DAZNで日本語実況・解説付でのほぼフルでの放映が実現。
実況担当の木下貴道さんは普段野球の実況などを行っている方で、自転車実況は今回が初めて。そのためにしっかりと勉強をされていた様子で好感が持てる。
初のサイクルロードレース実況(ジロ・デ・イタリア)に向け、勉強中。
— sportszone 木下貴道 (@mega_necktie) 2017年5月3日
テレビ観戦は何度かあれど、見ると喋るとは大違い…。
過去の結果や、サイトをチェックしております。
初心者ですが、精一杯やります! pic.twitter.com/PsSGbHbMPi
Jsportsの実況でもお馴染みの谷口廣明さんの後輩?にあたる人のよう。
解説は別府始さん。別府史之選手のお兄さんで、Jsportsでも解説やナビゲーターでよく見かける方だ。
最近は始さんがナビゲーターをやることが多かったので解説は新鮮。
ただ、丁寧な口調で細かい説明をしてくれるので、初めての人向けにはちょうどいい放送だったと思う。。ゼリーが重たい話とか、現場に近い人間ならではの話も面白かった。
木下さんも細かいところを色々と質問してくれるので、全体的にとても新鮮な放送だった。
レースの展開としては、まず6人の逃げが形成。
今大会出場しているプロコンチネンタルチームから1人ずつ。
さらに言えばディメンションデータとボーラもちょっと前まではプロコンチネンタルなので、「いかにも」な逃げ集団となった。
この中でテクレハイマノはエリトリアチャンピオンジャージ(上記写真先頭)。
そしてズパはアルバニアチャンピオンジャージ(赤。上記写真テクレの左)。
アルバニアのプロ選手はこのズパだけのようだ。
今日は初日だったので、恒例の山岳賞争いが繰り広げられる。
今回のメンバーの中ではテクレハイマノが頭1つ抜け出ているように感じた。
何しろ2015年ドーフィネで山岳賞を獲った男であり、その年のツールでも、アフリカ人として初の山岳賞着用を果たした。
4級山岳が3つというレイアウトは、彼がツールで山岳賞を獲った15ツール第6ステージと似たレイアウトだ。これは期待せざるをえない。
しかし、最終的に勝ったのは、ベネデッティであった。
1つ目の4級山岳ムルテデュ(残り138km地点)では残り3km地点から早めに飛び出し、一度は捕まえられるもさらにもう1度アタックした。
精力的な走りではあったが、少し体力を使い過ぎたのではないか・・・そんな風に心配になる走りでもあった。
そして、2番目の山岳トリニータ・ダグルテュ(残り115.8km地点)では早めにテクレハイマノが飛び出してこれは必勝パターンかな・・・と思ったら、残り数百メートルの地点で物凄い勢いでベネデッティが後ろから追い上げた。さっきまでへとへとになっていて追走のローテーションにも加わってないように見えた(見えただけで勘違いの可能性大)んだけどあれはブラフだったのか??
とにかくもそのままベネデッティが先頭通過。ちなみにテクレハイマノは完全に足がなかったようで、結局2番手通過もズパに獲られてしまった。
失意のままに終わったテクレハイマノだったが、それで終わりではなかった。彼は中間スプリント争いに照準を切り替えた。
もちろん、ポイント賞は平坦ゴールのスプリント勝者に奪われるため、彼が狙ったのは「敢闘賞」である。
他2つのグランツールの敢闘賞と違い、ジロの敢闘賞は厳密なポイント制である。
放送中に別府さんが語ったところによると、以下のようなポイント配分になっているとのこと。
4級山岳・・・先頭通過のみ1ポイント
中間スプリント・・・先頭から順に5~1ポイント
ゴール・・・先頭から順に6~1ポイント
ジロは中間スプリントが2つ。
つまり、今ステージの場合は中間スプリントを制したものが敢闘賞を制するのだ。
だからテクレハイマノは全力の中間スプリント奪取に向かった。
ズパもこの争いに参戦。1つ目の中間スプリントポイント(残り70.3km地点)はズパが獲ったがテクレハイマノは2位。さらに2つ目の中間スプリントポイント(残り32.8km地点)はテクレハイマノが先頭で通過した。しかもズパは3位。
よって、合計9ポイントでテクレハイマノがこの日の敢闘賞をゲットした。
(表彰台で観ることはできなかったが・・・)
そしてこの中間スプリント争いではまったく力を使わなかったベネデッティが、最後の4級山岳サン・パンタレオ(残り20.9km地点)も先頭通過。彼を逆転できる唯一の可能性があったズパは、スプリント争いで力を使い果たしておりまったく手が出せなかった。
この日「最初の」ボーラ特別ジャージを決定付けたチェーザレ・ベネデッティ。
今年8月で30歳になるイタリア人で、このチームにずっと在籍していた中堅選手だ。
チームが初めてグランツールの出場権を得た2012年のジロにも出場しており、そのときのステージ最高位は5位。山岳もこなせる男で、この後の活躍に期待だ。
とりあえず明日の第2ステージでも、このジャージを守れるかどうか。
さて、残るはラストのスプリント争いのみ。
