ツアー・オブ・カリフォルニア第2ステージ、超級山岳マウント・ハミルトンを含む山岳ステージで、逃げに乗ったラファウ・マイカがそのまま逃げ切りを決めてステージ優勝を果たした。2011年以来、6年ぶりの出場となるカリフォルニアの地で、ツールに向けての弾みをつける総合優勝を飾ることはできるのか。
ギリギリでマイカに敗れ2位となったのがジョージ・ベネット。そして7秒遅れて3位でゴールしたのがイアン・ボズウェルであった。
ボーナスタイムも含めた、第4ステージ終了時点の総合順位は以下の通りである。
48秒というタイム差は、1週間のステージレースとしては逆転が難しい部類に入る。とくにマイカは山岳が非常に強いクライマーであるため、マウント・バルティー頂上決戦で大きなタイム差をつけて彼に勝つことは難しいだろう。
だが、今年のカリフォルニアの個人タイムトライアル(ITT)は、24kmとそこそこに長い距離である。そしてマイカ、ベネット、ボズウェルといった総合上位3名は、タイムトライアルが得意である、とは決して言えないタイプの選手たちだ。
たとえばベネットは、昨年のカリフォルニアの今年よりも4km短いITTで、ステージ優勝を決めたローハン・デニスから1分53秒遅れの38位でゴールした。それが原因で、もともと総合3位だったのが総合9位に転落しているのである。
ボズウェルに至っては、昨年のジロもブエルタも、後ろから数えた方が早いような順位でゴールしている。そちらは彼が総合エースを守る役目をしなければならかったがゆえに力を抑えていた、という見方もできるが、2年前のカリフォルニアのITT(10km)で、46秒遅れの33位となっている。基本的にITTは強くない、と見ていいだろう。
そしてマイカも、今年のティレーノ~アドリアティコのITT(10km)では、優勝のローハン・デニスから1分以上遅れての94位でのゴールである。
エースとして走った昨年のジロでは、10kmITTで優勝者から38秒、40kmITTでは3分弱の遅れとなっている。
一方、この3人を追う立場にある総合優勝候補の中でも、昨年総合3位のブレント・ブックウォルターと、同4位のアンドリュー・タランスキーは共にITTを得意としている。
昨年カリフォルニアのITT(20km)でも、タランスキーとブックウォルターが、ローハン・デニスからそれぞれ17秒、43秒遅れとなって2位、5位につけている。ブックウォルターでもマイカをギリギリで逆転できる可能性があり、タランスキーも昨年同様の力を発揮することができれば、現状のタイム差を第6ステージのITTでひっくり返すことは十分に可能だ。
それゆえに、明朝に行われる第5ステージ「マウント・バルティー頂上決戦」は、非常に重要なステージとなりうる。
少なくともマイカにとっては、プロトンの中でゆっくりと構えていられるような状況ではないはずだ。
ほぼ唯一の山岳アシストであるパヴェウ・ポリャンスキーの働きにも注目だ。
逆にブックウォルター、タランスキーは絶対にここで遅れるわけにはいかない。
とくにタランスキーは、昨年ブエルタでの復活基調を無駄にせず、今年のツールで飛躍するためにもここでの走りは本当に重要になる。
今シーズンはやや不調が続いていたのと、今朝の第4ステージもトラブルで遅れかけていたのが気になるところだ。
ちなみにこの「マウント・バルディー」は、2年前のカリフォルニアで、イアン・ボズウェルが3位でゴールしたステージでもある。
当時の優勝選手はジュリアン・アラフィリップ。2位がセルヒオ・エナオで、ボズウェルはエナオと同タイムの23秒遅れでゴールした。そして今年はアラフィリップもエナオもいない。
(ちなみにまったく参考にはならないだろうが2011年のマイカのマウント・バルディーは2分遅れの11位ゴールだった)
実績で言えば間違いなくマイカに軍配が上がりはするものの、母国パワーを身にまとったボズウェルが、驚きの走りを見せてもおかしくはないということだ。
そう考えると、ボズウェルとのタイム差の14秒も、決して楽観視できるタイム差ではないのである。
元々実績は抜き出ており(近年のグランツールで総合表彰台に立ったことがあるのは今大会参加者ではマイカだけだ)、そのうえでの第2ステージの勝利もあって、マイカの総合優勝は盤石であるように見える。
それでも、何が起こるかわからないのもまた、1週間のステージレースの魅力である。明朝のマウント・バルディー決戦、そして明後日のビッグベアー・レイク個人タイムトライアルと、目が離せない展開が続く。ジロが今日明日と総合争いにおいては平穏なステージが続く分、カリフォルニアの熱い戦いにしっかりと注目していきたい。
このカリフォルニアで総合優勝を果たせるくらいでなければ、マイヨ・ジョーヌ争奪戦に加わることすら難しいだろう。