いよいよ、ジロ・ディタリア第100回記念大会は、最終週に突入する。
アルプスからドロミテにかけての過酷な山岳コースを制するのはキンタナか、デュムランか、それとも別の誰かか。
そしてイタリア人による勝利は果たして果たされるのか。
第16ステージ ロヴェッタ〜ボルミオ 222km
前日のゴール地点ベルガモの北東に位置するロヴェッタから出発したプロトンは、まずは1級モルティローロ峠を攻略する。2年前、コンタドールが怒りのごぼう抜きを見せた峠であり、クライスヴァイクが先頭通過を果たした峠だ。しかし今年はそれを逆向きに登るらしい? 2年前よりは登りはきつくない(代わりに下りが・・・)
そしてこの日のメインとなるのは「チーマ・コッピ」のステルヴィオ峠。しかも南側から一度登ったあと、スイスに入国してのちに北側からもう一度登り返す。ツール第100回記念大会では「ラルプ・デュエズ2回」をやったわけだが、ジロでも似たような趣向を、ということだろうか。
とにかくデュムランにとっては正念場。キンタナが逆転を狙って仕掛けるとしたら、一回目のステルヴィオ——つまり、チーマ・コッピの方――から動き出すに違いない。また、第11ステージでモビスターが仕掛けたような、JJロハスやアマドールによる前待ち作戦にも注意したい。ここでサンウェブのアシストだけが牽引するような事態になれば、崩壊は免れない。
ラストが下りであることが、せめてもの救いか? いや、ここでもニバリのアタックに要注意だ。
第17ステージ ティラーノ〜カナツェイ 219km
ステルヴィオ峠の南から、一路東に向かい、いよいよドロミテ山塊に。
このステージのラストは緩やかな登りであるため、デュムランにとっては厳しいステージとは言えないだろう。逃げ切り勝利になる可能性もあり、大規模な集団によるエスケープが作られることだろう。
ルイ・コスタ、ピエール・ローラン、ミケル・ランダ、あるいはアスタナの面々といった、何としてでも勝利がほしいクライマーやルーラーたちが鎬を削るはず。
第18ステージ モエーナ〜オルティセイ 137km
まず短い。そしてギザギザ。ある意味でステルヴィオのステージよりも凶悪かもしれない。思い出すのは昨年のブエルタ。短いがゆえに序盤から積極的な攻撃を仕掛けていくであろうモビスターの猛攻の前で、デュムランとチーム・サンウェブがどこまで持ちこたえられるか。
前ステージがルーラー系の選手でも優勝を狙っていけるのに対し、ここは純粋なクライマーが勝利を目指して仕掛けてくるはずだ。ローラン、コスタ、ランダ。直前の下りもあるのでそれこそLLサンチェスが今日こそ・・・と来るかも。
もちろんマリア・ローザグループの中から飛び出した選手が勝利だけでも手に入れようとスパートをかけるかもしれない。ポッツォヴィーヴォ、ニバリ、ザッカリン、イェーツ。
デュムランはキンタナ以外の攻撃には静観を決め込むはずだが・・・レイアウトだけ見ると最後は若干、緩やかになるようなので、デュムランにとっては得意領域になるのが気になるところ。
第19ステージ サンカンディド〜ピアンカヴァッロ 191km
かつて、パンターニが勝利したピアンカヴァッロが、18年ぶりに登場、とのこと。
勾配も10%近い部分が続き、難易度は十分。
ただ、こういう「最後に一発ドカン」系の山はむしろデュムランにとっては得意な方である。ラストは若干緩やかになるようだし。
変なアクシデントがないことを、デュムランは願うばかりである。
第20ステージ ポルデノーネ〜アシアーゴ 190km
最終日がデュムランの独壇場になる以上、クライマーたちにとってはここが最終決戦場である。とくにキンタナにとってみれば、総合優勝を狙うのであれば、このステージ終了時点までに、デュムランとのタイム差を2分以上に開いておきたいところ。
攻撃の仕掛け所は十分にある。まずは残り90km地点あたりから始まる1級モンテ・グラッパ。まずはここで激しい攻撃を仕掛けられるのは間違いない。また、モビスターであれば前待ちも用意しているだろう。ここでデュムランが遅れれば、2年前の焼き直しになってしまう。
逆にモビスターにとっては、最後の1級山岳だけで勝負を仕掛けるのは心もとない。最後が平坦に近いレイアウトだけになおさら・・・。
今年はデュムランの傍に仕えるアシストは存在するのか?(サンウェブも前待ちを置きたいところ・・・)
第21ステージ モンツァ〜ミラノ 29.3km(個人TT)
今年の最終日は個人TT。つまりは、最終日まで勝負がわからない、という白熱の展開である。主催者としては、キンタナのような強力なクライマーがリードする中で、TT能力の高い選手――おそらくはニバリを含む――がここで逆転するかどうかのハラハラを、予想していたのだろう。
まさかデュムランが、キンタナを2分以上突き放して3週目に入るとは思わず。
もしもキンタナたちがデュムランを突き放した状態でこの日を迎えることができなければ、このステージはもはや消化試合になってしまうかもしれない。
そもそもこの日は下り基調で、やや登りも含んでいた第10ステージ以上にデュムラン向きなのだから。
まあ、とはいえ何が起こるかわからないのがジロ。そしてもしも、キンタナたちがデュムランを2分以上突き放した状態でこの日を迎えるのであれば、この日は歴史に残る名勝負が繰り広げられることになるだろう。