週でステージを狙ってくるかもしれないね。ただクロイツィゲルが落ちるのは早くない? イェーツさんのためにもうちょっと頑張ってほしいとは思う。
そんなイェーツは、ドーフィネのときの不安をよそに、ここまでは安定した良い走り。モン=ドゥ=シャでもトップライダーたちにはついていけなかったものの、メインチェスにも差をつけることができた。メインチェスはTTも速くないし、大崩れしなければ新人賞は固いだろう。
モビスター・チーム ★★☆☆☆
初日のバルベルデリタイアに加え、第9ステージではヘスス・エラダも落車。リタイアこそ免れたものの、影響は必至。休息日明けは大丈夫? アマドールもジロ疲れが残っているのか芳しくない様子。トーマスリタイア後も層の厚いスカイとの間に大きな差ができてしまった印象。
そして大将キンタナ自体が、第5・第9ともに大失速。だからこそ、今後の反撃には期待したい。総合2位以下はもはやキンタナにとっても価値無し。第13ステージなどで、コンタドールあたりと組んで奇襲攻撃を仕掛けられるか。
ロットNLユンボ ★★★☆☆
第8ステージでは勝利目前までいったヘーシンクも、第9ステージでリタイア。だがベネットがカリフォルニアに続く健闘を見せ、総合TOP10をキープすることも可能かもしれない。あとは3週間もつかどうか。
ログリッチェも、当初期待されていた総合エースとしての走りは難しいが、第9ステージでの走りを見るにつけ、山岳での逃げ切り勝利などは期待したい。また、マルセイユのITTは、彼が優勝したバスク1周のITTにも似ているので、勝利が十分に期待できそうだ。
フルーネヴェーヘンは悪くない走りではあるのだが、今シーズン全体を通して、今一歩、勝利に届かない。パワーがまだ足りないか。今後に期待。
UAEチーム・エミレーツ ★★☆☆☆
メインチェスのモン=デュ=シャでの早めの失速に、新人賞が危うくなりつつある。とはいえまだ2分。イェーツが今後崩れればすぐに手中に収められる位置ではある。ここからの安定感がメインチェスの強みだん。
逃げ勝利も狙えるチーム。ラエンゲンが平坦だけでなく山でも強い走りを見せた。第8ステージのウリッシも悪くない状態。ロデスの登りゴールも含め、今後も勝利できるステージは多そうだ。
そんな中、積極的な選手の1人であるモーリを失ったのは残念。落車した選手のあんなに生々しい声を聞くのも珍しい。
トレック・セガフレード ★★☆☆☆
コンタドールの失速は残念だが、早い段階でここまで落ちることができたのは、まだ良かったかもしれない。今後はモレマ、パンタノと一緒にステージ狙いにフォーカスしてみては? 今なら逃げに乗っても多少は許されるのではないだろうか。そのためにももっとタイムを失ってしまうのもありかもしれない。
デゲンコルブも思っていたよりはいい走りをできているが、それでも勝つのはやはり難しそう。
BMCレーシング ★★★☆☆
ポートは今年も、フルームに匹敵する走りを見せてくれた。だが、ドーフィネで下りが弱点であったことを、気にし過ぎたのだろうか。結果、急いてしまったのか。今回の結果が、今後の彼のダウンヒルにも暗い影を落とす可能性すらある。怪我の具合とは別に、今後に響く落車だったように思う。
今後はカルーゾの総合20位以内のキープと、GVAを始めとする強力なアタッカーたちによるステージ優勝狙いにシフト。そうなると十分に強いのがこのチームだ。2015年以降、勝利のないグランツールは1度しかない。
ボーラ・ハンスグローエ ★★★☆☆
ペテルの失格に続き、マイカのリタイアと不運が続く。ユライも平坦ステージでは大活躍していて良いグランツールデビューになったかと思っていたが、第9ステージであえなく足切り。今後もグランツール出してくれるのだろうか。マイカがアシストを拒否してまで先を行かせたブッフマンも、モン=デュ=シャを前にして早期脱落。今後はなんとか総合TOP10圏内を目指したいところ。新人賞は難しそうだ。
こうなったからにはどんどん逃げに乗り、ステージ優勝を目指してほしい。ブルグハートなど。ゼーリッヒも第7ステージで9位に入るなど、勝てはせずともスプリントで上位に来ることはできそうだ。
と思ったら第11ステージでボドナールが大健闘。あともうちょっとだった。今後のステージでも期待したいところ。
フォルテュネオ・オスカロ ★★★☆☆
開幕直前のスポンサーを巡るゴタゴタにもめげず連日逃げに選手をのせるなど健闘中。フェイユもギリギリ総合20位以内をキープしているが果たして。明日以降山岳での逃げも再び期待したいところ。
マクレーは今のところ、昨年ほどの存在感は示せず。せめて2位に。
チーム・サンウェブ ★★★★★
マシューズのポイント賞、そしてバルギルの山岳賞に向けてかなり良い形が作れた第9ステージだった。チームの力によるところも大きく、ジロ、ハンマーシリーズに続き、今年は飛躍の年であるなぁ。テンダム様様。テンダム大明神。あまり名前でイジるでない。
バルギルがここまで走れるとは予想外だった。もちろん、ラヴニール覇者なので、素質は十分過ぎたのだが。総合へのプレッシャーに負けずこれだけ伸び伸びとした走りができているのも、サンウェブというチームの雰囲気あってのものなのかもしれない。もちろん今後の山岳でもこの走りが持続するかはわからないが、超級山岳の決して多くない今大会で、60ポイントものリードは簡単は揺るがないだろう。
キッテルがあまりに勝ちすぎているため、マシューズのポイント賞は厳しいかもしれない。すべては、山岳での動き次第。それでも、足りるか・・・?
