ドーフィネとは異なる、「もう1つのツール前哨戦」ツール・ド・スイス。
出場メンバーは比較的、ジロ出場組なども多いものの、久々に復帰となるミゲルアンヘル・ロペスやワウト・プールス、ツールではエースとして走るヨン・イサギレなど、こちらにも注目選手が多数出場。
また、ドーフィネと比べても遜色ないくらいに厳しいコースレイアウトもあり、単純に総合系の力量を測るステージレースとしても注目度が高い。
スプリンターにおいてもサガン、そしてガヴィリアの一騎打ちが見られるなど話題性も抜群。
そんな、「ツール・ド・スイス」で個人的に注目している選手を紹介していく。
※今後、出場選手が変更になる可能性もあります。
※年齢はすべて数え年表記です。
- ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、23歳)
- ローハン・デニス(オーストラリア、27歳)
- ペーター・サガン(スロバキア、27歳)
- ティム・ウェレンス(ベルギー、26歳)
- ミヒャエル・アルバジーニ(スイス、37歳)
- トム・デュムラン(オランダ、27歳)
- ヨン・イサギレ(スペイン、28歳)
- ハルリンソン・パンタノ(コロンビア、29歳)
- ルイ・コスタ(ポルトガル、31歳)
- リリアン・カルメジャーヌ(フランス、25歳)
- ヤン・ヒルト(チェコ、26歳)
ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、23歳)
昨年総合優勝者。アスタナの、そしてコロンビア人の注目若手選手であったが、母国でのトレー人中の事故により、昨年イル・ロンバルディア以後の一切のレースに参加できず。
当初はツアー・オブ・カリフォルニアでの復帰も噂されていたがそれにも間に合わず。今回のスイスでようやくの復帰となりそうだ。
長期のブランクの影響は必ず残っているだろう。今回のレースで十分な力を発揮できるとは思わない。しかし、できればブエルタで、アルと共にダブルエース体制で臨めれば心強い。ニバリ、スカルポーニを失ったアスタナにとって、彼の存在はより一層重要になっている。
ローハン・デニス(オーストラリア、27歳)
ジロを悔しい形でリタイアしてしまったデニスが、総合エースを担う力量が本当にあるのかどうかを確認する最大のチャンスがこのスイスだ。総合2位となったティレーノ~アドリアティコよりも確実に厳しいこのレースでどれだけの結果を叩き出せるか。エースナンバーは背負わないようではあるが、総合においてはエース級の待遇となるだろう。
また、最終日ITTで、ジロでは果たされなかったトム・デュムランとの一騎打ちがどうなるかも非常に楽しみである。比較的起伏を含んだタイムトライアルではあるが、そこへの対応力がどれほどのものになっているか。
ペーター・サガン(スロバキア、27歳)
デビューしたばかりの2010年から毎年欠かさずに出場。昨年は第2・第3ステージで優勝。この7年間で合計13賞。ポイント賞も2012年~2015年と4年連続で獲得している(昨年はリケーゼに敗れ2位)。
今年のツールは歴史に残る6年連続ポイント賞受賞がかかった重要な年。そこに向けてのウォーミングアップとして、このスイスでの状態には注目が集まるだろう。
チームとしても、ツールメンバーを確定するうえで重要になるレースである。ボドナール、ブルグハート、マッカーシーなどなど、サガンのアシストとして最も活躍していけるのは誰か。
ティム・ウェレンス(ベルギー、26歳)
ツール出場が内定している、ロット・スーダルの稼ぎ頭の1人。今シーズンは開幕直後のマヨルカ・チャレンジ2勝とアンダルシア1勝という、本人史上最高のスタートを切れたのだが、最も期待されていたアルデンヌ・クラシックがイマイチだった。それでもストラーデ・ビアンケ初出場で3位に入るなど状態は十分に良いはずで、今年2回目の出場となるツールでの1勝を期待したい。
ロット・スーダルはほかに、ダンケルクやベルギーで勝利し好調なイェンス・デブシェールに注目。ツールではグライペルの最も頼れる発射台となるだろうが、このスイスではおそらくエーススプリンター。(直前で不参加に)
ミヒャエル・アルバジーニ(スイス、37歳)
スイス国内のレースでは無敵なイメージのある彼だが、2005年以来毎年欠かさず出場しているツール・ド・スイスでは、意外にも3勝でとどまっている。
直前の前哨戦「GP・デュ・カントン・ダルゴヴィ(GPアールガウ)」では4位とまずまずの結果。
トム・デュムラン(オランダ、27歳)
