りんぐすらいど

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ツアー・ダウンアンダー2019 スタートリスト&プレビュー

コースプレビュー、注目選手プレビューに続き、開幕直前の今回は現時点での全チームスタートリストをまとめる。

各チームについて簡単なプレビュウも添えたので、参考にして頂けると幸い。

(年齢表記は2019/12/31時点のものとなります)

(国籍の太字下線はその国のナショナルロードチャンピオンであることを示します)

 

www.ringsride.work


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1~.ミッチェルトン・スコット(MTS)

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昨年総合優勝者ダリル・インピーがゼッケンNo.1を着用。

サイモン・ゲランスの右腕として活躍し続けてきた人物で、彼自身もゲランスに類する脚質をもつパンチャー/スプリンター。ゲランスは大会最多の4勝を記録しているため、インピーがダウンアンダーも連覇する可能性は十分にある。

そのためにも越えなければならない壁が、第4ステージのコークスクリュー。ここを乗り越え、その先のスプリントでボーナスタイムを稼げれば、今年も総合優勝の可能性はぐっと広がることだろう。

先日、新たなオーストラリアTTチャンピオンになったばかりのダーブリッジも、牽引においてインピーを強力にサポートする。マイヤーと合わせ、国内選手権ロードレースで3位・4位のコンビでもある。

そして、3年前のパリ~ルーベで感動的な勝利を演出してみせた苦労人ヘイマンがこのレースで引退。

最後の雄姿を、その目に焼き付けよう。

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11~.ボーラ・ハンスグローエ(BOH) 

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現チームに移籍後、7年ぶりに出場したサガンは、そこから今年で3年連続、毎年出場を続けている。2017年はサム・ベネットをアシストした彼も2018年では自ら勝利を掴み、一時は総合リーダージャージも着用した。

今年はどうか。もちろんサガンもステージ、総合ともに狙える存在だが、オーストラリア人としてはマッカーシーにも注目していきたい。2016年、ティンコフ在籍時は第2ステージのスターリング登りゴールで勝利してリーダージャージを着用。第3ステージのコークスクリューも乗り越え、区間4位に入った。最終的にも総合4位。

翌年の2017年にはサガンがあまりやる気がなかったこともあり総合リーダーとして活躍。ウィランガ・ヒルでリッチー・ポートに喰らいつく走りも見せて、見事総合3位にまで浮上した。

2018年はカデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレースで勝利したほか、イツリア・バスクカントリーでもスプリント勝利するなど、オーストラリア外でも活躍を見せてくれたマッカーシー。年々進化し続けるこのパンチャー/スプリンターが、サイモン・ゲランス、ダリル・インピーに次ぐオージーのダウンアンダーマイスターになりうる可能性は十分にある。

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21~.トレック・セガフレード(TFS)

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ウィランガ・ヒル5連覇中の「キング・オブ・ウィランガ」リッチー・ポートが6度目の王冠を狙う。

もちろん彼にとってそれは通過点に過ぎず、真に狙うは未だ2度目でしかない「ダウンアンダー総合優勝」の座の獲得。そのためにはウィランガ・ヒルはもちろん、コークスクリューでいかにライバルたちを蹴り落とすか。あるいは、苦手なスプリントでなんとかボーナスタイムを取っていくか・・・。

また、新たなチームメートたち、とくに山岳アシストとして重要な存在になるであろうパンタノとのコンビネーションを見るという意味でも重要なレースである。パンタノ自身のダウンアンダーでの成績としては2015年に総合9位、2016年のウィランガ・ヒルステージで区間9位など。 

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31~.ロット・スーダル(LTS)

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新生カレブ・ユアンがどこまで大暴れできるか。それだけを狙ったチーム構成。

最も信頼するアシストとして旧チームから引っ張ってきたロジャー・クルーゲは、年始の非UCIクリテリウムブラックバーン・ベイ・クリテリウム」で早速強力な仕事ぶりを発揮。ユアンに2度の勝利を捧げた。 

そしてそこではまだ参戦していなかった元英国王者アダム・ブライス。この、ユアンのための最強発射台2人が揃ってどこまで戦えるのか。失敗の許されないダウンアンダーとなる。

もちろん、もう1人の「主役」トーマス・デヘントの逃げっぷりにも期待。2017年に山岳賞を獲っただけに飽き足らず、2018年にも1周目ウィランガを先着するなど、その年の山岳賞ニコラス・ドラミニをひやひやさせる走りを見せてくれた。

