りんぐすらいど

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ツアー・ダウンアンダー2019 コースプレビュー

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Class:ワールドツアー

Country:オーストラリア

Region:南オーストラリア州アデレード周辺

First edition:1999年

Editions:21回

Date:1/15(火)~1/20(日)*1

 

 

シーズンの開幕を告げる定番のレースとなったツアー・ダウンアンダー。

今年も、ワールドツアー18チームと、オーストラリア人選抜チームの計19チーム133名が、総合リーダーの証「オークルジャージ」を巡って争う。

 

以下では、2019年シーズン最初の記事として、このツアー・ダウンアンダーのコースプレビュウをお届けする。

今年もいくつかの変化が用意された「シーズン最初のワールドツアーレース」をしっかりと予習して、開幕に備えよう。

 

↓注目選手プレビューはこちら!!↓

www.ringsride.work

 

 

 

 

 

ツアー・ダウンアンダーの特徴

クライマーとパンチャーの秒差の争い

ツアー・ダウンアンダーは実に魅力的なコース設定となっている。

それは、ピュアクライマーとパンチャーとが、わずかな秒差を争い、どちらが勝つか最後まで分からない展開を生み出すものとなっているからだ。

 

元々、標高の高い山が少ないアデレード周辺。

かつては平坦ステージが多く、総合優勝者にアンドレ・グライペルのようなスプリンターが名を連ねることも珍しくなかった。

 

しかし近年はウィランガ・ヒルやパラコーム、コークスクリューといった厳しい登りを含むようになり、ピュアスプリンターが生き残って優勝を狙う、というのはかなり難しくなってきている。

 

では、クライマーが圧倒的有利かというと、そうでもない。

というのも、それらの厳しい登りについても、登坂距離は3kmに満たない程度であり、勝負所に限れば1~2km程度となっているからだ。

 

近年のウィランガ・ヒルは、世界最高峰のクライマーであるリッチー・ポートが5連覇を果たしている。

しかし、そんな彼でも、ツアー・ダウンアンダーの総合優勝は2017年の1回しかない。

 

むしろ、昨年の覇者ダリル・インピーや、過去4回ダウンアンダーを制しているサイモン・ゲランスなど、途中のステージで上位に入りボーナスタイムを稼ぎ出したパンチャーたちが、最後のウィランガ・ヒルでもなんとか喰らいつき、ギリギリでタイムを守り切る、というパターンが多くなっているのだ。

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2018年の覇者ダリル・インピーは、ウィランガ・ヒルを含む3ステージで2位を獲得し、合計18秒のボーナスタイムを手に入れた。

 

今年もウィランガ・ヒルだけでなく、途中のステージも非常に重要になるダウンアンダーとなるだろう。

それでは、今大会は果たしてどんなコースが「途中」にあるのか。

次の項目で見てみよう。

 

 

今年のコースの特徴

コークスクリューを制するものはダウンアンダーを制する

今年のダウンアンダーの特徴は何か。

まず、大きな変化としては、これまで定番となっていた最終日のアデレード市内周回コースが外され、ウィランガ・ヒル決戦が最終日に置かれるようになったことだ。

ただ、これに関して言えば、今までも最終日は総合優勝争いにおいてほとんど意味を持たないものとなっていたため、実質的な変化はほとんどないと言えるだろう。

 

それ以上に重要なのは、第4ステージ終盤に用意された1級山岳モンタキュート、通称「コークスクリュー」の存在である。

登坂距離2.5km、平均勾配9%、最大勾配15%の、見方によってはウィランガ・ヒル以上の難易度を誇るこの登りこそが、今大会の総合優勝を占ううえで重要なポイントとなるだろう。

 

この第4ステージ最大のポイントは、フィニッシュがコークスクリューの頂上に置かれていないことである。

頂上からゴールまで、テクニカルなダウンヒルを含む5.7km。

3年前、このコースが採用された第3ステージでも、頂上を先頭で越えたセルヒオ・エナオやマイケル・ウッズは残り3kmで追いつかれ、最後は生き残った小集団でのスプリント決戦となった。

 

ここを制したのがサイモン・ゲランス。

彼はそのままその年の総合優勝者となり、大会最多優勝記録を4にまで伸ばした。

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この日、前年覇者デニスとのスプリント争いを制したゲランスは、翌日も勝利して合計20秒のボーナスタイムを獲得し、総合優勝を確実なものとした。 

 

 

過去にもウィランガ・ヒルを制したポートではなく、コークスクリュー2位のサイモン・ゲランス(2014)、パラコームを制したローハン・デニス(2015)、コークスクリューを制したサイモン・ゲランス(2016)、ノートンサミットで2位につけたダリル・インピー(2018)がその年の総合優勝を飾っている。

ポートが総合優勝を果たした2017年に関しても、彼はウィランガ・ヒルだけでなく、パラコームのステージでも優勝している。

 

やはり途中ステージの「もう1つの登り」でボーナスタイムを得られた者が勝つ傾向にあるのが近年のダウンアンダーの大きな特徴である。

今大会においても「コークスクリュー」が勝者を選定する重要なステージとなるかもしれない。

 

コークスクリューを制する者が今年のダウンアンダーを制する――果たして、シャープなスイッチバックの続くこの「コルク栓抜き」を制するのは一体誰だ? 