まさかジロで総合優勝してすぐにまたこのスイスで暴れまくるとも思えないが・・・どうなるのか読めないのが彼であり、またサンウェブというチームでもある。ドーフィネでもバウハウスが1勝し、オーメンの調子も良い。今、間違いなく最も勢いのあるチームだ。
このスイスのメンバーもかなり強い。ジロでは消化不良だったケルデルマンがデュムランの最強アシストを務め、久々に見る気がするニキアス・アルントが、マイケル・マシューズの最終発射台としてツールに向けた最終調整を行う。あらゆるステージでその存在感を発揮しそうなチームである。
ヨン・イサギレ(スペイン、28歳)
ジロでは総合優勝こそその存在感を十分に発揮した新チームの、ツールにおける総合エースとしての重責を担う。正直、今シーズンはここまで「決して悪くはないけれど期待以上かというと微妙」な成績でやってきた。むしろ、意外性も含め兄ゴルカの方がよっぽど目立っている印象だ。
昨年はカンチェラーラを驚かせたほどのダウンヒルTTを見せ、そのままツールの区間優勝ももぎ取った彼の、新たな伝説の始まりをここスイスでも見たいところだ。
ただ、最終日ITTの最後のダウンヒルには気を付けて。なんかヨンって、TTで落車するイメージが強いのよね・・・。
バーレーンはほかに、スイス前哨戦「GPアールガウ」3位のボニファツィオのスプリントにも期待したい。
ハルリンソン・パンタノ(コロンビア、29歳)
ツールにおけるコンタドール親衛隊の一角を占める予定の超級クライマー。パリ~ニースでの献身ぶりも記憶に新しく、「コンタドール今年こそ・・・!」の責任を一身に背負う。
このスイスではそこに向けての実力試しでもあり、合わせて折角の総合エース。しっかりと結果を目指したい。総合表彰台を取れれば、今後の立ち位置にも大きく影響してくるはずだ。ちなみに昨年は総合4位。
チームメートには「GPアールガウ」2位のデゲンコルブもおり、ファンポッペル、デコルト、フェリーネたちと共にスプリントでの勝利を狙う。
ルイ・コスタ(ポルトガル、31歳)
2012年~2014年と3年連続総合優勝。まさに彼の黄金期であった。思い切ってドーフィネに出場した2015年から徐々に歯車が狂い始め、今年はアブダビツアーでの総合優勝によってやや挽回したものの、初出場のジロではあと一歩で勝利が掴めず悔しい思いに。今年も、スイスでの復活を狙う。
が、正直、もう総合優勝狙うのは厳しいんじゃないかなって思う。それよりはアタプマの可能性にかけた方がいい気も。コスタはまず区間勝利を狙おう。
そして同じくジロではてんでダメだったサッシャ・モドロが、直前のGPアールガウで見事勝利! その勢いを繋げることができるか?
リリアン・カルメジャーヌ(フランス、25歳)
昨年ブエルタを制したフランスの新たな「新鋭」は、今年に入ってからさらに勝利を挙げ続けている。我々の期待以上に。
エトワール・ドゥ・ベセージュ1勝&総合優勝、コッピ・エ・バルタリ1勝&総合優勝&ポイント賞、シルキュイ・シクリスト・サルテ1勝&総合優勝。いずれもクラス1のレースではあるが、ワールドツアーレースでも、パリ~ニースで山岳賞獲得など、しっかりと結果を残している。
しかしやはり、そろそろまた「1勝」が欲しい。ワールドツアーで。まだ厳しいかもしれないが、ぜひ、今回のディレクトエネルジーの総合エースとして、存在感を示してほしい。
コカールがディレクトエネルジーを去る、という噂も出ている。ヴォクレールもいなくなり、シャヴァネルもそろそろ・・・となるだろう。その中で、ディレクトエネルジーを引っ張っていける存在として、カルメジャーヌの存在はより重要なものとなっている。
ヤン・ヒルト(チェコ、26歳)
ジロで大ブレイクした新たな才能。来年どのチームからオファーが来るか楽しみである。本人がどう思っているかはわからないが、少しでも良い条件を引き出すためにも、今大会もしっかり存在感を示したいところ。メンバーもジロから引き続き参加が多く、実力は申し分なさそうだが疲れも心配。
パテルスキーは直前のポーランドのステージレース(1クラス)で区間1勝+総合優勝。
(直前で不参加に)
ちなみにコースに関しては以下の、サイバナさんのサイトに詳しいので参考までに。非常に厳しいコースとなっていることがよくわかる。
総合優勝候補にマティアス・フランクを推していて成程!と思う次第。
個人的にはあえてパンタノを推しておきたい。コンタドールのアシストとしてのコンディションチェックのはずが、やったらいけちゃった、みたいな。
新人賞はメルハウィ・クドゥス、ポイント賞はフェルナンド・ガヴィリア(サガンに勝て!)、そして山岳賞はカルメジャーヌで行ってみたいと思います。