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41~.UAEチーム・エミレーツ(UAD)

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ガビリア加入で話題を呼ぶ一方、無名に近い選手も含め数多くの若手選手を加入させた2019年のUAE。その目玉が、昨年ラヴニール覇者のポガチャルと、若手スプリンター随一の実力をもつフィリプセンである。

一方、フィリプセン同様にハーゲンスバーマン・アクセオンから移籍してきたイヴォ・オリヴェイラにも注目しておきたい。双子の兄弟であるルイと並びトラック競技で活躍している選手で、イヴォの方は2018年世界選手権個人追抜き銀メダリストでもある。トラックで強い選手はロードレースでも強いというのはもはや世界の共通認識で、この双子が今後、頭角を表す可能性は十分にあるだろう。

そして、そんな若手の間に潜みながらも、虎視眈々とステージ優勝及び総合優勝を狙っているのがウリッシ。過去にも総合3位~5位までを経験しているこの男は、紛れもない総合優勝候補の1人である。

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51~.チーム・ディメンションデータ(TDD)

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昨年オンループ・ヘットニュースブラッドおよびアムステルゴールドレースを制し、かつインスブルック世界選手権でも終盤で積極的な動きを見せたヴァルグレンが、新チームで早速エースナンバーをつけて参戦。パンチャーとしての高い才能は、このダウンアンダーでも十分に期待されるところだろう。

ただし、ヴァルグレンの過去の総合成績はさして良くはない(最も良い昨年でも総合28位)。実績でいえばスラフテルの方が断然である(2013年総合優勝、2018年総合3位)。

勢いのヴァルグレンと、経験のスラフテル。そしてもちろん、地元勢としては、年々成長を見せ、昨年のジロ・デ・イタリアでは終盤まで総合12位と健闘していたベン・オコーナーの躍進にも注目していきたい。

もちろん、昨年山岳賞のドラミニは今年も逃げに積極的に乗るだろうし、南アフリカ人スプリンターとしてはインピーに続く活躍をしてみせたいギボンズも、初のダウンアンダーで区間上位を狙っていきたい。

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61~.バーレーンメリダ・プロサイクリングチーム(TBM)

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過去に総合5位や6位を経験しているポッツォヴィーヴォがエースナンバーをつける。もちろん、総合優勝経験者のデニスもただ沈黙しているだけのつもりはないだろう。若手クライマーのペーンシュタイナーにも密かに期待している。

しかしこのチームの重点はむしろスプリンターではないかとは思う。

昨年の第3ステージでヴィヴィアーニに続く2位、ユアンも打ち倒したバウハウスがエースを張り、それを4年ぶり出場で年始のベイ・クリテリウムでも調子の良さを見せつけていたハウッスラー、元グライペル親衛隊のシーベルグ、そして発射台としては十分な実力を発揮するアラシロが万全のアシスト体制を作る。

意外とこのチーム、スプリントにおける台風の目になるのでは?

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71~.EFエデュケーションファースト・プロサイクリングチーム(EF1)

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2018年ブエルタ区間1勝、インスブルック世界選手権3位などブレイクしたウッズが最初に頭角を現したのはこのレースであった。しかも、2016年の、コークスクリュー。その年はウィランガ・ヒルでも3位に入る好走を見せ、総合でも5位。あのときよりもずっと力をつけつつある今年、勢いのままに総合優勝も、十分にありうる。

ただ、チーム一丸となって彼の総合成績をサポートする、という体制ではない。かといって、マクレーのスプリントを中心に据える体制、というわけでもなく、とりあえず地元のドッカー、モートン、同じ南半球ライダーのスカリーあたりを中心に逃げて目立つ作戦がメインかな。

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81~.チーム・サンウェブ(SUN)

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若手育成の意味も含んだチームであるUniSAを除いた全18チームの中で最も平均年齢の低いチーム。

かといって、別に戦力が低いというわけでもなく、ヒンドレーは将来有望な若手クライマーだし、ハミルトンは元U23オーストラリアチャンピオンで、UniSAのメンバーとしてダウンアンダーを走ったこともある。そのとき(2016年)はウィランガ・ヒルでの積極的な走りが印象的だった。ストーラーも同様に元UniSAである。

