りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

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ツール・ド・フランス2016 第11ステージ~第14ステージ

第11ステージ
 残り12㎞からのサガン、勇気あるアタック。そしてそこにすかさず乗り込んだフルームの勝負勘の強さと、それに即座に反応したゲラント・トーマスのアシスト力の高さ。
サガン、4年ぶりの「ツール複数回ステージ勝利」を成し遂げる。カヴェンディッシュと言い、今年は「かつての栄光の復活」が演じられることの多いツールである。
 だがサガンとしては、ボドナールを勝たせてあげたかったようではある。ゴール直前の動きも確かにそのように見える動きだった。だがフルームがゴールを狙いに行く動きを見せた以上、サガンも動かざるをえなかった。
 フルームの、1秒でも多くタイムを稼ごうという勝負へのこだわりの強さは好感が持てるが、この日だけは少し納得がいかない。ボドナールは確かに喜んでくれていたが、彼が勝利したときの表情も、見てみたかったものだ。

 


第12ステージ
 期待のモン・ヴァントゥー。強風のためステージ短縮、モン・ヴァントゥーの象徴とも言える荒涼とした風景は今回見ることができなかったのは残念。
 しかしそれでも過酷な山岳バトルは十分に展開され、諦めない走りを見せたトーマス・デヘントがステージ勝利と山岳賞ジャージ、そして敢闘賞をゲットした。
 ジロでのティム・ウェレンスの走りと言い、「グライペルのスプリントだけじゃない!」というロット・ソウダルの強さとこだわりが見られたステージであった。
 そして総合争いも白熱した。ついに牙を剥いたキンタナ。だがその攻撃は実らず、むしろ彼はこの後大きく遅れた。最終的にはバルベルデに索かれてヘロヘロになりながらゴール。トラブルの影響もあったのだろうが、キンタナの現状の調子の悪さを予感させる走りとなった。果たして3週目までに調子を取り戻してくれるのか?
 打って変わってバウク・モレマの調子の良さ。確かに毎年トップ10常連であり、昨年も最終盤で鋭いアタックを見せていた実力者ではあるが、この日は終盤にアタックしたフルームとポートに唯一ついていけた選手であった。翌日のTTでも好走を見せ、表彰台する狙えるのか?と期待させてくれる。
 ブエルタ、ないしジロでの総合優勝も狙っていけるのではないか。デュムラン、クライスヴァイクと並んでオランダ期待の星がまた一人、である。
 そんな白熱のステージ展開も、最後のアクシデントがすべて持っていってしまった。
前代未聞の事態。マイヨ・ジョーヌが自らの足で走り始めたその映像を見た瞬間、辛く哀しい気持ちになってしまった。ロードレースを見てこんな感情を抱くのは初めてだった。
 誰が悪い、というわけではない。ただ観客とのトラブルはあらゆるところで目につき始めている。少しずつ状況が良くなっていくことを望む。
(第15ステージは心なしか観客がまだ大人しかったようにも見える。本当に良い変化が生まれることを期待している。・・・発煙筒は相変わらずで、あれもどうにかしないといけないよね)

 

 フルームへの救済措置に納得するというフランス国民が40%ほどだったとのこと。これが多いか少ないかは難しいところだが、彼らは先日のイェーツへの救済措置にも否定的なんだろうか。
 1秒をめぐる激しい争いを展開するプロトンも、何か辛く哀しいことが起きたときには一致団結して支え合う、それが自転車ロードレースの良い所だと思っている。かつてのレースボイコットや、ニュートラル走行の話のように。

 


第13ステージ
 トム・デュムランは確かにTTは強いが、それでもまだカンチェラーラマルティンといったレジェンドには一歩及ばないだろうーーそんな評価はもう古くなっているのかもしれない。
 もちろんジロや今回のカンチェ、そしてマルティンは決して万全の体調ではなかったのだろうけれど、それを差し引いてもデュムランの走りは圧倒的であった。2013年のフルームがマルティンに僅差となっていたのに対し、今回もフルームは速かったがデュムランとの間にはそれなりの差がついた。
 デュムランはもはやレジェンドの領域に達しているのか。そうなると期待したいのが今年のオリンピックである。
 だが、そんな日にティボー・ピノが不在であったことが悔やまれる。彼が万全の状態であれば、きっと今日も素晴らしい結果を出せたであろう。

 

 そして、総合成績でここまで僅差をなんとか保ててこれていたライバル勢が軒並みフルームにノックアウトされた。ポートやバルベルデはまだ持ちこたえた方か。イェーツやキンタナもなんとか被害を最小限には抑えられたはずだ。だがアルやメインチェスは痛かった。
 ここでもやはりバウク・モレマの走りが素晴らしかった。ときにロードレーサーは、思いがけぬ走りを見せたときにそのポテンシャルの高さが維持され続けることがある。いわゆるリーダージャージマジックである。そして今回のモレマはリーダージャージこそ着ていないものの、この後もこの好調が続くことを期待してやまない。ジロでのクライスヴァイクや、ブエルタでのデュムランのように。
 しかしジャパンカップで優勝したばかりの選手がここまでの走りをツールで見せてくれることに、一日本人として嬉しさを感じないわけにはいかない。

 


第14ステージ
 やや最後気になる動きはあったものの、カヴェンディッシュが堂々たる4勝目。このままシャンゼリゼも勝ってしまうのではないか。
 だが個人的に喜ばしかったのはデゲンコルブ復活の兆しである。今ツールこの後の活躍は難しいかもしれないが、ブエルタでの大暴れを期待したいところである。
 ところで、サガンを見ていると、ツールのポイント賞はやはりピュアスプリンターには厳しいのかな、と錯覚してしまうが、改めてポイント賞ランキングを見てみると、サガンより下はピュアスプリンターばかりであることに気がつく。
 サガンが異常なだけであることを、改めて確信させてくれる。

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