 

 

 

各ステージ詳細

※リンク先に公式サイトの詳細なコースマップ有り 

ダウンアンダー・クラシック 51km(平坦)

Down Under Classic - Santos Tour Down Under

Sunday, 13

火曜日から始まるダウンアンダー本戦に先駆けて開催される恒例の顔見せクリテリウム。

例年であれば50km~60km程度の距離になるように周回数が設定されるが、今年に限っては「1時間経過時点であと1周」という少し特殊なレースとなるようだ。

(1周の距離は1.7km)

 

UCI非公式レースであり、ここでの勝利は公式な記録にもならずポイントも付与されないものの、2日後に控える本戦に向けての重要な前哨戦ともなるため、各チームとも本気の様相となる。

 

2014年、2015年はマルセル・キッテルが、2016年、2017年はカレブ・ユワンが制しており、2018年も前2年同様に国内クリテリウムチャンピオンジャージを着用したユワンに注目が集まったものの、これを降して世界王者ペテル・サガンが勝利を遂げた。 

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2018年はツールで3勝するなど、好調なシーズンを過ごしていたサガン。

2019年もこのクリテリウムで幸先の良いスタートを切りたいところ。

 

 

第1ステージ ノースアデレード~ポートアデレード 132.4km(平坦)

Ziptrak® Stage 1 - Santos Tour Down Under

Tuesday, 15

山岳ポイントは1つだけ。

スタートから40kmほどを過ぎたあたりの2級山岳だ。

アクチュアルスタートと同時に形成された数名の逃げの中から、2019年シーズン最初の山岳賞ジャージ獲得者が現れることだろう。

 

残り75km辺りから、パラコームの周回コース(1周10kmちょっと)を3周。

その後、再びアデレード近郊に戻り、昨年の第1ステージスタート地点だったポートアデレードへへと向かう。

 

フィニッシュは例年の第1ステージ同様に集団スプリントとなるだろう。

昨年はアンドレ・グライペルが5年ぶりの出場で見事、開幕勝利。 

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その後ももう1勝し、好調な出だしとなった2018年シーズンだったが、その先はイマイチな結果に終わり、今年はプロコンチネンタルチームへと移籍してしまったことで、このダウンアンダーへの連続出場は叶わぬ結果となってしまった。

 

 

第2ステージ ノーウッド~アンガストン 149km(平坦) 

Novatech Stage 2 - Santos Tour Down Under

Wednesday, 16 

この日も山岳ポイントは序盤に1つだけ。

26.3kmに2級山岳。

第1ステージと逃げ選手が異なる場合、同ポイントで並び獲得山岳クラスも変わらない山岳賞1位の選手が2名、という事態にもなりうるだろう。

その場合は確か、ゴール順位かその後の総合順位によって山岳賞1位が決まる、というルールだったはず。

もしかしたらこの日の山岳賞獲得者は、ゴールの瞬間まで分からない、ということになるかもしれない。

 

ゴール地点のアンガストンは過去2回、採用されており、いずれもオージー・スプリンタが勝利を掴んでいる。

2011年はマシュー・ゴス。2014年はサイモン・ゲランスだ。

 

2019年のフィニッシュ地点は、ラスト2kmが平均2%程度の緩やかな登りで、一部4%の区間も存在する。

大して影響を及ぼすことのない勾配だとは思うが、ピュアスプリンターよりは登りが得意なサガンやインピー、あるいは昨年、スターリングの登りフィニッシュを制したユワンにとってやや、有利と言えるか?

 

 

第3ステージ ロベサル~ウライドラ 146.2km(丘陵)

Stage 3 - Santos Tour Down Under

Thursday, 17

ロベサルの街をスタートしたプロトンは、まずは1周13.8kmの周回コースを2周する。

その間にスプリントポイントが2回ともやってくるため、ボーナスタイムを狙う総合優勝候補の選手(とくにパンチャータイプのようなスプリント力のある選手)を抱えるチームが逃げを許さない走りでハイペースを維持する可能性はある。

中間スプリントポイントの3秒は消して馬鹿にできない。

2016年もダリル・インピーのアシストでサイモン・ゲランスが中間スプリントのボーナスタイムを獲得していたりする。

 

2周目の終わりはスタート地点に戻ってくる直前で進路を変え、この日唯一の山岳ポイント(2級山岳)へ。

ここで改めて逃げ集団が形成されることになるだろう。

 

この後プロトンが向かうのは、昨年の第4ステージでもフィニッシュ地点として設定されたウライドラ。

昨年は初登場の1級山岳ノートンサミットが設けられ、ここを乗り越えたペテル・サガンとダリル・インピーが激しく競り合った。

今年はノートンサミットを使用せず、ウライドラ周辺の1周13.9kmの周回コースを7周するというものに変わった。

 