ワンティ・グループゴベール ★★★☆☆
ツール初出場となるこのチームの目的は2つ。1つは毎日逃げること。2つ目は、マルタンの総合上位だ。前者はここまでまあ、悪くはない。今後どれだけリタイアを出さずに頑張り続けられるか。マルタンに関してはせめて20位以内には入りたいところ。今後は逃げにものってジャンプアップを図らなければならないだろう。
ディレクトエネルジー ★★★★☆
コカールの不出場は残念だったが、カルメジャーヌが見事1勝。ほかのグランツールと違い、プロコンが勝利することすら珍しいツールでの勝利は格別だ。
シャヴァネルもヴォクレールもまだまだ動く気満々な気がするので楽しみたい。
コフィディス ★☆☆☆☆
ブアニが大人しい。相変わらず手は出ているようだが。例年以上に勝てる気がしない。若くしてピークが過ぎたように感じるのはキンタナ同様。
逃げも、例年のコフィディスと比べると積極さに欠けている気がする。ここ2年と違ってブアニのためのアシストで集団内にいる必要があるのかもしれないが・・・ナバーロとかマテとか、山岳逃げ専門家は明日からもっと頑張らないとね。
バーレーン・メリダ ★★☆☆☆
もしかして結局、エースは一度も映らずにおわった? コルブレッリも頑張っているがさすがに勝てる気はしない。逃げも目立てていない。ジロでは予想以上に頑張ってくれたが、エース格が軒並みそちらに出たせいかツールでは存在感無し。早くもブエルタに頼みか。
新城がスプリントのセカンドオプションっぽいのでちょっと期待してしまう。
ロット・スーダル ★★☆☆☆
ゴリラ元気ない。不調なの? シャンゼリゼでは今年も勝てると信じたいが。
今回のツールは大量にアタッカーを連れてきており、実際ベノートも含め山での存在感は示されている。が、勝てない。まあこれからだと思う。特にデヘントは、周りが疲れ始めてからが本領発揮のはずだ。
ディメンションデータ ★★☆☆☆
カヴェンディッシュは病み上がりなのに結構いいスプリントを見せてくれていた。少なくともクリストフやデゲンコルブよりも状態は良い。と思っていたのに残念な結果に。
しかしボアッソンハーゲンも凄かった。キッテルにも喰らいつく走り。登りスプリントステージはまだあるのでそういうところで期待したい。
逃げ屋カミングスは今のところなりを潜めている。中央山塊あたりで来そうだ。
カチューシャ・アルペシン ★☆☆☆☆
山でも平坦でもいいところなし。ブエルタに期待。
来年はツァペルの時代? それとも新しいスプリンター連れてくる?
FDJ ★★★☆☆
デマールの1勝は十分に大きかった。とはいえ、第9ステージであれだけリタイアさせたのは判断ミスなのは間違いない。チモライも十分に強いのに、グアルニエーリもコノヴァロヴァスもいないので可哀そう。第11ステージでもアシスト1人しかいなかったね。その割には頑張ったけれど。
ピノは山岳賞すら脱落。無理せずステージって言っていればよかったのに。後半のステージでの勝利を期待しているよ。アシストはいないけどさ。