りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

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ブエルタ・ア・エスパーニャ2016 総括

■Movistar Team ★★★★★

 間違いなく今大会最強チーム。序盤でルーベン・フェルナンデスがマイヨ・ロホを着たほか、中盤では総合上位に3名入り込む力を見せつけた。最終的にはキンタナの総合優勝と、ダニエル・モレーノ総合8位。

 とくに良い働きをしたのがアレハンドロ・バルベルデ。エースナンバーをつけてはおり、最序盤ではキンタナ以上に走れる姿を見せていたものの、キンタナの調子が上がってきたのを見てすんなりとアシスト役に転換。グランツール連戦の疲れもあって第14ステージで大きくタイムを失うが、本人の表情は至って冷静で、むしろ翌ステージではフルームらをかき回す重要な役回りを演じるきっかけとなり、キンタナ総合優勝の大きな助けとなった。

 ポイント賞もあと一歩、といったところであったが、昨年のように最終ステージでお茶目な行動に出ることもなし。確かな実力を持ちながらも、落ち着いたベテランとしての姿を見せてくれた。それでも最後までハラハラしたけれど。

 実はバルベルデ師匠、これでグランツール5回連続完走。まさかとは思うけれど、このまま記録を伸ばすつもりでいる? 今からハンセンさんに追い付くのはまず不可能ではあるけれど、3大グランツールを連続出場し、かつ総合争いに食い込んでいけるのはバルベルデならでは。ある意味で最強の男である。

 そしてキンタナはこれにて2大グランツール制覇。あとは黄色だけである。7人目のグランツール制覇者となるか。そしてそれが実現すれば、非西欧諸国による初のグランツール制覇者となりうる。

 それは決して不可能なことではない。だが簡単なことでもない。今年も第15ステージがなければ勝利はなかった。今最もキンタナに求められる力は、TT能力の改善か、もしくはフルームをぶち抜ける登坂能力の獲得である。

 2015年のように、TTがほとんどないコースレイアウトであれば、キンタナの勝利する可能性はかなり高まると言えるだろう(事実、2015年は、横風分断がなければキンタナが勝利していたと言えるタイム差であった)。

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■Team Sky ★★★★

 クヴィアトコウスキーの早々のリタイアもあり、ツールと比べるとチーム力がイマイチ、といった感触。それでもレオポルト・ケーニッヒやダビロペス・ガルシアなどの牽引力は相変わらず凄まじく、セルヒオルイス・エナオモントーヤやワウテル・ポエルスなどと並び、ポート級の山岳アシストには事欠かない。他チームにしてみれば一人くらい貸してくれよ、といったところである。

 とくにケーニッヒの活躍は目を瞠るものがあった。昨年もジロでポート亡きあと総合6位という結果を出したものの、それ以降さしたる活躍がないまま、今年も(おそらくは怪我によって?)シーズン前半を静かに過ごしていた。そんな中出場したこのブエルタでは、フルームに並ぶ総合上位に食い込んできて、ポートに負けない山岳アシスト力を発揮する。第15ステージのトラブルで総合順位を大きく落としたものの、今度はステージ優勝を目指して第17ステージは惜しいところまで喰らいついた。

 スカイにおけるポスト・リッチーとしての役回りを十分に果たせる逸材である。また、ジロを始めとした各種ステージレースでも十分にエースを担えるのではないか。TTでも6位だったし。来年が楽しみな選手の一人である。

 そしてクリストファー・フルームはやはり異次元の強さであった。正直、第15ステージがなければ総合優勝していたのは間違いなく彼であった。もちろんそこで隙を一切見せなかったキンタナは強かったのだけれど、それでもあの登りの力とTTの圧倒的な力を併せ持っているのはチート以外の何物でもない。しかもこの人、オリンピックにも出て銅メダルを取っているのだよ。

 来年はジロに出場する可能性がある? せっかくだからツールに集中して5勝クラブへの仲間入りを確実にしてほしいところなのだが、フルームの場合はダブルツールすら簡単に達成してしまいそうで怖い。

 しかし今回のフルームは、ただ強かっただけでなく、いろいろな表情を見ることもできた点で貴重だった。ひたすらペース走行にこだわっていたかと思えば、第14ステージでキンタナのアタックにひたすら反応する姿を見せてみたり、第20ステージではがむしゃらにアタックを繰り出す姿を見せてみたり。最後にはキンタナの勝利を讃える拍手も見せてくれた。そして第11ステージの、今までとはちょっと違った、熱いガッツポーズ。ただ冷静なだけではない、少年のような心も持ち合わせた、クリス・フルームという一人の選手の魅力が詰まったブエルタであった。

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 そういえばエリッソンドさんを獲得するとか? 相変わらずっスねスカイさん!