最大で7分以上のタイム差があった先頭を追いかけるメイン集団は、前半はロット・ソウダルの面々が積極的に牽引。中盤から終盤にかけては、オリカ・スコット、とくに39歳の超ベテランTTスペシャリストのスヴェイン・タフトがひたすら先頭牽きをこなしていた。
こういう献身的な働きには弱い・・・。
別府さんも放送の中で話していたが、2014年のジロ・ディタリア(アイルランドスタート時)。タフトの誕生日(5月9日)と重なった初日チームタイムトライアルで、ステージ優勝を決めたオリカ・グリーンエッジ(当時)は、先頭をこのタフトに譲ってゴールした。
いつも献身的にアシストをこなしてくれるチームの長老役に、最大限の贈り物を、という計らいだ。
こういうのがあるから、ロードレースは見てて楽しいんだよね。
独走力の高いアシストの働きというのは本当に見ていて美しく感じる。
今回、残り4km地点まで逃げ続けたベネデッティたちを最終的に捕まえたのは、クイックステップ・フロアーズのボブ・ユンゲルスの懸命な牽きだった。
彼は今回エースナンバーを着けての参加であり、2年連続となる新人賞、あわよくば表彰台を狙って本気の走りをする予定のはずだ。
それでも、チームメートのガヴィリアの勝利のために、全力の走りをここで見せる。本当に美しいなぁと感じる。
しかし、残り3.2km地点でアクシデントが。
直角カーブが想像以上に狭く、大規模な落車にこそならなかったものの多くの選手が足止めを喰らった。その中の1人がクライスヴァイク。13秒を失った。
そしてもう1つの波乱がゴールで待ち構えていた。
サム・ベネットのためのリードアウトを演じていたボーラ・ハンスグローエのルーカス・ポストルベルガーが、わずかに集団から離れて前を走ることになった。
本人も何が起きたのかわからないまま、無線に促されて、とにかく懸命にペダルを踏み続けたのだという。
ウルティモキロメトル(と、イタリアでは言うらしい。シクロワイアードの辻さんの記事を参照)を越えた時点でも6秒以上のタイム差が開いていた印象。
そのまま得意のTTスタイルで独走を決めたポストルベルガーが、自身初となるグランツール勝利、どころか、オーストリア人として初となるジロ・ディタリア勝利を飾った! これで33ヵ国目だという。オーストリア人選手好きとしてこれは嬉しい。サンウェブのプライドラーも頑張ってほしい。
ポストルベルガーはこれで、マリア・ローザとマリア・チクラミーノ、さらにはマリア・ビアンカも獲得した。
ベネデッティのマリア・アッズーラと合わせ、4賞ジャージ全てをボーラが独占した形となる(さらに言えばチーム総合時間賞も!)
正直、今大会1勝すればいい方だな、と勝手に思っていたボーラのこの望外の活躍。見事だった。
ちなみに集団先頭はカレブ・ユワンが獲った。
得意の「超低空飛行で先行逃げ切り」が完全にハマり、グライペルを圧倒した。
それだけに今回の結果は悔しい。あの急カーブもあり、アシストがのきなみ失われた混戦状態になったことが敗因だったのかもしれない。
もちろん、ポストルベルガーの独走力の高さと、彼のために後続をかき回したボーラのチーム力のなせるわざでもあった。
一方で期待されていたフェルナンド・ガヴィリアは12位。
カーブで置いていかれた組なのかな、とも思ったが12位だとどこまで影響があったのかは不明。チームはバラバラになったのかもしれないが。
明日からのスプリント争いの行方が非常に楽しみである。
Result
- ルーカス・ポストルベルガー(ボーラ・ハンスグローエ)
- カレブ・ユワン(オリカ・スコット)
- アンドレ・グライペル(ロット・ソウダル)
- ジャコモ・ニッツォーロ(トレック・セガフレード)
- サッシャ・モドロ(UAEチーム・エミレーツ)
- クリスティアン・ズバラーリ(ディメンションデータ)
- ジャスパー・ストゥイヴェン(トレック・セガフレード)
- ライアン・ギボンズ(ディメンションデータ)
- サム・ベネット(ボーラ・ハンスグローエ)
- フィル・バウハウス(サンウェブ)
- グレゴール・ミュールベルガー(ボーラ・ハンスグローエ)
- フェルナンド・ガヴィリア(クイックステップ・フロアーズ)
- エンリコ・バッタリン(ロットNLユンボ)
- ヴィアチェスラフ・クズネツォフ(カチューシャ・アルペシン)
- ボブ・ユンゲルス(クイックステップ・フロアーズ)
明日は3級山岳1つ、2級山岳が1つの丘陵コース。両方を先頭通過で22ポイント。3級先頭通過だけでも7ポイントだ。
参考
ジロ・デ・イタリア2017
— UEDA Shinnosuke (@shinchoen) 2017年5月5日
山岳ポイントとスプリントポイントの配分表(再掲)#dazncycle pic.twitter.com/t87hgklThC
ベネデッティはジャージ維持のために逃げに乗るだろうか。
それ以外に、本格的に山岳ジャージを狙って動き出す選手も多いだろう。ディメンションデータのオマール・フライレとか、個人的に期待しているピエール・ローランとか。
この辺りの動きに注目したい。
ポイントは「残り107.1km地点」と「残り46.5km地点」だ。