「登りか下りしかない」、難易度星4つの山岳ステージ。
スタート直後からアタック合戦が繰り広げられ、25名の先頭集団が形成された。
この中で注目すべきはモビスター・チーム。
3名の逃げを入れており、しかもその中のアンドレイ・アマドールは、4分39秒遅れの総合9位。
今回の逃げによって彼が総合上位に来ることになると、終盤に向けて、モビスターの攻撃の選択肢を増やしてしまう。
そうなると非常に厄介なため、総合優勝を狙う他チームは全力で、この先頭集団とのタイム差を縮めなくてはならない。
もちろん、その役を一手に引き受けるのはチーム・サンウェブ。
24歳のシンドレショスタッド・ルンケ、28歳のチャド・ヘイガ、31歳のシモン・ゲシュケ、26歳のゲオルグ・プライドラーといったメンバーがアシストとして懸命に先頭牽引を行う。かつてツールでステージ優勝を獲ったこともあるゲシュケは比較的温存させ、ルンケやプライドラーといった若手を中心にして先頭を回している様子。
「アシストの登りの力が比較的弱い」とされるサンウェブではあるが、この日はアシストたちがしっかりと仕事をこなし、タイム差を引き離されないようにうまくペースを保ったまま、誰一人欠けることなく終盤まで残った。
その意味でサンウェブのアシスト陣の頼もしさが浮き彫りとなったステージではあったが、一方でこの日、彼らが大きく足を削られてしまったことも確かである。3週目は厳しい山岳ステージが続く。同じように彼らが牽引を引き受けなくてはならなくなったとき、いったいどれくらい今日のように残り続けられるだろうか。第12・第13ステージと平坦基調のステージが続くので、その間に可能な限り足を休めておきたいところだ。
最後の山岳である2級モンテ・フマイオーロを登りではさすがにゲシュケ以外のアシストは残っていなかったが、代わりにFDJやトレック・セガフレードといった面々が牽引を手伝ってくれた。おかげで一気にタイム差も縮まり、山頂を越えるころにはヴィンツェンツォ・ニバリやティボー・ピノといった面々が、下りでのアタックを企図して飛び出した。ピノーは一度30秒近いタイム差をつけることに成功したがやがて吸収されてしまった。
総合優勝を争うメイン集団は結局、大方の予想通りの団子フィニッシュとなってしまった。
そして、逃げ切りが決まったのも予想された結末であった。
しかし、勝敗を争ったのはピエール・ローラン、オマール・フライレ、のちに合流したルイ・コスタ、タネル・カンゲルトなど合計8名。
今日のスタート地点となったフィレンツェでの世界選手権優勝の経験もあるルイ・コスタが有利かとも思われたが、この日積極的に逃げに乗っていたフライレが力を見せつけて、グランツール初勝利を挙げた。
フライレはこの日、すべての山頂先頭通過も果たしており、山岳ポイントもヤン・ポランチェと並ぶ44ポイントまで積み上げた。
獲得している山岳のランクがより高いポランチェが山岳賞リーダージャージをキープしているものの、今後のフライレの走り次第では、それを奪い取ることも十分可能である。
そうなれば、2015・2016の2年連続山岳賞に加えジロでの山岳賞獲得ということで、「山岳逃げ職人」フライレの名をより一層高めることになる。期待したい。
総合上位にいながら逃げ集団に乗り、見事プロトンとのタイム差をつけてゴールすることに成功したアマドールは総合9位から6位にジャンプアップ。
同じく総合12位にいたカンゲルトは総合8位に、15位にいたカタルドは11位にジャンプアップした。