そして、エースとして勝ちを狙っていくのは、今年のブエルタにおけるサンウェブのエースを任される予定のヴァルシャイド。昨年のツール・ド・ラヴニール開幕ステージでスプリント勝利を果たした期待の新人カンターが発射台を務める。

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91~.AG2Rラモンディアル(ALM)

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昨年ツール新人賞のラトゥールは本気を出せば総合優勝も狙える実力者。やる気さえ出せば。ラトゥール以外にエースを狙えそうなクライマーもいないし、スプリンターも連れてきていないし、チーム全体としてのやる気のなさがひしひしと伝わる。

せめて、若手ルーラー3人衆が逃げで活躍してほしいところ。とくに昨年のパリ~トゥールで3位だったコズネフロワとか。

 

 

101~.アスタナ・プロチーム(AST)

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エースナンバーを(おそらくはアルファベット順ゆえに)つけるバッレリーニは、元アンドローニの選手。プロコンとはいえ、大雨のグラン・ピエモンテで3位につけるなど、実力は十分にある。荒れた展開になれば区間上位に入ることは十分可能だろう。

あとはダウンアンダーの逃げといえばこの人、なデフリーズや、イタリア人なのになぜかオーストラリアとのマッチ感が半端ないボアーロ(コアラ似、と思ったら昨年はカメラにコアラつけてた)あたりが積極的に逃げつつ、ミナーリがチームから去ったおかげでエーススプリンターとしての活躍の場も広がりそうなギディッチがステージ上位を狙っていく。

基本的にはトレーニング代わりにダウンアンダーに参加するチーム。

 

 

111~.チーム・カチューシャ=アルペシン(TKA)

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昨年は年間3勝と散々だったこのチームも、今年は新年早々マルコ・ハラーがベイ・クリテリウム区間1勝&総合優勝。非UCIクリテリウムレースとはいえ、幸先の良いスタートを切ることができた。

グライペル親衛隊でキッテルのための新たなトレイン要員として期待されるデブシェールも参戦し、ハラーと共に、まずはチームワークの確認。2月以降にキッテルを迎える準備を整えておこう。

そして、総合優勝は2017年総合4位のネイサン・ハースが基本はエースとなるだろうが、個人的にはルーベン・ゲレイロに注目しておきたい。元ツアー・オブ・カリフォルニア新人賞3位、昨年はブルターニュ・クラシックやプリムス・クラシックで上位に入る程度にはスプリント力もあるため、ボーナスタイムを稼ぎつつ登りでも遅れないその足で、総合上位を狙える素質は十分にある男だ。昨年は総合9位。

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121~.グルパマFDJ(GFC)

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このチームもダウンアンダーは観光組・・・とは言いつつも、元BMCのスコットソンは2017年オーストラリアロード王者でやる気も調子も十分だろう。総合を狙えるタイプではないとは思うが、ダウンアンダーガチ勢だった旧チームにいたときよりは伸び伸びと走れるに違いない。

総合でエースを担うとしたら、2016年のコークスクリューステージで5位、総合でも9位だったモラビト。今年で引退を決めたピノの右腕。その髭が渋くて最高にカッコよかったッス。

今年、何かしら彼自身の勝利を掴んでみせてほしい。応援してます。今年はスイスチャンピオンジャージを着用しての参戦。

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131~.モビスター・チーム(MOV)

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過去に総合5位・6位の経験をもつ元ラヴニール覇者フェルナンデスがエースナンバー。個人的には、今年エウスカディ・ムリアスから昇格してきたターキー覇者プラデスがどこまで走れるか注目したい。ダウンアンダーには合っている脚質だとは思うが、さすがにコークスクリューやウィランガ・ヒルの前には太刀打ちできないか。

過去のダウンアンダーでは逃げで目立ったズッタリン、登りで目立ったバルスなどがおり、意外にも活躍するところも多いのがこのチームだ。まあ、勝てはしないだろうが・・・。

 

 

141~.ドゥクーニンク・クイックステップ(DQT)

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2018年最強スプリンター、ヴィヴィアーニが今年もダウンアンダーで幸先の良い勝利を飾れるか。サバティーニ、モルコフなど最強アシスト陣も揃っており、本気すぎる体制。

その中でノックスやカヴァニャの若手の元気な逃げにも期待したい。逃げ切りの難しいダウンアンダーではあるが、第5ステージなんかは割と狙い目だぞ。

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151~.チーム・ユンボ=ヴィズマ(TJV)

