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ストラーデ・ビアンケ2017 着順20位内全選手レビュー(後編)

前編に引き続き、着順20位以内の選手たちを全レビューする。

今回は10位~1位。

 

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レース名の由来となった「白い道」。今年は悪天候の結果、泥だらけの過酷なコースとなった。

 

 

第10位(+2分52秒) スコット・スウェイツ(ディメンションデータ)

 27歳イギリス人。元ボーラ・アルゴン18。その名がつく前からずっと在籍していた、チームの要となるクラシックスペシャリストであった。だが今年、サガンの移籍が決まり、新たな居場所を求めて移籍。結果、ボアッソンハーゲンを超える結果を出し、今後、新チームにおけるクラシックエースとしての立ち位置を得ることができたかもしれない。昨年のクールネ~ブリュッセル~クールネでも10位。十分な力量の持ち主だ。

 

第9位(+2分23秒) ティボー・ピノ(FDJ)

 26歳フランス人。彼が最初に逃げに入り込んでいるのを見たとき、あらゆる視聴者が驚きを覚えたであろう。ニバリやアルが入っているならまだしも、ティボー・ピノ。そういったイメージがまったくない選手であった。

 とはいえ、実際この選手は、実はステージレースよりもワンデーレースの方が向いているのではないかと思っている。グランプリ・シクリスト・マルセイエーズやイル・ロンバルディアでも毎年上位の方に入っている。もっとアルデンヌクラシックに挑戦してもいいんじゃないかとも思っている。

 序盤の逃げから最終盤まで残っただけでなく、共に逃げたメンバー(コルサエフ、ジョレギ、ゴンサルベス)の中でも最上位につける走り。見事であった。昨年から急激に上げてきた独走力もモノを言ったのであろう。

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泥塗れになりながら、貫禄の9位ゴール。続くティレーノ~アドリアティコではどんな走りを見せてくれるのか、楽しみだ。

 

第8位(+2分20秒) ティース・ベノート(ロット・ソウダル)

 22歳ベルギー人。昨年も8位のこのビアンケでエースとして出場。しかし、モンテ・サン・マリーで前に出たのは彼ではなく、初出場のウェレンス。そして彼は3位という大きな結果を生み出した。

 フランドルクラシックとアルデンヌクラシックの2つの要素を併せ持ったレイアウトだからこそ、フランドルスペシャリストのベノートと、アルデンヌスペシャリストのウェレンスという2枚のカードを使えるのはロット・ソウダルの大きな武器である。来年はどちらで攻めるか。そして優勝を獲ることができるのか。

 ベノートとしての次の目標はドワルスドーワ・フラーンデレン、そしてE3。ワールドツアー初勝利なるか?

 

第7位(+1分29秒) クリストファー・ユールイェンセン(オリカ・スコット)

 27歳デンマーク人。クラシックにおいて上位の成績を獲っていた選手では決してない。3年前のストラーデ・ビアンケで18位を獲ったのが最も良い成績であるくらい。そのときも5分以上遅れてのゴールだった。だが今年はチームメートのダーブリッジと共に最終盤まで喰らいつき、残り17kmの地点ではアタックを仕掛けさえした。

 昨年ジャパンカップでは2位。ワンデーレース向きの足を持っていることを証明しつつあるか。今後はアルデンヌでの活躍なども見てみたい。

 

第6位(+1分26秒) ルーク・ダーブリッジ(オリカ・スコット)

 25歳オーストラリア人。こちらもクラシックにはよく出場するがそこまで高いランクにつけていたことは多くない。しかし先週のクールネ~ブリュッセル~クールネで12位を獲ったのに続き今回のこの健闘。オリカにおける、クラシックエースとしての才能を開花させていけるか。第2のヘイマンを目指して。

 

第5位(+1分26秒) トム・デュムラン(チーム・サンウェブ)

 26歳オランダ人。ピノと並んで驚きの走りを見せた男。というか難所コッレ・ピンツィトではむしろ先頭を積極的に牽引したほど。今年はいよいよグランツール制覇に動き出すようだが、登りも合わせて一体どんな適性を持つ男なのか底が見えない。オランダ人だから悪路には強い、というのは納得がいくけれど・・・。

 さすがに激坂ル・トルフェでは遅れを喫してしまった。彼の弱点はこの、激坂にあると言えるかもしれない。ただしそのあともペースで追い付ける足を持っているので、最強の4人に次ぐこの成績となったのはさすがである(そう考えるとダーブリッジとユールイェンセンは本当に凄かったな)。

 ところでサンウェブは今年まだ2勝。3月のワールドツアーでどれだけ勝利を得られるか・・・。マイケル・マシューズに期待である。

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必死の形相で集団を牽引するデュムラン。素晴らしい走りであった。

 

第4位(+23秒) ゼネック・スティバール(クイックステップ・フロアーズ)

 31歳チェコ人。序盤から積極的な攻撃を繰り出し、サガンのいないこのレースで、クフャトコフスキと並んで、最もレースをコントロールしていた男のように思えた。しかし、春のクラシックにおけるクイックステップの「いいところまではいくけれど・・・」のジンクスを打ち破ることはできなかった。というか最後のカンポ広場の登りでは完全に足が終わってしまっていた。

  最も熱い走りを見せてくれたこの男に、最大の賛辞を! 次はドワルスドーア・フラーンデレンだ!