 

 

■ORICA-BikeExchange ★★★★★

 本来はスピードチームであり、総合を十分にアシストできるようなチームではない。それでも、チーム一丸となってチャベスの総合表彰台と、そしてサイモン・イェーツの総合6位を勝ち取った。今大会最もチーム力の光ったチームである。第20ステージのハウスンの牽きは感動モノである。

 ステージ優勝数も、エティックスと並ぶ最多の4勝。とくにマグヌス・コルト・ニールセンの大躍進は素晴らしい。スピードチームではあるもののピュアスプリントというよりは登りスプリント的な印象の強いオリカの中で、ピュアスプリントで対抗できる実力者として今後も重宝されるだろう。

 来期はゲランスの後継者と目されていたらしいマイケル・マシューズが脱退。チーム全体が総合狙いへと変貌していく表れか。その分、強力な山岳アシストを捕まえたいところ。スカイからおこぼれはもらえないかしら?

 チャベスが来年どのグランツールに出るかは注目である。個人的には、まだしばらくはツールには挑戦しなくてもいいのではないか、と思う。今まで同様にジロとブエルタに集中し、まずはその総合優勝を狙うのもいいのではないか。逆にイェーツ兄弟にしっかりとツールを経験し続けてもらい、そこでの総合表彰台への可能性を高めていってほしい。

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■Tinkoff ★★★

 コンタドールは不運にも遭いながら、最後まで諦めずに戦い抜く姿勢を見せ続けてくれた。彼のその姿勢、勝利への執念こそが、フルームを総合優勝から引きずり下ろした一助となったという意味で、今ブエルタをかき回した最大の功績者である。

 しかし彼自身は惜しくも勝利を得られず。その要因はコンタドール個人の能力では決してない。彼はTTで全力を賭したし、第20ステージでも、一時は1分以上開いていたタイム差を可能な限り縮めることには成功した。しかしコンタドールには、最後の最後を支えてくれる仲間がいなかった。キセロフスキーの早々のリタイアも、彼にとっては痛手であったのだろう。

 思えば、チーム力においては常に、スカイやモビスター、アスタナに差をつけられ続けてきたチームであった。一人一人の力は十分に高いのだが、総合のみに集中するのか、などにおいてはちぐはぐな感じが常にあった。結果、コンタは頑張るのだけれど思うように結果は出せず。

 来年は新チームに移籍して、そのあたりが解消されるのか。何かしら大きな結果を出したうえで引退したいところである。

 ただ、トレックとの契約はあくまでも噂であって正式アナウンスはまだない、とか?

 どうなることやら。

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■Canondale-Drapac Pro Cycling Team ★★★★

 ステージ優勝こそなかったもののタランスキーが総合5位。クイーンステージでの頑張りとTTの好走が光った。そして生え抜きの若きフォルモロをしっかりと守り抜き総合9位に。現在と未来とにしっかりと結果を残すことができた。

 キャノンデールにはほかにも、今回は途中リタイアしてしまったもののパトリック・ベヴィンがいたり、ジロでも活躍したモレノ・モゼールがいたりと、今後が楽しみな選手が多い。ドンブロウスキーもその1人のはずなのだけれど、今回はちょっと活躍できないまま終わってしまった。ベン・キングも好きな選手だったのだけれど・・・来期は契約なし? カリフォルニアで勝ったのに? 名前かっこいいのに!? 残念だ。

 そしてみんな大好きピエール・ローラン。逃げへの積極的な姿勢は印象的ではあったのだが、いかんせん勝てない。そしてTTではもはや実況陣からも言及されなくなってしまった。カメラにもそもそもあまり映らなかったか。

 まあでも、社長の立ち位置でやっていけば結構イケるんじゃないか。逃げにガンガン乗りつつ、とりあえず山岳賞を狙っていくポジションで。期待しすぎなければ十分強い。そういうキャラでいいじゃないか。もういい加減おじさんになるしね。