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ツアー・オブ・カリフォルニア総合優勝経験もあり、激坂にも強く、さらにはオセアニア勢として今の時期もピークの1つであるはずのベネットは、論理的に考えれば総合優勝候補である。しかし過去の戦績を見てみるとイマイチ・・・なんでだろ? ヘーシンクも加わって、今年こそは、と期待したいところ。

スプリンターはファンポッペル。22歳のときにブエルタで衝撃的な勝利をして以来、そこに続く大きな勝利はなかなかないが、昨年もジロでもブエルタでも惜しいところまで行っていた。今回も勝利まで掴むにはライバルたちがあまりにも強大ではあるが、このまま消えてはほしくない選手の1人なので頑張ってほしい。あまりアシストらしいアシストがいないのが少々不安。

 

 

161~.チーム・スカイ(SKY)

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初出場のパンチャー寄りクライマー、プールスがエースを張る。直前の情報ではゲラント・トーマスの出場可能性もあった気はするが結局は出なかったので彼がエースなのは揺るぎないだろう。調子次第ではエリッソンドが頑張るか。
ハルヴォルセンはネオプロとして参戦した昨年、前哨戦クリテリウムで落車してそのまま本戦には出場できないというあまりにも悔しい経験を味わっている。今年はチーム内ライバルのローレスもおらず、心置きなくエーススプリンターとして戦えそうだ。同じ17年ラヴニール組のホッジやヤコブセンに完全に差をつけられてしまった2018年。2019年は、リベンジを果たせるか。

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171~.CCCチーム(CPT)

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ニュージーランド国内選手権個人タイムトライアルで優勝し、年間20勝を目指すチームに幸先の良い1勝目を捧げたベヴィンがエース。アルファベット順とも考えることはできるが、スプリント力も高くボーナスタイムも稼げる彼は総合エースを担うことも不可能ではない。。。が、さすがにコークスクリューやウィランガ・ヒルは厳しいか。

それよりは、ワールドツアー1年目となるマレツコのスプリント勝利を最優先に考え、その発射台の1人としてベントソとベヴィンが加わる、というパターンの方が多いだろう。しかし登りでの実績の少ない彼が、アップダウンの激しい南オーストラリアの大地を無事に乗り越えられるかどうか。

いずれにせよ、彼にとっては重要な2019年の試金石となる1週間だ。

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181~.UniSAオーストラリア(UNA)

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UniSA、すなわち南オーストラリア大学がスポンサードする、実質的なオーストラリアナショナルチーム。未来の有望オージー発掘において彼らの走りに注目することは非常に重要になる。過去にはリッチー・ポートやローハン・デニスも、このチームで走ったことがある。

オーストラリア国内のシリーズ戦か何かで上位に入ったチームは優先的に出場枠が手に入る、というルールだった記憶がある。おそらくはその結果として、昨年ベネロング・スイスウェルネスに所属していたハーパー、リー、サンダーランド、トゥーヴィーの4名が選出されている。しかし、ツアー・オブ・ジャパンにも来てくれていたこのチームは2018年限りで解散?しており、この4名と、別チームからの移籍であるファンデルプローグ、ホワイトの計6名が、チーム・ブリッジレーンという比較的新しいオージーコンチネンタルチームに所属している。

選抜チームと言いながら、ほぼブリッジレーンである。

残る1人のポッターはオーストラリア・サイクリングアカデミー所属。こちらも、昨年の大分アーバンクラシック、ジャパンカップ共に出場しており、ポッター自身も来日している。

 

この中で最も注目すべきはやはりハーパーだろう。2018年はオセアニア大陸選手権ロードレースで優勝、ツアー・オブ・ジャパンでも富士山ステージ3位、伊豆ステージ2位と高い実力を示し、新人賞を獲得。

つい先日のオーストラリア国内選手権ロードレースでも2位と、いつワールドツアーから声がかかってもおかしくない逸材である。

今回は初の、満を持してのダウンアンダー出場。ぜひ、誰よりも目立ち、誰よりも注目される走りを見せつけて、来期の契約を勝ち取ってほしいところ。

2017年のツアー・オブ・ジャパンにて撮影。この年も伊豆ステージで2位となるなど、活躍を見せていた。

 

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