しかし、ウライドラ周辺はただでさえアップダウンの激しい丘陵地帯。

この周回コースの存在によって、この日の総獲得標高差は3300mを超える。

 

ピュアスプリンターが生き残るにはやや厳しいステージとなる可能性が。

このステージでいよいよ、オークルジャージが総合優勝候補の手に渡ることになるかもしれない。

 

 

第4ステージ アンリー~キャンベルタウン 129.2km(丘陵) 

100% Stage 4 - Santos Tour Down Under

Friday, 18

いよいよ今大会の目玉、コークスクリューが登場する。

登坂距離2.5km、平均勾配9%、最大勾配15%と、ウィランガ・ヒル以上の難易度といってもいいかもしれない難関峠である。

 

スタート直後にもアデレード・ヒルズの厳しい登りで、この日はさすがに早々と逃げ集団ができることだろう。

それゆえに中盤は平穏な時間を過ごすことになると思うが、ゴールまで10kmを切ったところで、いよいよ大ボスが登場する。

 

2016年に登場した際は、リッチー・ポートが強烈なプッシュを仕掛け、これに反応したセルヒオ・エナオとマイケル・ウッズが最終的に山岳賞を競い合った。

ウッズはこのときがワールドツアークラスでの初のレースとなり、早速存在感を示すこととなった(そしてこのとき見せたポテンシャルが、昨年の活躍に繋がった)。

今年も一流クライマーによる激戦必至となるだろう。 

 

 

しかし、ウィランガ・ヒルとの大きな違いは、頂上からゴールまでテクニカルなダウンヒルを含む5.7kmが残っていることである。

3年前も抜け出したエナオとウッズはあえなく捕まり、最終的に小集団スプリントをサイモン・ゲランスが制した。

 

今年も、山岳で抜け出したクライマーと、これを追いかけるパンチャーたちとの激しい追走劇を楽しむことができるだろう。

 

 

第5ステージ グレネルグ~ストラサルビン 149.5km(丘陵)

SOUTHAUSTRALIA.COM Stage 5 - Santos Tour Down Under

Saturday, 19

アデレード南部、 もはやダウンアンダーではお馴染みの街グレネルグを出発し、サザン・エクスプレスウェイをひたすら南下して丘陵地帯を抜け、これまたお馴染みのヴィクター・ハーバー付近に到着する。

 

ただし今年はこれで終わらない。

そのまま再び内陸に向けて北上し、最後まで緩やかなアップダウンが続くコースレイアウトとなっている。

 

ゴール地点のストラルビンは2011年にも登場した。

このときも単純なスプリントとはならず、ローレンス・テンダムやトーマス・デヘントらと共に逃げたキャメロン・マイヤーが、最後のスプリントでデヘントを下し、2010年の国内選手権ITT以外では初となるプロ勝利を果たした。

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ボーナスタイムも獲得したマイヤーはそのままその年の総合優勝を掴み取る。

秒差の争いとなるダウンアンダーにおいて、もしも逃げ切りが発生してしまった場合は、そのまま総合優勝を獲得する可能性も少なくはないだろう。

 

僅かな可能性を信じて、この日、積極的な攻撃に出る選手というのも是非、見てみたい。

 

 

第6ステージ マクラーレン・ヴェイル~ウィランガ・ヒル 151.5km(丘陵)

Be Safe Be Seen MAC Stage 6 - Santos Tour Down Under

Sunday, 20

登坂距離3km、平均勾配7.5%のウィランガ・ヒルを2度登る、ダウンアンダー定番のクイーンステージ。

いつもは最終日前日の第5ステージで使われるこのコースが、今年は最終日に設定された。

とはいえ、今までも最終日は総合争いがほぼおこなれないステージだったため、意味合いとしては大して変わることはないだろう。

 

山岳賞を狙うライダーたちにとっては、この日の1つ目のウィランガ・ヒルは非常に重要になる。

2017年覇者のデヘントもここを1位通過し、2018年覇者のドラミニはここをデヘントに先を越されるものの2位通過を果たしてジャージをほぼ確定させた。

 

だが、総合を狙う選手たちが1回目のウィランガで前に出てくることはまずない。

また、2回目であっても、山岳の登り口からいきなり火花が散る戦いが始まるわけでもない。

 

重要なのはフィニッシュまで残り1~2km。

ここで今年も「キング・オブ・ウィランガ」の攻撃が繰り出されることになりそうだ。

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大事なのは、ここでどれだけ喰らいついていくことができるか。

昨年のダリル・インピーも、突き放されはしたものの、なんとか食いしばって8秒差で2位ゴールを果たした。

結果、タイム差0秒で総合優勝。

最後の1秒まで諦めることなく踏み続けたものが、この日の最後に表彰台の頂点に立つことができるだろう。 

 

 

 

6日間の激戦を制し、栄光のオークルジャージを手に入れるのは果たして誰か。

次回は、この2019年ダウンアンダーの注目選手たちをピックアップしていく。 

 

 

*1:前哨戦クリテリウム(非UCI)は1/13(日)開催。