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■Etixx - Quick Step ★★★★★

 裏のツアー・オブ・ブリテンでのヴェルモトとトニー・マルティンの勝利と合わせ、年間50勝に到達したらしい。北のクラシックでは「数的有利(笑)」などと馬鹿にされてきたが気が付けばこの偉業。さすが一流のチームである。

 このブエルタでも驚異のステージ4勝。さらにはデラクルスの総合7位。立役者のメールスマンは来期、プロコンチネンタルチームへの降格が決まってしまっていた後だったので残念ではあるが。

 来期は総合でもボブ・ユンゲルスやジュリアン・アラフィリップなど期待できる人材が揃っている。クラシックでもグランツールでも、年間通して活躍が期待できるある意味では最強チームである。

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■Team LottoNL - Jumbo ★★★★

 総合上位候補だったクライスヴァイクが早々にリタイアしてしまったのは痛手ではあったが、ロベルト・ヘーシンクが強さを見せつけてステージ1勝。そして若手のジョージ・ベネットが総合10位に食い込んできたことで、今後の可能性をしっかりと残した結果となった。

 来期はやはりクライスヴァイクを中心に据えて総合上位を狙いに行くか。ヘーシンクも、総合は無理せず、こういったステージ優勝をしっかり狙っていくスタイルでもいいんじゃないかな。

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 ■Astana Pro Team ★★

 ジロでニバリを優勝に導いた老兵(に見えるがまだ36歳の)スカルポーニで総合上位を狙うも、健闘むなしく総合ベスト10入りを逃す。本来はミゲルアンヘル・ロペスモレーノで総合を狙う予定だったのだろうが、第1ステージから繰り返される不運を前にしてリタイア。アルもいないし、チーム力は全チーム中1,2を争うモノがあるのに、導くべき十分なエースがいなければそれも形無しである。

 振り返ればジロのニバリくらいしか目覚ましい結果はなく、そのニバリも来期はいなくなってしまう。大丈夫か、アスタナ。もちろん来期はアル復活はあるんだろうけれど・・・タレントはそれなりに揃っているのだが、イマイチ結果が出るヴィジョンが見えない。

 今後はローザのロンバルディア獲りなどに期待。

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AG2R La Mondiale ★★★

 ジャン=クリストフ・ペロー、最後のグランツール。ジロは残念だったが、このブエルタではなんとか総合13位。TTもそれなりの数字を出して、とりあえずは出し切ったか。

 第20ステージで例のピエール・ラトゥールが力を見せつける勝利を獲得。戦略もへったくれもないがむしゃらなアタックの連続の結果、そのまま押し切ってしまった。22歳とは思えない貫禄のある顔と共にグランツール初勝利。来期はどんな活躍を見せてくれるのだろう。

 そして個人的にはアクセル・ドモンが繰り返し逃げに出てくれたのが嬉しかった。今回は残念だったが、いつかは勝利を見せてくれるだろう。

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Trek - Segafredo ★★★

 スプリンターとしてはボニファツィオもいたが、こちらは早期にリタイア。代わってフェッリーネがスプリントでも上位に入るが。。。山岳でも上位に残る走りを見せる。この人、スプリンターじゃなかったのか? 超級フィニッシュの第20ステージでは3位。よって、バルベルデ安定かと思っていたポイント賞ジャージを獲得。チームに結果をもたらしてくれた。

 スペルディアにはぜひともステージ勝利を得てほしかった。まだまだ諦めずに戦ってほしい。

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■FDJ ★★

 エリッソンドは本当に惜しかった。戦略ミスと言えばそれまでだが、それでも、昨年と違い最後まで戦い抜いてくれたその姿勢にまずは拍手! 何しろそれがなければ、このチームほとんど何もできていなかったのだから。

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■IAM Cycling ★★★★

 まともにステージ優勝を獲れなったチームも多数いる中で、ステージ2勝。さらに今年は全グランツールでステージ勝利を獲得しているのである。いわゆる「閉店セール」。だが確かな実力を持つことを示してくれた。 マティアス・フランクは昨年ツール総合ベスト10にも入った実力者。ヘーシンク同様意外なグランツール初勝利であったが、今後もこういったステージ勝利をどんどん狙う選手でいてほしい。来年はどこにいるんだろう。トレックとか似合いそうだけど、オリカとかジャイアントとかロットNLで総合のアシストをしてくれたらうれしいね。