レース終了後、すべてを出し切って座り込むスティバール。表彰台に立てなかったことは、本人にとってあまりにも悔しいい結果であったことだろう。

 

第3位(+17秒) ティム・ウェレンス(ロット・ソウダル)

 25歳ベルギー人。山岳逃げのスペシャリストが、今回自身最高の結果を叩き出すことができた。よくよく振り返ってみると、彼のクラシックでの戦績は昨年のアムステル10位くらいがせいぜいで、実はまだそれほど実績を出せていなかったようだ。

 だが今年の彼は、さらなる進化を遂げている。すでにマヨルカ・チャレンジで2勝、そしてブエルタ・アンダルシアで1勝と、合計3勝を記録している。今年はぜひ、アルデンヌクラシックで爆発してほしいのだが・・・どうだろう。

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ヴァンアーヴェルマート、スティバール、クフャトコフスキという、最強のメンバーの中に入り込んで最終盤まで戦った初出場のウェレンス。だけでなく、積極的なアタックを繰り出しさえした。

 

第2位(+15秒) グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(BMCレーシング)

 31歳ベルギー人。オンループ覇者はしかし、その翌日のクールネ~ブリュッセル~クールネでは、優勝を決めた最後の集団に乗り込むことができず、大敗した。今回もまた、同じような展開になりかねなかった。残り37km地点の登りで、追走の大集団からスティバール、クフャトコフスキ、デュムラン、ボアッソンハーゲンが飛び出したそのとき、ヴァンアーヴェルマートを含むBMCのメンバーは誰一人、そこに選手を送り込むことができなかった。

 しかし、そこから先の展開は先週とは違っていた。23歳のチームメート、ステファン・クーンが懸命に集団を牽いたことによって、一時は30秒近く開いたタイム差を、わずか5秒程度にまで縮めることができた。そこでヴァンアーヴェルマートがアタック。なんとか最終列車に乗り込むことができた。

 2年ぶり2度目の優勝。過去7年間で参加した6回ですべてベスト10入り。安定した強さを見せながら、なかなか勝利は掴めない。しかし昨年はそんなヴァンアーヴェルマートの飛躍の年となった。そのときと同じようにオンループ勝利から始まったこの年も、十分に期待していいはずだ。次はE3、ヘント~ウェヴェルヘム、そしてロンド・ファン・フラーンデレンだ!

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第1位 ミハウ・クフャトコフスキ(チーム・スカイ)

 26歳ポーランド人。終始、積極的な走りを見せた。それゆえに終盤での失速が危ぶまれた。だが、最後はその攻撃が功を奏し、一気にライバルたちを突き放した。一度ついたタイム差は二度と縮まることはなく、最後は余裕をもってゴール。強さを見せつけた勝利であった。

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カンポ広場に突入したクフャトコフスキは、興奮のままに観客たちを煽り、そして歓喜のゴールを遂げた。ゴール後はバイクに突っ伏す姿もあり、全力を出し切ったことがよくわかった。

 

 ストラーデ・ビアンケの勝利は2度目。しかし、この日の勝利はそのときとはまた違った歓喜を彼にもたらしてくれただろう。何しろ、昨年のE3以来の、およそ1年ぶりの勝利。病気と不調に苦しんだ1年であった。

 今シーズンはだから、ゆったりと始めることにした。自分を追い込むことなく、平静を保ち、「健康第一*1」で。それでも、結果にこだわらないとしていたヴォルタ・アン・アルガルヴェでは総合2位。そして今回の、力を見せつけたビアンケの勝利。悪くない立ち上がりを、今のところは見せている。

 あとは本人が最も力を入れて臨もうとしているアルデンヌクラシックで、どれだけの結果を出せるか。昨年はその辺りから、調子が悪くなっていったのだ。

 そして、グランツールでフルームをアシストする彼の姿も見てみたい。

 

 激坂も、悪路も、独走もこなせるオールマイティな実力者クフャトコフスキ。

 その走りの可能性を、さらに突き進める年となってもらいたい。

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ストラーデ・ビアンケ表彰台。左から2位のヴァンアーヴェルマート、優勝のクフャトコフスキ、3位のウェレンス。

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