りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

スポンサーリンク

ツール・ド・フランス2016 第10ステージ

 エスカルダス・アンゴルダニからルヴェルにかけての197km。スタート直後に1級山岳を登り、そこから長い下り坂。ゴール7km手前に3級山岳を控える、大逃げか平坦か予想しづらいステージ。

 

 構成としては去年のツール第15ステージと似たようなステージだ、という印象であった。だから、サガンを含んだ大きめな逃げ集団が形成されたところまでは予想通りだったのだが、その後、プロトンが完全に追走を諦めてしまう。

 クリストフ擁するカチューシャや、コカール擁するディレクトエネルジーが集団を牽引しようとする姿勢を見せたのは去年と同じだったのだが、それ以外のチームがなかなか回ろうとしない。カチューシャも早々に諦める。去年は真っ先にグルペット入りしたカヴェンディッシュが集団に追い付いてしまうほどのペース。キッテルはどこにいたのだろう。

 とにかくスプリンターチームが完全に追走を諦め、プロトンはまったりサイクリングモード。

 逃げを許された先頭集団は、残り25kmを過ぎた段階で早くもステージ優勝をめぐる激しいバトルを展開。結果として7人の小集団が形成された。

 このメンバーが著しく豪華であった。

 オリカ・バイクエクスチェンジが3人。ルーク・ダーブリッジ、ダリル・インピー、マイケル・マシューズ。ノルウェー・チャンピオンジャージを着用するエドヴァルド・ボアッソンハーゲン。ベテランの名スプリンター、サミュエル・ドゥムラン。「サガンキラー」ことグレッグ・ヴァンアーヴェルマート。そしてペーター・サガン

 メイン集団があまりにも「競争なし」状態だったため、カメラを異例なくらいに先頭集団ばかりを映し続けていたこともあって、「これは春先のクラシックか!?」と錯覚するような状況であった。

 果たしてこれを制するのはこのメンバーのうちの誰なのか。思いもよらぬ展開に手に汗を握る状況となった。

f:id:SuzuTamaki:20160713011952p:plain

ゴール前1.4km。ダーブリッジは既に仕事を終えているため、6人が残った状況である。先頭からインピー、サガン、マシューズ、ボアッソンハーゲン、ドゥユムラン、ヴァンアヴェルマート。jsportsより。

 

 数の上では完全にオリカ・バイクエクスチェンジが有利である。最後まで残ったインピーも、スプリンターのリードアウトとして非常に活躍している選手だ。だが最近のサガンは期待にしっかりと応えてくれる走りを見せているため十分にありうる。そこで不安になるのは「サガンキラー」の存在だ。

 勝負の「3級山岳・下り」。今年のミラノ~サンレモのときのようにアタックを仕掛けるボアッソンハーゲン! しかしその鋭さはイマイチで、簡単に追い付かれてしまう。

 ゴール前、背後をひたすら警戒するサガン。案の定、ゴール直前に飛び出したヴァンアヴェルマート。しかし、すでに春のクラシックで「開花」したサガンは、これをしっかりと捉えきる。

 だが、この男の伸びは圧倒的であった。

 マイケル・マシューズ。

 今年のパリ~ニースでも強さを見せつけた25歳は、しかし「一流スプリンター」たちには一歩及ばず、これまでツールでの勝利は果たせていなかった。

 そのマシューズが、チームメートの力を借りて、混戦の中で見事勝利を掴み取った! オリカの作戦にあえて乗り、足を使い過ぎていたサガンも、しかし執念ステージ2位を獲得。中間スプリントポイントと合わせ、予定通りマイヨ・ヴェールを奪還した。

 だがマイヨ・ヴェールを受け取る表彰台では、気のせいか、不満気な表情。

 実は同年生まれのマシューズに対する、悔しさは間違いなくあるはずだ。

 だが、今回はチームの力があってのことであり、仕方ない結果だと思われる。

 個人的には第16ステージなんかがサガンにとってのチャンスとなるステージだと思っているので、そこでぜひ2勝目を遂げてほしい!(そのステージはカンチェラーラにも勝ってほしいところだが)

f:id:SuzuTamaki:20160713012923p:plain

強力なスプリンターたちにまじって見事勝利を掴んだ「キラキラ」マシューズ。独特のガッツポーズも光った。jsportsより。

 

www.jsports.co.jp

スポンサーリンク