最後の直線は2番手で入り、そのあとは必死にもがいた。昨ブエルタ第2ステージのデュムランを突き放したスプリントで先行し、いつものように十字を切って高々と右手を突き上げた。あのマイヨ・ロホは偶然ではなかった。ブエルタは総合5位に終わったけれど、このジロでは表彰台に立つ資格がある、ということをはっきりと示す走りを見せ、エステバン・チャベスがクイーンステージでの勝利を飾った。
右手を突き上げてゴールするチャベス。jsportsより。
累計標高5400m。最難関峠のパッソ・ジャウは9.8kmを平均勾配9.4%で登る。その山頂からはドロミテの、雪に覆われた岩肌の風景が広がる。「最も厳しいグランツール」と言われるジロを象徴するステージだ。
逃げ切りを狙って単独で走り続けていたのがオリカ・グリーンエッジのルーベン・プラサ。昨年のツールでサガンの猛攻を振り切り1勝。直後のブエルタでは110km以上の山岳の道をアウターのまま踏み切っての独走勝利を成し遂げた36歳元スペインチャンピオン。この日も得意の山岳独走勝利を成し遂げ、グランツール3連続勝利を成し遂げるのか――しかし、ジロのタッポーネ(最難関ステージ)は、そんなに甘いものではなかった。やがてBMCのアタプマと、総合6分遅れのディメンションデータ、シウトソウが無残に追い抜いていく。
もう1人、先頭に追い付いてきたのが、今ジロで幾度となく逃げに乗っている、ジャイアント・アルペシンのゲオルグ・プライドラー。一度はシウトソウたちから千切られてしまった彼が、終盤で再び単独で追い付いてきたばかりか、ゴール前では積極的な飛び出しを見せた。残念ながら仕掛けが早すぎたのか最後にはチャベスに追い抜かれてしまったものの、今後デュムランのアシストとしての活躍が期待できる走りであった。もちろん、オーストリア人としては珍しい？グランツールでの区間勝利も期待している。まだ25歳と若い有望株だ。
総合争いは当然のことながら白熱した。特に今日は、アスタナのチームとしての走りが圧倒的だった。最難関峠パッソ・ジャウの登りで、それまで集団を牽引していたモビスターに代わって前を牽引し始めると、モビスターのアシストたちが次々と脱落し始めた。アスタナがニバリ含めて4人も残っている段階でモビスターはバルベルデとマリア・ローザのアンドレイ・アマドールだけ。
それでもやはりジャウの登りは凶悪で、山頂に至る過程でアスタナのアシストたちも千切られていく。最後に残ったのはニバリとスカルポーニ――だがそこで、逃げに乗っていたアンドレイ・ゼイツが落ちてきて、そのまま集団の先頭を牽き始めた！
昨ブエルタでも活躍したカザフスタン人。同じく逃げていたモビスターの2人はなすすべもなく千切れていったが、ゼイツはしっかりとメイン集団に踏みとどまり、ニバリとスカルポーニのために2km以上にわたって牽引を続けた。
そして最後の峠パッソ・ヴァウパローラに入った直後、ニバリがアタック！ これまでも幾度となく攻撃を仕掛けて封じ込められ、ときにカウンターを喰らいながらも諦めずに勝負を仕掛け続けてきたニバリ。この日は、その攻撃の前に、なんとバルベルデがついていけない！
アタックするニバリ。jsportsより。
ニバリのアタックに反応できたのはクルイスウィクとチャベス。少し遅れてマイカやウランなど。その後はクルイスウィクとチャベスが先行し、逃げ続けていたアタプマとプライドラーに追い付くが、ニバリは引き離されてしまう。結果としてニバリはチャベスたちに30秒差をつけられてしまうものの、最大のライバルであったバルベルデに対しては2分以上の差をつけることができた。
ステージ勝利はならなかったものの、健闘によりマリア・ローザを獲得したステファン・クルイスウィク。ヘーシンクと並んでグランツール総合上位を目指すオランダ人として、なかなか結果が出せずにいた中でのようやくの台頭である。今回のジロをこのまま総合首位で残り続けるのは難しいかもしれないが――今後に期待していきたい選手である。
そういった意味で、いよいよ今ジロ覇者候補として頭一つ飛び抜けることができたのがニバリ。遅れは喫したものの総合2位。バルベルデの総合争いへの復帰は難しくなってきた。
しかし、チャベスも油断できない位置にいる。今、ニバリに求められているのは、「失敗しないこと」である。その意味で、明日の山岳TTの結果は、非常に大きな意味を持つだろう。
マリア・ローザでシャンパンファイトをするクルイスウィク。#jspocycle