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■Dimension Data ★★★

 フライレの山岳賞は確かに素晴らしかったが・・・だが確かにこのブエルタに限って言えば、プロコンチネンタルチームと大差ない結果だったと言っても言い過ぎではないかもしれない。

 移籍組以外の活躍がもっと望まれるところである。レイナルド・ヤンセファンレンズバーグなどはもっともっと結果を出せそうな気がするが。

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■BMC Racing Team ★★★

 ヴァンガーデレーン・・・

 サミュエル・サンチェスの総合上位も十分狙っていける中で、ITTでのまさかの落車骨折リタイア。とりあえずドラッカーが念願の勝利を獲得できたのはよかったが、強者が揃うなかで思うように結果が出せないでいるチーム。来期いっぱいでの解散も噂されており、このままでは不味いのでは。。

 あ、でもアタプマは途中までは頑張ってくれた。マイヨ・ロホも着たし。第20ステージも惜しいところだった。昔から山岳ステージではいいところまでいくアタプマ。来期こそはグランツール勝利を獲りたいところ。

 来期はポートを中心に総合を狙っていくことになりそうだが、それを支える体制を十分に作れるか。

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■Lampre - Merida ★★

 メインチェスが思うように伸びず。最終的に総合40位かー。ツールの疲れもあるのだろう。昨年活躍していたチームだけに少し残念な結果に。それでもきっちりステージ優勝を獲ってくるあたりはさすがである。

 

■Team Katusha ★★

 シリンの総合15位とカンペローナでのラグティン勝利。

 しかし全体的に存在感の薄かった今ブエルタ。栗村氏いわく「女子高生っぽい名前の」マミキン21歳とレストレポ21歳がそれぞれ山岳でいい走りを見せていたので、彼らの今後が楽しみ、といったところか。

 

Lotto Soudal ★

 基本スプリンターチームであることも相まって、ほとんど存在感を示せなかった。デクレルクやデヘントが山岳で逃げたくらいか。

 まあワールドツアーチームの中にはこういうメリハリをつけざるを得ないところもあるだろう。代わりに裏のツアー・オブ・ブリテンでしっかりとグライペルが勝利獲得してるしね。

 

■Team Giant - Alpecin ★

 これもスプリンターチームだしなぁ・・・。

 本当はデゲンコルブに期待していたのだが、やはり怪我回復直後ということもあって、厳しい山岳の多い今年のブエルタは回避となった様子。

 代わりにニキアス・アルントの勝利を狙うつもりでチームもいたわけだが、それも結局叶わなかった。大規模な逃げ集団が生まれた第14ステージや第17ステージでも逃げを送り込まなかったりと、実はやる気がなかった??

 ただ個人的には、トビアス・ルドビグソンが長距離ITTでもしっかりと3位に入ってくれたのは嬉しかった。3位だよ、3位! これからが楽しみである。

 

■Caja Rural - Seguros RGA ★

 去年はフライレが大活躍してくれたが、今年は地元で花を咲かせることができず。ビルバオもなんどか山岳ステージで生き残ってくれたのだが、勝利を得ることができなかった。来年こそはリベンジをしたいところだ。

 

■Cofidis, Solutions Crédits ★

 マルドネスが頑張ったくらいか・・・。

 

■Bora-Argon 18 ★

 ツールと違ってジロ、ブエルタというのはプロコンチネンタルチームも活躍しうるレースだと思っているのだが、今回のブエルタはまったくそういった気配がなかった。唯一勝利したディレクトエネルジーは半分ワールドツアーみたいなもんだし。

 このボーラも来年はワールドツアー入りの噂があるというのに・・・大して選手の名前も覚えられなかった。ベネデッティくらいか。ホセ・メンデスさんはエースナンバーをつけてはいたがさほどの結果は残せなかった。

 

■Direct Energie ★★

 カルメジャーヌの勝利は嬉しいが、あくまでも総合上位を狙っていたロメン・シカールが大失敗。結果、総合55位って。まあもっと逃げにどんどん乗ってステージ優勝を狙っていくしかないかな。

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