クリス・フルームが真のオールラウンダーであることが改めて証明された。
彼はキンタナやコンタドールをも凌ぐ最強のクライマーであり、カンチェラーラやトニー・マルティンにも匹敵する独走力を誇り、そしてまた、今日、ダウンヒルにおいても他を圧倒する力量があることを見せつけた。
まったくもって隙のないこの男を、倒すことができる者が現れるのか。
総合優勝大本命が劇的な勝利を収め、「予定通り」のマイヨ・ジョーヌを着用したピレネー第2ステージであった。
両手を挙げて喜ぶクリス・フルーム。すでにツール5回目の区間勝利だが、常に彼は全力で喜びを表明する。jsportsより。
過去2回、ピレネーの初日山岳ステージで勝利し、その年の総合優勝を決定付けてきたクリス・フルーム。そんな彼への対策のつもりか、今年のピレネーステージは第1、第2ステージともに「下りゴール」のステージが設定された。レースディレクターのティエリー・グヴヌー氏が「緊張感をもち続けられるコースを創造」*1するために設定されたこの下りで、逆にフルームは今年最初のイエロージャージ獲得を決めたのだ。
「またワンパターンな勝利か」と勝手に思う観客たちへの挑戦か。リスクを承知の上で「楽しみながら走った」というフルームの姿は、どこか我々の想像を一回りも二回りも越えてくる、そんな圧倒的な(そして色々な意味での)「強さ」を感じさせる。
実に積極的なダウンヒルを見せてくれたクリス・フルーム。時速80kmを優に超えている。jsportsより。
そんなフルームに、ここまではついてこれていたキンタナも、自分の判断ミスを認めるコメントを出している*2。
しかし、とは言うものの、総合でのタイム差はたったの13秒。確かに、その強さを見せつけたフルームではあるが、まだこれが決定的なものではないことも事実だ。むしろ、今日で少し足を使い過ぎてしまったかもしれない、というコメントもしている。明日は超級山岳頂上フィニッシュ。ここでの勝敗こそが、今年のツールの命運を決めるはずだ。
キンタナが逆転するにはここしかない。そしてここまで彼は、崩れない走りをしっかり見せている。まだまだ勝機はあるはずだ。
そして、ドーフィネからの好調をしっかり引き継いでいるダン・マーティンとロメン・バルデ。2人ともアタックを含む積極的な走りを見せている。
リッチー・ポートとティジェイ・ヴァンガーデレンも、アタックこそしなかったものの、集団の中で不穏な姿を見せており、モビスターと共に2枚看板での攻撃に期待がかかる。
そしてファビオ・アル。ドーフィネでは失速した彼も、このツールではここまで、地味ではあるがしっかりと総合に喰らいついている。そして今日は少しばかりの攻撃も見せた。
ニバリはすでに総合タイム差を失っており、名実ともにアルのアシストをする、、とまではいかなくとも少なくとも邪魔はしない、ということがはっきりとしている。
フルーム、キンタナに次ぐ総合表彰台候補として、アルもバルデもBMCの2人ももしかしたらダン・マーティンも、そしてホアキン・ロドリゲスも含めて、十分に可能性を感じられるステージであった。
すべては、少なくともその多くは、明日のアンドラ決戦でわかってくるのではないだろうか。
誰が勝てるのか、そして誰が勝てないのか。
新人賞争いにおいても、戦いは白熱している。ジュリアン・アラフィリップが今日のステージで大きく遅れ、現状、アダム・イェーツと、そしてルイ・メインチェスも浮上してきた。メインチェスは昨年ブエルタでも総合TOP10に入る走りを見せているため、十分に期待がかかる。そしてアダム・イェーツも、今日のステージをきっちりとこなしたことで大きな自信を持てているのではないか。
山岳賞争いはどうか。フルームもしっかり狙っているようなので、最終的には彼に行くかもしれない。
だがやはりピノに頑張ってほしい。
ピノが総合順位を落としてしまうことは別にいい。ある程度は予想できていた。
だからこそ彼にはステージ勝利と、そしてドーフィネでは果たせなかった山岳賞獲得を本気で狙ってほしい。
昨日の大失速からの今日の挑戦、そしてトゥルマレ制覇は、十分に感動的であった。
もう一勝負、してほしい。
すでに彼は余計な重圧をはねのけるだけの精神力もあるはずだから。
トゥルマレへの挑戦が功を奏したのか、敢闘賞獲得を果たしたピノ。心なしかイノーさんも他の選手以上に嬉しそうな表情をしているように見えた。jsportsより。